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061 8月7日 夜 初めての経験 1/4
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玄関のドアが閉まる直前、私は七緖くんに引き寄せられた。二の腕を掴む大きな手。反動で私と七緖くんは鞄を三和土の上に落とした。
ドアが閉まりカチリと鍵がかかる音がする。ドアが閉まれば家の中は暗くなる。七緖くんは掴んだ二の腕を離すと、今度は私の背中に手を回す。
無言で力一杯抱きしめられる。私は首を精一杯伸ばして、七緖くんの首筋辺りに鼻を寄せる。
(七緖くんの香りがする)
制服のシャツは下ろしたてだろう。仄かに洗濯洗剤の爽やかな香りがする。それに混じって、七緖くんの匂いがする。私とは違う匂い。嗅ぐとドキドキする。
私が鼻から息を吸い込んだのを感じ取った七緖くんは、息を飲みブルリと小さく体を震わせた。それから私の背中を大きな手の平で一撫でする。背中を下から上に撫でられて私も小さく体を震わせた。
その震えを感じ取った七緖くんが勢いよく離れる。抱きしめたり離れたり忙しい私達。
七緖くんの体温が離れると寂しくなった。だから七緖くんの顔を見ようと上を向いた瞬間、背中を撫でていた大きな手が私の両頬を包んだ。七緖くんの顔が傾きゆっくりと近づく。
綺麗なラインのおでこ。整えられた眉毛に、長い睫毛の二重。そして、優しく温かい琥珀色の瞳。高い鷲鼻に、桃色の唇。
お互いの唇が吸い寄せられる。私は触れると同時に瞳を閉じた。柔らかい唇がついばんで私の唇を優しく食べる。
唇だけを合わせるキス。
(そういえばさっきもキスしたよね? 歯がぶつかったけど)
私は怜央と萌々香ちゃんの姿を見て冷静な喧嘩なんて出来ないとパニックを起こした。そんな私に七緖くんはキスをくれたのだ。おかげで涙が引っ込んだけど。あっという間の出来事だったし、萌々香ちゃんと対峙したからあれ以上何も触れなかったけど。
ね? 七緖くん──と名を呼ぼうとした時だった。少しだけ開いた口に、七緖くんの舌がヌルリと入り込んできた。
「!」
私は驚いて閉じていた瞳を開いた。七緖くんの舌が私の舌を絡め取る。ゆっくりと口内を動く七緖くん。そして私の頬を親指で撫でながら、息を吸う為に離れる。だけどすぐに私の舌を追いかけてきて合わさる。
「はぁ……」
「……んっ」
苦しくて息をする度に漏れる声は悩ましい。
舌だけ絡まったり、七緖くんの口内に吸い上げられたりを繰りかえす。
右手が頬を撫でながら、ゆっくりと私の後頭部に回される。更に深くなるキス。
上顎を舐められたら鳥肌が立って、七緖くんの腕の辺りのシャツを掴む。すると七緖くんが今度は左手で、体のラインを撫でて腰の後ろに手を回す。体をピッタリと寄せ合い、七緖くんと私の間に隙間がない様にする。
私と七緖くんの鼻から呼吸する音が大きくなる。
触れる七緖くんの体温が熱い。口内だけでもぐんぐんと熱が上がっている様に感じるのに。後頭部に回された手と、腰の後ろに回された手が熱くてじんわりと汗ばんでいると感じる。
(何も考えられない……)
息が苦しくなるキス。鼻で息をすれば良いのは分かっているけれど、それでも胸が一杯で苦しい。でも離れていたくない。何とか息を吸おうとして口を開いた時、ジュッっと私の舌を七緖くんが吸い上げた。
空気を取り入れようとしたのに、逆に吸い上げられて私はガクンと膝をおる。七緖くんがそんな私の体を抱き留めて、ゆっくりと家の床に座らせる。
「はぁはぁはぁ……」
全速力で走った様な息継ぎで、私は自分の唇を拭った。
(酸欠? 何だかわけが分からない)
気持ちいいと言うより、全力でぶつかって、されるがまま。だからわけが分からない。唇の周りもじんじんと腫れている。
七緖くんは座り込んだ私の左手を握ったまま三和土の上で靴を踏み脱ぎ、私の両肩をグッと掴んだ。
「な、七緖くん?」
七緖くんを見上げる。
明かり取りの玄関先の小さな窓から入る光は夕陽の色に染まっている。ますます暗くなって行く家の中。
「はぁはぁ……かんにんな」
肩で息をしながら謝る七緖くんの顔は、暗がりの中でもほんのり頬が赤くなっているのが分かる。そして、琥珀色の瞳がギラギラと光っていた。
まるで獰猛な動物の視線。私はゴクンと唾を飲み込んだ。
七緖くんが片膝をついて家に上がる。視線を逸らせないまま掴まれた肩を押されて、玄関の入り口を上がった床の上に押し倒される。
私は慌てて靴を擦る様にして脱ぐ。
そんな事は気にもしていない七緖くんは、私の上に覆い被さってきて再び唇を塞いだ。
「んっ……はぁ」
私は息を吸いながら溜め息がこぼれる。
私の声に七緖くんが合わせて顔の角度を変え舌を絡める。
口を大きく開けて舌だけを絡めるキスや、お互いの上顎を舐めるキス。ひたすらキスを繰りかえしてお互いの息と唾液を飲む。
(キスってこんなに苦しいの? 胸の奥が切なくて、離れたくないよ)
切なくて、胸の奥がぎゅっとなる。七緖くんが言ってくれた様に好きだと思う気持ちが伝わってくるからとても嬉しい。
いつだったか、何故キスは唇を合わせる意外に、舌を吸ったり舐めたりするのかと考えたけどそうじゃないんだ。粘膜を合わせる事がどれだけ気持ちいいのか知らなかっただけだった。
(ああ。床が冷たい)
シャツ越しに当たる床が気持ちが良い。私も熱があみたい。
ドアが閉まりカチリと鍵がかかる音がする。ドアが閉まれば家の中は暗くなる。七緖くんは掴んだ二の腕を離すと、今度は私の背中に手を回す。
無言で力一杯抱きしめられる。私は首を精一杯伸ばして、七緖くんの首筋辺りに鼻を寄せる。
(七緖くんの香りがする)
制服のシャツは下ろしたてだろう。仄かに洗濯洗剤の爽やかな香りがする。それに混じって、七緖くんの匂いがする。私とは違う匂い。嗅ぐとドキドキする。
私が鼻から息を吸い込んだのを感じ取った七緖くんは、息を飲みブルリと小さく体を震わせた。それから私の背中を大きな手の平で一撫でする。背中を下から上に撫でられて私も小さく体を震わせた。
その震えを感じ取った七緖くんが勢いよく離れる。抱きしめたり離れたり忙しい私達。
七緖くんの体温が離れると寂しくなった。だから七緖くんの顔を見ようと上を向いた瞬間、背中を撫でていた大きな手が私の両頬を包んだ。七緖くんの顔が傾きゆっくりと近づく。
綺麗なラインのおでこ。整えられた眉毛に、長い睫毛の二重。そして、優しく温かい琥珀色の瞳。高い鷲鼻に、桃色の唇。
お互いの唇が吸い寄せられる。私は触れると同時に瞳を閉じた。柔らかい唇がついばんで私の唇を優しく食べる。
唇だけを合わせるキス。
(そういえばさっきもキスしたよね? 歯がぶつかったけど)
私は怜央と萌々香ちゃんの姿を見て冷静な喧嘩なんて出来ないとパニックを起こした。そんな私に七緖くんはキスをくれたのだ。おかげで涙が引っ込んだけど。あっという間の出来事だったし、萌々香ちゃんと対峙したからあれ以上何も触れなかったけど。
ね? 七緖くん──と名を呼ぼうとした時だった。少しだけ開いた口に、七緖くんの舌がヌルリと入り込んできた。
「!」
私は驚いて閉じていた瞳を開いた。七緖くんの舌が私の舌を絡め取る。ゆっくりと口内を動く七緖くん。そして私の頬を親指で撫でながら、息を吸う為に離れる。だけどすぐに私の舌を追いかけてきて合わさる。
「はぁ……」
「……んっ」
苦しくて息をする度に漏れる声は悩ましい。
舌だけ絡まったり、七緖くんの口内に吸い上げられたりを繰りかえす。
右手が頬を撫でながら、ゆっくりと私の後頭部に回される。更に深くなるキス。
上顎を舐められたら鳥肌が立って、七緖くんの腕の辺りのシャツを掴む。すると七緖くんが今度は左手で、体のラインを撫でて腰の後ろに手を回す。体をピッタリと寄せ合い、七緖くんと私の間に隙間がない様にする。
私と七緖くんの鼻から呼吸する音が大きくなる。
触れる七緖くんの体温が熱い。口内だけでもぐんぐんと熱が上がっている様に感じるのに。後頭部に回された手と、腰の後ろに回された手が熱くてじんわりと汗ばんでいると感じる。
(何も考えられない……)
息が苦しくなるキス。鼻で息をすれば良いのは分かっているけれど、それでも胸が一杯で苦しい。でも離れていたくない。何とか息を吸おうとして口を開いた時、ジュッっと私の舌を七緖くんが吸い上げた。
空気を取り入れようとしたのに、逆に吸い上げられて私はガクンと膝をおる。七緖くんがそんな私の体を抱き留めて、ゆっくりと家の床に座らせる。
「はぁはぁはぁ……」
全速力で走った様な息継ぎで、私は自分の唇を拭った。
(酸欠? 何だかわけが分からない)
気持ちいいと言うより、全力でぶつかって、されるがまま。だからわけが分からない。唇の周りもじんじんと腫れている。
七緖くんは座り込んだ私の左手を握ったまま三和土の上で靴を踏み脱ぎ、私の両肩をグッと掴んだ。
「な、七緖くん?」
七緖くんを見上げる。
明かり取りの玄関先の小さな窓から入る光は夕陽の色に染まっている。ますます暗くなって行く家の中。
「はぁはぁ……かんにんな」
肩で息をしながら謝る七緖くんの顔は、暗がりの中でもほんのり頬が赤くなっているのが分かる。そして、琥珀色の瞳がギラギラと光っていた。
まるで獰猛な動物の視線。私はゴクンと唾を飲み込んだ。
七緖くんが片膝をついて家に上がる。視線を逸らせないまま掴まれた肩を押されて、玄関の入り口を上がった床の上に押し倒される。
私は慌てて靴を擦る様にして脱ぐ。
そんな事は気にもしていない七緖くんは、私の上に覆い被さってきて再び唇を塞いだ。
「んっ……はぁ」
私は息を吸いながら溜め息がこぼれる。
私の声に七緖くんが合わせて顔の角度を変え舌を絡める。
口を大きく開けて舌だけを絡めるキスや、お互いの上顎を舐めるキス。ひたすらキスを繰りかえしてお互いの息と唾液を飲む。
(キスってこんなに苦しいの? 胸の奥が切なくて、離れたくないよ)
切なくて、胸の奥がぎゅっとなる。七緖くんが言ってくれた様に好きだと思う気持ちが伝わってくるからとても嬉しい。
いつだったか、何故キスは唇を合わせる意外に、舌を吸ったり舐めたりするのかと考えたけどそうじゃないんだ。粘膜を合わせる事がどれだけ気持ちいいのか知らなかっただけだった。
(ああ。床が冷たい)
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