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037 別荘とメイドと水着
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「いつも海ばかり眺めているから何だか不思議」
私はザックと一緒に乗った馬上でキョロキョロと周りを見回していた。
町を離れて十分程しか経っていないのにすっかりここは森の中だ。鳥のさえずりが聞こえて、夏の日差しも木々に遮られている。そのせいか少し涼しく感じるぐらいだ。
海の香りから緑の香りになっていく。
「そうだな、前面は海。背面は山っていうのがファルの特徴だからな。大丈夫か? 初めて乗る馬は」
「うん。大丈夫」
私を前に乗せて抱き込む様に手綱を握るザックは上機嫌で終始口笛を吹いていた。
「何かご機嫌だね」
「当たり前だろ。丸二日ナツミと一緒にいられるんだ。初めてのお出かけになるしな。まぁ、ノアの別荘っていうのがアレだけど」
「そうだね。ザック色々ありがとう。その、あの、キャンディーとか」
「ああ、そんなお礼を言われる程の事じゃないさ。たいしたもんじゃなくて悪いなぁ」
後ろにいるザックの方に体をねじって見上げる。ザックは頬をポリポリかいて少し照れくさそうにしていた。
「ううん。そんな事ないよ。私はプレゼントよりメッセージカードが嬉しかった」
「ええ? キャンディーの方が良いだろ?」
私の発言にザックは声をひっくり返した。
「そんな事ない。ザックが凄く私を気にかけてくれているのが分かって、とても嬉しかった。ありがとう」
言いながら恥ずかしくなってきて、最後はザックの目を見ながら言えなくなる。慌てて赤くなった顔を隠す様に俯いた。
ひぇ~顔から火が出そう……お礼を言うのも照れくさいなんて。私本格的にザックに恋しているのかな。
「な、何だよ。お礼を言ってから照れるなよ!」
「だ、だって」
私は馬上で肩をすくめて照れくささを逃そうとした。
「あんなメッセージならいくらでも送ってやるさ、それより俺はこの日焼けの痕が気になって気になって仕方ねぇ」
突然、後ろから顔を近づけて左耳で囁かれた直後、むき出しの肩の日焼け部分にザックが甘く噛みついた。
「ああっ! 痛ッ」
「この日焼けは俺しか知らない秘密なのに。何でノアやシンに見せるんだよ」
「何言ってるの。ミラもマリンも知ってるよ」
「何だと」
私とザックがギャァギャァ喚くので遂にノアに怒られてしまった。
「うるさいぞ。馬鹿二人組、イチャイチャするのは後にしろ!」
ノアの怒号と共に森の鳥達が羽ばたいていったのは同時だった。
ノアの別荘と言うか、ノアの一族が所有している別荘は小さな山一つ分を含めた一帯の事だった。いくつか山があるがその内の一番町に近い山一つが全て一族のものらしい。
山道を進む事数分で開けた場所に出た。そこには木々に囲まれた小さな白い建物が現れた。二階建ての家で横と奥に広がっている印象だ。
何部屋あるのだろう?
そして手前には庭があるが、今日の目的である池があった。水草が浮いていて透明度が高くて驚く。池と言うより小ぶりな湖? といった感じだ。
建物やその池などのスケールに驚いて馬から降り立った私は建物を眺めながら開いた口が塞がらないでいる。
「こらこら、口を閉じろよ」
ザックが馬から荷物を下ろし、肩に担ぎながら私の横に立つ。
「だって、別荘の規模が山なんて」
本当にお坊ちゃんなんだ!
「悪かったな。本当にお坊ちゃんなんだよ」
マリンをエスコートしながら歩いてきたノアがプリプリしながら私の横に立った。
「あれ? 私口に出してた?」
ザックに意見を求めるがザックは苦笑いで「顔に出ていた」と答えた。
「昔なぁ子供の頃腹が減って海が荒れて魚が捕れない時とか。この山まできて木の実とか喰ってたなぁ。ほら領主の持ち主だから手入れも行き届いているから。森と言っても安全だし。別荘だから人は寄り付かないし。それに建物の裏側の方には温泉があるんだぜ。風呂も無料で入れて昔はよく利用したよなぁ~勝手に」
「ええ?! そ、そうなの?」
ザックはしみじみと懐かしむ様に話してくれたが、その内容があまりにもハードで私は驚いてしまった。確か貧民街の出とは言っていたけれど……食べるのもままならなかったとは。
「ま。その話は追い追いな!」
ポコンと私の頭に拳を置いたザックは笑っていた。不法侵入は頂けないけれど、色々な辛さを乗り越えてきても、それを笑い飛ばせる強さに感心してしまった。
「追い追いって……お前、散々好き勝手していたんだな? 温泉が裏手にあるのまで知ってるのか」
半ば呆れていたのはノアだった。
「そりゃぁもう。な、シン?」
「もちろん体を綺麗にしておきたかったですからね。ただ、いっつもやってくるんですよね。あの例のメイドが」
ザックとシンが笑いながら話していると、ふとザックの後ろに影が差した。
しかしザックは天を仰ぎながら話を止めない。
「ああ、懐かしいなぁ。よくでかい竹箒を持って追いかけられたなぁ。「お前達! 何を勝手に入り込んでんだい! 成敗してくれる!」って、バシバシ竹箒で叩くんだよなぁ。痛いのなんのって。もう十年以上になるか。きっと今はくたばってしまっただろうが。元気な婆さんだったなぁ」
「くたばってたまるかっ!」
「あ」
突然だった。ザックの後ろから近づいた影が動いた。
ガラガラ声の白髪の黒いメイド服のお婆さんが、竹箒をザックの頭に振り下ろした。
ズン、という低い音と共にめり込む様にザックが頭を抱えてしゃがみ込む。
「痛てぇー! あっババァ生きてやがったか」
長身を折り曲げて涙目で後ろを振り向くザックだが、再び竹箒を振り下ろされ慌てて逃げ回る。
「この金髪男は、久しぶりに再会したってのにくたばった事にするなんて。それにババァじゃないよ。ちゃんと名前で呼びな」
「ヘイヘイ。アルマメイド頭様」
「ヘイヘイ、じゃないよ! 全く」
アルマと呼ばれた白髪のお婆さんは、顔はしわしわだし腰も曲がっていて、私より身長が小さいが、動きが軽快でいとも容易く大きな竹箒を振り下ろしていた。黒い長袖に、裾が長いワンピースのメイド姿だ。白いエプロンは堂に入っている。
「ん? 何だいこの人数は」
ザックしか目に入っていなかったのか改めて周りを見回したアルマさんは、目をぱちくりさせて驚いた。
「アルマ久しぶりだな。ザックしか目に入っていなかった様だが、今日と明日、ここにいる皆が世話になるよ」
苦笑いのノアがアルマさんの肩を叩いて改めて挨拶をした。
「ぼ、坊ちゃん! それに、マリン達も! まぁまぁまぁ。いるならいると早く言ってくださいよ」
「いや、さっきから目の前にいたんだが」
ノアは苦笑いだった。
どうやら相当の悪さを昔行ったせいで、ザックは目の敵にされている様だった。
「じゃぁ、用意が出来たら、下の庭にある池に集合だ。タオルや飲み物はアルマが用意してくれるそうだから、着替えだけで良いぞ」
ノアが二階の階段をあがり終えると振り向いてそう言ってくれた。
白い別荘中も大理石や赤絨毯といった豪華な造りで、別荘といえども毎日管理されている様で掃除なども行き届いていた。
「何かあればこのアルマまで」
折れている腰を更に深々とさげて、アルマさんがお辞儀をしてくれる。
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
私は思わず深々と頭をさげて挨拶をする。パッと体をあげるとジッとアルマさんに見つめられていた。
「? あの、何か」
「無礼を承知で話を致しますが、ナツミさん。もしかして、このザックに無理を言われて付き合わされているのではないですよね? もし良ければこのアルマ、力添えいたしますので困った事があったら何でも仰ってください」
しわしわの手で私の手を握りしめて心から心配してくれる。
ザック……過去に何をしたのだろう。
「ありがとうございます、アルマさん。ザックはとても大切にしてくれるんです。約束も守ってくれるし」
私はアルマさんの手を握り返しながら正直に今の状況を説明する。
「何と、本当ですか?!」
アルマさんは目尻によった皺が伸びるぐらい青い目を見開いて驚いている。
「そうだぜ。なんせ、一目惚れなんだから」
隣で胸を張るのはザックだった。
「何だって!? お前が一目惚れって……そんな明日は嵐の前触れでは?!」
「何でだよ」
アルマさんが飛び上がるほど驚いた。それを見たザックががっくり肩を落とす。
「素行の悪さじゃ右に出る者はいないからな」
ノアがザックの落ちた肩をポンと叩いた。
ザックは溜め息をつきながらノアの叩いた手を握り返した。
「そうだな。仕方ない。右に出る者はいないが左側ぐらいにはノアが並ぶしな」
「そんな訳あるかっ」
結局ノアとザックの漫才がはじまり、皆がどっと笑った。
その様子を見ながらアルマさんがそっと目頭を押さえていたのを私は見のがさなかった。
きっと色々あったのだろうな。またいつか聞く機会があると良いな。
ザック達の過去とか……聞くのは少し勇気がいるけれど。
過去の彼も今の彼も知っていきたいと思い始めていた。
部屋割りは、ノアとマリン。ミラとシン。そして私とザックというカップル別になっていた。ミラいつの間にかシンと仲良くなれたのね。良かった。
「俺達はこの手前の部屋だな。ナツミ来いよ」
「うん」
ザックに手を引っ張られて、二階にあがった直ぐ手前にある部屋のドアを開けてくれた。部屋のドアを開けると、天蓋付きのベッドが目に入った。ドレッサーや棚などは白木造りだが、流線型の彫り物が掘られていて、明らかに高級品である事が分かる。
ザックはズンズン歩いて行って、窓を開けると森の香りが部屋に一杯になった。レースカーテンが風に揺れている。
「天気も良いし、泳ぐにはもってこいだな。海じゃないのが残念だが」
窓は腰の辺りまでさがっていて、少し出っ張りがあり座る事が出来る。
ザックはその部分に腰をかけて、外を見回していた。
「す、凄い。こんなベッド見た事ない」
「ん? 多分フカフカだぜ、驚くぐらい」
「ホント?」
「ああ」
ザックが濃いグリーンの瞳を細めてベッドの方を顎でしゃくった。
私は部屋のドアを閉めてフラフラとベッドに吸い寄せられた。体からダイブすると、自分の体が半分ぐらい沈んだが直ぐに跳ね返ってくる。
「フカフカだぁ」
私は軽くクロールで泳ぐ様に両手両足をジタバタしてからこのベッドの余韻に浸った。
「ベッドの上で転がってると抱きたくなるな」
「え!」
ザックのふとした声が頭から振ってきて、私は慌てて体を起こす。
すると、窓辺にいたザックが直ぐベッドの脇に立っていて天蓋の桟の部分に手を添えて私を見おろしていた。
「ま、待って! これから水泳教室だし」
慌てた私は両手でザックの胸の辺りを押した。
「分かってるさ。じゃぁ、早く用意しようか」
ザックはニッコリ笑いあっさり私を解放してくれた。
これは珍しい。このままベッドに沈んでしまいそうな勢いだったが直ぐに気を取り直してくれた。
その代わり、私の荷物袋を目の前に突き出して白い歯を見せて笑う。
「あ、用意ね」
渡された袋を両手で持って、部屋をキョロキョロ見回す。そうだ水泳教室の為に一旦水着に着替えなくては。
ザックはベッドの後方にあるドアを指差した。
「多分そっちがバスルームだ」
「ええ?! 部屋ごとにあるの」
「そりゃそうだろ。ここは別荘とは言えゲストルームの様だし。ささっ。早く水着に着替えてくれよ」
「あ、うん」
ザックはそう言いながら私の体を百八十度回転させて肩を押し出しながらバスルームの扉を開けた。
「早く着替えて最初俺に見せてくれ。なっ?!」
顔が何だかデレデレしている。ああ、そうかミラお手製の水着が見たいのか。
「うん。もちろんザックに最初に見てもらいたかったから着替えてくるね!」
私はそう言うとザックに軽く手を振りながらバスルームのドアを閉めた。
ザックはナツミがドアを閉めた事を確認すると、空けた窓辺に近寄って身を乗り出す。
隣とその隣から同じ様に身を乗り出しているシンやノアを見つけた。
そして親指を立てて二人に合図を送った。
「よし、これで大丈夫っと」
私はバスルームでミラの仕立ててくれた水着に着替えた。
ミラって凄い。よくこんな伸縮性のある生地を見つけてきたものだ。何でも踊り子衣装にはベースには使えるけれどヒラヒラした表現が出来ないから使った事がなかったそうだ。
私に作られた水着の色は意外にも白だった。
ビキニタイプでブラジャーの部分はホルターネックになっている。首の後ろでリボンを結ぶ。
パンツの部分は前側がヘソ下の浅めだが、腰部分はハイレグ気味になっている。お尻はすっぽり包む様になっているが、カッティングが鋭くてお尻がそれぞれ半分ぐらい見えている。何度見ても少し大胆な様な気がするけれど。
白い水着は現代では一般的になったけれど、この世界ではやはり透けてしまう。その為、黒い少し面積が小さくなった水着をベースに身につける事で透けない様にしてもらった。だから白い水着の下には黒いブラジャーの紐やベースが見えているが、これをわざとチラっと見える様にしている。しかも下のショーツは後ろか完全に紐となっている。現代でもTバックを重ねて着る事があるけれど、まさか自分が着る事になるなんて!
こういう大胆なものは、恥ずかしがらずに堂々と着る様に! (ミラ談)
確かにそうだよね。
ただなぁ、ブラジャーの部分にパッドがないんだよね。だけれど、それは踊り子衣装も同じ様で、気にするポイントではないそうだ。ミラの言葉を借りると「それが格好いいんじゃない」らしい。
「おーい、ナツミ。まだかぁ~俺はシャツ一枚脱げば終わりだけど。あんまり待たせんなよ。日が暮れちまう」
ドアの向こうで不満そうに声をあげるザックがいた。
日が暮れるなんてそんな事ないでしょ。だって着替えて十分位しか経っていないのに。
「ゴメン。今行くね」
私はバスルームの全身写せる鏡の前で一回転して確認をしてからドアを開けた。
「わっ!」
驚く事にザックがドアを開けた目の前に立っていたのだ。
「おっと」
ドアにぶつからない様に少し仰け反ったザックは、既に上半身裸で、着てきた茶色いズボンとサンダルだけを身につけていた。
逞しい胸板にバランスを崩して倒れ込む。日焼けした肌は艶々していて、今日も筋肉はキレキレでお腹もきっちり六つに分かれていた。
「ゴメンね。遅くなって。どうかな?」
ザックの腕の中で見上げながら、体を少し離して全体を見渡せる様にくるっと回転する。
「……」
ザックは無言で腕の中で回転する私を見つめていた。
「えっと、似合わないかな?」
「白……白なんて反則」
「え?」
そう呟くと私を俵の様に担ぎ上げる。
ザックのスライドで数歩、そこは直ぐにベッドの上だった。
「ええ?」
私はバウンドしながらベッドの上に仰向けになった。
「何で?! これから水泳教室だよ」
訳が分からず私は喚くがゆっくりとザックが両手を私の顔の隣について覆い被さってくる。
「一回やってからでも十分さ」
何だってー?!
「そんな訳ないでしょ?! みんな待ってるだろうし」
慌てて私がザックの胸を押し返した時、全開の窓から微かに嬌声が聞こえた。それがミラの声だという事に気がついて私は顔が赤くなった。
「な、何で?」
「みんな取り込み中って事さ。こんな可愛い姿を見せられて、食べない訳にはいかないだろ?」
そう言ってザックは胸の辺りのブラジャーの縁を指でなぞりながら、キスを優しく落とした。
「んっ、そ、んな。あっ」
それ以上私は言葉が紡げず、ザックの舌に口内を翻弄される。
「んっ。ナツミ、凄く可愛いし何だか急に大人の女って感じがする」
「だって、大人だし。あっ」
「堪らない。一つ一つ見せてくれよ。先ずは」
ザックが私の首元にかじりつく様なキスをした。その衝撃に私は体を弓なりにさせて声をあげそうになる。
駄目っ窓が開いているのに! 私は必死に声をこらえた。
「ここからだ」
ザックはそう言うと私の右足を肩に担ぎ上げると、今度は内太股を足のつけ根に向かって舌を這わせた。
私はザックと一緒に乗った馬上でキョロキョロと周りを見回していた。
町を離れて十分程しか経っていないのにすっかりここは森の中だ。鳥のさえずりが聞こえて、夏の日差しも木々に遮られている。そのせいか少し涼しく感じるぐらいだ。
海の香りから緑の香りになっていく。
「そうだな、前面は海。背面は山っていうのがファルの特徴だからな。大丈夫か? 初めて乗る馬は」
「うん。大丈夫」
私を前に乗せて抱き込む様に手綱を握るザックは上機嫌で終始口笛を吹いていた。
「何かご機嫌だね」
「当たり前だろ。丸二日ナツミと一緒にいられるんだ。初めてのお出かけになるしな。まぁ、ノアの別荘っていうのがアレだけど」
「そうだね。ザック色々ありがとう。その、あの、キャンディーとか」
「ああ、そんなお礼を言われる程の事じゃないさ。たいしたもんじゃなくて悪いなぁ」
後ろにいるザックの方に体をねじって見上げる。ザックは頬をポリポリかいて少し照れくさそうにしていた。
「ううん。そんな事ないよ。私はプレゼントよりメッセージカードが嬉しかった」
「ええ? キャンディーの方が良いだろ?」
私の発言にザックは声をひっくり返した。
「そんな事ない。ザックが凄く私を気にかけてくれているのが分かって、とても嬉しかった。ありがとう」
言いながら恥ずかしくなってきて、最後はザックの目を見ながら言えなくなる。慌てて赤くなった顔を隠す様に俯いた。
ひぇ~顔から火が出そう……お礼を言うのも照れくさいなんて。私本格的にザックに恋しているのかな。
「な、何だよ。お礼を言ってから照れるなよ!」
「だ、だって」
私は馬上で肩をすくめて照れくささを逃そうとした。
「あんなメッセージならいくらでも送ってやるさ、それより俺はこの日焼けの痕が気になって気になって仕方ねぇ」
突然、後ろから顔を近づけて左耳で囁かれた直後、むき出しの肩の日焼け部分にザックが甘く噛みついた。
「ああっ! 痛ッ」
「この日焼けは俺しか知らない秘密なのに。何でノアやシンに見せるんだよ」
「何言ってるの。ミラもマリンも知ってるよ」
「何だと」
私とザックがギャァギャァ喚くので遂にノアに怒られてしまった。
「うるさいぞ。馬鹿二人組、イチャイチャするのは後にしろ!」
ノアの怒号と共に森の鳥達が羽ばたいていったのは同時だった。
ノアの別荘と言うか、ノアの一族が所有している別荘は小さな山一つ分を含めた一帯の事だった。いくつか山があるがその内の一番町に近い山一つが全て一族のものらしい。
山道を進む事数分で開けた場所に出た。そこには木々に囲まれた小さな白い建物が現れた。二階建ての家で横と奥に広がっている印象だ。
何部屋あるのだろう?
そして手前には庭があるが、今日の目的である池があった。水草が浮いていて透明度が高くて驚く。池と言うより小ぶりな湖? といった感じだ。
建物やその池などのスケールに驚いて馬から降り立った私は建物を眺めながら開いた口が塞がらないでいる。
「こらこら、口を閉じろよ」
ザックが馬から荷物を下ろし、肩に担ぎながら私の横に立つ。
「だって、別荘の規模が山なんて」
本当にお坊ちゃんなんだ!
「悪かったな。本当にお坊ちゃんなんだよ」
マリンをエスコートしながら歩いてきたノアがプリプリしながら私の横に立った。
「あれ? 私口に出してた?」
ザックに意見を求めるがザックは苦笑いで「顔に出ていた」と答えた。
「昔なぁ子供の頃腹が減って海が荒れて魚が捕れない時とか。この山まできて木の実とか喰ってたなぁ。ほら領主の持ち主だから手入れも行き届いているから。森と言っても安全だし。別荘だから人は寄り付かないし。それに建物の裏側の方には温泉があるんだぜ。風呂も無料で入れて昔はよく利用したよなぁ~勝手に」
「ええ?! そ、そうなの?」
ザックはしみじみと懐かしむ様に話してくれたが、その内容があまりにもハードで私は驚いてしまった。確か貧民街の出とは言っていたけれど……食べるのもままならなかったとは。
「ま。その話は追い追いな!」
ポコンと私の頭に拳を置いたザックは笑っていた。不法侵入は頂けないけれど、色々な辛さを乗り越えてきても、それを笑い飛ばせる強さに感心してしまった。
「追い追いって……お前、散々好き勝手していたんだな? 温泉が裏手にあるのまで知ってるのか」
半ば呆れていたのはノアだった。
「そりゃぁもう。な、シン?」
「もちろん体を綺麗にしておきたかったですからね。ただ、いっつもやってくるんですよね。あの例のメイドが」
ザックとシンが笑いながら話していると、ふとザックの後ろに影が差した。
しかしザックは天を仰ぎながら話を止めない。
「ああ、懐かしいなぁ。よくでかい竹箒を持って追いかけられたなぁ。「お前達! 何を勝手に入り込んでんだい! 成敗してくれる!」って、バシバシ竹箒で叩くんだよなぁ。痛いのなんのって。もう十年以上になるか。きっと今はくたばってしまっただろうが。元気な婆さんだったなぁ」
「くたばってたまるかっ!」
「あ」
突然だった。ザックの後ろから近づいた影が動いた。
ガラガラ声の白髪の黒いメイド服のお婆さんが、竹箒をザックの頭に振り下ろした。
ズン、という低い音と共にめり込む様にザックが頭を抱えてしゃがみ込む。
「痛てぇー! あっババァ生きてやがったか」
長身を折り曲げて涙目で後ろを振り向くザックだが、再び竹箒を振り下ろされ慌てて逃げ回る。
「この金髪男は、久しぶりに再会したってのにくたばった事にするなんて。それにババァじゃないよ。ちゃんと名前で呼びな」
「ヘイヘイ。アルマメイド頭様」
「ヘイヘイ、じゃないよ! 全く」
アルマと呼ばれた白髪のお婆さんは、顔はしわしわだし腰も曲がっていて、私より身長が小さいが、動きが軽快でいとも容易く大きな竹箒を振り下ろしていた。黒い長袖に、裾が長いワンピースのメイド姿だ。白いエプロンは堂に入っている。
「ん? 何だいこの人数は」
ザックしか目に入っていなかったのか改めて周りを見回したアルマさんは、目をぱちくりさせて驚いた。
「アルマ久しぶりだな。ザックしか目に入っていなかった様だが、今日と明日、ここにいる皆が世話になるよ」
苦笑いのノアがアルマさんの肩を叩いて改めて挨拶をした。
「ぼ、坊ちゃん! それに、マリン達も! まぁまぁまぁ。いるならいると早く言ってくださいよ」
「いや、さっきから目の前にいたんだが」
ノアは苦笑いだった。
どうやら相当の悪さを昔行ったせいで、ザックは目の敵にされている様だった。
「じゃぁ、用意が出来たら、下の庭にある池に集合だ。タオルや飲み物はアルマが用意してくれるそうだから、着替えだけで良いぞ」
ノアが二階の階段をあがり終えると振り向いてそう言ってくれた。
白い別荘中も大理石や赤絨毯といった豪華な造りで、別荘といえども毎日管理されている様で掃除なども行き届いていた。
「何かあればこのアルマまで」
折れている腰を更に深々とさげて、アルマさんがお辞儀をしてくれる。
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
私は思わず深々と頭をさげて挨拶をする。パッと体をあげるとジッとアルマさんに見つめられていた。
「? あの、何か」
「無礼を承知で話を致しますが、ナツミさん。もしかして、このザックに無理を言われて付き合わされているのではないですよね? もし良ければこのアルマ、力添えいたしますので困った事があったら何でも仰ってください」
しわしわの手で私の手を握りしめて心から心配してくれる。
ザック……過去に何をしたのだろう。
「ありがとうございます、アルマさん。ザックはとても大切にしてくれるんです。約束も守ってくれるし」
私はアルマさんの手を握り返しながら正直に今の状況を説明する。
「何と、本当ですか?!」
アルマさんは目尻によった皺が伸びるぐらい青い目を見開いて驚いている。
「そうだぜ。なんせ、一目惚れなんだから」
隣で胸を張るのはザックだった。
「何だって!? お前が一目惚れって……そんな明日は嵐の前触れでは?!」
「何でだよ」
アルマさんが飛び上がるほど驚いた。それを見たザックががっくり肩を落とす。
「素行の悪さじゃ右に出る者はいないからな」
ノアがザックの落ちた肩をポンと叩いた。
ザックは溜め息をつきながらノアの叩いた手を握り返した。
「そうだな。仕方ない。右に出る者はいないが左側ぐらいにはノアが並ぶしな」
「そんな訳あるかっ」
結局ノアとザックの漫才がはじまり、皆がどっと笑った。
その様子を見ながらアルマさんがそっと目頭を押さえていたのを私は見のがさなかった。
きっと色々あったのだろうな。またいつか聞く機会があると良いな。
ザック達の過去とか……聞くのは少し勇気がいるけれど。
過去の彼も今の彼も知っていきたいと思い始めていた。
部屋割りは、ノアとマリン。ミラとシン。そして私とザックというカップル別になっていた。ミラいつの間にかシンと仲良くなれたのね。良かった。
「俺達はこの手前の部屋だな。ナツミ来いよ」
「うん」
ザックに手を引っ張られて、二階にあがった直ぐ手前にある部屋のドアを開けてくれた。部屋のドアを開けると、天蓋付きのベッドが目に入った。ドレッサーや棚などは白木造りだが、流線型の彫り物が掘られていて、明らかに高級品である事が分かる。
ザックはズンズン歩いて行って、窓を開けると森の香りが部屋に一杯になった。レースカーテンが風に揺れている。
「天気も良いし、泳ぐにはもってこいだな。海じゃないのが残念だが」
窓は腰の辺りまでさがっていて、少し出っ張りがあり座る事が出来る。
ザックはその部分に腰をかけて、外を見回していた。
「す、凄い。こんなベッド見た事ない」
「ん? 多分フカフカだぜ、驚くぐらい」
「ホント?」
「ああ」
ザックが濃いグリーンの瞳を細めてベッドの方を顎でしゃくった。
私は部屋のドアを閉めてフラフラとベッドに吸い寄せられた。体からダイブすると、自分の体が半分ぐらい沈んだが直ぐに跳ね返ってくる。
「フカフカだぁ」
私は軽くクロールで泳ぐ様に両手両足をジタバタしてからこのベッドの余韻に浸った。
「ベッドの上で転がってると抱きたくなるな」
「え!」
ザックのふとした声が頭から振ってきて、私は慌てて体を起こす。
すると、窓辺にいたザックが直ぐベッドの脇に立っていて天蓋の桟の部分に手を添えて私を見おろしていた。
「ま、待って! これから水泳教室だし」
慌てた私は両手でザックの胸の辺りを押した。
「分かってるさ。じゃぁ、早く用意しようか」
ザックはニッコリ笑いあっさり私を解放してくれた。
これは珍しい。このままベッドに沈んでしまいそうな勢いだったが直ぐに気を取り直してくれた。
その代わり、私の荷物袋を目の前に突き出して白い歯を見せて笑う。
「あ、用意ね」
渡された袋を両手で持って、部屋をキョロキョロ見回す。そうだ水泳教室の為に一旦水着に着替えなくては。
ザックはベッドの後方にあるドアを指差した。
「多分そっちがバスルームだ」
「ええ?! 部屋ごとにあるの」
「そりゃそうだろ。ここは別荘とは言えゲストルームの様だし。ささっ。早く水着に着替えてくれよ」
「あ、うん」
ザックはそう言いながら私の体を百八十度回転させて肩を押し出しながらバスルームの扉を開けた。
「早く着替えて最初俺に見せてくれ。なっ?!」
顔が何だかデレデレしている。ああ、そうかミラお手製の水着が見たいのか。
「うん。もちろんザックに最初に見てもらいたかったから着替えてくるね!」
私はそう言うとザックに軽く手を振りながらバスルームのドアを閉めた。
ザックはナツミがドアを閉めた事を確認すると、空けた窓辺に近寄って身を乗り出す。
隣とその隣から同じ様に身を乗り出しているシンやノアを見つけた。
そして親指を立てて二人に合図を送った。
「よし、これで大丈夫っと」
私はバスルームでミラの仕立ててくれた水着に着替えた。
ミラって凄い。よくこんな伸縮性のある生地を見つけてきたものだ。何でも踊り子衣装にはベースには使えるけれどヒラヒラした表現が出来ないから使った事がなかったそうだ。
私に作られた水着の色は意外にも白だった。
ビキニタイプでブラジャーの部分はホルターネックになっている。首の後ろでリボンを結ぶ。
パンツの部分は前側がヘソ下の浅めだが、腰部分はハイレグ気味になっている。お尻はすっぽり包む様になっているが、カッティングが鋭くてお尻がそれぞれ半分ぐらい見えている。何度見ても少し大胆な様な気がするけれど。
白い水着は現代では一般的になったけれど、この世界ではやはり透けてしまう。その為、黒い少し面積が小さくなった水着をベースに身につける事で透けない様にしてもらった。だから白い水着の下には黒いブラジャーの紐やベースが見えているが、これをわざとチラっと見える様にしている。しかも下のショーツは後ろか完全に紐となっている。現代でもTバックを重ねて着る事があるけれど、まさか自分が着る事になるなんて!
こういう大胆なものは、恥ずかしがらずに堂々と着る様に! (ミラ談)
確かにそうだよね。
ただなぁ、ブラジャーの部分にパッドがないんだよね。だけれど、それは踊り子衣装も同じ様で、気にするポイントではないそうだ。ミラの言葉を借りると「それが格好いいんじゃない」らしい。
「おーい、ナツミ。まだかぁ~俺はシャツ一枚脱げば終わりだけど。あんまり待たせんなよ。日が暮れちまう」
ドアの向こうで不満そうに声をあげるザックがいた。
日が暮れるなんてそんな事ないでしょ。だって着替えて十分位しか経っていないのに。
「ゴメン。今行くね」
私はバスルームの全身写せる鏡の前で一回転して確認をしてからドアを開けた。
「わっ!」
驚く事にザックがドアを開けた目の前に立っていたのだ。
「おっと」
ドアにぶつからない様に少し仰け反ったザックは、既に上半身裸で、着てきた茶色いズボンとサンダルだけを身につけていた。
逞しい胸板にバランスを崩して倒れ込む。日焼けした肌は艶々していて、今日も筋肉はキレキレでお腹もきっちり六つに分かれていた。
「ゴメンね。遅くなって。どうかな?」
ザックの腕の中で見上げながら、体を少し離して全体を見渡せる様にくるっと回転する。
「……」
ザックは無言で腕の中で回転する私を見つめていた。
「えっと、似合わないかな?」
「白……白なんて反則」
「え?」
そう呟くと私を俵の様に担ぎ上げる。
ザックのスライドで数歩、そこは直ぐにベッドの上だった。
「ええ?」
私はバウンドしながらベッドの上に仰向けになった。
「何で?! これから水泳教室だよ」
訳が分からず私は喚くがゆっくりとザックが両手を私の顔の隣について覆い被さってくる。
「一回やってからでも十分さ」
何だってー?!
「そんな訳ないでしょ?! みんな待ってるだろうし」
慌てて私がザックの胸を押し返した時、全開の窓から微かに嬌声が聞こえた。それがミラの声だという事に気がついて私は顔が赤くなった。
「な、何で?」
「みんな取り込み中って事さ。こんな可愛い姿を見せられて、食べない訳にはいかないだろ?」
そう言ってザックは胸の辺りのブラジャーの縁を指でなぞりながら、キスを優しく落とした。
「んっ、そ、んな。あっ」
それ以上私は言葉が紡げず、ザックの舌に口内を翻弄される。
「んっ。ナツミ、凄く可愛いし何だか急に大人の女って感じがする」
「だって、大人だし。あっ」
「堪らない。一つ一つ見せてくれよ。先ずは」
ザックが私の首元にかじりつく様なキスをした。その衝撃に私は体を弓なりにさせて声をあげそうになる。
駄目っ窓が開いているのに! 私は必死に声をこらえた。
「ここからだ」
ザックはそう言うと私の右足を肩に担ぎ上げると、今度は内太股を足のつけ根に向かって舌を這わせた。
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