【R18】ライフセーバー異世界へ

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144 新 オベントウ大作戦 その10

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 百人近くの人数が集まっている事に面食らっているダンクは、ダラダラと汗をかきながら首を小刻みに左右に振っていた。

 ここに集まる人達が奴隷商人を捕まえる為に一芝居打ってくれた。こんなにも沢山の人がザックやノア達に力を貸しているのかと思うと胸が一杯になる。裏町も、踊り子も、軍人も、男も女も関係ない。

 私は皆が集まってくれたのだと思うと、左腕や頬の痛みも我慢しようと決めた。

「い、一体何だって言うんだ。この町はおかしくなったのか」
 カイ大隊長が登場した事でざわついていた皆が静かになり、ダンクの言葉は空しい呟きとなった。

 波の音と海鳥の鳴く声が聞こえる中、廃墟となった集会所からブーツの音がする。

 静かになった辺りに響く。暗い建物の中からその人物の姿が徐々に露わになる。

「ザック」

 ザックだった。

 ザックの白いシャツは胸元から右手にかけて激しく血しぶきがかかっていた。その姿に町の皆が息を飲んだのが聞こえた。女性の中には口元を押さえて視線を逸らす人もいた。

 ザックは顎を引いて真っすぐにダンクを睨みつけている。いつもなら優しいグリーンの瞳が怒りで燃えている。薬を使って痛覚などを取り除いたバッチとどんな戦いをしたのかは聞かなくても分かる。

「クッ、ザック」
 ダンクは短剣を私の首に改めて突きつけると、ギリギリと歯ぎしりをする。眉間に皺を作り、下から睨み上げる様にザックの名前を呼ぶ。

 ザックの後ろからノアがマリンを片手で支えながら現れた。ザックと同じで白いシャツや握りしめた剣から血が滴り落ちている。震えが止まらなくて足が覚束ないマリンをその場にいたミラに預けて、ザックの少し後ろで立ち止まる。ノアはザックに全てを任せるつもりの様だ。
 
 ザックは集会所の出入り口からゆっくりとダンクと私に近づいてくる。やがてザックはゆっくりと口を開いた。

「ナツミを放せ」
 後数メートルというところで立ち止まり、剣を持った腕を真っすぐ上げて剣先でダンクを指す。驚く程低くて冷徹な声。ザックの瞳は怒りで燃えているが冷静だった。

 ザックの落ち着き払った様子に、ダンクは思いの丈を吐き出した。

「何で、何でお前なんだ。たいして俺と変わらないのに。どうしてお前の回りには、町が人がそして軍が集まるんだ!」

 それがダンクのザックを怨む根幹なのだろう。

 切っ掛けはマリンという少女を手に入れられなかった事だった。自惚れ男が募らせた嫉妬と捻れた羨望。

 踊り子集団にいて踊りを磨けばよかっただけなのに。その整った容姿を武器に女性や男性をたぶらかし、魔薬を手に入れ人を狂わせお金を手にした。

 香辛料スパイス商人、奴隷商人に身を落としたが、それは全て自分がした事なのだ。

 独りよがりなダンクの言葉を聞いたザックは静かに答えた。
「お前は勘違いをしている」
「勘違いだと?」
「町の皆が集まったのは俺の為じゃない。俺が地べたに頭を擦りつけ頼んで集まったわけでもない」
 ザックのその言葉にダンクは改めて取り囲む町や軍人を見回す。皆がダンクを無言で見つめる。

 前髪を冷や汗で濡らすダンクに、ザックは再び一歩近づいた。
「自然に皆が集まり協力してお前を陥れたのは──ナツミだからだ」
 ザックの言葉が辺りに響いた。その声を聞いてダンクが首を左右に細かく振る。
「こんな。こんな、チビの黒髪のせいだっていうのか? 女なのか男なのかガキなのか何なのか分からない様な小娘に皆が協力しただと? 馬鹿な」
 ザックの一言にダンクは真上から私を見下ろし、唾を飛ばしながら首を左右に振る。
「一緒に働く踊り子が、町の皆がナツミと接して変わりつつある。裏町だからだとか踊り子だからだとか男も女も関係ねぇ。何故なら俺自身がナツミに変えられたからだ。女も男も平気で売り飛ばし、人をものとしか思えないお前には理解できないだろうさ」
「クッ」
 ダンクが奥歯が潰れるぐらいの音を立てて歯ぎしりをする。
「ダンク。お前はファルの町、全員を敵に回したんだ。その覚悟は出来ているんだろうな」
 そう言ってザックは前足に重点をかけていつでも飛び出せる体勢を取った。

 ザックに迫られてダンクは焦り出すが、短剣を私の喉に刃を擦りつけた。

「熱っ」
 私は思わず呻いた。痛いと言うよりパッと熱を感じた。喉の辺り、命に別状はない程度の浅い傷だった。首に触れた場所から、短剣の握りしめたダンクの手に向かって私の血が伝う。

 その血を見たザックの顔色が変わり、ダンクがニヤリと笑う。
「フフフ、ハハッ。どんなにお前達が俺を取り囲んだでもどうにもならんさ。ザックが俺に飛びつくよりも、矢を放つよりも。お前達の大切な大切なナツミとやらを手にかける方が早いに決まっている」
「ッ」
 ザックが犬歯を見せて声を立てず唸るのが分かった。

 ザックが悔しそうにしているのが嬉しいダンクは気をよくして、一歩後ろに下がった足を前に戻した。その少しの動きで、後ろの崖の小石が海に向かって落ちていった。

 その音を聞いたダンクが少しだけ体を震わせた。

 ダンクは後ろにある崖、海が怖いのだ。

 それに気がついた私は、渇いた口の中にあるありったけの唾を飲み込んで、数メートル前に迫ったザックを見つめる。

 大丈夫だ、信じるんだ、ザックが必ず助けてくれる。それに皆が助けてくれる。

 私は固く決心をした。その決心がザックに伝わったのか、ザックが口を小さく開けて小刻みに首を左右に振ったのが分かった。

 止めろと言いたいのだろう。

 ザック、私に出来る事があるならば絶対に諦めたりしない。

「ダンクもう逃げ場はないよ。前にはザック、そして後ろにはあなたが海がある」
 突然話はじめた私にダンクは体を小さく震わせて私を上から見下ろす。

「恐れている海だって? 何を言い出すんだ。とうとう恐怖で頭がおかしくなったか」
 そう思われても仕方がない。
 痛さと恐ろしさで震えて立つ事もままならなかった私が、急に強い言葉で話しはじめたのだから。

 私はダンクに左腕を捻り上げられたまま彼の顔を見上げる。視線を合わせると予想外の事が続いて動揺しているのが分かる。
 恐れている海、と言われてダンクが反応した。冷静を装っているが私の予想は当たっているのだ。

 後ろの崖のから風が吹き上がる。崖に当たる波の飛沫が聞こえる。

 私には日常茶飯事の癒やされる風であり音だが、ダンクにとっては違う。風と飛沫の音を聞いて、ダンクの腕に鳥肌が立っていた。私はその様子を見てダンクの突き立てる短剣の手に自分の腕を添える。

「ファルの町の皆は自分で選んだんだ。あなた達、奴隷商人に騙されて滅茶苦茶にされない様に。町を守る為にここに集まったんだよ」
 私の瞳をジッと見つめるダンク。

 ダンクの瞳に私の姿が映っている。意外と冷静な自分に驚きつつも、ダンクの反応を待つ。

「この状態で俺に説教か? 笑わせる」

「説教なんて。そんな事よりあなたは罪を償うべきだ」
 私が低い声で強く言う。

 ダンクのせいでどれだけの人間が過去に命を落としたのだろうか。傷つけられたのだろうか。償いきれるものではないかもしれない。
 ダンクは私の言葉に頭に血が上り、喉に突き立てた短剣を大きく振りかざした。

「俺が聞きたいのはそんな説教ではない。ザックが悔しがる声だけなんだっ」
 唾を飛ばして叫ぶダンクの顔は、目を吊り上げ目尻やおでこ口角には皺という皺が出来ていた。私はダンクと短剣の尖った先を見つめながら、体を強張らせる。

 刃の切っ先が来る。

 瞬間、風を切る音が聞こえた。振り上げたダンクの手首を矢が掠めたのだ。私とダンクに血の雨が降りそそぐ。

 集会所の屋根の上、ジルさんの放った矢が見事にダンクの手首を掠めた。

「ギャァアアアア」
 ダンクが青い空を仰いで悲鳴を上げた。

 ダンクの手に握られていた短剣が滑り落ち、崖下の海に向かって落ちていく。

 崖の高さは十メートルもない。水泳の高飛び込みより低いと感じるもので、子供達が度胸試しに飛び降りるのだとか。

 かつてノアがザックに突き落とされて海が水が怖くなった崖だ。



 それならば、このまま。



「ナツミよせ。止めるんだ!」
 ザックの叫ぶ声が私の後ろからする。その声と共にザックが地を蹴り、剣を放り出す音が聞こえた。



 私にも出来る事がある。



 私は空を仰いだダンクに振り返り、彼が着ている高級チュニックを両手で掴んだ。
「何を。何をするんだッ」
 ダンクは矢が掠めて血が滴り落ちる腕を上げたままで、私を信じられない目で見つめる。何故ならば私がダンクの体を少し後ろに倒したからだ。

 何をしようとしているのかダンクには分かったのだろう。慌て様が尋常じゃない。

 もちろん私も一緒に体を傾ける。

「あなたを絶対に逃さない。海なら何処にもいけないでしょ」
 私はそう言って大きく地面を蹴った。蹴ってそのままダンクと共に崖から海に向かって飛び込んだ。

「ナツミ!」
「ザック!」
 町の皆が私とザックの名を一斉に叫ぶ。

「や、止めろ、止めっ。ぎゃぁぁぁ!!!!」
 バッチやコルトが腕を切り落とされた時よりも、ダンクの手首に矢が掠めた時よりも、ずっと大きな声でダンクが叫んだ。その叫び声は海に向かって消えていく。

 空中でダンクは手足をジタバタするので、私はダンクから手を放して水面に上手く着地できる様に体勢を整えようとした。

 すると空中で誰かが私の体を後ろから引っ張り強く抱きしめた。

 潮の香りと共にベルガモットが強く香る。この香りは他の誰のものでもないザックだ。

 ザックはほぼ一緒に崖から飛び降り、空中で私の頭を胸にキツく抱きしめた。

 ザック、ザック。
 困った時には必ず現れてくれる頼もしいザック。

 私はザックの名前を何度も心で呟いて、彼の背中に腕を回しこれから来る衝撃に身を任せた。
 
 両手両足をバタつかせたダンクは、無惨にも背中から水面に叩きつけられ、大きな飛沫を上げて海に落ちた。
 
 その横で上手く着水した私とザックは、頭から深く海に潜る。

 冷たい海水が優しく私達を包んだ。

 海の中でそっと目を開けると目の前にはザックの白いシャツが見える。海水と混じって血が滲むのが見えた。

 そして心音。ザックの心臓が動いている。生きている。私達二人は、勢いよく水面に顔を出した。

「ぷはぁ! 本当に飛び込むかよ! 無茶をしやがる!」
 水面に浮上するとザックは私を抱きしめたまま大声を張り上げた。長めの前髪からポタポタと海水が滴り落ちる。

「ゴホッ。あは、あはは。はぁ~よかったぁ」
 少し海水を飲んだ私は、水の冷たさとザックの肌の温かさに安堵し、水面に上がった途端笑ってしまった。

 私がヘラヘラと力なく笑うのでザックが目を吊り上げて怒る。

「よかったじゃねぇ! 何を笑ってんだよっ。一歩間違えたら刺されていたんだぞ。そうじゃなくてもこんな大怪我をしているのに。左の肩も痛そうだし頬は腫らすし首にまで傷を作って。更に無駄にダンクを挑発しやがって……馬鹿だろ本当に。ナツミときたら無茶ばかりで。生きた心地がしなかっ……」
 ザックは大声を最初は張り上げて怒るのに最後の方はだんだん声が掠れて言葉が少なくなった。その代わり濃いグリーンの瞳に涙がどんどん堪っていく。垂れ気味の瞳がギュッと閉じられて、堪った涙が海水と一緒にザックの頬を伝った。

 ザックの心臓が凄い速さで音を立てている。その心音で、どれだけザックが慌てたのが分かった。

「ごめんなさい。怖かったよ。怖かったけど!!! でも、ザックが皆が助けてくれるの信じてた。ありがとう。ごめんなさい。ごめ……っっ」
 抱きしめられながら手をザックの背中に改めて回す。

 ありがとうと、ごめんなさいを繰り返す度、ザックが何度も頷いて更に強く私を抱きしめる。そうして、私の耳元でザックが鼻水を啜る声が聞こえた。

 何で突然泣き出すの。ズルいよザック。

 突然ザックが泣き出すから私も色々な恐怖がじわじわと戻って来て涙が溢れてきた。それと共に痛みがぶり返して生きた。特に抱きしめられるから左肩が痛い。

「うぅ。い、痛い。痛いかも」
 抱きしめられて呟く私にザックが我に返り慌てて、私を腰から抱き上げる。そして、浜からやって来る小型の船に手を振る。
 
「くそ! 再会を味わう暇もねぇ。ナツミもう少し我慢だ。おーい。シン! こっちだ。ここだ! ナツミが怪我をしているんだ。それにダンクの回収を頼む」
 遠くから船に乗ったシンや数人の軍人が手を振っているのが見えた。シンが大声でザックの名前を呼んでいた。

 ダンクはしこたま体を打ち付けたせいで気を失っている。体は大の字になって浮き袋代わりになったチュニックのおかげでかろうじて浮いている。しかし、ゆっくりと沈もうとしていた。

「この高さからじゃ死なないか。しかしダンクも運がいいのやら悪いのやら。とにかく沈んでくれるなよ」
 文句を言いながらダンクの体を片手で引っ張り上げ、ザックが溜め息をついた。

 鼻の頭が赤くなったザックは、首を左右に振って涙と海水を自分の顔から振り落とし微笑んだ。

「とにかく奴隷商人の件はひとまず片付いたな」
「そうだね。後はノアのお兄さん、アルさんの事だけだね」
「ああ。そうだな……」
 ザックと私は波に揺られながら命がある事に安堵した。ザックの顔を見つめおでこをつける。最後には塩味のするキスを一つした。

 ありがとうザック。

 それから気を失ったダンクと共にシンの小舟に回収され、頭上で心配で何度も私達の名前を呼ぶ皆に向かって手を振った。

 見知った顔が幾つか見えるが、皆が飛び上がって私とザックの無事を喜んでくれたのが聞こえた。





 廃墟の屋根の上からカイ大隊長とレオ大隊長、そしてジルの三人は人だかりとなった崖を見つめる。町の皆が恐る恐る崖下を覗き込んで息を飲んでいたが、突然歓声が沸き皆が跳びはね口々によかった。やったと大声を上げているのが分かった。

「どうやら助かった様だな」
 過去の戦いで抉れた左目の前髪を海風が撫でていく。カイはその風がナツミとザックの二人を改めて守っていた様な気がして安堵し剣を鞘に収めた。

「当たり前よ。ナツミなのよ」
 いつからナツミはジルの物になったのだろう。そんな疑問はさておき、カイの隣でまるで結果が分かっていたと言わんばかりに両腕を組むのはジルだった。はち切れそうな胸を突き出して瞳を細めていた。

「そうか」
 カイはジルに短く答える。

 軍人であるレオ大隊長よりも先に弓矢を放ったのは何を隠そうジルだ。ジルなりにナツミを案じて守っていたのだろう。

 そう思うと今回の事はギリギリだったと思うが、そこはジルに問いただすのは止めておく事にした。

「集会所の中で生きている二人の奴隷商人も捕まえて城へ運べ!」
 地上にいる軍人にテキパキと指示を出すのはレオだった。レオは大きな体に似合わず細かい指示を出していた。

 ザックとノアが腕を切り落とした二人の奴隷商人、バッチとコルトは大量出血ながらも命を取り留めている。普通だったら既に死んでいるところだろうが、彼らが常用していた魔薬が尋常じゃない生命力、力を引き出し命を繋いでいた。

「皮肉なものだな。命を奪う魔薬が命を繋げているとはね」
 長く伸ばしたもみあげを擦りながらレオがポツリと呟く。

「しかしこれから禁断症状とやらに苦しめられる日々が待っているのだろう?」
 レオの言葉を受けてカイが静かに呟く。

 魔薬を詳しく分析した町医者ウツが言うには、香辛料スパイスと呼ばれる薬を常用していると禁断症状が起こり、幻覚を見たりと大変苦しい思いをするそうだ。どんな地獄が待っているのかは奴隷商人である本人達が身をもって知る事になるだろう。

「それでも生きている状態で奴隷商人を捕まえるなんてね。これは大手柄よねぇ。だってあんた達二人はノアとザックに『奴隷商人の命は問わない』と伝えていたのでしょ。よく言うわよね。あの二人と私が動く事と、新たにナツミという人物が加わった状況ならば、生かして捕まえる事が出来ると踏んでいたのでしょう?」
 ジルが海風で流れる髪の毛を押さえて、流し目で二人を見つめた。

 奴隷商人は売買の経路があるはずだ。
 ダンクがやっていた事はそれに輪をかけて特殊なはずだ。何処かの地で香辛料スパイスと呼ばれる薬の元となる植物を栽培し加工しているはずだ。それに過去に香辛料スパイスを売りさばいた町や売人、果てには、薬と合わせて奴隷を売り買いする経路。

 生きて捕まえる事で本人達から数え切れない悪事を吐かせ情報を得る事が出来る。ファルの町の軍が捕まえたとなると、他の町より有利な情報を得る事が出来るのだ。そしてその情報を軍の取り引き材料に使い、町と町、国と国とのやり取りに使う。裏の情報は大変貴重なのだ。

 だから生かして捕まえる事は、大きな意味がある。

 全てを悟っているジルの視線を受けて、カイとレオが満足そうに笑う。
「そうだな」
「確かに。ノアとザックだけではないファルの町皆の大手柄だな」
 カイとレオの態度は、元からそうなる事が分かっていたかの様だった。
 
 その様子にジルは腰から紫の扇子を取り出して、片手で開くと口元を隠してポツリと呟く。

「どんな褒賞が待っているか楽しみだわ~それはそれはとても豪華なんでしょうね」
 ジルはカラカラと高笑いをした。

 高笑いするジルの姿に、もみあげを擦る手を止めてレオが呆れる。

「ジル……お前と言う奴は。まずはナツミやマリンを労い癒やせよ。二人をこんな危ない囮にしておいて」
「あら。囮にするのはあんた達の作戦でしょ。私じゃないわよ。私は助言しただけ」
「こいつ! 口が減らない。おいカイ。ジルと連むのはいい加減考えた方がいいぞ」
 どうにも言い返せなくなったレオはカイに振り返り口を尖らせた。

「大男が口を尖らせるな。それにまだ全てが終わったわけではない。この奴隷商人を巻き込んだ騒動を起こした張本人、アル小隊長の行方がまだ分かっていないだろ」
 カイが両手を腰の後ろで組んで胸を張る。そして崖側で大騒ぎしている町の皆と離れた場所で立っているノアの姿を見つめた。

 よく見るとノアは、裏町の人間と大騒ぎをしているネロをジッと見つめていた。

 カイはそんなノアの姿を見て瞳を閉じた。

(そうか……ノア。お前も気がついた様だな)

 町医者のウツが言っていた。ネロが死病の薬を開発していると。
 そもそもネロはどうしてそんな事をはじめたのか。
 ここ最近起こった事や過去に起こった事をつなぎ合わせると、見えなかった事が見えてくるはずだ。

(ノア。血が繋がっていようといまいと問題山積の兄弟アルとネロを救えるのは、お前しかいないんだ)
 カイはゆっくりと閉じた瞼を開いて、心の中で呟いた。
 
 そんなカイの姿を見逃さなかったジルが、カイの右腕にしなだれかかる。
「あら? 何か企んでいるわねその顔は。次は何を考えているの?」
 カンのいいジルはカイの耳元で囁いた。

「フッ。当ててみろ。そうすればジルにも豪華な褒美をやってもいい」
「えー? 私の褒美は元々ないって事?!」
 どういう事よ! と、ジルが大声で屋根の上で喚いた。
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