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10 呪い
しおりを挟む「ーーーーーレベル、ですか?」
「成長率とも言うかな。それか自分の攻撃力、防御力、魔力なんかを数値的に知ることって出来たりしないかしら?」
RPGと言えばレベル制。そんな固定概念からか当然のように"星月"にもそれは適用されていた。
ならこの現実世界においてそれがどうなっているのか? という疑問から私はフリージアに質問していた。
「……聞いた事はありませんね。私が無知という事もあるかもしれませんが、それでも攻撃力や防御力という装備や状況、あるいは環境によって変動してしまうような能力を数値、もしくはそれに準じる何かに置き換えるのは不可能ではないでしょうか?」
「まぁ、そうよね」
あれはゲームであるがゆえの仕様よね。現実に持ち込むことは出来ないか。
「ですが、魔力量でしたら測定出来ます。お嬢様の言う通り数値としても表示されますよ」
「魔力量ね……」
数値として表示されるという事は、つまり比較されるということだ。
"星月"をゲームとしてプレイする分には可視化されたステータスは非常に便利なものだったけれど、現実に常にそれが纏わりつくというのなら話は変わってくる。
「フリージア、私の魔力量ってどれぐらいあると思う?」
「ご安心くださいませ、お嬢様。お嬢様は王国随一の魔術師であり、現王国魔術師団団長を務める旦那様と、【結界魔女】の通り名で広く知られる奥様の血を引き継がれていますから、とても優秀に違いありません」
フリージアは私が魔術師として優れているのか不安に感じていると思ったのか、そう言って優しく頭を撫でてくれた。
その心配は一切なかったけれど、フリージアに頭を撫でられて悪い気はしないので否定もしない。だけど。
……とても優秀か。その程度の言葉では悪役令嬢ティアラの魔術師としての実力は言い表せない。
そして言い表せないからこそ、後にティアラは周囲よりこう呼ばれる事となるーーーーー"化け物"、と。
◇
その者にとって、生きてきた時間などハンデにもならないのだろう。
三十年という時を経て大きく逞しく育った肉体。それは才能や恵まれた環境に身を置き、努力という名のもとに出来あがった人生の形だ。
そしてこの剣技は幾つもの修羅場を超え、私の身体の芯へと刻まれた呪いだ。悲しみ、苦痛、後悔、迷い、希望、そして絶望を知ってなお茨の道を彷徨い続けなくてはならい、そういう類の呪いだった。
だというのに、この目の前にいる少女ときたら。
「楽しいですわね、オルセル様! やはり強者との闘いほど心躍ることはありませんわ!」
不吉の象徴とされるその瞳の奥で、彼女は何を視ているのか?
まさか、私の全てを見透かしているのでは? そのように感じてしまうのは、きっと彼女という存在そのものが、私にとって魅力的に映ってしまったからだろう。
剣を交えれば交えるほど惹きつけられ、そして彼女の圧倒的な強さを知る。
「……そうですね。久しくこの感覚を忘れておりました。楽しい……ええ、とても!」
私にとっての剣は己が存在理由でしかなかった。
剣が強ければ、兄達に侮られることはなく、父や母に認めてもらえた。
それが嬉しく剣を習い続け、当然のように騎士になった。
だが、騎士になって早々に思い知る事となった。人は簡単に死ぬのだという事実を。
私は幾重もの死闘を生き抜いてきた。
それは運良くも私に剣術の才があったからだと思っている。
だが、戦友は一人、また一人と犠牲になるばかり。
私は生きる為に必死に剣を振るった。
そしていつからだったろうか。仲間と共に過ごした辛くも楽しかったあの頃を忘れてしまったのは……。
私の剣は決して呪いではない!
彼らと共に切磋琢磨し築き上げた我が人生の宝だ!
「ーーーーー百の流派を巧みに操る最強の騎士。お噂はかねがねお聞きしておりましたが、まさかここまで鮮やかに技を紡がれるとは思っておりませんでした」
「それだけが私の取り柄ですから。ですが、私の本気はこれからです!」
オルセル騎士がそう言うと、訓練場の隅に立て掛けてあった木剣をもう一本持ち出した。
……二刀流の騎士⁉︎ まさかこんな所で相手することになるなんてね。
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