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クリスの受難
72 クリスの不満
しおりを挟む暫くしてカーソンは目を覚まし、ガバッと飛び起きて自分の股間をモゾモゾと触り、首をかしげながら話す。
「……あれっ!? 漏らして……ない」
「お目覚めかしら、カーソン?」
「どうかなさいましたか?」
「どうした? 股間に違和感でもあるのか?」
「ねぇ……気持ち良かった?」
「………………うん。変な夢、見た」
カーソンはしきりに股間を触り、おしっこを漏らしていないと不思議がる。
カーソンは立ち上がり、夢の中での出来事を話し出す。
イザベラ達は心の中で、それは夢では無いのよと思いながら、ニヤニヤして話を聞く。
「俺、夢の中でクリスに何かされてた。そしたら、凄く気持ち良くなってきて、おしっこ漏らした」
「へぇ、おしっこが出ちゃったの?」
「うん。そのおしっこ、クリス飲んでた。俺、何か恥ずかしかった」
「あたし、あんたのおしっこ飲んでたんだ?」
「それに……何かよく分かんないけど、凄く気持ち良くなって、腰がビリビリって痺れた」
「まぁっ、腰がビリビリなさるくらい気持ち良かったのですね?」
「うん。あんなの初めて。俺、あの気持ちいいの、またなりたい」
「ほう? それほど気持ち良かったのか?」
「……俺、男に戻ったら凄く変だ」
「あら、何処が変なの?」
「俺、男に戻ったからか? クリス見ると……胸がドキドキして苦しい。これ、何でだ?」
「それはあなたが男の子だから、女の子を気になさっているのですよ?」
「そうなのか? 男の子になった俺、女の子のクリス気になるのは、変じゃないのか?」
「そうよ? それは当たり前の事なのよ?」
「……そっか。あ、でも……それとはまた違う、変な気持ちもある。こっちはもっと変だ」
「もっと変って……どんなふうに変なの?」
「俺、クリスにまた気持ち良くして欲しいって、思ってる」
「あらま、そんなにまた味わいたいほど気持ち良かったのね?」
「うん。でも、それ夢の中の事だから、クリスが何をしてくれたか、恥ずかしくて言えない」
「あたし、夢の中であんたにそんな恥ずかしい事してたの?」
「うん」
「言うの恥ずかしいとは思うけどさ、良かったらあたしにも何されたか教えて?」
「う……うん。クリス俺のちんちん、美味しそうに食べてた。だから俺、凄く気持ち良くなって、おしっこ出た」
「痛くはなかったのか?」
「最初だけ、ちょっと痛かった。でも、痛いのはもう忘れた。気持ち良かったのが、忘れられない。あれ、もっとしたい」
カーソンは顔を赤くし、しきりに股間をモゾモゾと触りながら夢の中で気持ち良くしてくれたクリスを、劣情の眼差しで見つめる。
クリスはカーソンの股間が再び臨戦態勢を整えている事を目視し、自分の股間も湿り始めている事に気付くと、ポッと頬を赤く染める。
クリスは、やっとこの子の為に処女を散らせる覚悟が出来たと、劣情の眼差しでカーソンを見つめながら話す。
「じゃあさ、夢の中であたしがあんたにしてあげた事、教えて? 今からおんなじ事、あんたにしてあげてもいいよ?」
「あら、クリスったら……やっと覚悟決めたのね?」
「この子の為に、自らの処女を捨てる気になったのですね?」
「そうかそうか。では、無人のウィンズ家でやってこい。あそこなら誰にも邪魔されんぞ?」
「セイレーンで姿消して行くのよ? 誰かに見られたら興味本位で尾行されちゃうわよ?」
「さあ、お行きなさい?」
「水は忘れるなよ? 裂けたらヒーリングして貰えよ?」
「はい、隊長。さ、カーソン……行こ? 行って気持ちい事、あたしにも教えて?」
「う……うん。でも……いいのかクリス? すごく恥ずかしい事なんだぞ?」
「大丈夫! どんなに恥ずかしくても、あんたと2人ならきっと大丈ーー」
ズドォォォォン
ドゴォォォォン
バッガァァァン
その時、谷中に大きな音が3回鳴り、地響きがビリビリと起きた。
ソニアは右手で額を押さえ、天を仰ぎながら話す。
イザベラ達も少し前の出来事を思い出し、追従する。
「……いかん。あいつらが風呂沸かしていたの……すっかり忘れていた」
「……3発か。今日は随分と派手なの落としたわね?」
「……音だけで分かりますわ。私の雷よりも、かなり強烈な威力ですわね」
「チェイニー……相当頑張ったのかな? みんな黒焦げになってなければいいけど……」
「ビリビリ……3回。みんな……死んでないよな?」
ソニアとクリス、カーソンは兵舎の風呂場に視線を向けながら話す。
「クリス……悪いがお前の破瓜は少し待ってくれ」
「はい。何か……すっぽかしたら一生恨まれそうなほど凄い雷ですもんね」
「俺、あいつら無事か心配。行ってすぐヒーリングしなきゃ」
近衛達の安否を気にかけ、カーソンとクリスが抱いていた劣情の気持ちは何処かへと吹き飛ばされた。
3人の耳には、この落雷の轟音が近衛達の魂の叫びに聞こえてしょうがなかった。
兵舎を見つめているカーソンへ、イザベラが話しかける。
「ねえ、カーソン? あなたさっき、クリス見るとドキドキするって言ってたわよね?」
「うん。今もドキドキしてる」
「クリス以外の女の子見ても、ドキドキしないの?」
「……する。イザベラ様見ても、ドキドキする」
「あらやだ。私見てもドキドキしてるの?」
「ローラ様見ても、ソニア見ても、近衛のみんな見てもドキドキする」
「まぁっ。私もですか?」
「何っ!? 私までもか?」
「意外と守備範囲の広い子ね?」
「俺、男の子。女の子、気になってドキドキする」
「ふむ。それ、私が治してあげる事出来るけど、どうする?」
「イザベラ様、治せるのかこれ?」
「ええ、出来るわよ?」
「ドキドキ、苦しい。治して下さい」
「分かったわ。そのままクリスの事見ててね?」
イザベラは指をパチンと鳴らし、魔力でカーソンの男の本能を封じ込め、女に対して無感情になるように施しを入れた。
クリスをじっと見つめ続けるカーソンへ、イザベラは聞く。
「ほら、これでドキドキしなくなったでしょ?」
「……本当だ、ドキドキしなくなった」
「ドキドキしてばっかりじゃ疲れるものね? もう大丈夫よ?」
「ありがとうイザベラ様! 俺、胸ずっと苦しくて変な気持ちだった! もう平気になった!」
「また気持ちいい事したいって思う?」
「……? 気持ちいい事って…何だ?」
「夢の中で、クリスにして貰った事よ?」
「……夢? 俺……あれっ? 何だっけ? 忘れた」
「あらまっ! あなた全然覚えてないの?」
「うん。俺、覚えてない。俺、夢見て気持ちいいって言ってたのか?」
「……ふむ、なるほど。快感を得た事から全て無かった事にしないと、男の封印が成立しないのね?」
「あらあら、性に目覚めた時点から封じてしまわれたのですか?」
「そうみたいね。使っといて何だけど、私も知らなかったわ」
「あれは幻の射精になってしまわれたのですね?」
「うーん……ま、しょうがないわね」
「ええ。致し方ありませんわね」
「……あの、イザベラ様? あたしの努力、無かった事になされたのですか?」
カーソンからドキドキしなくなったと言われ、しかも頑張って飲み込んだ子種の事すらも記憶から抹消されたクリスは、思わずイザベラへ不満を漏らしてしまう。
イザベラは不満を感じているクリスへ話す。
「そう言わないのクリス。これから近衛達の所へ、髪を切りに行くんでしょ?」
「はい」
「男に目覚めたこの子を、男に飢えた女達の待つお風呂場にそのまま放り込む気だったの?」
「……えっ!?」
「確かにあなたはカーソンの初めての女になったけどね、問題は全然解決していないのよ?」
「問題……ですか?」
「むしろ逆に、拗れたんだからね?」
「えっ? どうしてですか?」
「あのねクリス? あなたがカーソンの男を目覚めさせたのよ?」
「は、はい。子種……頂きました」
「男に目覚めたカーソンが、あなた以外の女から股を開かれちゃっても、何もしないと思う?」
「うぁっ!?」
「目覚めて早々にまた気持ちいい事したいって言ったのよ? この子はね、女の身体に興味持っちゃったのよ?」
「うわ……ああっ……」
「あなたは初めての女になって満足しただろうけどね、カーソンが谷中の女達から狙われる事には、何の解決にもなっていないのよ?」
「あ……う……」
「性に目覚めちゃったこの子はもうね、言い寄ってくる女の誘いにホイホイ乗っちゃうんだから」
「やっ……やだ。嫌ですそんなの!」
「だから今、私はカーソンの性欲が暴走しないように、手を加えてあげたのよ?」
「イザベラ様! ありがとうございますっ!」
イザベラが何故カーソンに、自分の分からない何かを施したのかを聞いたクリスは、それが正しかったと納得して感謝する。
イザベラはクリスを諭すように、言い方にトゲが出たらローラが何とか受け流してくれるだろうと思いながら、なるべく責め立てないよう気を付けて話す。
「全くもうっ! 小娘ってのはどうしてこう目先の事ばっかりで、事態の本筋を見ようとしないのかしら?」
「まあまあ、お姉様。年寄りの愚痴は程々になさって下さい」
「小言のひとつも言いたくなっちゃうわよ。私が気付かなかったら、大変な事になったのに」
「お姉様。『人は恋をなさると盲目になってしまう』と、大昔から言い伝えられているではありませんか?」
「何もせずほっといて、修羅場にでもしてやれば良かったかしら?」
「それはそれで楽しそうですが、事後のクリスが流石に気の毒ですわ」
「ねえクリス? 今自分の置かれている立場ね、ちゃんと理解しておきなさいよ?」
「はい……反省しております」
「何に対して、反省してるの?」
「自分の事しか考えておりませんでした。不満など漏らしてしまい、大変申し訳ございません」
「そうじゃ無いでしょ。……やっぱり小娘には理解出来ないのかしら?」
「まあまあ、お姉様。クリスもまだまだ子供なのですから」
「私はね、別に怒っている訳じゃ無いのよ? あなたの心構えの無さを心配してるの」
「お姉様、それくらいにして頂けませんか?」
「クリス、これだけは言わせて頂戴? 現時点でたったひとりだけ谷に居る男の子の価値、あなたちゃんと理解しておきなさいよ?」
「は、はい。童貞貰ったとか浮かれてる場合ではありませんでした。大変申し訳ございません!」
クリスはイザベラにぺこぺこと頭を下げ、心から謝罪する。
そして、現状を全然理解していない事でイザベラの虎の尾を踏んでしまった自分に深く反省した。
イザベラとローラはクリスの今後を心配し、今後どうするつもりなのかを聞く。
「……ねえクリス? ちょっと聞いてもいいかしら?」
「あなたの考えを確認しておきたいのです」
「はい」
「まさかとは思うけど、この子に近寄る女達……片っ端から叩きのめそうとか、思ってないわよね?」
「少しでも不穏な動きを察すれば、力ずくで阻止なさるおつもりですか?」
「……はい。そのつもり……です」
「やっぱりね」
「クリス、それだけはお止めなさいね?」
「そんな事したらあなた、谷で孤立しちゃうわよ?」
「あなたが孤立なさってしまえば、カーソンも苦しむのですからね?」
「えっ……カーソンも……ですか?」
「この子を一番身近で見ていたあなたなら……分かるでしょ?」
「他人の気持ちを必要以上に察し、勘違いなさるほど重く受け止める子なのですよ?」
「あなたが苦しめば、絶対にこの子は自分のせいであなたが苦しんでるって受け止めるのよ?」
「ほら、今もそうですわ。振り向いてカーソンをご覧になりなさい?」
「………………あ」
「クリス……俺が悪いから、イザベラ様とローラ様に、怒られてる?」
「いや……違うよ? あたしだけが悪いんだよ?」
「ううん。俺が悪いから、クリス怒られてる。ごめんなさい」
「違うってば……」
(そうだった………こいつ、ワケ分かんないくらいみんなの事心配してくれる奴だった)
カーソンは今にも泣きそうな顔をしながら、クリスに謝った。
クリスはカーソンの悲痛な面持ちに胸が張り裂けそうになりなる。
自分の短絡的な思考を女王達に説教されているのであって、カーソンは全然悪くないと首を振った。
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