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079 9月12日 七緖くんの部屋にて 2/3
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(何でなの?)
私は今みたいに避ける理由を七緖くんに尋ねようとした。その時だった。
鞄の中のスマホが音を立てた。この音は紗理奈からメッセージが届いた音だ。
「紗理奈からだ」
同じタイミングで七緖くんのスマホも鳴った。
「僕のも力也からや」
それぞれ自分のスマホを覗き込んで、届いたメッセージを読む。ひとしきりメッセージを読んだ後、私と七緖くんは同時に声を上げた。
「「ええっ!」」
紗理奈のメッセージは以下の通りだ。
『私と力也は急遽用事が出来まして、パーティーには参加出来なくなりました。ごめんね~<(_ _)>でもさ明日香これはチャンスよ。七緖と二人っきりなんだから。明日香ファイト~今日は絶対七緖と頑張ってね。どうして七緖が二回目をしないのか真っ直ぐに質問してみてね。強制的に二人きりになったら、二回目の謎は明日香自身で解明出来るから。私が保証します。じゃぁね』
(頑張るって何を?!)
私は思わずメッセージに向かって突っ込みを入れてしまう。
(でもこれじゃ、解明じゃなくて、自らぶつかっていくだけじゃないのよ。話が違うよ紗理奈!)
そうじゃなくても何だか七緖くんは二人きりだとよそよそしいのに。私は泣きそうになった。
恐らく七緖くんにも力也くんから似た様なメッセージが届いたのだろう。そもそも力也くんを操っているのは紗理奈だと思うけれども。
七緖くんは数秒の無言の後、軽く咳払いをした。それから、溜め息をつくと意を決した様に私に笑いかける。
「……何か来れんようになったみたいやね。力也と松本さん」
軽く笑っているけれども、明らかに困った顔だった。
その顔を見たら私はとても寂しくなった。
(もしかして二人きりが嫌なのかな)
四人での集まりだから、家にも上げてくれたのだろう。私は思わず俯いてしまう。
すると七緖くんが俯いて黙り込んだ私に向かってわざと明るい声を上げる。
「し、仕方ないから出かけようか? 今からやったらどっか遊びにも行けるし」
その提案を聞いて私は思わず七緖くんの腕を掴んだ。
唐突に腕を掴まれた七緖くんが体をビクッと震わせて固まったのが分かった。
「──なの?」
私が低い声で呟くと、聞き取れなかったのか七緖くんが私の顔を覗き込んできた。
「え? 何て?」
よく聞こえなかった七緖くんは、ダメージデニムに包まれた長い足を折り曲げ正座をする。
(何で二人きりでパーティーは駄目なの? 部屋にいるのは駄目なの?)
私は混乱して涙が溢れて、ぽたりと絨毯に落ちた。七緖くんは絨毯に落ちた涙を見て固まる。私は顔を上げて七緖くんに噛みつく様に尋ねた。
「七緖くんは、私と二人きりは嫌なの?」
「え?」
私の突然の剣幕に七緖くんは正座のままで上半身を仰け反った。私も同じ様に正座になって前のめりになる。
「だって七緖くん、最近私と二人きりでいるの避けているみたいだし」
「あっ……」
私の言葉に七緖くんがギクリとしたのが分かった。
ズバリ私に言い当てられて、言葉を失っている──そんな顔だった。
その顔を見て私は絶望してしまう。
(あの衝動的にしてしまったエッチから二人きりになると、ギクシャクしている。だから、きっとエッチに原因があるんだわ。きっとそう)
その事が分かって私は辛くて悲しくて涙がみるみる溢れた。
「えっ何で泣くん?」
七緖くんは私の泣き出した顔を見て驚いてた。
それはそうだろう。突然情緒不安定になり泣き出すのだから。これでは怜央の事で悩んでいた時に戻った様だ。
(今は七緖くんの事で悩んでいるのだけど)
「七緖くんに二人きりになるのも避けられて。今だって手が触れただけで驚くし。もしかして私の事が嫌になった?」
私は泣きながら尋ねると七緖くんの琥珀色の瞳が点になったのが見えた。
(嫌いになったって……恥ずかしいぐらい子供の様な尋ね方)
でも私はこんな尋ね方しか知らない。それぐらい不器用な恋の仕方だった。
七緖くんは「嫌いになった?」という言葉に反応した。点になった琥珀色の瞳が元に戻ると眉の根元に皺を寄せて怒り出した。
「は? 嫌いって。ほんなわけないやん」
何故怒るのか分からない、怒りたいのは私の方だ。この家には今二人きりだ。だから私は思い切って尋ねた。
「だって。手を繋ぐ事も、キスする事もないし。私に触れるのが嫌なのかと思うよ!」
すると私の声の大きさを上回る、怒った七緖くんの声が響いた。
「逆や逆! 嫌やのうて触れたくて触れたくて仕方ないんや」
「え」
七緖くんの怒っている顔と内容が全く一致しない。
だから今度は私の目が点になった。流れていた涙が引っ込み、わけが分からなくて七緖くんの顔を覗き込む。
私は今みたいに避ける理由を七緖くんに尋ねようとした。その時だった。
鞄の中のスマホが音を立てた。この音は紗理奈からメッセージが届いた音だ。
「紗理奈からだ」
同じタイミングで七緖くんのスマホも鳴った。
「僕のも力也からや」
それぞれ自分のスマホを覗き込んで、届いたメッセージを読む。ひとしきりメッセージを読んだ後、私と七緖くんは同時に声を上げた。
「「ええっ!」」
紗理奈のメッセージは以下の通りだ。
『私と力也は急遽用事が出来まして、パーティーには参加出来なくなりました。ごめんね~<(_ _)>でもさ明日香これはチャンスよ。七緖と二人っきりなんだから。明日香ファイト~今日は絶対七緖と頑張ってね。どうして七緖が二回目をしないのか真っ直ぐに質問してみてね。強制的に二人きりになったら、二回目の謎は明日香自身で解明出来るから。私が保証します。じゃぁね』
(頑張るって何を?!)
私は思わずメッセージに向かって突っ込みを入れてしまう。
(でもこれじゃ、解明じゃなくて、自らぶつかっていくだけじゃないのよ。話が違うよ紗理奈!)
そうじゃなくても何だか七緖くんは二人きりだとよそよそしいのに。私は泣きそうになった。
恐らく七緖くんにも力也くんから似た様なメッセージが届いたのだろう。そもそも力也くんを操っているのは紗理奈だと思うけれども。
七緖くんは数秒の無言の後、軽く咳払いをした。それから、溜め息をつくと意を決した様に私に笑いかける。
「……何か来れんようになったみたいやね。力也と松本さん」
軽く笑っているけれども、明らかに困った顔だった。
その顔を見たら私はとても寂しくなった。
(もしかして二人きりが嫌なのかな)
四人での集まりだから、家にも上げてくれたのだろう。私は思わず俯いてしまう。
すると七緖くんが俯いて黙り込んだ私に向かってわざと明るい声を上げる。
「し、仕方ないから出かけようか? 今からやったらどっか遊びにも行けるし」
その提案を聞いて私は思わず七緖くんの腕を掴んだ。
唐突に腕を掴まれた七緖くんが体をビクッと震わせて固まったのが分かった。
「──なの?」
私が低い声で呟くと、聞き取れなかったのか七緖くんが私の顔を覗き込んできた。
「え? 何て?」
よく聞こえなかった七緖くんは、ダメージデニムに包まれた長い足を折り曲げ正座をする。
(何で二人きりでパーティーは駄目なの? 部屋にいるのは駄目なの?)
私は混乱して涙が溢れて、ぽたりと絨毯に落ちた。七緖くんは絨毯に落ちた涙を見て固まる。私は顔を上げて七緖くんに噛みつく様に尋ねた。
「七緖くんは、私と二人きりは嫌なの?」
「え?」
私の突然の剣幕に七緖くんは正座のままで上半身を仰け反った。私も同じ様に正座になって前のめりになる。
「だって七緖くん、最近私と二人きりでいるの避けているみたいだし」
「あっ……」
私の言葉に七緖くんがギクリとしたのが分かった。
ズバリ私に言い当てられて、言葉を失っている──そんな顔だった。
その顔を見て私は絶望してしまう。
(あの衝動的にしてしまったエッチから二人きりになると、ギクシャクしている。だから、きっとエッチに原因があるんだわ。きっとそう)
その事が分かって私は辛くて悲しくて涙がみるみる溢れた。
「えっ何で泣くん?」
七緖くんは私の泣き出した顔を見て驚いてた。
それはそうだろう。突然情緒不安定になり泣き出すのだから。これでは怜央の事で悩んでいた時に戻った様だ。
(今は七緖くんの事で悩んでいるのだけど)
「七緖くんに二人きりになるのも避けられて。今だって手が触れただけで驚くし。もしかして私の事が嫌になった?」
私は泣きながら尋ねると七緖くんの琥珀色の瞳が点になったのが見えた。
(嫌いになったって……恥ずかしいぐらい子供の様な尋ね方)
でも私はこんな尋ね方しか知らない。それぐらい不器用な恋の仕方だった。
七緖くんは「嫌いになった?」という言葉に反応した。点になった琥珀色の瞳が元に戻ると眉の根元に皺を寄せて怒り出した。
「は? 嫌いって。ほんなわけないやん」
何故怒るのか分からない、怒りたいのは私の方だ。この家には今二人きりだ。だから私は思い切って尋ねた。
「だって。手を繋ぐ事も、キスする事もないし。私に触れるのが嫌なのかと思うよ!」
すると私の声の大きさを上回る、怒った七緖くんの声が響いた。
「逆や逆! 嫌やのうて触れたくて触れたくて仕方ないんや」
「え」
七緖くんの怒っている顔と内容が全く一致しない。
だから今度は私の目が点になった。流れていた涙が引っ込み、わけが分からなくて七緖くんの顔を覗き込む。
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