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029 7月31日 お昼寝中の七緖くん
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階段を上り一番突き当たりのドアの前で立つ。ふと自分の髪の毛や服装に乱れがないか気になる。
(前髪。大丈夫。スカートはうん。ミニのジーンズはタイトだし変に裾はめくれてない。シャツは……ちゃんと前だけ入っている。後ろは綺麗にお尻が隠れている。よしオッケー)
私は前髪を触ってからドアレバーに手をかけて固まる。
(何がオッケーなのよ)
訳の分からない自分チェックに一人恥ずかしくなった。
ドアレバーにかけた反対の手でドアを二度ノックする。特に部屋の中からは反応はない。私は小さく咳をしてドアに向かって声をかける。
「七緖くん。私、巽だけど。入って良いかな?」
そう尋ねるけれども、何の反応もない。
(博さんが言った通り昼寝中かな)
私はゆっくりとドアレバーを押し部屋の中に入る。
「失礼しまーす」
若干小声で小さく開けたドアの隙間に身体を滑り込ませる。すると、ソファベッドをベッドの状態にして七緖くんが寝ていた。ドア側からは七緖くんの足の裏が見えた。
「スースー」
七緖くんの小さな寝息が聞こえる。
「……寝てる」
金色に近い緩くウェーブのかかった七緖くんの髪が、レースのカーテンの間から漏れる夏の光を受けキラキラと輝いていた。いつもは瞳を隠す様にしている前髪も、珍しく上に上げてちょんまげの様に結っている。
(しかも輪ゴムで髪の毛を結っている。あれ外す時に絡まって痛いのに)
その適当さが七緖くんらしい気もする。
七緖くんはソファの背もたれを倒してベッド状態にしているのに、ソファの時と変わりがない面積に大きな身体を横にし小さく曲げて芋虫の様になって寝ていた。
上半身は白いTシャツ。見るとそのTシャツの裾から左腕を入れて自分の右肩をつかんでいる。そのせいでおなかを半分ほど晒している。
部屋はクーラーが心地よい温度を保っているが、おなかを出しているのは寒いのか、薄手のタオルケットを腰から下にかけて巻き付けていた。裸足の足だけがタオルケットの下から出ていた。
私は音を立てずに後ろ手で部屋のドアを閉める。それから、一歩ずつ進む。見ると部屋のドアからソファベッドに向かって靴下、ネクタイ、制服のシャツ、ズボンが点々と落ちている。最後のズボンなんてソファベッドの端に引っかかっている。
「ふふふ」
私は笑いながら靴下、ネクタイ、制服のシャツを拾って簡単に折りたたみ片手に持つ。
(よっぽど眠たくて暑かったのね。ベッドに向かって一直線って)
毛足の長い絨毯の上をゆっくりと歩きながら七緖くんの痕跡をたどる。相当疲れているのかな。近づく私の気配にも気づく様子がない。
七緖くんの足元まで近づく。大きな身体を小さくキュッと「く」の字に曲げている姿が可愛かった。
(何の為にベッドにしたのかな。ソファのままでも変わらない面積を使っているのに)
「んんっ……スー」
七緖くんは寝息の間に口元をもごもごと動かした。それから再び寝息が訪れ、静かな部屋の中に響いた。
「起きそうにないね」
ぽつりと呟く私の声にも全く七緖くんは反応しない。それぐらい熟睡している。
私は七緖くんの姿と部屋を見渡す。部屋にはソファベッドとテーブルとテレビ、そしてたくさんの本が積まれている本棚。狭い部屋だが心地の良い空間。何だか七緖くんが眠たくなるのも分かる気がする。博さんの人柄なのか、居心地が良いのだ。
七緖くんの右手はだらりと垂れていて、絨毯の上に読みかけの雑誌が置かれている。しかも年季の入った比較的古そうな雑誌だ。
(何を読んでいるのかな)
そう思い覗き込もうとした時、ソファの足元にだらりと引っかかっている制服のズボンが邪魔をした。
(ふふふ。もうズボンまで脱いで)
私は笑いながら、そのズボンを手に取った。しかし、ある事に気がつく。
(ん? 制服のズボンと言う事は、七緖くん今パンツ一枚なの?)
そう思ってズボンを手に取ったまま私は固まってしまう。
が、衝撃的な事が更に判明する。手に取ったズボンの中からポロリと黒い布が絨毯の上に落ちた。
「あれ? 何か落ちた。あ」
そこには黒いボクサーパンツ。
(パンツか……えっパンツ? パッ、パンツって!)
私は重大な事に気がついて驚き、ズボンを持ったまま身体を起こそうとした。
が、運悪く私は七緖くんの脱いだズボンの裾を踏んでいて、そのまま身体を引き上げたのでつんのめってバランスを崩した。
「えっ、わっ!」
ゆっくりと静寂が訪れていた部屋に私の大きな声が響いた。すると私の声に反応した七緖くんがゆっくりと目をこする。
「ん、んん~」
七緖くんが寝返りを打ち、ベッドにしたソファの上に大の字になった。
「よっ、と、はっ」
私は自分のバランスを取ろうと必死にこらえたのに、今度は寝返りを打った、七緖くんの足にすねの部分を当ててしまう。
「あっ!」
(嘘! 倒れる! 七緖くんの真上に。それに右膝ぶつけない様にしないと)
そんな事を考えてバランスを取ったのがいけなかったのか、私は右足だけを後ろに高く上げて、持っていた七緖くんの服を放り投げる。両手を七緖くんの顔の横につけて、大の字に寝返りを打った七緖くんの真上に倒れ込んでしまった。
(前髪。大丈夫。スカートはうん。ミニのジーンズはタイトだし変に裾はめくれてない。シャツは……ちゃんと前だけ入っている。後ろは綺麗にお尻が隠れている。よしオッケー)
私は前髪を触ってからドアレバーに手をかけて固まる。
(何がオッケーなのよ)
訳の分からない自分チェックに一人恥ずかしくなった。
ドアレバーにかけた反対の手でドアを二度ノックする。特に部屋の中からは反応はない。私は小さく咳をしてドアに向かって声をかける。
「七緖くん。私、巽だけど。入って良いかな?」
そう尋ねるけれども、何の反応もない。
(博さんが言った通り昼寝中かな)
私はゆっくりとドアレバーを押し部屋の中に入る。
「失礼しまーす」
若干小声で小さく開けたドアの隙間に身体を滑り込ませる。すると、ソファベッドをベッドの状態にして七緖くんが寝ていた。ドア側からは七緖くんの足の裏が見えた。
「スースー」
七緖くんの小さな寝息が聞こえる。
「……寝てる」
金色に近い緩くウェーブのかかった七緖くんの髪が、レースのカーテンの間から漏れる夏の光を受けキラキラと輝いていた。いつもは瞳を隠す様にしている前髪も、珍しく上に上げてちょんまげの様に結っている。
(しかも輪ゴムで髪の毛を結っている。あれ外す時に絡まって痛いのに)
その適当さが七緖くんらしい気もする。
七緖くんはソファの背もたれを倒してベッド状態にしているのに、ソファの時と変わりがない面積に大きな身体を横にし小さく曲げて芋虫の様になって寝ていた。
上半身は白いTシャツ。見るとそのTシャツの裾から左腕を入れて自分の右肩をつかんでいる。そのせいでおなかを半分ほど晒している。
部屋はクーラーが心地よい温度を保っているが、おなかを出しているのは寒いのか、薄手のタオルケットを腰から下にかけて巻き付けていた。裸足の足だけがタオルケットの下から出ていた。
私は音を立てずに後ろ手で部屋のドアを閉める。それから、一歩ずつ進む。見ると部屋のドアからソファベッドに向かって靴下、ネクタイ、制服のシャツ、ズボンが点々と落ちている。最後のズボンなんてソファベッドの端に引っかかっている。
「ふふふ」
私は笑いながら靴下、ネクタイ、制服のシャツを拾って簡単に折りたたみ片手に持つ。
(よっぽど眠たくて暑かったのね。ベッドに向かって一直線って)
毛足の長い絨毯の上をゆっくりと歩きながら七緖くんの痕跡をたどる。相当疲れているのかな。近づく私の気配にも気づく様子がない。
七緖くんの足元まで近づく。大きな身体を小さくキュッと「く」の字に曲げている姿が可愛かった。
(何の為にベッドにしたのかな。ソファのままでも変わらない面積を使っているのに)
「んんっ……スー」
七緖くんは寝息の間に口元をもごもごと動かした。それから再び寝息が訪れ、静かな部屋の中に響いた。
「起きそうにないね」
ぽつりと呟く私の声にも全く七緖くんは反応しない。それぐらい熟睡している。
私は七緖くんの姿と部屋を見渡す。部屋にはソファベッドとテーブルとテレビ、そしてたくさんの本が積まれている本棚。狭い部屋だが心地の良い空間。何だか七緖くんが眠たくなるのも分かる気がする。博さんの人柄なのか、居心地が良いのだ。
七緖くんの右手はだらりと垂れていて、絨毯の上に読みかけの雑誌が置かれている。しかも年季の入った比較的古そうな雑誌だ。
(何を読んでいるのかな)
そう思い覗き込もうとした時、ソファの足元にだらりと引っかかっている制服のズボンが邪魔をした。
(ふふふ。もうズボンまで脱いで)
私は笑いながら、そのズボンを手に取った。しかし、ある事に気がつく。
(ん? 制服のズボンと言う事は、七緖くん今パンツ一枚なの?)
そう思ってズボンを手に取ったまま私は固まってしまう。
が、衝撃的な事が更に判明する。手に取ったズボンの中からポロリと黒い布が絨毯の上に落ちた。
「あれ? 何か落ちた。あ」
そこには黒いボクサーパンツ。
(パンツか……えっパンツ? パッ、パンツって!)
私は重大な事に気がついて驚き、ズボンを持ったまま身体を起こそうとした。
が、運悪く私は七緖くんの脱いだズボンの裾を踏んでいて、そのまま身体を引き上げたのでつんのめってバランスを崩した。
「えっ、わっ!」
ゆっくりと静寂が訪れていた部屋に私の大きな声が響いた。すると私の声に反応した七緖くんがゆっくりと目をこする。
「ん、んん~」
七緖くんが寝返りを打ち、ベッドにしたソファの上に大の字になった。
「よっ、と、はっ」
私は自分のバランスを取ろうと必死にこらえたのに、今度は寝返りを打った、七緖くんの足にすねの部分を当ててしまう。
「あっ!」
(嘘! 倒れる! 七緖くんの真上に。それに右膝ぶつけない様にしないと)
そんな事を考えてバランスを取ったのがいけなかったのか、私は右足だけを後ろに高く上げて、持っていた七緖くんの服を放り投げる。両手を七緖くんの顔の横につけて、大の字に寝返りを打った七緖くんの真上に倒れ込んでしまった。
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