【R18】ライフセーバー異世界へ

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027 新しい恋のはじまり

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「ん……」
 目を開くといつもとは違う天井が目に入った。
 ここは何処だろう? と寝ぼけた頭で考える事数十秒。
 初めて入った時間泊の部屋である事を思い出した。

 そういえば私ザックと……

 昨日ザックの手練手管に散々責め立てられた後、意識がなくなる様に眠りについた事を思い出した。

 時間泊の部屋の窓はピッタリと閉まっているので、何時なのかを知る事がすぐに出来ない。
「……今、何時?」
 体が思う様に動かない。その理由がすぐ分かった。ザックが抱き枕の様に私を抱き込んでいる。見上げると彼の綺麗な顎のラインが目に入る。

 スースーと寝息を立てて眠っている口が少し開いていて、伏せられた睫は金色で長かった。首筋から鎖骨にかけて視線を移す。そのまま、広い肩幅を通って肩の辺りを見ると筋肉が盛りあがっている。規則正しく胸は上下していた。

 私が少し身じろぎをしたため、ザックがゆっくりと瞼を持ち上げた。それから、濃いグリーンの瞳で私を捉えると、ゆっくりと笑った。

「……おはよう」
「おはよう……」
 昨日散々彼の前で乱れた事を思い出し、恥ずかしくて視線を逸らす。
「今、何時かなって」
「ん? 時間か、7時半過ぎだな」
 ザックが首だけ捻ってサイドテーブルの置き時計を確認していた。
「そう」
 確かザックに後ろから散々突かれて快感で登り詰めた時、意識が遠くなる中視界に入った時計は朝の四時過ぎを指していたはず。一眠りしたといったとこだ。

 体に残るのは倦怠感だが、何だかスッキリした様な感じもする為不思議だ。しかし、何だか顔が腫れている様に感じる。両手で自分の顔を触ってみる。主に腫れているのは目のまわりだ。

「……顔が、目が腫れてる」
 ザックはゆっくりと私を抱きしめながら、ポンポンと背中をあやす様に叩いた。
「悪かったな。ちょっと啼かせすぎたな」
「もう、止めてって何度も言ったのに。酷いよ」
 最後は気が狂わんばかりに責め立てられ、自分がどうなるかと思ったが責める気力もない。散々啼いて喘いだ後は声はガラガラだし最悪だ。

 とても、初めての朝とは言い難い姿になっている事だろう。

「もう、こんな不細工な顔でおはようなんて」
 言いたくなかった。と、本当に落ち込んでしまう。

 なのにザックは何処吹く風で、今度は頬を優しく撫でて嬉しそうに笑う。

「何で? 別に気にならない。もう一回ぐらいイケそうな」
「もう無理なんだから」
 私は自分の裸を両腕で隠した。

「冗談じゃないさ。出来たらもっと一緒に過ごしたいんだけどなぁ。今日は休みなんだが軍の本部に顔を出す必要があってさ。行かないと」
 二重の少し垂れた目が残念そうに笑っている。
「そっか」
 頭もまだグシャグシャのままだけれど、ここから去ってしまうのかと思うと何だか寂しい気持ちになる。急展開の昨日で、心がついていかないかと思ったけれど……

 何だかんだで自然にザックと接する事が出来て苦笑いになってしまう。

「そんな寂しそうにするな。すぐに店に来るから。しかし……」
 ザックは私の頬を親指でくすぐりながら、海の底に沈む様な深い溜め息をついた。
「ジルに絶対ネタにされる。くそっ、何であんなにカンがいいんだジルって」
「三分……」
「もう言うなよ……一週間無休だった疲れもあって、まさかの新記録とか」
 本当に落ち込んでいるザックだった。

 新記録って。

「フフ」
 おかしくて肩を揺らして笑う。その様子を怨めしそうに見ていたザックだが、最後は溜め息を一つついたら、薄く笑ってもう一度私を深く抱きしめた。

「まぁ、いいか。嘘をついてもしょうがない」
「へぇ、潔いね」
 私はスッキリとしているザックに感心した。
「そうさ、俺は正直なんだ。ただなぁ、ジルがこれを広めたりしない様に何とかならないか」
 最後のひと言がなければ、もっと格好いいのに。
 最後が締まらないザックだった。





 それから「嫌だやっぱり起きたくない」「もう一回やりたい」とぐずるザックを何とかベッドから起こしてシャワーをする様に促した。

 しかし「1人で浴びたくない」「一緒じゃないと動かない」と口を尖らせて文句をずっと並べ立てる。

 ザックの態度が昨日までと百八十度異なる。とても執着されていると感じる。

 去る者は追わず、来る者は拒まず、ではなかったのか?

 問いかけたくなるぐらい、大きな体をすり寄せてくる。

 もしかして仲良くなった女性とは二人きりになるとこうなるのかな……少しモヤッとした気持ちになりかけたが、首を振る。

 確かに自分もシャワーを一緒に浴びたいけれど、本当に体がヘトヘトで仕事が出来なくなったら、ここを追い出されてしまうかも……と、ザックに訴えた。

「追い出されるのか! それは困る。なら、この際俺が家を借りて……いや、俺は軍の宿舎を出たら今は不便だし、そもそも軍の航海が……いや、それだともし何かあった場合……って考えるとジルに世話になる方が安全なのか? だけど変な男にまとわりつかれても困るし。いや、ウエイターとして勘違いされているから安全か?」
 何だかよく分からないが、ブツブツと独り言をいい出した。最後はグシャグシャと頭をかきむしると、大きな溜め息をついた。
「あーっ、もう。まとまらねぇ。仕方ない、シャワーを浴びてくる……」
 ザックはベッドから抜けだしトボトボと歩き出す。

 後ろ姿からでも、鍛え抜かれた美しい彫刻の様な体が分かる。しかし、その様相を全て台無しにするかの如く背中を丸め情けないほどトボトボ歩いて、角にあるシャワーへ向かっている。

 少し歩いては振り返り「駄目か?」「気が変わらないか?」と私に声をかける。首を横に振って断ると、目をウルウルさせていた。

 凄い……ねだり方が子供だ。

「えっと、今からは無理だけど、今度は一緒に入ろうね」
 私だってシャワーを浴びたいが、絶対にそれどころではなくなってしまう。……はず。
「よし、それなら、約束だぞ!」
 ザックは私のセリフに被せる様にと声を上げると、嬉しそうにガッツポーズをして満面の笑みでシャワーに入ってくれた。全て素っ裸の行動なのだが。

 ザックって、格好いいのか格好悪いのかよく分からない……

 首を捻りながら、シャワーの音がすると私は体を起こしてベッドサイドに散らばった洋服をたぐり寄せる。体を傾けるとゴポッと音がして、私の中からザックの残したものが溢れ出るのが分かった。

 何なのこれは!

 魔法で避妊できているのは分かったが、今までの数少ない経験では中に直接出される事がなかったので、起こった事態に驚かされる。

 ありえない程の量に驚き、私は慌てて拭った。更に自分の裸を見ると至るところに赤い痕が残されて昨日の出来事を思い出させる。

 シーツは所々濡れているが、それが二人の汗だけではなく自分が滴らせたものである事もはっきりと分かった。
 シャワーも浴びたいけれど、とにかくザックが出ていった後じゃないと無理だ!
「もう、もう、もう……」
 恥ずかしくてどうにかなる! ギュッと目をつぶりながら私は慌てて身支度を調えた。





 ザックは鼻歌を歌いながら鏡の前で身支度をする。時計は八時過ぎを指していた。
 私も身支度を終えるとベッドサイドに腰掛け、鼻歌を歌うザックの後ろ姿をぼんやりと眺めていた。

 鏡に映っているザックの顔は格好よく、非常に整っている。少し垂れ目がちな二重とつり上がった眉、高い鼻に薄い唇と精悍な頬。立ち姿も背をスッと伸ばしており、癖もない。長身で非常にバランスのよく取れた筋肉の付き方をしている。

 こうしてみると女性が彼に群がるのは当たり前なのかも知れない。
 こんな私の事を相手にしなくても、選び放題のはずなのに……

 落ち込みかけた時、ザックは突然振り向き、子供の様に満面の笑みを浮かべていた。

 ……とてつもなく頬の辺りが艶々している様な気がする。

 昨日必死にしがみついた彼の金髪も、綺麗に整えられており長めに伸びた横の髪の毛を耳の後ろにかけていた。

 それに比べて、私の顔はまだ目の辺りが浮腫んでいる。

 ザックはブーツの踵を鳴らしてベッドサイドに近づくと、私の前で跪いた。私の瞳を見つめて、左手で頬をゆっくりと撫でた。

 それから、ザックは名残惜しそうに首を傾げた。
「行きたくないけど、俺は行くから……行きたくないけど」
 何故か二回繰り返した。
「うん。また来てね。その、えっと、待ってるし」
 最後は何だか恥ずかしくなって顔から火が噴きそうになり私は俯いてしまった。
 
 な、何を口走っているの私。昨日から調子が崩れっぱなしで元に戻る様子がない。
 
 しかし、それはザックも同じ様だ。
 ザックは私を引っ張り自分の胸に強く抱きしめる。
「くそっ、もう二回目の催促なんて。益々部屋を出ていけなくなるだろ!」
「違う! 違うからっ」
 私は慌てて両手を支え棒の様にして、ザックから離れる。そんな催促はしていないし。今の言葉をどう捉えたらそうなるの?!
 ザックは口を尖らせた。
「チェッ。冷たいなぁ」
「ほら! 軍の本部に行くんでしょ! 遅刻したら怒られるんじゃないの?」
「はぁ、それじゃぁな。ナツミ、すぐに来るからな。す・ぐ、だから」
「うん。分かった、分かったから」
 ザックはベッドサイドに置いていた剣を腰に差すと、名残惜しそうに何度も振り返りながら、部屋をゆっくりと出ていった。

 ドアが閉まるのを確認すると、どっと疲れが押し寄せてきた。
「はぁ~」
 朝から嵐の様だった。それにしても……
「ザックってあんな感じだったかなぁ??」

 何だかザックという男が分かった様な分からない様な。
 飄々とした態度は変わらないが、もっと尖った様な雰囲気があったはず。
 それなのに、子供の様に口を尖らせたり、素直に話を聞いてくれたりする人だったとは。

「フフ……変なの……」
 私は思わず顔の頬が緩んで笑ってしまった。

 私の気持ちはザックに向かって傾きつつあった。
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