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人斬りよ、さらば
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新兵衛は近江屋から持ってきた提灯を片手に、闇の中を進んだ。
傍では以蔵が杖を突く音が聞こえる。
「彦斎は追ってくるかな」
「わしら二人を相手にはできんと分かっているじゃろ」
「でも彦斎はおれを助けてくれたのに」
「人数が少ない方が分け前が多くなる」
「新兵衛さん――」
闇の中に銀光が迸る。
以蔵が杖を手放して後ろに跳ぶ。
数瞬立っていた杖が、真ん中あたりで折れて倒れた。
新兵衛が抜き放った刀で斬っていた。
「以蔵、ここでお別れじゃ」
「え」
「土佐には戻らない方がいい。好きなところで生きるんじゃ」
「おれも連れて行ってくれ」
新兵衛は刀の切っ先を以蔵に向けたまま、闇に溶けて行く。
「新兵衛さん」
以蔵はびっこを引いて走ろうとしたが、その場に倒れた。
――以蔵、すまぬ。
新兵衛は振り返らずに駆けた。
闇の先にある黄金の輝きだけが、今の新兵衛の目に映っていた。
新兵衛は息を切らせて霊明神社に辿り着いた。
裏手に回ると闇が凝り固まった場所がある。野ざらしの墓場であった。
足を踏み入れると空気の湿り気が増す。濡れた枯れ葉と土が混ざりあった匂いが鼻をついた。
――ここに望月亀弥太の墓があるのか。
卒塔婆や墓石がまばらに立っている。
新兵衛は提灯で照らして、端から墓を調べて行った。
名前が彫ってある立派な墓石の方が珍しいくらいで、誰の墓であるか分からないものの方が多い。
――本当に見つかるのか。いや、なくてはいけないのじゃ。
盲信的な自信と共に一つ一つの墓を調べて行った。
――七万両を手に入れるんじゃ。
新兵衛は人斬りだ。難しい思想など持ち合わせていない。日本を変えようという信念もない。志士にはなれなかった。
だが、偉そうなことを言って議論を戦わせていた志士たちはどうなった。みんな死んでしまったではないか。まだ生き残っている奴らもいずれは死ぬ。
――だが、わしは死なぬ。
わしは今までの人生に復讐をしてやるのだ。
金さえあれば日本中どこででも生きてやる。
提灯の明かりが通り過ぎた中に、何かを見た気がした。
「なんじゃ」
ゆっくりと明かりを戻す。土に刺した板切れがあった。
望月亀弥太の墓、と印てあった。
「見つけたぞ!」
思わず声を上げる。
新兵衛は近くに置いてあった鋤を持ってきて、土を掘り始めた。
冬の夜中というのに、うっすらと汗が吹いてくる。
眼前の土の中に眠る黄金の輝きを目指して一心不乱に掘り続けた。
鋤が固いものに当たる。
手で土を払うと、棺桶の蓋であった。
――棺桶の中に七万両が。
新兵衛は喜悦の笑みを浮かべる。
その時、首筋にひやりとした感触があった。
氷のように白い刀身が首に当てられている。
「新兵衛さん。独り占めはなしだぜ」
以蔵の声であった。まさか、杖もなしでもうたどり着いたのか。
「そこに七万両はありませんよ」
彦斎だ。そうか、彦斎が以蔵を連れてきたのか。
新兵衛は思い切って振り返る。
以蔵が彦斎の肩を借りて立っていた。以蔵の刀が新兵衛に向けられている。
「金がないとはどういうことだ。彦斎!」
「坂本さんからわたしが聞いた名は望月亀弥太ではありません」
「なに!」
新兵衛は刀の柄に手をかける。
「わたしを斬れば、どなたの墓であるか一生分かりませんよ」
彦斎は薄い笑みを浮かべて以蔵から数歩離れた。
「なぜわたしが京に戻って来たか分かりますか」
「知らぬ」
「人斬りが必要な時代はもう終わりだからです」
「なんじゃと!」
「田中さんと岡田さんは凄腕です。わたしにしか斬ることはできないでしょう」
「冗談にしてはつまらんぞ。彦斎」
新兵衛はいつもの落ち着きを取り戻してきた。ゆっくりと奥和泉守忠重を抜いた。
「墓の名を言え」
彦斎は懐から紙を取り出した。
「この紙に名が書いてあります」
足元の地面に伏せた紙を置いて、その上に石を乗せた。紙は風でめくれ上がりそうになるが、石の重さで固定されている。
「生き残った者がこの名を見ればよい」
新兵衛は彦斎に目をやる。以蔵も彦斎を見ていた。
「剣で来い!」
彦斎の一声で、三人は刀を抜いて対峙した。
墓場の真ん中は墓石などがない空地であった。
時おり叢雲から姿を現す満月が地上を照らす。
お互いに二間(約三・六メートル)の距離。三角形の頂点に一人ずつ立っているかたちだ。
新兵衛の右に以蔵、左に彦斎がいる。
彦斎は右腕を前に、左足を後ろに退いて、右足を曲げた構えを取る。佐久間象山を仕留めた構え。
以蔵は背中を丸めて下段の構え。天才的な剣技による攻防一体の要塞と化していた。
新兵衛は肘は曲げずに伸ばした蜻蛉の構え。必殺の野太刀自顕流であった。
お互いに一歩踏み込めば間合いに入ることができる。
新兵衛が以蔵に斬りかかれば、彦斎はその隙を逃さないはずだ。だが、彦斎は人を斬ることができるのか。いや、今の幽鬼のような姿になるまでには多くの者を斬ったに違いない。
では、新兵衛が彦斎に斬りかかったならば、以蔵はどう動く。新兵衛と共に彦斎を斬るか。それとも新兵衛を斬るか。
恐らく三人ともが誰かの隙をうかがっている。故に誰も動くことができないのだ。
叢雲から月が覗いて地上の三人を浮かび上がらせる。
新兵衛は以蔵と目が合った。わずかに以蔵が目で頷く。
――やるのか。
以蔵の視線は彦斎に向かう。
――同時に彦斎をやるのだな。
新兵衛がかすかに息を吸った刹那、彦斎が動いた。
――間を外された!
彦斎の神速の突きが新兵衛と以蔵に同時に飛ぶ。二回の突きがひとつの動作に見えるほどに。
新兵衛は仰け反ってなんとか躱した。だが体勢を崩した。
――踏み込まれたら斬られる。
以蔵が彦斎の間合いに飛び込む。彦斎の突きをうまく受けていたのだ。
――さすがは以蔵じゃ。
わずかに遅れて新兵衛も踏み込む。
新兵衛から見て、以蔵と彦斎が重なった。新兵衛の一刀を以ってすれば、二人もろとも斬ることができる。
――以蔵、悪く思うな。
新兵衛は真向上段から奥和泉守忠重を振り下ろした。
以蔵が独楽のように素早く振り返り、下段から新兵衛を斬り上げる。新兵衛の左胸が裂けた。
同時に、以蔵の胸から刀の切っ先が生えてくる。
そう見た時には、新兵衛が以蔵の右肩から腹のあたりまでを斬り下げていた。
彦斎は以蔵の背後で屈んでいた。手に持った刀は以蔵を背中から貫いている。
三人は固まったまま、しばらく時間が止まったかのようであった。
おびただしい出血により冷たい夜気に白い湯気が立ち上っている。
新兵衛と以蔵はゆっくりとくず折れた。
彦斎は血の滲んだ右肩を押さえて立っている。
「さすがは田中さんの一刀。岡田さんを壁にしたにも関わらず皮一枚斬られました」
倒れている新兵衛は体を動かすことができない。視界には以蔵の倒れている姿がある。
「岡田さんには申し訳ないことをしました。わたしは数日前に京に戻りました。岡田さんと再会してすぐに深い仲になりました」
かつて新兵衛が二人の仲に感じた違和感の正体はこれであったか。以蔵は女が苦手であったが、よもや衆道の気があったとは。
「岡田さんはすぐに坂本龍馬の金の話をしてくれました。ですので坂本さんが殺されたところに居合わせたのは偶然ではありません」
彦斎は深い仲であった以蔵を盾にしたばかりか、以蔵を背後から突き刺した。新兵衛は怒りに満ちた目で彦斎を見つめる。
「怒っていますか。でも田中さんもひどい人です。京都見廻組に坂本龍馬が近江屋に潜んでいることを密告したのは、田中さんですよね」
そこまで知っていたのか。
「ですから。わたしはずっと近江屋を見張っていたのですよ」
新兵衛の視界の隅で、彦斎が紙の上に置いた石を取り上げた。風に吹かれて紙がひっくり返る。
――墓の名。
その紙は白紙――何も書かれていない。
――馬鹿な!
彦斎は紙を拾い上げた。
「坂本龍馬は何も言いませんでした。七万両がどこに埋められているかは分かりません。もとより七万両は本当にあったのでしょうか」
手を話すと、白い紙は風に乗って飛んで行ってしまった。
「わたしは肥後に帰ります。そして藩の佐幕派の重鎮たちをことごとく斬ります。尊攘派が藩を治めた暁には、わたしの命も冥府へと旅発つでしょう」
あくまで尊王攘夷の志に殉じる覚悟。新兵衛と以蔵はさしずめ供物といったところか。
新兵衛は蒼白な顔に笑みを浮かべる。
――人斬りの時代も終わりじゃな。
彦斎の足音が遠くなって行く。
その音が、新兵衛には京洛を震わせた人斬りたちの葬列が闇に消えて行く足音に聞こえた。
傍では以蔵が杖を突く音が聞こえる。
「彦斎は追ってくるかな」
「わしら二人を相手にはできんと分かっているじゃろ」
「でも彦斎はおれを助けてくれたのに」
「人数が少ない方が分け前が多くなる」
「新兵衛さん――」
闇の中に銀光が迸る。
以蔵が杖を手放して後ろに跳ぶ。
数瞬立っていた杖が、真ん中あたりで折れて倒れた。
新兵衛が抜き放った刀で斬っていた。
「以蔵、ここでお別れじゃ」
「え」
「土佐には戻らない方がいい。好きなところで生きるんじゃ」
「おれも連れて行ってくれ」
新兵衛は刀の切っ先を以蔵に向けたまま、闇に溶けて行く。
「新兵衛さん」
以蔵はびっこを引いて走ろうとしたが、その場に倒れた。
――以蔵、すまぬ。
新兵衛は振り返らずに駆けた。
闇の先にある黄金の輝きだけが、今の新兵衛の目に映っていた。
新兵衛は息を切らせて霊明神社に辿り着いた。
裏手に回ると闇が凝り固まった場所がある。野ざらしの墓場であった。
足を踏み入れると空気の湿り気が増す。濡れた枯れ葉と土が混ざりあった匂いが鼻をついた。
――ここに望月亀弥太の墓があるのか。
卒塔婆や墓石がまばらに立っている。
新兵衛は提灯で照らして、端から墓を調べて行った。
名前が彫ってある立派な墓石の方が珍しいくらいで、誰の墓であるか分からないものの方が多い。
――本当に見つかるのか。いや、なくてはいけないのじゃ。
盲信的な自信と共に一つ一つの墓を調べて行った。
――七万両を手に入れるんじゃ。
新兵衛は人斬りだ。難しい思想など持ち合わせていない。日本を変えようという信念もない。志士にはなれなかった。
だが、偉そうなことを言って議論を戦わせていた志士たちはどうなった。みんな死んでしまったではないか。まだ生き残っている奴らもいずれは死ぬ。
――だが、わしは死なぬ。
わしは今までの人生に復讐をしてやるのだ。
金さえあれば日本中どこででも生きてやる。
提灯の明かりが通り過ぎた中に、何かを見た気がした。
「なんじゃ」
ゆっくりと明かりを戻す。土に刺した板切れがあった。
望月亀弥太の墓、と印てあった。
「見つけたぞ!」
思わず声を上げる。
新兵衛は近くに置いてあった鋤を持ってきて、土を掘り始めた。
冬の夜中というのに、うっすらと汗が吹いてくる。
眼前の土の中に眠る黄金の輝きを目指して一心不乱に掘り続けた。
鋤が固いものに当たる。
手で土を払うと、棺桶の蓋であった。
――棺桶の中に七万両が。
新兵衛は喜悦の笑みを浮かべる。
その時、首筋にひやりとした感触があった。
氷のように白い刀身が首に当てられている。
「新兵衛さん。独り占めはなしだぜ」
以蔵の声であった。まさか、杖もなしでもうたどり着いたのか。
「そこに七万両はありませんよ」
彦斎だ。そうか、彦斎が以蔵を連れてきたのか。
新兵衛は思い切って振り返る。
以蔵が彦斎の肩を借りて立っていた。以蔵の刀が新兵衛に向けられている。
「金がないとはどういうことだ。彦斎!」
「坂本さんからわたしが聞いた名は望月亀弥太ではありません」
「なに!」
新兵衛は刀の柄に手をかける。
「わたしを斬れば、どなたの墓であるか一生分かりませんよ」
彦斎は薄い笑みを浮かべて以蔵から数歩離れた。
「なぜわたしが京に戻って来たか分かりますか」
「知らぬ」
「人斬りが必要な時代はもう終わりだからです」
「なんじゃと!」
「田中さんと岡田さんは凄腕です。わたしにしか斬ることはできないでしょう」
「冗談にしてはつまらんぞ。彦斎」
新兵衛はいつもの落ち着きを取り戻してきた。ゆっくりと奥和泉守忠重を抜いた。
「墓の名を言え」
彦斎は懐から紙を取り出した。
「この紙に名が書いてあります」
足元の地面に伏せた紙を置いて、その上に石を乗せた。紙は風でめくれ上がりそうになるが、石の重さで固定されている。
「生き残った者がこの名を見ればよい」
新兵衛は彦斎に目をやる。以蔵も彦斎を見ていた。
「剣で来い!」
彦斎の一声で、三人は刀を抜いて対峙した。
墓場の真ん中は墓石などがない空地であった。
時おり叢雲から姿を現す満月が地上を照らす。
お互いに二間(約三・六メートル)の距離。三角形の頂点に一人ずつ立っているかたちだ。
新兵衛の右に以蔵、左に彦斎がいる。
彦斎は右腕を前に、左足を後ろに退いて、右足を曲げた構えを取る。佐久間象山を仕留めた構え。
以蔵は背中を丸めて下段の構え。天才的な剣技による攻防一体の要塞と化していた。
新兵衛は肘は曲げずに伸ばした蜻蛉の構え。必殺の野太刀自顕流であった。
お互いに一歩踏み込めば間合いに入ることができる。
新兵衛が以蔵に斬りかかれば、彦斎はその隙を逃さないはずだ。だが、彦斎は人を斬ることができるのか。いや、今の幽鬼のような姿になるまでには多くの者を斬ったに違いない。
では、新兵衛が彦斎に斬りかかったならば、以蔵はどう動く。新兵衛と共に彦斎を斬るか。それとも新兵衛を斬るか。
恐らく三人ともが誰かの隙をうかがっている。故に誰も動くことができないのだ。
叢雲から月が覗いて地上の三人を浮かび上がらせる。
新兵衛は以蔵と目が合った。わずかに以蔵が目で頷く。
――やるのか。
以蔵の視線は彦斎に向かう。
――同時に彦斎をやるのだな。
新兵衛がかすかに息を吸った刹那、彦斎が動いた。
――間を外された!
彦斎の神速の突きが新兵衛と以蔵に同時に飛ぶ。二回の突きがひとつの動作に見えるほどに。
新兵衛は仰け反ってなんとか躱した。だが体勢を崩した。
――踏み込まれたら斬られる。
以蔵が彦斎の間合いに飛び込む。彦斎の突きをうまく受けていたのだ。
――さすがは以蔵じゃ。
わずかに遅れて新兵衛も踏み込む。
新兵衛から見て、以蔵と彦斎が重なった。新兵衛の一刀を以ってすれば、二人もろとも斬ることができる。
――以蔵、悪く思うな。
新兵衛は真向上段から奥和泉守忠重を振り下ろした。
以蔵が独楽のように素早く振り返り、下段から新兵衛を斬り上げる。新兵衛の左胸が裂けた。
同時に、以蔵の胸から刀の切っ先が生えてくる。
そう見た時には、新兵衛が以蔵の右肩から腹のあたりまでを斬り下げていた。
彦斎は以蔵の背後で屈んでいた。手に持った刀は以蔵を背中から貫いている。
三人は固まったまま、しばらく時間が止まったかのようであった。
おびただしい出血により冷たい夜気に白い湯気が立ち上っている。
新兵衛と以蔵はゆっくりとくず折れた。
彦斎は血の滲んだ右肩を押さえて立っている。
「さすがは田中さんの一刀。岡田さんを壁にしたにも関わらず皮一枚斬られました」
倒れている新兵衛は体を動かすことができない。視界には以蔵の倒れている姿がある。
「岡田さんには申し訳ないことをしました。わたしは数日前に京に戻りました。岡田さんと再会してすぐに深い仲になりました」
かつて新兵衛が二人の仲に感じた違和感の正体はこれであったか。以蔵は女が苦手であったが、よもや衆道の気があったとは。
「岡田さんはすぐに坂本龍馬の金の話をしてくれました。ですので坂本さんが殺されたところに居合わせたのは偶然ではありません」
彦斎は深い仲であった以蔵を盾にしたばかりか、以蔵を背後から突き刺した。新兵衛は怒りに満ちた目で彦斎を見つめる。
「怒っていますか。でも田中さんもひどい人です。京都見廻組に坂本龍馬が近江屋に潜んでいることを密告したのは、田中さんですよね」
そこまで知っていたのか。
「ですから。わたしはずっと近江屋を見張っていたのですよ」
新兵衛の視界の隅で、彦斎が紙の上に置いた石を取り上げた。風に吹かれて紙がひっくり返る。
――墓の名。
その紙は白紙――何も書かれていない。
――馬鹿な!
彦斎は紙を拾い上げた。
「坂本龍馬は何も言いませんでした。七万両がどこに埋められているかは分かりません。もとより七万両は本当にあったのでしょうか」
手を話すと、白い紙は風に乗って飛んで行ってしまった。
「わたしは肥後に帰ります。そして藩の佐幕派の重鎮たちをことごとく斬ります。尊攘派が藩を治めた暁には、わたしの命も冥府へと旅発つでしょう」
あくまで尊王攘夷の志に殉じる覚悟。新兵衛と以蔵はさしずめ供物といったところか。
新兵衛は蒼白な顔に笑みを浮かべる。
――人斬りの時代も終わりじゃな。
彦斎の足音が遠くなって行く。
その音が、新兵衛には京洛を震わせた人斬りたちの葬列が闇に消えて行く足音に聞こえた。
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