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事件発生
アンドロイドは恋に落ちるか
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莉緒たちには悪いが、聞かれてはまずいものを先に見つけて消去しなければならない。
それは、莉緒が来た初日に、莉緒の可愛さに浮かれた奏太が、ケンディーに入っているのにも関わらず、パルクールをやっていると言ってしまった時のことだ。
当然三十二歳の研二が趣味にするには無理があり、水野アンディーと莉緒から不思議がられて質問を受けたのを、研二が遮った。
リビングからダイニングに移ったところ、つまり先ほど立っていたところでで、研二にたしなめられたのだ。
『まぁ、お前みたいに真っすぐな性格の奴に、人を騙せという方が無理なんだろうが、俳優になったと思って一週間僕を演じてくれよ。お茶は僕が持っていくから、お前は奏太に戻って莉緒ちゃんに挨拶してくれ』
あんな会話を残していたら、兄にとっては周囲を欺いたことで信頼を失いかねない。
頭の中でアンディーがいつ運び込まれたかを整理する。昼間研究所に呼び出された日だから、莉緒が到着する二日前に新見家に運びこんだ。
その日の会話は入っていない。
次の日の会話は‥‥‥断片的に入っているが、聞き取れないものが殆どだ。ということはみんながいる部屋から遠いゲストルーム辺りに仕掛けられているのだろう。
スマホは会話を感知すると録音するように設定されているので、会話の頭だけを聞いて違うなら飛ばしていく。
問題の会話が録音されているとしたら、莉緒が到着した日だ。その日には、リビングにも盗聴スマホが置かれたようで、朝の会話が耳に飛び込んできた。
莉緒が来るまでアンディーにこの部屋で待つようにと研二が指示する言葉が耳に入る。
緊張しながら会話を早送りして、ガチャンと音がするところで普通再生にもどした。
パルクールの発言に周囲が疑問を抱いたのを逸らすために、研二がお茶を乱暴にテーブルに置いた音だ。そしてケンディーにお茶を淹れ直すように頼んで、自分もダイニングに消える。
固唾を飲んで聴き入ったが、ドアが閉まった後は、ダイニングで小声で話した兄との会話は入っていない。奏太はホッと息をついた。
アンディーが盗聴器を仕掛けるとしたら、自動で起きてくる朝しかない。バッテリーつきのスマホを一度に何台も隠し持って、あちこちに仕掛けるのは無理があり、一日ずつ増やしていったと思われる。
ただ、コンセントタップは小さいし、いつでも仕掛けられるはずだ。
そして何より怖いのは、スマホの盗聴は録音されて後で依頼人に渡すつもりだったのだろうけれど、コンセントタップは盗聴している内容を、リアルタイムで外で受信できるはずだ。
キッチンのコンセントにいつ仕掛けられたのかは知れないが、初日に仕掛けられていたとしたら、ダイニングで話した言葉も聞かれた可能性がある。
ドキドキしながら、コンセントタップの音の受信距離を検索する。半径5m範囲。キッチンの壁際からダイニングの壁までは、何倍もある。
他に送信機が仕掛けてなければきっと大丈夫だ。まずは高橋の到着をまとう。
二時間後に高橋がやってきた。
莉緒と挨拶を済ませ、大きな手荷物の中からゲーム機ではなく、盗聴器の探知機と受信機を取り出した高橋は、雑談をしながら五個の盗聴器を見つけて電源を断っていく。もういいぞと言われたときには、気が付かずに張っていた気が緩み、奏太はソファーを滑り落ちて床にペタンと腰をつき、大きく息を吐いた。
六個の中には既に奏太が見つけたキッチンのコンセントタップと食器棚の下のスマホも入っている。
その他はゲストルームとリビングの扉近くのコンセントに差し込んだコンセントタップが一つと、ゲストルームとリビングのソファーの下から、それぞれモバイルバッテリーに繋がれたスマホが見つかった。
ラスト一個の盗聴器は、スパイアプリが仕掛けられた莉緒のスマホだ。
確かめるために、奏太が玄関ホールへ移動してから莉緒のスマホに電話をかけて二人で話してみる。離れているはずの二人の会話は。、どちらの声もはっきりと同じ音量で録音機器になっているスマホに送信されてきた。
奏太は推測が当たりやっぱりと思ったが、莉緒は驚きのあまりおろおろして声もでないようだ。
高橋が莉緒のスマホからスパイアプリをアンインストールしてから、もう一度奏太との会話を試させ、録音機器には何も届かないことを確認した。
「気持ち悪いわ。私の会話が盗聴されていたなんて。一体誰がいつの間に私のスマホにアプリを入れたのかしら」
「羽柴さん、こんなことかわいい女の子に聞いちゃいけないかもしれないけれど、つきあっていた男性に恨みを買うようなことをしなかった?それと羽柴さんの秘密が今まで誰かに漏れていると感じたことはある」
「つきあっている人なんていないもの。アンディーの肌のバイオ研究のことぐらいしか漏れていけない秘密はないわ」
じゃあさ、と奏太が莉緒に話しかけた。
「アンディーの前で、パスワードを入れたり、スマホをテーブルの上に置いて他事をしにいかなかったか?」
「それは‥‥‥多分、したかも。アンドロイドだからスマホを使うなんて思わなくて、メールに返信したり、電話をかけるときにアンディーの前でロックを外したと思うわ。それにお茶をいれるためにキッチンへ立ったとき、リビングのティーテーブルにスマホを置きっぱなしにしたわ」
「多分、その時にスパイアプリをインストールされたんだな。実はこの録音機器として使用されていたスマホは、水野アンディーが言った通り、コンセントタップと一緒に牧田アンディーのチェストの中にあったんだ。誘拐された兄貴の犯人に繋がるものを探して、ウォークインクローゼットのアンディーたちのものをひっくり返して調べていたら、出てきたスマホが点滅して、莉緒ちゃんと羽柴社長の声を録音し始めたんだ。録音は話し声がしたときだけ反応するように設定してあるみたいだった」
「ああ、だから奏太君は牧田アンディーに、いつしかけたのかって聞いたのね」
最初から犯人が牧田だと分かっているような奏太の質問に、莉緒は疑問を感じていたようだ。そして背後に迫った犯罪者たちの痕跡を前に、莉緒が身震いする。心配した奏太が声をかけるより早く、高橋が横から口を挟んだ。
「ちょっと待て、奏太。誘拐ってどういうことだ?それが一番大事だろ」
奏太と莉緒は、秘密や疑問を持つ部分を除いて高橋に状況を語り始めた。
奏太は自分がケンディーの中に入れるということを。
莉緒はケンディーの趣味と奏太の趣味が一致するのに、なぜ黙っていたのかを‥‥‥
それは、莉緒が来た初日に、莉緒の可愛さに浮かれた奏太が、ケンディーに入っているのにも関わらず、パルクールをやっていると言ってしまった時のことだ。
当然三十二歳の研二が趣味にするには無理があり、水野アンディーと莉緒から不思議がられて質問を受けたのを、研二が遮った。
リビングからダイニングに移ったところ、つまり先ほど立っていたところでで、研二にたしなめられたのだ。
『まぁ、お前みたいに真っすぐな性格の奴に、人を騙せという方が無理なんだろうが、俳優になったと思って一週間僕を演じてくれよ。お茶は僕が持っていくから、お前は奏太に戻って莉緒ちゃんに挨拶してくれ』
あんな会話を残していたら、兄にとっては周囲を欺いたことで信頼を失いかねない。
頭の中でアンディーがいつ運び込まれたかを整理する。昼間研究所に呼び出された日だから、莉緒が到着する二日前に新見家に運びこんだ。
その日の会話は入っていない。
次の日の会話は‥‥‥断片的に入っているが、聞き取れないものが殆どだ。ということはみんながいる部屋から遠いゲストルーム辺りに仕掛けられているのだろう。
スマホは会話を感知すると録音するように設定されているので、会話の頭だけを聞いて違うなら飛ばしていく。
問題の会話が録音されているとしたら、莉緒が到着した日だ。その日には、リビングにも盗聴スマホが置かれたようで、朝の会話が耳に飛び込んできた。
莉緒が来るまでアンディーにこの部屋で待つようにと研二が指示する言葉が耳に入る。
緊張しながら会話を早送りして、ガチャンと音がするところで普通再生にもどした。
パルクールの発言に周囲が疑問を抱いたのを逸らすために、研二がお茶を乱暴にテーブルに置いた音だ。そしてケンディーにお茶を淹れ直すように頼んで、自分もダイニングに消える。
固唾を飲んで聴き入ったが、ドアが閉まった後は、ダイニングで小声で話した兄との会話は入っていない。奏太はホッと息をついた。
アンディーが盗聴器を仕掛けるとしたら、自動で起きてくる朝しかない。バッテリーつきのスマホを一度に何台も隠し持って、あちこちに仕掛けるのは無理があり、一日ずつ増やしていったと思われる。
ただ、コンセントタップは小さいし、いつでも仕掛けられるはずだ。
そして何より怖いのは、スマホの盗聴は録音されて後で依頼人に渡すつもりだったのだろうけれど、コンセントタップは盗聴している内容を、リアルタイムで外で受信できるはずだ。
キッチンのコンセントにいつ仕掛けられたのかは知れないが、初日に仕掛けられていたとしたら、ダイニングで話した言葉も聞かれた可能性がある。
ドキドキしながら、コンセントタップの音の受信距離を検索する。半径5m範囲。キッチンの壁際からダイニングの壁までは、何倍もある。
他に送信機が仕掛けてなければきっと大丈夫だ。まずは高橋の到着をまとう。
二時間後に高橋がやってきた。
莉緒と挨拶を済ませ、大きな手荷物の中からゲーム機ではなく、盗聴器の探知機と受信機を取り出した高橋は、雑談をしながら五個の盗聴器を見つけて電源を断っていく。もういいぞと言われたときには、気が付かずに張っていた気が緩み、奏太はソファーを滑り落ちて床にペタンと腰をつき、大きく息を吐いた。
六個の中には既に奏太が見つけたキッチンのコンセントタップと食器棚の下のスマホも入っている。
その他はゲストルームとリビングの扉近くのコンセントに差し込んだコンセントタップが一つと、ゲストルームとリビングのソファーの下から、それぞれモバイルバッテリーに繋がれたスマホが見つかった。
ラスト一個の盗聴器は、スパイアプリが仕掛けられた莉緒のスマホだ。
確かめるために、奏太が玄関ホールへ移動してから莉緒のスマホに電話をかけて二人で話してみる。離れているはずの二人の会話は。、どちらの声もはっきりと同じ音量で録音機器になっているスマホに送信されてきた。
奏太は推測が当たりやっぱりと思ったが、莉緒は驚きのあまりおろおろして声もでないようだ。
高橋が莉緒のスマホからスパイアプリをアンインストールしてから、もう一度奏太との会話を試させ、録音機器には何も届かないことを確認した。
「気持ち悪いわ。私の会話が盗聴されていたなんて。一体誰がいつの間に私のスマホにアプリを入れたのかしら」
「羽柴さん、こんなことかわいい女の子に聞いちゃいけないかもしれないけれど、つきあっていた男性に恨みを買うようなことをしなかった?それと羽柴さんの秘密が今まで誰かに漏れていると感じたことはある」
「つきあっている人なんていないもの。アンディーの肌のバイオ研究のことぐらいしか漏れていけない秘密はないわ」
じゃあさ、と奏太が莉緒に話しかけた。
「アンディーの前で、パスワードを入れたり、スマホをテーブルの上に置いて他事をしにいかなかったか?」
「それは‥‥‥多分、したかも。アンドロイドだからスマホを使うなんて思わなくて、メールに返信したり、電話をかけるときにアンディーの前でロックを外したと思うわ。それにお茶をいれるためにキッチンへ立ったとき、リビングのティーテーブルにスマホを置きっぱなしにしたわ」
「多分、その時にスパイアプリをインストールされたんだな。実はこの録音機器として使用されていたスマホは、水野アンディーが言った通り、コンセントタップと一緒に牧田アンディーのチェストの中にあったんだ。誘拐された兄貴の犯人に繋がるものを探して、ウォークインクローゼットのアンディーたちのものをひっくり返して調べていたら、出てきたスマホが点滅して、莉緒ちゃんと羽柴社長の声を録音し始めたんだ。録音は話し声がしたときだけ反応するように設定してあるみたいだった」
「ああ、だから奏太君は牧田アンディーに、いつしかけたのかって聞いたのね」
最初から犯人が牧田だと分かっているような奏太の質問に、莉緒は疑問を感じていたようだ。そして背後に迫った犯罪者たちの痕跡を前に、莉緒が身震いする。心配した奏太が声をかけるより早く、高橋が横から口を挟んだ。
「ちょっと待て、奏太。誘拐ってどういうことだ?それが一番大事だろ」
奏太と莉緒は、秘密や疑問を持つ部分を除いて高橋に状況を語り始めた。
奏太は自分がケンディーの中に入れるということを。
莉緒はケンディーの趣味と奏太の趣味が一致するのに、なぜ黙っていたのかを‥‥‥
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