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069 9月1日 再び、ハンバーガーショップにて 1/2
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新しい学期が始まった。今日は始業式だけなので、私と紗理奈は夏休み前に一緒に行ったハンバーガーショップで昼食代わりのハンバーガーとポテトを食べていた。
「やっぱりここのポテトは美味しいわね。ほくほくだし塩加減も丁度良いし」
紗理奈がシルバーの猫のピアスを光らせてにっこり笑った。
「うん」
私も笑って頷いた。
夏休みに入る前は味が分からなかったハンバーガーとポテトも今は分かる。私がポテトをつまみ頬張ると紗理奈が笑った。
「やぁね~人が変わったみたいにニコニコしちゃって。元々そういう朗らかキャラじゃなかったでしょ? 明日香は」
「だってさ、夏休み前は味が分からなかったから。余計感動しちゃって」
「そうだったわね」
味覚障害を経た私の事を知っている紗理奈が、感慨深そうに呟いたがすぐに表情を変える。
「でもさー驚きしかないんですけど。私の知らないうちに才川と完璧に別れちゃうし。別れるだけならまだしも七緖と付き合い始めるなんて。驚きすぎて顎が外れそうよ」
紗理奈は椅子の背もたれに背中を沈み込ませ天井を仰いだ。
紗理奈はお盆前、家族でお父さんの実家に帰省していた。だから私のお盆前に起こった事は詳しく伝えていなかった。メッセージなどで知らせる事も出来たけど、なんせ壮大な物語(?)になってしまったので直接会って話をしたいと思っていた。
新学期が始まりようやく話をする事が出来た。紗理奈のリアクションは、怜央と別れたい本当の理由を話した時と同じだった。「えっ?」「ウソ?」「ホントに?」を繰りかえすばかりだ。
おかげで紗理奈はいつまでたってもハンバーガーにかぶりつく事が出来ないでいる。ポテトばかりが減っていく。
「でもさ。良かったね。才川とその幼なじみの萌々香ちゃん──トンデモ幼なじみに、明日香の思っている事を言えてさ」
紗理奈はいつもあまり多くの事は言わない。でもいつも私を優しく見守ってくれている。
「うん。当分の間は萌々香ちゃんと会う事はなさそう」
私は紗理奈の言葉に深く頷いて、頬杖をついて窓の外を見る。
相変わらず夏日は続いている。人々は顔をしかめながら足元から湧き上がってくる熱に耐えて歩いている。
◇◆◇
雄介くんの話では萌々香ちゃんは大学を休学する事になったそうだ。そして精神科に通いながら、心の元気を取り戻すのだとか。
怜央も萌々香ちゃんの現状を雄介くんから聞いている。萌々香ちゃんと関係していただけに複雑な気持ちがあるみたいだったけど、ひどく落ち込んでいる様子はなかった。
(それって怜央は萌々香ちゃんを好きじゃなかったって事かな?)
萌々香ちゃんと怜央の関係がセフレだった事実が浮き彫りになり、益々怜央と言う人物が分からなくなった。
「根本的に考え方が違う人を『何故』と考えるのは理解したい時だけにし。それ以外は無駄な事や。もしかしたら、人生経験が増えたらやけど。ほん時は才川くんの事を理解出来るかもしれん。ほれまではただのお隣さんの幼なじみや」
と、七緖くんは言う。
今の私に怜央の事は理解出来ない。だから私も怜央についてあれこれ考えるのは止める事にした。
すると七緖くんは大きく頷いた。
「ほれでええ。巽さんの心の中を才川くんが占めているの僕は嫌やし」
と、そんな可愛い事をつけ足して。
雄介くんから萌々香ちゃんに会うのは避けた方がいいだろうと、聞いている。
(何だか大事になった様な気がするけれども、萌々香ちゃんが乗り越えなくてはいけない問題だものね)
◇◆◇
私の苦しかった数ヶ月は、あらゆる関係を壊して幕を閉じた。
「やっぱりここのポテトは美味しいわね。ほくほくだし塩加減も丁度良いし」
紗理奈がシルバーの猫のピアスを光らせてにっこり笑った。
「うん」
私も笑って頷いた。
夏休みに入る前は味が分からなかったハンバーガーとポテトも今は分かる。私がポテトをつまみ頬張ると紗理奈が笑った。
「やぁね~人が変わったみたいにニコニコしちゃって。元々そういう朗らかキャラじゃなかったでしょ? 明日香は」
「だってさ、夏休み前は味が分からなかったから。余計感動しちゃって」
「そうだったわね」
味覚障害を経た私の事を知っている紗理奈が、感慨深そうに呟いたがすぐに表情を変える。
「でもさー驚きしかないんですけど。私の知らないうちに才川と完璧に別れちゃうし。別れるだけならまだしも七緖と付き合い始めるなんて。驚きすぎて顎が外れそうよ」
紗理奈は椅子の背もたれに背中を沈み込ませ天井を仰いだ。
紗理奈はお盆前、家族でお父さんの実家に帰省していた。だから私のお盆前に起こった事は詳しく伝えていなかった。メッセージなどで知らせる事も出来たけど、なんせ壮大な物語(?)になってしまったので直接会って話をしたいと思っていた。
新学期が始まりようやく話をする事が出来た。紗理奈のリアクションは、怜央と別れたい本当の理由を話した時と同じだった。「えっ?」「ウソ?」「ホントに?」を繰りかえすばかりだ。
おかげで紗理奈はいつまでたってもハンバーガーにかぶりつく事が出来ないでいる。ポテトばかりが減っていく。
「でもさ。良かったね。才川とその幼なじみの萌々香ちゃん──トンデモ幼なじみに、明日香の思っている事を言えてさ」
紗理奈はいつもあまり多くの事は言わない。でもいつも私を優しく見守ってくれている。
「うん。当分の間は萌々香ちゃんと会う事はなさそう」
私は紗理奈の言葉に深く頷いて、頬杖をついて窓の外を見る。
相変わらず夏日は続いている。人々は顔をしかめながら足元から湧き上がってくる熱に耐えて歩いている。
◇◆◇
雄介くんの話では萌々香ちゃんは大学を休学する事になったそうだ。そして精神科に通いながら、心の元気を取り戻すのだとか。
怜央も萌々香ちゃんの現状を雄介くんから聞いている。萌々香ちゃんと関係していただけに複雑な気持ちがあるみたいだったけど、ひどく落ち込んでいる様子はなかった。
(それって怜央は萌々香ちゃんを好きじゃなかったって事かな?)
萌々香ちゃんと怜央の関係がセフレだった事実が浮き彫りになり、益々怜央と言う人物が分からなくなった。
「根本的に考え方が違う人を『何故』と考えるのは理解したい時だけにし。それ以外は無駄な事や。もしかしたら、人生経験が増えたらやけど。ほん時は才川くんの事を理解出来るかもしれん。ほれまではただのお隣さんの幼なじみや」
と、七緖くんは言う。
今の私に怜央の事は理解出来ない。だから私も怜央についてあれこれ考えるのは止める事にした。
すると七緖くんは大きく頷いた。
「ほれでええ。巽さんの心の中を才川くんが占めているの僕は嫌やし」
と、そんな可愛い事をつけ足して。
雄介くんから萌々香ちゃんに会うのは避けた方がいいだろうと、聞いている。
(何だか大事になった様な気がするけれども、萌々香ちゃんが乗り越えなくてはいけない問題だものね)
◇◆◇
私の苦しかった数ヶ月は、あらゆる関係を壊して幕を閉じた。
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