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121 再び 海へ! その3
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浜辺に戻るのも我慢出来なかったのか、ザックは足がつく付近の岩場に飛び乗って、無理矢理海から上がる。少し歩くと岩の間には小さな窪みがあってザックの身長より高い穴となっていた。私も跡をついて海から上がる。するとザックが辺りを見まわしてから、私にしゃがむ様に指示をする。
「痛ぇナツミ、頼む。傷になってないか見てくれないか? 一大事だぞ」
ザックが上半身を前に倒しながらゆっくりとズボンのファスナーを下げる。先程パンパンに張っていたズボンの前も少し落ち着いている様子だ。
ポロリとザックのグロテスクなものを出す。辺りはもちろん岩だらけだし人は誰もいない。お日様の下に晒され下半身の毛が水滴を垂らしながら輝いている。
いつもなら悲鳴を上げる場面だがザックの顔が必死なのと顔色が悪いのもあり私も真剣に確認をはじめる。
くったりとしたものを両手で持ち上げて色々な角度から観察する。確かにザックからは見えにくい角度の部分に痕がある。
「あっ、ここ。少し挟んだファスナーの跡が残っているね。でも傷が残る程ではないみたい……擦り剥きもないし血も出ていないよ。でも赤くなっている様な」
よく見ると少し挟んだ痕があるが一ミリもない。少し挟んで直ぐに戻った様だ。両手で左右に動かしながら見つめる。
「そうか……その指で触れているところがそうなのか?」
ザックがポタポタと髪の毛から水滴を溢しながらしゃがんで観察している私を見つめる。
「うん。ここなんだけど」
人指し指でなぞると、ピクリとザックのものが動く。
「痛い?」
ザックが真下を見つめながら眉を垂らして首を左右に振る。
「じゃぁ、これは?」
なぞった指で少し強めに押してみる。ザックは首を少し傾げる。今度は強めに押してみる。ザックは少し顔を歪めたが最後頷いた。
「押さえると少し痛いと思うが、傷もないし出血もしていなければ大丈夫かな」
そう言って溜め息をついていた。
「うん大丈夫みたいだね。あーでも青タンになるかなぁ……」
ひとまず安心みたい。しかし私は両手の中にあるザックの分身をマジマジと観察する。
大きいけれど柔らかい。うわぁこんな感触なんだ。肌色の何かみたい。ザックって元々肌が小麦色に近いんだ。いつも大きくなっているところしか見ていないし。男性の体も不思議……何であんなに伸縮するのだろう。大きいと邪魔だからかな?
それに、この頭のツルッとした部分って何だか結構笑えるフォルムっていうか。凄く先だけぼってりしていて、ここに穴があるのか。へぇ~幹の部分はこんなに血管がある。こうなっているのかぁ。私そういえば何度か口で含んだけれども先端しか口に入らないんだよね。わっ動いた。あれ? 少し先ほどより大きくなった様な。固い?
「あのーナツミさん? 診察というか観察は終わりましたか?」
クスクスと笑うザックの声が頭の上で聞こえて私は慌てて両手を放した。
「はっ! ごめんなさい」
しゃがみ込んでいたが慌てて立ち上がる。傷を確認するのをいい事に酷く観察していた自分が恥ずかしく頬を染める。
「別にかまわないさ。あーあ、よかった。傷があったりしたら俺のが数日使い物にならないところだった。ナツミ困るだろ? そんな事になったら。ファスナーって危ないんだよなぁ」
ザックが私の両腕を掴みながら笑った。ポタポタとこぼれ落ちる水滴がザックの頬を伝う。白い歯を見せて笑うけれども苦笑いだった。
「もうそんな事になったら私が困るって、もう! でも傷がついたなら私が直すよ?」
私はそう伝えるが、ザックが首を左右に振る。
「いいんだよ。傷が出来たら治る薬は他にもある。ナツミのは特別な力だけれども命を削るって事を忘れてはいけない」
「……うん。分かった」
「分かったならないいさ──ところで」
そこまで言ってザックが私を抱き寄せる。まだザックはズボンの前を広げたままだ。お腹の辺りにザックのものが熱くなっているのが分かった。
「海の中の続きをしようぜ」
「えっ」
「砂も入らない様にするからさ」
「ええっ」
もうどこまでいってもそれしか頭にないのかな。
私は半ば呆れる。
しかし、先ほど海の中で花芯を弄られた事を思い出した。確かにそのヌルヌルしているのは分かるのだけれど! 否定の言葉や嫌がらないのを確認したザックは私の顎を掴んで上に向かせる。
「それじゃぁキスからやり直しで」
そう言ってザックが長身をかがめた時だった。遠くで猫の鳴き声の様な甘くて可愛い声が聞こえた。
「? 猫?」
私がザックの唇が迫る直前で目を丸める。
「猫? いや猫じゃなくて」
ザックも少し顔をしかめたが、直ぐに何の声なのか理解した様だった。ニヤリと顔を歪ませて嫌らしく笑う。
もう一度声がしたので耳を澄ませる。と……それが女性の声、マリンの声なのが分かった。悩ましくって切なそうに声を必死に殺しているのに漏れている声だった。
「あっあのあのあのその、猫じゃなかったみたいだね」
私は慌てて苦笑いでザックの顔を見つめる。
うわぁ~あの時の他の人の声なんて普通は聞かない……なのだけれども『ファルの町』に来てからその手の声をよく聞いた様な気もするけれども。確かマリンやミラの悩ましい声も別荘にい行った時に少し聞いた様な気もする。
今朝、隣で雑魚寝をしていたマリンの姿。そしてノアがマリンの服を捲って乳房を晒したのを思い出してしまい急激に恥ずかしくなった。
ザックが私の顎を掴んだままポツリと呟く。
「少し行ったらノアとマリンがヤってるんじゃね。覗くか?」
「えっ」
私は目が飛び出そうになた。
覗き?!
「ノアには倉庫で覗かれた貸しがあるだろ? 覗き返してやろうぜ」
そう言ってザックは私の顎から手を放し、声のする方向を確かめ様とした。
私は慌ててザックを引き止める為にザックの高い位置にある顔のほっぺたを両手でパチンと慌てて挟んだ。
「イテッこら何故止めるんだよ~」
突然顔を叩かれた様になったので、ザックが小声で私の顔を覗き込み犬歯を見せて怒った。
「嫌」
「ナツミだってノアに覗かれたんだぞ、だから貸しを返すだけだろ?」
「ザックがマリンのエッチを見るのは嫌……」
ザックはマリンと関係を一度持ったので何もかも知っている。しかし、美しくなったマリンが乱れるのを再びザックが注目するなんて嫌だ。
だって可愛くて綺麗なマリンに惹かれたら嫌だ。
「……」
ザックは私にほっぺたを挟まれたまま無言になった。ゆっくりと私の背中に腕を回してきつく抱きしめた。私の耳元にザックは薄い唇をつけて呟く。
「俺の耳元に唇を寄せてくれ。ナツミの片足を高く上げるから倒れそうなら俺の首にしっかり掴まるんだ」
「うん」
「そうしたら俺にはナツミの声だけしか聞こえない」
「うん」
「乱暴になったらごめんな」
そう言って、ザックはすっかり元気を取り戻した分身で私を貫いた。
大きくて熱い。すっかり濡れて待ち構えていたのか私は難なくザックを飲み込む。ユルユルと腰を動かされ、思わずバランスを崩してしまう。慌ててザックの首にしがみつくとザックが私の首辺りを甘噛みする。
「んっ……」
乱暴になったらごめんって。そんな事ない優しくて温かくてゆっくりと私を愛してくれる。
きっと謝罪の意味と慰めてくれているのだと思う。傷つけてごめんって言っているのだろうな。
男の人って分からないなぁ。そんなに覗きたいかな。傷つくほどじゃないけれども、ザックもお調子者なのだから。まぁ許してあげようかな。そう思ってザックの耳元で大好きと呟いた。
程なくして私が達すると、ザックも小さく呻き声を上げた。
私とザックは笑い合って鼻を擦りつけるとキスを繰り返した。
色々満足したら再びザックと海にもどった。
そろそろ三十分経ったしお昼の時間になるだろう。『ジルの店』に戻らなければいけない。白い砂浜に向かって泳ぎ始めた。
「あーこのまま浮いていたいな、やっぱり海っていいよなぁ」
ゆっくり背泳ぎをしながら沖に向かうザックだった。目を閉じて気持ちよさそうにしていた。
「そうだね」
私は平泳ぎで泳ぎながら白い砂浜を目指す。
剣と脱ぎ捨てたシャツの辺り、荷物番としてノアとマリンが座ってイチャイチャしているのが見えた。覗く事はなかったけれども、うん。きっと仲良くなった後なのだろう。
ふとノアの顔を見たら裏町でザームが言っていた話を思い出した。
──む。もう数か月も前の話だが、裏町の路地でアルを見かけてな。朝方だったから酒を飲んで朝帰りでもしていたのだろう。その時、何度も大きく咳いていて苦しそうだったのでな。声をかける前にアルは立ち去ったが、彼が咳いていた裏路地に大きく吐血した痕があったからな、どこか体が悪いのかと──
エッバをはじめその場の皆が勘違いだろうと言っていた。
しかし、もし吐血が本当だったとしたら何かの病気なのかな。例えば死病──なんて事はないのだろうか。まさかね。
私は思わずザックに尋ねた。
「ねぇザック。アルさんってどんな人なの?」
「アル? ノア、ネロ、アルこの三兄弟の一番上の兄貴だ。エッバが言っていた通り貴族主義というか自分勝手っていうかな」
突然尋ねたのでザックは背泳ぎを止めて、私と同じ平泳ぎになる。
まるで団子三兄弟みたいな説明だな。しかし知りたいのはその情報ではない。軍人でノアやザックと同じ様に小隊長だと聞いた。人望がないという話も聞いた。
「それは分かってるよ。どんな容姿なのかなって。ノアとは異母兄弟だからどちらかというとネロさんと似てるのかな」
名前だけは一人歩きしているけれども、会った事がないから全く想像がつかない。
アルさんは太っているのか痩せているのか? 髪の色は? 瞳の色は? 年齢は? 全く知らない。
ネロさんとお母さんが同じなのだよね。じゃぁ、ネロさんと似ているのかな。ネロさんと変態具合が似ていなければいいのだけれども。
「容姿か。髪の色以外はネロともノアとも似ていないな」
「似ていない?」
「ああ。髪の色はネロと同じプラチナブロンドなんだ。だけど他が全く違う。肌の色と瞳の色は、ファルの町と同じ人種さ。年齢は──俺より一つ上だったと思う二十九かな?」
「そうなの。と言う事は肌は浅黒くて、瞳は赤色なんだね。ならお父さんかお母さんはファルの町の人って事?」
意外だな。ノアもネロさんもプラチナブロンドで肌が白い。だから領主やその親族は北の国出身者だと思っていた。
「領主は──つまりノア達の父親は北の国出身さ。プラチナブロンドで肌も白い。風貌はネロを凄く真面目にして、更に体つきを厳つくして格好良くした男かな。ノアの母親も北の国出身という容姿だった」
「そうなんだネロさんと似ているけれども、更に軍人っぽくしたって事だね。よかった真面目そうで」
私は余計な心配をしていた様で安堵した。ザックは苦笑いしたけれども直ぐに真面目な顔に戻った。
「だけど、アルとネロの母親は『ファルの町』出身者なんだ」
「えー意外だね」
「意外か……何故思う?」
ザックは私の顔を覗き込みながら笑った。
「お父さんが領主って事は北の国の貴族出身なのでしょう? と言う事は、貴族間で婚約とかしそうなのに。『ファルの町』の女性を選んだって事は恋愛をしたって事?」
そもそもこの世界は男尊女卑が強い部分もある。が国ごとで貧富の差があり上とか下とか勝手に思い込んでいる様に思う。
北の国出身者に貴族やお金、地位を持っている者が多い。それに比べて比較的南に位置する『ファルの町』は北の国出身の者から差別される事が多い様だし。確かエッバも北の国出身の踊り子に上から目線で話をされる事を言っていた。
「鋭いなその通りさ。大恋愛して結婚したんだって。当時は大分反対されたとレオ大隊長から聞いた事がある」
「それは素敵な話だね」
私は瞳を細めて少し羨ましくなる。
身分の差がある恋の成就。とてもドラマチックだ。
領主の男性と町に住まう女性の恋で物語がありそう……あれ?
「だけどノアは妾の子って言っていたよね。大恋愛の末結婚したのに、その後浮気をしたって事になるの?」
何と残念な話に早変わり。
お姫様は幸せに暮らしましためでたしめでたし──ではないのだね。何かがっかり。
「そうなんだよ。領主に俺も会った事があるけれど、そんな不誠実な男には見えないんだけどな。仕事も出来るし努力もする。ファルの町で職務をする為落ち着きたいだろうが、北の国からなかなか戻ってこられないみたいだな」
ザックも私の発した言葉に首を傾げていた。
「そうなんだ。言われてみれば、ノアから家族の話を聞く時、お母さんの話や兄弟の話が出てもお父さんの話は出てこないよね」
それぐらい領主であるお父さんは忙しいのだろう。
「そうだな。だけど頑張っている領主のおかげで『ファルの町』が発展し貿易都市として機能しているのもあるんだ。でもそんな激務の中、アルとノアの母親はどちらも亡くなってしまった。しかもノア達が幼い時にな」
当時の事を知っているのかザックがしみじみと話してくれた。
「残念だねそれは。お母さんが亡くなってしまったのなら、お父さんがもっとノア兄弟達の話を聞く機会があったらこんなに拗れなかったのかもね」
原因を作ったのはだってどう考えても領主であるお父さんの振る舞いだ。ならばその事をお父さんが話をするべきだったのではないだろうか。しかしなぁ。浮気したお父さんの顔なんか見たくないよねアルさんからすれば。
「そうだな言われてみれば。でも浮気した事で家族には元々亀裂が……待てよ」
私の一言を聞いてザックは私が思った事と同じ様な事を言っていたが、黙り込んでしまった。
まぁ考えたって過ぎた事は仕方ないよね。
ザックはナツミと一緒に泳ぎながら考える。
待てよ……本当に浮気というか、妾の子なのだろうか?
ザックは不意に疑問が浮かぶ。レオ大隊長が昔話してくれたあの話。
ナツミを初めて抱いた時思い出したが、あの話って確か──
『凄いいいモノを持っている女ってのは必ずがいる。それは挿入した時から全然違うんだ。本当に全然違うんだぜ。そんなのと出会ったら絶対に止められない。そいつに心まで奪われてみろ。虜にされるってもんだ』
男のくだらない話だが、これには続きがあった。
『って言う事を酔っ払いながら昔領主が話してくれたのさ。結婚に大反対されたが、心も奪われたんじゃ強行突破して結婚するだろ。当時俺は部下として心配だったけれど結ばれてよかったよ。だから裏切りなんてなかったはずだ。なのに何故こんな事になったのだろうな。ま、俺の愚痴だ聞き流してくれ』
当時意味が分からなかったが。
誠実な領主が大恋愛して結婚した。ノアの存在があるから領主の奥方への裏切りがあったと思っていたが。
レオ大隊長の言葉通り、本当は裏切りなんてなかったとしたら? それならばノアは妾の子ではない事になる。
──ならば誰の子供なのだノアは。ヤバい事に気がついてしまった気がするぞ。
横で泳ぐナツミに視線を戻す。
ナツミは賢い。賢いし人の心についてよく考えるからもしかして俺の考えている疑問に近々ぶち当たるかも知れない。
それにこのお転婆は放っておくと俺の知らないところで他の人間と知り合いになって来そうだし。例えばソルとかニコとかトニとか。今日は裏町のエッバやザームを紹介したし、あの気難しい二人がやたら好意的だ。そういえばシンが『人たらし』とかいっていたけれどそうかも知れない。
どんどん仲良くなって一人情報網を築き上げる様な気がする。
ナツミがぎゃんぐとか徒党とか言うけれども、その頂点にいつか立つのはナツミである様な気がしてきた。
この事は店に戻ってからナツミにこっそり相談した方がいいな。ザックは困った様な複雑な溜め息をついた。
変なザックだなぁ? そう思いながら私達はお昼になったので『ジルの店』に大急ぎで戻った。
「痛ぇナツミ、頼む。傷になってないか見てくれないか? 一大事だぞ」
ザックが上半身を前に倒しながらゆっくりとズボンのファスナーを下げる。先程パンパンに張っていたズボンの前も少し落ち着いている様子だ。
ポロリとザックのグロテスクなものを出す。辺りはもちろん岩だらけだし人は誰もいない。お日様の下に晒され下半身の毛が水滴を垂らしながら輝いている。
いつもなら悲鳴を上げる場面だがザックの顔が必死なのと顔色が悪いのもあり私も真剣に確認をはじめる。
くったりとしたものを両手で持ち上げて色々な角度から観察する。確かにザックからは見えにくい角度の部分に痕がある。
「あっ、ここ。少し挟んだファスナーの跡が残っているね。でも傷が残る程ではないみたい……擦り剥きもないし血も出ていないよ。でも赤くなっている様な」
よく見ると少し挟んだ痕があるが一ミリもない。少し挟んで直ぐに戻った様だ。両手で左右に動かしながら見つめる。
「そうか……その指で触れているところがそうなのか?」
ザックがポタポタと髪の毛から水滴を溢しながらしゃがんで観察している私を見つめる。
「うん。ここなんだけど」
人指し指でなぞると、ピクリとザックのものが動く。
「痛い?」
ザックが真下を見つめながら眉を垂らして首を左右に振る。
「じゃぁ、これは?」
なぞった指で少し強めに押してみる。ザックは首を少し傾げる。今度は強めに押してみる。ザックは少し顔を歪めたが最後頷いた。
「押さえると少し痛いと思うが、傷もないし出血もしていなければ大丈夫かな」
そう言って溜め息をついていた。
「うん大丈夫みたいだね。あーでも青タンになるかなぁ……」
ひとまず安心みたい。しかし私は両手の中にあるザックの分身をマジマジと観察する。
大きいけれど柔らかい。うわぁこんな感触なんだ。肌色の何かみたい。ザックって元々肌が小麦色に近いんだ。いつも大きくなっているところしか見ていないし。男性の体も不思議……何であんなに伸縮するのだろう。大きいと邪魔だからかな?
それに、この頭のツルッとした部分って何だか結構笑えるフォルムっていうか。凄く先だけぼってりしていて、ここに穴があるのか。へぇ~幹の部分はこんなに血管がある。こうなっているのかぁ。私そういえば何度か口で含んだけれども先端しか口に入らないんだよね。わっ動いた。あれ? 少し先ほどより大きくなった様な。固い?
「あのーナツミさん? 診察というか観察は終わりましたか?」
クスクスと笑うザックの声が頭の上で聞こえて私は慌てて両手を放した。
「はっ! ごめんなさい」
しゃがみ込んでいたが慌てて立ち上がる。傷を確認するのをいい事に酷く観察していた自分が恥ずかしく頬を染める。
「別にかまわないさ。あーあ、よかった。傷があったりしたら俺のが数日使い物にならないところだった。ナツミ困るだろ? そんな事になったら。ファスナーって危ないんだよなぁ」
ザックが私の両腕を掴みながら笑った。ポタポタとこぼれ落ちる水滴がザックの頬を伝う。白い歯を見せて笑うけれども苦笑いだった。
「もうそんな事になったら私が困るって、もう! でも傷がついたなら私が直すよ?」
私はそう伝えるが、ザックが首を左右に振る。
「いいんだよ。傷が出来たら治る薬は他にもある。ナツミのは特別な力だけれども命を削るって事を忘れてはいけない」
「……うん。分かった」
「分かったならないいさ──ところで」
そこまで言ってザックが私を抱き寄せる。まだザックはズボンの前を広げたままだ。お腹の辺りにザックのものが熱くなっているのが分かった。
「海の中の続きをしようぜ」
「えっ」
「砂も入らない様にするからさ」
「ええっ」
もうどこまでいってもそれしか頭にないのかな。
私は半ば呆れる。
しかし、先ほど海の中で花芯を弄られた事を思い出した。確かにそのヌルヌルしているのは分かるのだけれど! 否定の言葉や嫌がらないのを確認したザックは私の顎を掴んで上に向かせる。
「それじゃぁキスからやり直しで」
そう言ってザックが長身をかがめた時だった。遠くで猫の鳴き声の様な甘くて可愛い声が聞こえた。
「? 猫?」
私がザックの唇が迫る直前で目を丸める。
「猫? いや猫じゃなくて」
ザックも少し顔をしかめたが、直ぐに何の声なのか理解した様だった。ニヤリと顔を歪ませて嫌らしく笑う。
もう一度声がしたので耳を澄ませる。と……それが女性の声、マリンの声なのが分かった。悩ましくって切なそうに声を必死に殺しているのに漏れている声だった。
「あっあのあのあのその、猫じゃなかったみたいだね」
私は慌てて苦笑いでザックの顔を見つめる。
うわぁ~あの時の他の人の声なんて普通は聞かない……なのだけれども『ファルの町』に来てからその手の声をよく聞いた様な気もするけれども。確かマリンやミラの悩ましい声も別荘にい行った時に少し聞いた様な気もする。
今朝、隣で雑魚寝をしていたマリンの姿。そしてノアがマリンの服を捲って乳房を晒したのを思い出してしまい急激に恥ずかしくなった。
ザックが私の顎を掴んだままポツリと呟く。
「少し行ったらノアとマリンがヤってるんじゃね。覗くか?」
「えっ」
私は目が飛び出そうになた。
覗き?!
「ノアには倉庫で覗かれた貸しがあるだろ? 覗き返してやろうぜ」
そう言ってザックは私の顎から手を放し、声のする方向を確かめ様とした。
私は慌ててザックを引き止める為にザックの高い位置にある顔のほっぺたを両手でパチンと慌てて挟んだ。
「イテッこら何故止めるんだよ~」
突然顔を叩かれた様になったので、ザックが小声で私の顔を覗き込み犬歯を見せて怒った。
「嫌」
「ナツミだってノアに覗かれたんだぞ、だから貸しを返すだけだろ?」
「ザックがマリンのエッチを見るのは嫌……」
ザックはマリンと関係を一度持ったので何もかも知っている。しかし、美しくなったマリンが乱れるのを再びザックが注目するなんて嫌だ。
だって可愛くて綺麗なマリンに惹かれたら嫌だ。
「……」
ザックは私にほっぺたを挟まれたまま無言になった。ゆっくりと私の背中に腕を回してきつく抱きしめた。私の耳元にザックは薄い唇をつけて呟く。
「俺の耳元に唇を寄せてくれ。ナツミの片足を高く上げるから倒れそうなら俺の首にしっかり掴まるんだ」
「うん」
「そうしたら俺にはナツミの声だけしか聞こえない」
「うん」
「乱暴になったらごめんな」
そう言って、ザックはすっかり元気を取り戻した分身で私を貫いた。
大きくて熱い。すっかり濡れて待ち構えていたのか私は難なくザックを飲み込む。ユルユルと腰を動かされ、思わずバランスを崩してしまう。慌ててザックの首にしがみつくとザックが私の首辺りを甘噛みする。
「んっ……」
乱暴になったらごめんって。そんな事ない優しくて温かくてゆっくりと私を愛してくれる。
きっと謝罪の意味と慰めてくれているのだと思う。傷つけてごめんって言っているのだろうな。
男の人って分からないなぁ。そんなに覗きたいかな。傷つくほどじゃないけれども、ザックもお調子者なのだから。まぁ許してあげようかな。そう思ってザックの耳元で大好きと呟いた。
程なくして私が達すると、ザックも小さく呻き声を上げた。
私とザックは笑い合って鼻を擦りつけるとキスを繰り返した。
色々満足したら再びザックと海にもどった。
そろそろ三十分経ったしお昼の時間になるだろう。『ジルの店』に戻らなければいけない。白い砂浜に向かって泳ぎ始めた。
「あーこのまま浮いていたいな、やっぱり海っていいよなぁ」
ゆっくり背泳ぎをしながら沖に向かうザックだった。目を閉じて気持ちよさそうにしていた。
「そうだね」
私は平泳ぎで泳ぎながら白い砂浜を目指す。
剣と脱ぎ捨てたシャツの辺り、荷物番としてノアとマリンが座ってイチャイチャしているのが見えた。覗く事はなかったけれども、うん。きっと仲良くなった後なのだろう。
ふとノアの顔を見たら裏町でザームが言っていた話を思い出した。
──む。もう数か月も前の話だが、裏町の路地でアルを見かけてな。朝方だったから酒を飲んで朝帰りでもしていたのだろう。その時、何度も大きく咳いていて苦しそうだったのでな。声をかける前にアルは立ち去ったが、彼が咳いていた裏路地に大きく吐血した痕があったからな、どこか体が悪いのかと──
エッバをはじめその場の皆が勘違いだろうと言っていた。
しかし、もし吐血が本当だったとしたら何かの病気なのかな。例えば死病──なんて事はないのだろうか。まさかね。
私は思わずザックに尋ねた。
「ねぇザック。アルさんってどんな人なの?」
「アル? ノア、ネロ、アルこの三兄弟の一番上の兄貴だ。エッバが言っていた通り貴族主義というか自分勝手っていうかな」
突然尋ねたのでザックは背泳ぎを止めて、私と同じ平泳ぎになる。
まるで団子三兄弟みたいな説明だな。しかし知りたいのはその情報ではない。軍人でノアやザックと同じ様に小隊長だと聞いた。人望がないという話も聞いた。
「それは分かってるよ。どんな容姿なのかなって。ノアとは異母兄弟だからどちらかというとネロさんと似てるのかな」
名前だけは一人歩きしているけれども、会った事がないから全く想像がつかない。
アルさんは太っているのか痩せているのか? 髪の色は? 瞳の色は? 年齢は? 全く知らない。
ネロさんとお母さんが同じなのだよね。じゃぁ、ネロさんと似ているのかな。ネロさんと変態具合が似ていなければいいのだけれども。
「容姿か。髪の色以外はネロともノアとも似ていないな」
「似ていない?」
「ああ。髪の色はネロと同じプラチナブロンドなんだ。だけど他が全く違う。肌の色と瞳の色は、ファルの町と同じ人種さ。年齢は──俺より一つ上だったと思う二十九かな?」
「そうなの。と言う事は肌は浅黒くて、瞳は赤色なんだね。ならお父さんかお母さんはファルの町の人って事?」
意外だな。ノアもネロさんもプラチナブロンドで肌が白い。だから領主やその親族は北の国出身者だと思っていた。
「領主は──つまりノア達の父親は北の国出身さ。プラチナブロンドで肌も白い。風貌はネロを凄く真面目にして、更に体つきを厳つくして格好良くした男かな。ノアの母親も北の国出身という容姿だった」
「そうなんだネロさんと似ているけれども、更に軍人っぽくしたって事だね。よかった真面目そうで」
私は余計な心配をしていた様で安堵した。ザックは苦笑いしたけれども直ぐに真面目な顔に戻った。
「だけど、アルとネロの母親は『ファルの町』出身者なんだ」
「えー意外だね」
「意外か……何故思う?」
ザックは私の顔を覗き込みながら笑った。
「お父さんが領主って事は北の国の貴族出身なのでしょう? と言う事は、貴族間で婚約とかしそうなのに。『ファルの町』の女性を選んだって事は恋愛をしたって事?」
そもそもこの世界は男尊女卑が強い部分もある。が国ごとで貧富の差があり上とか下とか勝手に思い込んでいる様に思う。
北の国出身者に貴族やお金、地位を持っている者が多い。それに比べて比較的南に位置する『ファルの町』は北の国出身の者から差別される事が多い様だし。確かエッバも北の国出身の踊り子に上から目線で話をされる事を言っていた。
「鋭いなその通りさ。大恋愛して結婚したんだって。当時は大分反対されたとレオ大隊長から聞いた事がある」
「それは素敵な話だね」
私は瞳を細めて少し羨ましくなる。
身分の差がある恋の成就。とてもドラマチックだ。
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何と残念な話に早変わり。
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「そうなんだよ。領主に俺も会った事があるけれど、そんな不誠実な男には見えないんだけどな。仕事も出来るし努力もする。ファルの町で職務をする為落ち着きたいだろうが、北の国からなかなか戻ってこられないみたいだな」
ザックも私の発した言葉に首を傾げていた。
「そうなんだ。言われてみれば、ノアから家族の話を聞く時、お母さんの話や兄弟の話が出てもお父さんの話は出てこないよね」
それぐらい領主であるお父さんは忙しいのだろう。
「そうだな。だけど頑張っている領主のおかげで『ファルの町』が発展し貿易都市として機能しているのもあるんだ。でもそんな激務の中、アルとノアの母親はどちらも亡くなってしまった。しかもノア達が幼い時にな」
当時の事を知っているのかザックがしみじみと話してくれた。
「残念だねそれは。お母さんが亡くなってしまったのなら、お父さんがもっとノア兄弟達の話を聞く機会があったらこんなに拗れなかったのかもね」
原因を作ったのはだってどう考えても領主であるお父さんの振る舞いだ。ならばその事をお父さんが話をするべきだったのではないだろうか。しかしなぁ。浮気したお父さんの顔なんか見たくないよねアルさんからすれば。
「そうだな言われてみれば。でも浮気した事で家族には元々亀裂が……待てよ」
私の一言を聞いてザックは私が思った事と同じ様な事を言っていたが、黙り込んでしまった。
まぁ考えたって過ぎた事は仕方ないよね。
ザックはナツミと一緒に泳ぎながら考える。
待てよ……本当に浮気というか、妾の子なのだろうか?
ザックは不意に疑問が浮かぶ。レオ大隊長が昔話してくれたあの話。
ナツミを初めて抱いた時思い出したが、あの話って確か──
『凄いいいモノを持っている女ってのは必ずがいる。それは挿入した時から全然違うんだ。本当に全然違うんだぜ。そんなのと出会ったら絶対に止められない。そいつに心まで奪われてみろ。虜にされるってもんだ』
男のくだらない話だが、これには続きがあった。
『って言う事を酔っ払いながら昔領主が話してくれたのさ。結婚に大反対されたが、心も奪われたんじゃ強行突破して結婚するだろ。当時俺は部下として心配だったけれど結ばれてよかったよ。だから裏切りなんてなかったはずだ。なのに何故こんな事になったのだろうな。ま、俺の愚痴だ聞き流してくれ』
当時意味が分からなかったが。
誠実な領主が大恋愛して結婚した。ノアの存在があるから領主の奥方への裏切りがあったと思っていたが。
レオ大隊長の言葉通り、本当は裏切りなんてなかったとしたら? それならばノアは妾の子ではない事になる。
──ならば誰の子供なのだノアは。ヤバい事に気がついてしまった気がするぞ。
横で泳ぐナツミに視線を戻す。
ナツミは賢い。賢いし人の心についてよく考えるからもしかして俺の考えている疑問に近々ぶち当たるかも知れない。
それにこのお転婆は放っておくと俺の知らないところで他の人間と知り合いになって来そうだし。例えばソルとかニコとかトニとか。今日は裏町のエッバやザームを紹介したし、あの気難しい二人がやたら好意的だ。そういえばシンが『人たらし』とかいっていたけれどそうかも知れない。
どんどん仲良くなって一人情報網を築き上げる様な気がする。
ナツミがぎゃんぐとか徒党とか言うけれども、その頂点にいつか立つのはナツミである様な気がしてきた。
この事は店に戻ってからナツミにこっそり相談した方がいいな。ザックは困った様な複雑な溜め息をついた。
変なザックだなぁ? そう思いながら私達はお昼になったので『ジルの店』に大急ぎで戻った。
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