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123 ナツミとネロ その2
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門番さん四人は私の顔を見るなり「ナツミじゃないか。ネロを連れているのか。とうとうザックは捨てられたのか?」といきなり茶化してきた。
ザックと旧知の仲にあるからなのか私もすっかり古くからの知り合いという扱いになっている。ザックの存在はそれだけ大きい。
門番さんの第一声に私は苦笑いしかない。門番さんも茶化すだけでそんな事はないと十分に分かっているのか、ネロを連れての裏町への外出は止めておいた方がいいと直ぐに忠告してくれた。
もちろんそのつもりだが、ネロさんは護衛向きではない事を、軍学校の教師だった門番四人はよく知っているみたいだ。
ネロさんとも軽く挨拶をして「元気か? 無理はしていないか?」と尋ねていた。
そして私とネロさんはおにぎりを門番さん四人に振る舞った。
「いやぁ昼飯はまだだったからありがたい。しかし……変わった形だな」
「へぇ~米か。大抵昼はサンドやクプレプが多いけれどもこれは新しいな」
「どれどれ……俺はこの黒っぽい葉で包んである奴にするか。ん? バナーポテの葉の塩漬けか。うめぇ! この中に入っているのはハーブ肉団子じゃねぇか柔らかいし味もしっかりついていていいな」
「こっちは白身魚の揚げたのが入ってるぜ! へぇ~ ただの団子みたいな三角と思っていたけれども中に何が入っているか分からないってのも面白いし、いいなぁこれ」
門番さんが言っているクプレプとは、裏町で売っていたトルティーヤやタコスに似た食べ物だった。定番クプレプと比べてくれるなんて嬉しいな。
門番さん四人の評判は上々で四人が一度に親指を立てて『とてもよい』と評価をもらえた。しかも「いくらで売るんだ?」「いつから販売するんだ?」等、食いつきがよくて「期待しているぜ」と一声かけてくれた。
私とネロさんは残ったおにぎりと共に門番さんの元を離れて『ファルの宿屋通り』を歩く。昼下がりの『ファルの宿屋通り』はどこの店もお昼の営業を終えて閉店している。夜の営業に向けて準備中なのだろう。
私は銀のトレイに残ったおにぎりを見つめながら唸った。
「とても評判がよかったのにナツミさんは唸るんですか。しかも曇り顔ですね。ここは「やった~褒められた~」と喜ぶところなのでは?」
隣を歩くネロさんが私の顔を横から覗き込んで首を傾げた。肩下まで伸びたプラチナブロンドを一つに縛っているが、束ね損ねた髪の毛が一房顔の前に垂れる。
「味は美味しいって言ってもらえたから自信を持っていいと思うんですよ。そもそもダンさんのおにぎりが美味しいのは分かっている事ですからね」
「そうですね。なのに何故そんなに浮かない様子なのですか?」
「だって門番さんが食べようとしたら手が汚れていたし。それに食べたら喉を詰まらせそうになってたし。近くに井戸があるから心配しなくてもよかったけれども」
おにぎりは手掴みだけれども、働いている人達みな手がいつも綺麗だとは限らない。日本だったらお手拭きとかコンビニエンスストア等で購入するとついてくるけれども、ここは『ファルの町』だ。そんなものはない。それにペットボトルがあるわけではないから飲料水はどうしたいいのだろう。
「お試しとはいえこの二点は想定外だなって。だから褒められたからと言って手放しで喜べるものでもないと考えていたんです。うーん、どうしたらいいかなぁ」
私は首を捻ってどうやって対応したらいいだろうかと唸った。
するとネロさんがぼそりと呟いた。
「へぇ……褒められて舞い上がるというのはないんですねぇ。それどころか冷静に観察して分析とは」
「え。何か言いました?」
ネロさんの声には口の中だけでボソボソ呟くのではっきり聞こえない。
顔を上げるとネロさんは銀縁丸眼鏡と同じぐらい目を丸める。それからニッコリ笑った。
「いいえ。ナツミさんは素晴らしいなぁと呟いただけですよ。そうですねぇ飲料水ですか。ならば移動式の店で飲み物も一緒に販売すればいいのでは。シンプルにレモン水でいいでしょう。僕が設計に携わった移動式の店は飲料水の入った樽を積める様にしていますから」
「え! そうなんですか?!」
何て至れり尽くせりな設計なのだろう。
その事に最初から気がついていたのならネロさんの方が凄いのでは。それからネロさんは両手をつけて説明を続ける。
「それに手が汚れているのはクプレプの店でも同じ事が言えるでしょう。なので、同じ様におにぎり自体を薄紙に包んで販売すればいいのでは。もともと持ち帰りをする人もいるでしょうから」
私の感想からスラスラと解決策を述べるネロさんだった。私は驚いて声を上げる。
「そこまで考えて設計してくれたんですね。変態でもネロさんは凄いですね」
思わず変態をつけてしまった。けれども言い切ってしまった後では後には引けない。
そんな失礼な私にも嫌な顔は一つせず、ネロさんはニッコリ笑って足を止めた。
「変態でも凄い! と、褒められると何だかムズムズしますね。普通ではない更に上をいく……という事を褒めてもらえるのは嬉しくなりますねぇ~はぁ~素晴らしい褒め言葉です」
ネロさんは両手を胸に手を当てて感動している。
「そ、そうですかね……」
全く共感できないけれども、『普通ではない更に上をいく』という言葉がやたら印象に残った。
どういう意味なのか尋ねようとしたところ、突然ネロさんは無駄にその場でクルリと二回転する。まるでバレリーナかダンサーの様だ。
「ど、どうしたんですか一体?」
「さて。少しおにぎりが余っているのですから今度は我らが同士にも食べてもらって意見をもらいましょう」
ネロさんは回転をピタリと止めると、片手を前に差し出した。
「同士?」
私はネロさんが差し出した手の先を見つめる。
そこは、お店の前だった。
入り口も建物自体も異質だった。木造作りだが真っ黒の建物だった。使用している木材を全て煤けさせた様な感じだが建物自体はしっかりとした作りだった。『ジルの店』を少しコンパクトにした建物だ。
ドアレバーは金色の作り。お店の前に出ている店名のプレートも金色で小さく文字が書かれている。文字は読めないのだが、例えるなら高級バーといった様子だ。
「こっ、ここって。もしかして」
もしかしなくても『ファルの宿屋通り』なのだから『ジルの店』と同じ店なのだろう。
えっ、同士ってそういう『ファルの宿屋通り』くくりの同士ですか?!
「そんなの無理です! いきなり他の店に突撃するって。そんな恐ろしい事をするなんて。同士の意味が広すぎますよ」
私は一歩身を引いて首がちぎれるぐらい左右に振って見せる。それなのにネロさんはニコニコ笑って金色のドアレバーに手をかける。
「大丈夫ですよ。ここは『ゴッツの店』ですよ。ほら、ナツミさん。入りましょうか」
そう言ってドアレバーと反対側の手で私の腕を掴んだ。思ったより強引な力に私はズルズル引きずられてしまった。
「えっ、ゴッツさんの店なんですね。じゃぁトニもいるのかな」
私は聞いた事のあるお店の名前でほっと胸をなで下ろした。
先日、どうしてザックやノア達が『ジルの店』に留まっているのかの理由を話して、暴力的な奴隷商人を捕まえる事に協力してくると言ってくれたゴッツさんの店。言われてみるとその黒い外観は、トニから聞いた事のあるセクシャルな踊りを披露するという店にふさわしい。ジルの店が老舗なら、ゴッツさんの店は異彩を放って新しいといった感じだ。
同士とは、奴隷商人を捕まえるのを協力してくれるという意味での同士なのね。
「それにしても、ゴッツさんってお洒落なんですね……」
ノアに引きずられながら私は呟いた。
「そうですね、ゴッツさんは右耳が削がれて怖そうですがとても人望があって素晴らしい店主ですよ。かなり難しい女性達を束ねているのですからね」
「それはそうでしょうけれども」
なんせあの文句を即座に言ってくるトニの手綱を握っているのだから、しっかりしている店主なのだろう。
いや。しかし。少し待って。
「え? でも『ゴッツの店』もまだ準備中だからそんな時に他店のウエイトレスが突然来て『お試しで食べてください』っていうのは勇気がいりませんか? それにトニ以外の踊り子達もいっぱいいるのでしょう? 顔見知りでもないのにそんなの──」
私は再び青くなって店先で喚いた。引きずられる足を踏ん張って踏みとどまる。
どうしよう。どんな白い眼で見られるのだろう。トニに負けじと劣らず気の強そうな女性が束になったら流石に私でも太刀打ちできない。それに得体の知れない三角の食べ物を食べてくださいって言えるかな。
「ナツミさんはお茶目ですね。白い眼で見られるのはナツミさんの得意技でしょう。そもそも最近の注目の的ですよね。だって毎日銛を持って海で魚を釣ってくるんですよ。注目なんて慣れているでしょう? さぁさぁいきましょう」
ネロさんはニッコリ笑うとドアレバーを押した。
「えっ?! 今私の考えを読み取りました? 魔法で心の中まで読めるんですか?!」
「そんな魔法があればいつも使ってますよ。特に女性の心は難しいですからねぇ。あ、でもベッドだと女性の心も比較的分かりやすいんですけれども」
「ベ、ベ、ベッドって。何を言っているんですかぁ!?」
そんな私とネロさんのやり取りを道行く人は遠巻きに苦笑いで見ていた。
が、とあるカップルが声をかけた。
「あれ。ネロさんじゃないですか。こんなところで女性を無理に連れ込もうとするのはよくないですよ。って……え。ナツミ?!」
声をかけてきたのはソルだった。
ソルは近々軍学校に通う裏町の青年だ。『ジルの店』で一緒に働いているニコの従兄弟だ。モスグリーンのバンダナの下には、彫りの深い目がこれでもかと見開いている。
「ソル! いいところに来てくれたね。って言うか、どうしてソルがここにいるの?」
なんでこんなところにソルがいるのだろう。もしかして──
ソルは十七歳の青年だがどうもザックを小型化した様なところがある。つまりプレイボーイなのだ。
「ナツミに会いに来たのにニコに聞いたらネロさんと出かけたって聞いて。探しに来たんだよ」
「ああ、そういう事なのね……」
驚いた。ソルが女性を連れてラブホテル代わりに店に来たのかと思った。勝手な誤解をした事に私は自分が恥ずかしくなった。
少し頬を赤らめて見るが相変わらずネロさんに引っ張られたままの私にソルは顔を青くして喚いた。
「そう思って探しに来たのに……ザックさんという人がいるのに、ネロさんと店に入ろうとしているなんて!」
ソルが頭を抱えて天を仰いだ。
ひーっ! 何て事を言い出すのよソルはっ!
「そんなわけないでしょ! この引きずられている姿を見て分かるでしょう。嫌々ながら店に入ろうとしているのが」
私が慌てて否定するとソルの後頭部を勢いよく叩いた女性がいた。
「本当よ! 見たら分かるでしょ。そんな状況じゃない事ぐらい。本当にソルって勘違いばかりなんだから」
赤いサンダルに、真っ赤なフレアスカート。そして黒いチューブトップにポニーテールを揺らして両腕を腰に添えて前のめりになったソルを怒鳴ったのは──
「エッバ!」
先日裏町でお世話になったエッバだった。
「ハァイ。悪かったわね、この馬鹿ソルが迷惑かけたみたいで」
エッバは顎を少し上に上げて笑うと直ぐに不機嫌な顔をして視線を逸らす。
それはエッバ独特の照れているだけなのが直ぐに分かった。だって浅黒い肌の頬が少し赤くなっている。
「久しぶりだね~会えて嬉しいよ」
私が笑いかけるとエッバがキョロキョロと視線を移して私を見たり見なかったりしながら両腕を組んだ。
「そ、そうね久しぶりね。まぁ、た、たまたま会っただけだけど」
ところどころどもりながらエッバが口をへの字にした。この状況がたまたま出会っただけだと言えるのかどうか謎だが。
「そうだよね。ザックならまだしも私に会いに来てくれたわけじゃないよね。分かってるよ。あっ、それともソルと一緒に時間泊の部屋を利用しに来たの?」
「そ、そんなわけないでしょ。ザックが好きだった私だけど、別にナツミに会いに来たっていいじゃない。それに、ザックに似ている行動を取るからと言って、ソルみたいなクソガキを相手にするわけないでしょ!」
私の質問に慌てて被せて怒鳴ったエッバだった。
「酷いなエッバ。毎日しつこいぐらい連れていけってうるさいから。仕方ないから連れてきてやったのに何で俺を殴るんだよっ」
叩かれたソルが後ろ頭を押さえながら隣のエッバを睨みつける。
すると途端にエッバがしどろもどろになって視線を石畳に落として呟く。
「べ、別に、私は来たいなんて。その、そんな事言ってないし」
「言っただろう! 嘘をつくなよ。『ジルの店』の踊り子が海で泳いでいたって聞いて、ナツミの事ばかり聞いてくるくせに。この間なんてクプレプ持っていけとか言い出すし」
「そ、そんな事は言った様な気もするけれども言ったと思うけれども!」
「ほーら言ったくせに。でも一人で『ファルの宿屋通り』にくる勇気がないから俺についてきたんだろうがっ」
「も、もう、そんな大きな声で言わなくてもっ!」
ぎゃぁぎゃぁと大声で喧嘩をしだすソルとエッバ。
行き交う人々の視線を浴びながら痴話喧嘩の如く二人は罵り合っていた。
その騒ぎを聞きつけたのかネロさんが手にかけていた金のドアレバーが動いて中から人が、店主のゴッツさんが顔を出した。
ドアの隙間から店内の香りがした。色っぽいなまめかしい香り。黒い建物とマッチした香りだ。
「何だ? 人の店の前でうるさいな。痴話喧嘩ならよそでやってくれ──ん? ネロにナツミじゃないか」
低くて酒焼けしたざらざらした声を上げるが、ネロさんと私を見つけると目を丸くした。
「こんにちは。突然で申し訳ないですが、実は試食して欲しくて」
ネロさんがニッコリ笑って私が持っている銀のトレイを指差した。
「試食?」
ゴッツさんが首を傾げてガラスカバーをかけたおにぎりを見つめた。
久しぶりに見たゴッツさんは相変わらずの迫力だ。
ゴッツさんは白髪交じりの赤い髪を後ろで一つに縛っている。そして右耳は削がれた傷跡だけが残っている。そのせいで右耳が聞こえないのだろう。左半身を前に出しながら身を乗り出した。歳は五十前だと思うが、大きくボタンの空いたシャツの隙間からは鍛えられた胸筋が見えた。
ええい! こうなったら仕方ない。私も覚悟を決めて銀のトレイを差し出した。
「おにぎりって言うんです。オベントウとしてお昼に売る予定の食べ物なんです。ゴッツさんにも意見がもらいたくって。是非お店にいるトニやその仲間にも聞けたらなって」
私はゴッツさんを真っすぐ見つめる。
ゴッツさんは私と視線を合わせたままだ。何かを見定めている様な、見透かす様なゴッツさんの視線だった。
視線を逸らす事は許されない気がする。それに、ゴッツさんの赤い瞳がとても澄んでいたので思わず見とれてしまった。
「……そうか。三角の形をした変わった食い物だな。外で立ち話も目立つだけだ。今は準備中で散らかっているが中に入ってくれ」
ゴッツさんは瞳を細めて微笑むと、ドアを大きく開き顎をしゃくって中に入る様に促す。
「是非いれてもらいましょう。ナツミさん」
私を引きずっていたネロさんは手を放して素直に店内に入っていった。
「はい。ありがとうございます。えーと……お邪魔します」
私も初めて『ジルの店』以外のお店に足を踏み入れた。
「お前達二人は裏町のソルと女か? どうせナツミについてきたんだろ。いいぜ入れ」
ゴッツさんはソルとエッバにも店に入る様に促した。
「ヒッ!」
初めて見るゴッツさんの姿にエッバが小さく悲鳴を上る。そして今まで言い合っていたソルの後ろにパッと隠れて震えていた。
うん。分かるよその気持ち。私は思わず苦笑いでエッバの姿を見つめた。
「な、何なの? どうなってるの? あんなに怖い顔なんて初めてよ! ザームなんて非じゃないし」
「そうかな。ザームさんも大概怖いけれどもさ。性格を知っているとそんなに怖い顔じゃ無くなるんだよな。って何で俺の後ろに隠れてるんだよっ」
「もう! うるさい。黙ってよソルの馬鹿」
「殴るなよっ。これ以上馬鹿になったら俺も困るんだ」
エッバとソルもブツブツ言いながら店内に入った。
この時私は、おにぎりの試食について頭がいっぱいだった。
もちろん純粋に意見を聞いてさっさと帰るつもりだったのに。ややこしくしたのはもちろん私のせいであり、それを膨らませたネロさんだと思うけれども。
おにぎりの話からまさかのあんな事になるとは──そう、まさか私が他人のベッドシーンを覗く事になるなんて。
この時は想像もしていなかった。
ザックと旧知の仲にあるからなのか私もすっかり古くからの知り合いという扱いになっている。ザックの存在はそれだけ大きい。
門番さんの第一声に私は苦笑いしかない。門番さんも茶化すだけでそんな事はないと十分に分かっているのか、ネロを連れての裏町への外出は止めておいた方がいいと直ぐに忠告してくれた。
もちろんそのつもりだが、ネロさんは護衛向きではない事を、軍学校の教師だった門番四人はよく知っているみたいだ。
ネロさんとも軽く挨拶をして「元気か? 無理はしていないか?」と尋ねていた。
そして私とネロさんはおにぎりを門番さん四人に振る舞った。
「いやぁ昼飯はまだだったからありがたい。しかし……変わった形だな」
「へぇ~米か。大抵昼はサンドやクプレプが多いけれどもこれは新しいな」
「どれどれ……俺はこの黒っぽい葉で包んである奴にするか。ん? バナーポテの葉の塩漬けか。うめぇ! この中に入っているのはハーブ肉団子じゃねぇか柔らかいし味もしっかりついていていいな」
「こっちは白身魚の揚げたのが入ってるぜ! へぇ~ ただの団子みたいな三角と思っていたけれども中に何が入っているか分からないってのも面白いし、いいなぁこれ」
門番さんが言っているクプレプとは、裏町で売っていたトルティーヤやタコスに似た食べ物だった。定番クプレプと比べてくれるなんて嬉しいな。
門番さん四人の評判は上々で四人が一度に親指を立てて『とてもよい』と評価をもらえた。しかも「いくらで売るんだ?」「いつから販売するんだ?」等、食いつきがよくて「期待しているぜ」と一声かけてくれた。
私とネロさんは残ったおにぎりと共に門番さんの元を離れて『ファルの宿屋通り』を歩く。昼下がりの『ファルの宿屋通り』はどこの店もお昼の営業を終えて閉店している。夜の営業に向けて準備中なのだろう。
私は銀のトレイに残ったおにぎりを見つめながら唸った。
「とても評判がよかったのにナツミさんは唸るんですか。しかも曇り顔ですね。ここは「やった~褒められた~」と喜ぶところなのでは?」
隣を歩くネロさんが私の顔を横から覗き込んで首を傾げた。肩下まで伸びたプラチナブロンドを一つに縛っているが、束ね損ねた髪の毛が一房顔の前に垂れる。
「味は美味しいって言ってもらえたから自信を持っていいと思うんですよ。そもそもダンさんのおにぎりが美味しいのは分かっている事ですからね」
「そうですね。なのに何故そんなに浮かない様子なのですか?」
「だって門番さんが食べようとしたら手が汚れていたし。それに食べたら喉を詰まらせそうになってたし。近くに井戸があるから心配しなくてもよかったけれども」
おにぎりは手掴みだけれども、働いている人達みな手がいつも綺麗だとは限らない。日本だったらお手拭きとかコンビニエンスストア等で購入するとついてくるけれども、ここは『ファルの町』だ。そんなものはない。それにペットボトルがあるわけではないから飲料水はどうしたいいのだろう。
「お試しとはいえこの二点は想定外だなって。だから褒められたからと言って手放しで喜べるものでもないと考えていたんです。うーん、どうしたらいいかなぁ」
私は首を捻ってどうやって対応したらいいだろうかと唸った。
するとネロさんがぼそりと呟いた。
「へぇ……褒められて舞い上がるというのはないんですねぇ。それどころか冷静に観察して分析とは」
「え。何か言いました?」
ネロさんの声には口の中だけでボソボソ呟くのではっきり聞こえない。
顔を上げるとネロさんは銀縁丸眼鏡と同じぐらい目を丸める。それからニッコリ笑った。
「いいえ。ナツミさんは素晴らしいなぁと呟いただけですよ。そうですねぇ飲料水ですか。ならば移動式の店で飲み物も一緒に販売すればいいのでは。シンプルにレモン水でいいでしょう。僕が設計に携わった移動式の店は飲料水の入った樽を積める様にしていますから」
「え! そうなんですか?!」
何て至れり尽くせりな設計なのだろう。
その事に最初から気がついていたのならネロさんの方が凄いのでは。それからネロさんは両手をつけて説明を続ける。
「それに手が汚れているのはクプレプの店でも同じ事が言えるでしょう。なので、同じ様におにぎり自体を薄紙に包んで販売すればいいのでは。もともと持ち帰りをする人もいるでしょうから」
私の感想からスラスラと解決策を述べるネロさんだった。私は驚いて声を上げる。
「そこまで考えて設計してくれたんですね。変態でもネロさんは凄いですね」
思わず変態をつけてしまった。けれども言い切ってしまった後では後には引けない。
そんな失礼な私にも嫌な顔は一つせず、ネロさんはニッコリ笑って足を止めた。
「変態でも凄い! と、褒められると何だかムズムズしますね。普通ではない更に上をいく……という事を褒めてもらえるのは嬉しくなりますねぇ~はぁ~素晴らしい褒め言葉です」
ネロさんは両手を胸に手を当てて感動している。
「そ、そうですかね……」
全く共感できないけれども、『普通ではない更に上をいく』という言葉がやたら印象に残った。
どういう意味なのか尋ねようとしたところ、突然ネロさんは無駄にその場でクルリと二回転する。まるでバレリーナかダンサーの様だ。
「ど、どうしたんですか一体?」
「さて。少しおにぎりが余っているのですから今度は我らが同士にも食べてもらって意見をもらいましょう」
ネロさんは回転をピタリと止めると、片手を前に差し出した。
「同士?」
私はネロさんが差し出した手の先を見つめる。
そこは、お店の前だった。
入り口も建物自体も異質だった。木造作りだが真っ黒の建物だった。使用している木材を全て煤けさせた様な感じだが建物自体はしっかりとした作りだった。『ジルの店』を少しコンパクトにした建物だ。
ドアレバーは金色の作り。お店の前に出ている店名のプレートも金色で小さく文字が書かれている。文字は読めないのだが、例えるなら高級バーといった様子だ。
「こっ、ここって。もしかして」
もしかしなくても『ファルの宿屋通り』なのだから『ジルの店』と同じ店なのだろう。
えっ、同士ってそういう『ファルの宿屋通り』くくりの同士ですか?!
「そんなの無理です! いきなり他の店に突撃するって。そんな恐ろしい事をするなんて。同士の意味が広すぎますよ」
私は一歩身を引いて首がちぎれるぐらい左右に振って見せる。それなのにネロさんはニコニコ笑って金色のドアレバーに手をかける。
「大丈夫ですよ。ここは『ゴッツの店』ですよ。ほら、ナツミさん。入りましょうか」
そう言ってドアレバーと反対側の手で私の腕を掴んだ。思ったより強引な力に私はズルズル引きずられてしまった。
「えっ、ゴッツさんの店なんですね。じゃぁトニもいるのかな」
私は聞いた事のあるお店の名前でほっと胸をなで下ろした。
先日、どうしてザックやノア達が『ジルの店』に留まっているのかの理由を話して、暴力的な奴隷商人を捕まえる事に協力してくると言ってくれたゴッツさんの店。言われてみるとその黒い外観は、トニから聞いた事のあるセクシャルな踊りを披露するという店にふさわしい。ジルの店が老舗なら、ゴッツさんの店は異彩を放って新しいといった感じだ。
同士とは、奴隷商人を捕まえるのを協力してくれるという意味での同士なのね。
「それにしても、ゴッツさんってお洒落なんですね……」
ノアに引きずられながら私は呟いた。
「そうですね、ゴッツさんは右耳が削がれて怖そうですがとても人望があって素晴らしい店主ですよ。かなり難しい女性達を束ねているのですからね」
「それはそうでしょうけれども」
なんせあの文句を即座に言ってくるトニの手綱を握っているのだから、しっかりしている店主なのだろう。
いや。しかし。少し待って。
「え? でも『ゴッツの店』もまだ準備中だからそんな時に他店のウエイトレスが突然来て『お試しで食べてください』っていうのは勇気がいりませんか? それにトニ以外の踊り子達もいっぱいいるのでしょう? 顔見知りでもないのにそんなの──」
私は再び青くなって店先で喚いた。引きずられる足を踏ん張って踏みとどまる。
どうしよう。どんな白い眼で見られるのだろう。トニに負けじと劣らず気の強そうな女性が束になったら流石に私でも太刀打ちできない。それに得体の知れない三角の食べ物を食べてくださいって言えるかな。
「ナツミさんはお茶目ですね。白い眼で見られるのはナツミさんの得意技でしょう。そもそも最近の注目の的ですよね。だって毎日銛を持って海で魚を釣ってくるんですよ。注目なんて慣れているでしょう? さぁさぁいきましょう」
ネロさんはニッコリ笑うとドアレバーを押した。
「えっ?! 今私の考えを読み取りました? 魔法で心の中まで読めるんですか?!」
「そんな魔法があればいつも使ってますよ。特に女性の心は難しいですからねぇ。あ、でもベッドだと女性の心も比較的分かりやすいんですけれども」
「ベ、ベ、ベッドって。何を言っているんですかぁ!?」
そんな私とネロさんのやり取りを道行く人は遠巻きに苦笑いで見ていた。
が、とあるカップルが声をかけた。
「あれ。ネロさんじゃないですか。こんなところで女性を無理に連れ込もうとするのはよくないですよ。って……え。ナツミ?!」
声をかけてきたのはソルだった。
ソルは近々軍学校に通う裏町の青年だ。『ジルの店』で一緒に働いているニコの従兄弟だ。モスグリーンのバンダナの下には、彫りの深い目がこれでもかと見開いている。
「ソル! いいところに来てくれたね。って言うか、どうしてソルがここにいるの?」
なんでこんなところにソルがいるのだろう。もしかして──
ソルは十七歳の青年だがどうもザックを小型化した様なところがある。つまりプレイボーイなのだ。
「ナツミに会いに来たのにニコに聞いたらネロさんと出かけたって聞いて。探しに来たんだよ」
「ああ、そういう事なのね……」
驚いた。ソルが女性を連れてラブホテル代わりに店に来たのかと思った。勝手な誤解をした事に私は自分が恥ずかしくなった。
少し頬を赤らめて見るが相変わらずネロさんに引っ張られたままの私にソルは顔を青くして喚いた。
「そう思って探しに来たのに……ザックさんという人がいるのに、ネロさんと店に入ろうとしているなんて!」
ソルが頭を抱えて天を仰いだ。
ひーっ! 何て事を言い出すのよソルはっ!
「そんなわけないでしょ! この引きずられている姿を見て分かるでしょう。嫌々ながら店に入ろうとしているのが」
私が慌てて否定するとソルの後頭部を勢いよく叩いた女性がいた。
「本当よ! 見たら分かるでしょ。そんな状況じゃない事ぐらい。本当にソルって勘違いばかりなんだから」
赤いサンダルに、真っ赤なフレアスカート。そして黒いチューブトップにポニーテールを揺らして両腕を腰に添えて前のめりになったソルを怒鳴ったのは──
「エッバ!」
先日裏町でお世話になったエッバだった。
「ハァイ。悪かったわね、この馬鹿ソルが迷惑かけたみたいで」
エッバは顎を少し上に上げて笑うと直ぐに不機嫌な顔をして視線を逸らす。
それはエッバ独特の照れているだけなのが直ぐに分かった。だって浅黒い肌の頬が少し赤くなっている。
「久しぶりだね~会えて嬉しいよ」
私が笑いかけるとエッバがキョロキョロと視線を移して私を見たり見なかったりしながら両腕を組んだ。
「そ、そうね久しぶりね。まぁ、た、たまたま会っただけだけど」
ところどころどもりながらエッバが口をへの字にした。この状況がたまたま出会っただけだと言えるのかどうか謎だが。
「そうだよね。ザックならまだしも私に会いに来てくれたわけじゃないよね。分かってるよ。あっ、それともソルと一緒に時間泊の部屋を利用しに来たの?」
「そ、そんなわけないでしょ。ザックが好きだった私だけど、別にナツミに会いに来たっていいじゃない。それに、ザックに似ている行動を取るからと言って、ソルみたいなクソガキを相手にするわけないでしょ!」
私の質問に慌てて被せて怒鳴ったエッバだった。
「酷いなエッバ。毎日しつこいぐらい連れていけってうるさいから。仕方ないから連れてきてやったのに何で俺を殴るんだよっ」
叩かれたソルが後ろ頭を押さえながら隣のエッバを睨みつける。
すると途端にエッバがしどろもどろになって視線を石畳に落として呟く。
「べ、別に、私は来たいなんて。その、そんな事言ってないし」
「言っただろう! 嘘をつくなよ。『ジルの店』の踊り子が海で泳いでいたって聞いて、ナツミの事ばかり聞いてくるくせに。この間なんてクプレプ持っていけとか言い出すし」
「そ、そんな事は言った様な気もするけれども言ったと思うけれども!」
「ほーら言ったくせに。でも一人で『ファルの宿屋通り』にくる勇気がないから俺についてきたんだろうがっ」
「も、もう、そんな大きな声で言わなくてもっ!」
ぎゃぁぎゃぁと大声で喧嘩をしだすソルとエッバ。
行き交う人々の視線を浴びながら痴話喧嘩の如く二人は罵り合っていた。
その騒ぎを聞きつけたのかネロさんが手にかけていた金のドアレバーが動いて中から人が、店主のゴッツさんが顔を出した。
ドアの隙間から店内の香りがした。色っぽいなまめかしい香り。黒い建物とマッチした香りだ。
「何だ? 人の店の前でうるさいな。痴話喧嘩ならよそでやってくれ──ん? ネロにナツミじゃないか」
低くて酒焼けしたざらざらした声を上げるが、ネロさんと私を見つけると目を丸くした。
「こんにちは。突然で申し訳ないですが、実は試食して欲しくて」
ネロさんがニッコリ笑って私が持っている銀のトレイを指差した。
「試食?」
ゴッツさんが首を傾げてガラスカバーをかけたおにぎりを見つめた。
久しぶりに見たゴッツさんは相変わらずの迫力だ。
ゴッツさんは白髪交じりの赤い髪を後ろで一つに縛っている。そして右耳は削がれた傷跡だけが残っている。そのせいで右耳が聞こえないのだろう。左半身を前に出しながら身を乗り出した。歳は五十前だと思うが、大きくボタンの空いたシャツの隙間からは鍛えられた胸筋が見えた。
ええい! こうなったら仕方ない。私も覚悟を決めて銀のトレイを差し出した。
「おにぎりって言うんです。オベントウとしてお昼に売る予定の食べ物なんです。ゴッツさんにも意見がもらいたくって。是非お店にいるトニやその仲間にも聞けたらなって」
私はゴッツさんを真っすぐ見つめる。
ゴッツさんは私と視線を合わせたままだ。何かを見定めている様な、見透かす様なゴッツさんの視線だった。
視線を逸らす事は許されない気がする。それに、ゴッツさんの赤い瞳がとても澄んでいたので思わず見とれてしまった。
「……そうか。三角の形をした変わった食い物だな。外で立ち話も目立つだけだ。今は準備中で散らかっているが中に入ってくれ」
ゴッツさんは瞳を細めて微笑むと、ドアを大きく開き顎をしゃくって中に入る様に促す。
「是非いれてもらいましょう。ナツミさん」
私を引きずっていたネロさんは手を放して素直に店内に入っていった。
「はい。ありがとうございます。えーと……お邪魔します」
私も初めて『ジルの店』以外のお店に足を踏み入れた。
「お前達二人は裏町のソルと女か? どうせナツミについてきたんだろ。いいぜ入れ」
ゴッツさんはソルとエッバにも店に入る様に促した。
「ヒッ!」
初めて見るゴッツさんの姿にエッバが小さく悲鳴を上る。そして今まで言い合っていたソルの後ろにパッと隠れて震えていた。
うん。分かるよその気持ち。私は思わず苦笑いでエッバの姿を見つめた。
「な、何なの? どうなってるの? あんなに怖い顔なんて初めてよ! ザームなんて非じゃないし」
「そうかな。ザームさんも大概怖いけれどもさ。性格を知っているとそんなに怖い顔じゃ無くなるんだよな。って何で俺の後ろに隠れてるんだよっ」
「もう! うるさい。黙ってよソルの馬鹿」
「殴るなよっ。これ以上馬鹿になったら俺も困るんだ」
エッバとソルもブツブツ言いながら店内に入った。
この時私は、おにぎりの試食について頭がいっぱいだった。
もちろん純粋に意見を聞いてさっさと帰るつもりだったのに。ややこしくしたのはもちろん私のせいであり、それを膨らませたネロさんだと思うけれども。
おにぎりの話からまさかのあんな事になるとは──そう、まさか私が他人のベッドシーンを覗く事になるなんて。
この時は想像もしていなかった。
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