【R18】ライフセーバー異世界へ

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134 貴方が欲しい その2

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 視界が塞がるとその他の五感が研ぎ澄まされていく様な気がする。
 嗅覚、肌で感じる感触。そして音──

「んっ、ふっ……」
 ザックと向かい合って彼の上に跨がったまま、吐息すら吸い取られるキスを受けとめる。ザックは歯を立てずに私の唇に噛みつく。ゆっくりと離れると「びっくりした」と話そうと口を開いた私の口をザックの薄い唇が塞いでしまう。

 ぬるりと肉厚の舌が滑り込んできて私の口内をゆっくりと舐める。舌で舌をやさしくなでられ飲み干せなくなったよだれが口の端からこぼれる。そんなのお構いなしにザックは上顎を舐めて小さく息をした。

「ん……」

 ザックの鼻から抜ける様な声に私は心臓が跳ねる。視界が塞がれているせいなのか、ザックの声が「うっとり」しているのがとても分かる。単に息を吸うだけじゃなくて堪らず漏らした声だという事に気がついて私も合わせて溜め息をついた。

「ぁ……はぁ……」
 いつも以上に自分の声が甘い。
 その声にザックが私の口内から一度去っていき唇をつけたまま小さな声で囁く。
「いい声だな。キスは好きか?」
 低くてお腹の底に響く声。なのに滑舌がよくて聞こえやすい。
「うん。ザックのキスが優しくて、好き」
「どんなのが好き?」
「ゆっくりと上顎を舐められるのが好き。後、苦しいのも──」
「苦しいのも?」
「ザックの頬が鼻を塞ぐ時があるよね。でも海の底みたいで」
 そこまで話したらザックが私の下唇を舐めて、優しく口をもう一度開く様に合図する。
 ゆっくりと再び舌が入り込み、寄せては返す波の様に舌を絡めて少し去って、奥まで入ってを繰り返す。

 好きだと言った上顎も舐められるけれども、突然口内の息という息を吸い上げられて息が出来なくなる。

 苦しい。

 しかし、次の瞬間リップ音を立ててザックの唇が離れていった。海の底から水面に飛び出た時と同じ様に沢山の空気にありつく。鼻から吸った空気の中にザックの香水、ベルガモットの香りがした。

 香りでザックが側にいるのが分かる。

「はは、そんなに深呼吸しなくても」
 ザックが私のお尻を引っ張って自分の股間の辺りに腰を落とす様に促す。

「だって見えないし……ザックがどれだけ近くにいるのか香りとか音とかでしか感じられないから」
 腰を落とすと、ザックの大きく膨れ上がった熱い分身が丁度私の股の間に当たる。
 怒張は上を向いているので飲み込んでしまいそうだが、ザックが私の足の付け根に幹の部分を擦りつける様に座らせる。

「んんっ」
 私はキスだけでしっとり濡らしている様で密着した部分から彼の太い幹を濡らす。

 ツルリと滑って腰が軽く前後する。すると私のぷっくり膨れた花芯が刺激されて体を震わせてしまう。それすらも気持ちよくて思わず繰り返す様に腰を前後に揺らす。
 するとザックがお尻をギュッと握って動きを止める。

「駄目だ一人でイイところ探すな」
「だって、キスだけでこんなに」
「『こんなに』って?」
「だから、その……あの……」
「俺の質問にきちんと答えないとこのままだぞ」
「……」

 どうしよう。何だか凄く言いにくい。

「ほら」
 私が言い淀んで口を閉じていると、ザックが私のお尻を掴んだまま軽く前後する。すると花芯が再び刺激されて堪らず声を上げてしまう。
 しかし、私が声を上げた瞬間ザックは動きを止める。

「ほら続けて欲しかったら言えよ」
 ザックの熱くなっている幹の部分がピクリと動く。低い声が命令口調で先を促す。
 私はゴクリと唾を飲み込み観念して口を開いた。
「わ、私の、足の付け根の……」
「足の付け根の?」
「ザックを受け入れるところが、ヌルヌルで」
「へぇ。どうしてヌルヌルなんだ?」
「ザックのキスが気持ちよくって、直ぐにそうなっちゃうって言うか」
「それで?」

 まだ言わせるのっ?! 

 私は全く引かないザックに驚くが、引き返せない。思い切って声を張る。

「その上にある膨らんだク、ク、リ……が」

 駄目! 恥ずかしい。

 部位の名称を答えた途端顔から火が吹き出る錯覚を覚えた。変な強弱をつけながら私はたどたどしく話した。

 変な事ではないのに。全然変じゃないのに。何故こんなに恥ずかしいのっ。

「……が、膨らんでそれが擦れて、気持ちよくって。腰が勝手に動いたの」

 ザックがお尻を掴んでいた両手を離すと、私の腰を左手で抱き寄せ、右手で頬を包んだ。突然違うところに触れられてびくりとするが特に頬を包んだ右手が冷たくて思わず擦り寄る。擦り寄った態度にザックが気をよくしたのか頬を撫でた。

「イイ子だ。顔が真っ赤だな」
「だっ、だって。こんな言葉は言った事ない」
「じゃぁ俺が初めてだな」
 ザックが嬉しそうに声を上げた。

 やたら私の初めてにこだわるザックだ。

 そりゃぁ体を合わせたのもキスもザックが初めてではないけれども。
 それはお互い様で仕方のない事なのに。
 それでも初めてだって聞くと嬉しいという気持ちは私も少なからず分かる。

 こんなのナツミだけだ──とか。

 ザックに言われるとそれだけで嬉しい。
 嬉しい反面本当なのかなと疑う事もある。だけれど、ザックが私のこんな貧相な体に溺れると言うならそれは嬉しい。

「私だってザックの初めてが欲しいし……」
 思わず呟いたらザックが頬を撫でていた手を止めた。
 それから首につけているネックレスのチェーンを辿って魔法石に触れる。

 ザックがプレゼントしてくれた魔法石。ザックと同じ瞳の色で輝く石。彼の血を垂らす事によって誓いを立てたものだ。

「誓ったのを忘れたなんて言わせない『俺の側にずっといてくれ』と伝えたのはナツミだけだ。こんなに俺の初めてを持っていってもまだ初めてが欲しいのか?」
 ザックが掠れた声で小さく呟く。

 それでも──

「足りないの。抱かれて満たされてもまだ埋めて欲しいって思う。でもザックも同じみたい?」
 目隠しをされたまま呟く。目が見えないから不安だけれど。目が見えないから視線が合わないから何となく口に出来る言葉な様な気もする。
「そうだな俺も同じだな。与えて与えられて。ずっと繰り返していくんだ」
 そう言ってザックは再び私の唇を塞いだ。





 キスをしながら次々と体位を変える。

 跨がったまま腰を振る様に言われ言う通りにする。花芯が擦れてどんどんと体液を垂らす羽目になる。ザックが耳元に口を寄せて「ナツミのが白く泡立ってきた」と呟く。

 艶っぽい声にブルリと震えて素直に答える。「だって凄く気持ちがいいの」そう答えるとザックも一つずつ素直に返してくれる。「俺も気持ちがいい」と掠れた声で呟く。

 ザックの熱い杭はピクピクと動く。時折先にある鈴口を掠める。ザックだってヌルヌルしていた。我慢しているザックの体液と相俟って更に滑りを増す。

 何度か掠めた後ザックが小さく呻いた。ザックこそ我慢強くないなぁ。おかしくて笑ったのがバレてしまいザックにベッドに転がされた。

 今度はキツくM字開脚されて広がった秘所にザックが顔を近づける。フッと息を吹きかけられたら堪らず仰け反る。
 後ろ手に縛られた手が少し痛むけれども、そんな事は気にしていられない。

「あっ、あああっ」
 さざ波の様に震え上がる。
「さぁどうして欲しい?」
 秘所の近くで呟かれるだけでもう我慢出来ない。私は必死に声を上げる。
「あっ、わ、分からないのっ!」
 跨がっている間散々焦らされた体はもう限界だ。

 この感じがとても嫌な時間。早く早くと燻った熱の出口を探している。
 いわゆる助走でしかないのに、苦しくて辛くて耐えがたい。
 早く弾けて遠くにいきたい。それは天にも昇る心地よさなの。

 なのにザックはわざと心地がいいポイントを外して愛撫する。真っ赤に膨れた花芯に触れる事はない。広がった花びらはきっと奥深くザックが来てくれる事を望んで開いているはずなのに。花びらの襞の周りをゆっくりと舐めるだけだ。それすらも震える。私は足の爪先を丸めて力を込める。

 この間、触れて欲しいところが移動するのだ。先ほどは花芯だったのに、今度は違う。表層にない。体の奥。そうザックのもので貫かないと届かない場所に移る。
 なのに、ザックの吐息がかかると、突然花芯を触って欲しくなる。

「ああっ! もうもう。嫌なのこの感じがっ!」
 私は目隠しをされた顔を左右に激しく振ってお願いする。

 焦らされているというより勝手に焦がれている。分かっているけれども息が浅くて苦しくてこの瞬間が苦しい。
 更に見えない視界が余計に苛つく。無駄に五感が強くなるから感じ方もいつもの倍以上だと思う。

 ザックが秘所から顔を離して体を入れる、ザックの怒張が再び秘所を掠めて息をつめる。
 なのにザックは私の中に潜り込んでくれない。
「ナツミ力を抜け」
「そんなの出来ない!」
 両手を私の頬に添えて優しく撫でる。私は大声を上げてザックを否定する。
「前に焦らされるの辛いって寸止めは嫌だって、ザックだって怒ったのに」
 私は半泣きで懇願するとザックが笑いながらほっぺたにキスをした。
「分かった分かったから。だけどナツミのは俺のと少し違うんだよな」
「何処が違うんだよぉ」
「ナツミは凄く感じるのに途中で誤魔化そうとするだろ。そうしていくと自分で気持ちいいところが分からなくなるんだろ。心地のいいところから外れていくから自分で自分を苦しめているのさ」
「どういう意味、んんっ」
 瞬間ザックの熱い杭がぐりっと私の花芯を潰して目の前の真っ暗な視界の前に火花が散った。体が震えてあっという間に達してしまう。
「っ、はぁ」
 息をつめて気を吐くとザックが優しくキスをしてくれた。口の端から垂れたよだれを舐め取りながら何度も優しく啄む。
「ほら、イケたけど。実は今、このぷっくり膨れたところがよかったんだろ?」
「うん、うん」
 グズグズと鼻水を吸い上げる。軽く達した事で体が少し楽になる。
「視界を塞いでいる今なら素直に言えるだろ? 何処がいいのか。伝えてくれたら必ずそこを触れて気持ちよくしてやるから」
「だって気持ちよくなったらおかしくなる」

 そうだ怖いのだ。
 だって私が私ではなくなる。
 あんなに乱れて明日の朝どうなるのだろうとか。
 よだれは垂らすし、シーツはぐしゃぐしゃに濡らすし。
 最後はいつも泣きながら鼻水を垂らすし、酷い顔なのだ。

 ザックの瞳に映る私が滑稽だったらどうしようとか。そんな事ばかり考える様になってしまった。
 それぐらい最近の私の痴態は目に余るのだ。

「おかしくないだろ。何を言ってるんだ?」
「おかしいの私はっ。知らなかったの自分がこんなに達しやすいとか。ザックに出会う前はこんな事ないのに。達してしまえば後は簡単になっちゃうし。私は単なる快楽に馬鹿みたいに弱くて何だか自分が嫌になる……」
「え。そんな事考えていたのか。それこそ馬鹿だろ」
 ザックが私の言葉に軽く笑う。

「だって……」
「馬鹿じゃない。ナツミが快楽で馬鹿なら俺はもっと大馬鹿だ。ナツミとなら快楽に流されてもかまわない」
「……う」
 ザックがそう言いながらリップ音を立てながらキスを繰り返す。頬に、唇の端に、耳元にそして鼻の頭に。
 安心してかまわないそれでいいと言ってくれる。
「直ぐにイッちゃうの嫌じゃない?」
「いいじゃないか。イカせられない方が大問題だろ。それに、直ぐにって言うけれども俺なんて三分持たないのに」
 まだ三分を根に持つザックだった。
 
「お漏らしみたいになるし」
 シーツは毎回色を変える。恥ずかしいぐらい体液って流れる事を知った。
「別に気にしなくていい。それだけ気持ちがいいんだろ? それに俺のだって混ざってる」
 確かにそれはそうなのだが。

 ザックはゆっくりと私の前を遮っている目隠しを外してくれた。部屋は少し光を落としていてザックが優しく笑って顔を覗き込んでいたのが見えた。

「あーあ、目隠しの下でも泣かなくても」
「だって……」
 ザックが目尻に薄い唇を当てて涙を吸い取ってくれた。それからゆっくりと唇を合わせて舌を再び絡める。キスの間でザックが吐息と共に呟く。

「俺はもっとやりたい時に何処でもやりたいし。この間の様に海の中でもかまわない」
「んっ……」
 私もそうなのかもしれない。ザックに強烈に触れたくなる時がたまにある。
 それを否定しないといけない気になるのは、もしかして自分が快楽に弱すぎる事が恥ずかしいと思っているからかも知れない。

 しかしザックはそれすらも肯定してくれる。

「いいじゃないか俺が与える快楽に弱いだけならさ。大歓迎だ。キスしたい時にキスしてって言えよ。そして嫉妬した時には嫉妬したって言えよ。俺にぶつけてくれたらいつでも受けとめる。そして──ん」
 ザックが軽くリップ音をつけて離れていくと腰を浮かせて太くて熱い杭を私の入り口にあてがう。
「気持ちがいいところは何処か教えてくれよ。抱きしめてやる。だから素直にな?」
 ザックがペロリと再び私の唇を舐めた。ギラギラと光るグリーンの瞳。
 金色の髪が一房崩れてそんなザックの瞳の前に垂れ下がった。

 その瞳に吸い寄せられる。素直でもいいのだよね。
  
「早く……中に来て」
 私がそう言うとザックがあっという間に口を塞ぐ。

 瞬間ゴツンと奥に音が立った様な気がするぐらい突き立てられる。私は後ろ手に縛られたままで大きく仰け反って体を震わせる。
 ザックはズルズルと大きくエラの張った杭をギリギリまで引き抜いて再び奥まで差し入れる。

 そのたった二回の行動で私はザックの口の中に悲鳴を残して空中で足を蹴った。

「っは、中が凄く締まっ」
 ザックが私の口元で歯を食いしばって私の震えを受けとめる。

 目の前の火花と共に一瞬息が詰まる。体の奥で弾けた感覚。

 気持ちいい。力がスッと抜けて中のザックの熱を改めて感じる。

「あっ、は……」
 力が抜けて私はだらしなく笑うとその顔を見たザックがポカンとしてから次の瞬間頬を染めた。
「力抜けたな。いいなその調子だ。だけど、そんな誘う様な顔して……気持ちいいんだな」
「気持ちいい……溶ける。酷い時はこのままずっと続くから、ザックとのエッチって凄いよ」
「それって最高の褒め言葉。俺も何度もイケる口でよかった。じゃぁ次は?」
 ザックは腰を緩く大きく動かす。それもいいけれども今欲しいのは──
「えっと……もっと腰を小さく動かして」
「うん。分かった、こっちは?」
 腰を小さくゆっくりと動かすザック。それからキスをしながら私のささやかな胸の尖りを親指でこねる。
「……ん、そこも好き。ザック好き……あ、ああ……」
 私は緩く抽送され、あっという間に昇りつめる。内太股が震えてザックを締め上げる。
「あっ、ヤバっ。うっ」
 瞬間ザックも熱い飛沫を私の体の奥で放ってしまった様で目を丸めた。
 そしてその後おでこをつけて笑い合う。

「ヤベェ無意識に出た」
 そう言ってザックは頬を染めた。そう言うけれどもちっともザックの熱い分身は小さくなる様子はない。
 私はそんなザックの唇に自分のそれを寄せて吸い上げる。
「今度は激しくして欲しい」
「もちろんさ」
 ザックは顎を掴んで私のキスを深いものに変えていく。

 少しでも気を抜いたらお互いあっという間に達してしまう。

 さざ波と大きな波を繰り返して私とザックはお互いの気持ちのいいところ探って教え合った快楽に溶けていく。

「今度は海の中でやりたいなぁ。駄目?」
「もう……ザックは。仕方ないなぁ」
「だって、ナツミが一番輝いているのは海の中なんだぜ?」
「今は?」
「今もだけど。それは当たり前だろ、はっ……」
「ああっ」
 ザックが再び私の中で溶ける。私もザックを受け入れ今まで以上にザックを欲しがって強請って泣きながら達していく。
 視界は広がったけれども手は拘束されたままだ。

 しかし、そんなのどうでもいい。
 もどかしい感覚も素直に伝えてしまえばどうだっていい。

「まだ欲しいの……」
「俺も欲しい。俺も全部やるよ、だからナツミも全部くれよ」
「うん。あげるよ」

 後数日経てばオベントウを売りに外へいく。
 きっと忙しくなる。

 今以上に神経を使う日々が始まるのだから、こうやってベッドの上で激しく優しく抱き合う時間も減るだろう。

 あっという間に噂は流れ、奴隷商人と対峙する時がもうそこまで来ている。
 捕まえたらその後はどうなるのかな。

 魔薬はどうなるの? ノアは? お兄さんは見つかるのかな?
 ネロさんは? そして領主は? このファルの町はどうなるのだろう。

 そもそも、奴隷商人もお兄さんも無事に捕まえられるのかな。

 それも気になるけれども、私は・俺は、毎日抱き合って眠りにつきたい。
 ただそれだけなのだ。

 だから──

 私の大切な人が怪我をしない様に。
 俺の大切な人が傷つかない様に。
 
 ザックのいない世界なんて、
 ナツミのいない世界なんて、

 考えられないのだから──

 私とザックは再びお互いの体に沈んでいった。
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