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第一章
義兄の嫌がらせ6
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必死できぬと鏡を守ろうとする幸恵を見て、茂がにやりと歪んだ笑みを浮かべた。
「二つも宝物は要らないだろう。一つは残してやるから、ばあさんか、鏡のどちらを残すか選べよ」
「どっちも大事で選べない。きぬはお母さまの代わりだし、鏡はお母さまの形見だもん」
「フン、大した宝だな。それじゃあ、俺が選んでやるよ。お前みたいに泣き虫で、一人じゃなんにもできない赤ちゃん女には、まだ乳母が必要だろうからきぬは残してやるよ。その代わり……」
茂が手に取ったのは、鏡の横に置いてあった香油の瓶だった。今朝もきぬが、幸恵の髪を梳くときに使ったものだ。茂が鏡から距離をとって腕を上げる。
「やめて、鏡を割らないで!」
幸恵が茂に飛びつくより先に、茂が投げた瓶が鏡に当たって甲高い音を立てた。
砕け散ったのは香油の瓶。鏡は……
「ひびが……鏡にひびが入っちゃった。お義兄ちゃんのバカ! 直してよ!」
わ~ん、と泣き出した幸恵に、いい気味だと吐き捨てて、茂は部屋から出て行った。
「お母さま、ごめんなさい。幸恵は鏡を守れませんでした。大事、大事にしたかったのに」
「お母さまの形見まで壊されて、なんておかわいそうなお嬢様。あの乱暴者でろくでもない茂には、今に罰が当たりますよ」
「そうならいいのに」
普段人の不幸を願ったりしたことのない幸恵も、このときばかりは義兄を憎らしく思った。懲らしめてやれたらどんなにいいだろう。
「だって鏡さんは、おおきな傷をつけられて、痛い思いをしたんだもん。お義兄ちゃんなんか、いなくなればいいのに」
きぬの胸に顔をうずめて泣きじゃくる幸恵の耳に、別の泣き声が聞こえたような気がした。
幸恵は涙目のまま辺りを見回したが、もとより誰も寄り付かない離れは静まり返り、障子に鳥の影が映るばかりだった。
「二つも宝物は要らないだろう。一つは残してやるから、ばあさんか、鏡のどちらを残すか選べよ」
「どっちも大事で選べない。きぬはお母さまの代わりだし、鏡はお母さまの形見だもん」
「フン、大した宝だな。それじゃあ、俺が選んでやるよ。お前みたいに泣き虫で、一人じゃなんにもできない赤ちゃん女には、まだ乳母が必要だろうからきぬは残してやるよ。その代わり……」
茂が手に取ったのは、鏡の横に置いてあった香油の瓶だった。今朝もきぬが、幸恵の髪を梳くときに使ったものだ。茂が鏡から距離をとって腕を上げる。
「やめて、鏡を割らないで!」
幸恵が茂に飛びつくより先に、茂が投げた瓶が鏡に当たって甲高い音を立てた。
砕け散ったのは香油の瓶。鏡は……
「ひびが……鏡にひびが入っちゃった。お義兄ちゃんのバカ! 直してよ!」
わ~ん、と泣き出した幸恵に、いい気味だと吐き捨てて、茂は部屋から出て行った。
「お母さま、ごめんなさい。幸恵は鏡を守れませんでした。大事、大事にしたかったのに」
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