剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
390 / 589
SS バタフライシスターズの慰安旅行

ボクっ娘の意外な食材

しおりを挟む



「さて、次はどれ食べよう――――」

 フォークを持った手が、料理の載ったお皿の上を行ったり来たり。

 迷い箸、ならぬ、迷いフォーク状態だ。

 ユーアの前で、お行儀が悪いかと思ったけど、仕方ないよね?

 だって、

「うわ~、どれもこれもいい香りがするねっ! 見た目も凝ってるし」

 だって、目の前に並ぶ料理のどれもが美味しそうに見えるのだから。
 
 そんな料理を目の前にして、逆に悩まない方がおかしい。
 寧ろ、迷い箸自体が、正しい礼儀作法なんじゃないかって思えるくらいだ。


「お、これは随分といい匂いがするねっ! 見た目もボリューミーだし」

 その中でも、ひと際香ばしく、濃厚な臭いの漂う料理を見付ける。
 鉄板のお皿の上で「ジュ―ジュ―」と音も立てている。

「ステーキかな? これは」

 大きなお肉が中央に陣取り、周りには申し訳程度にサラダが添えられている。
 そしてその主役のお肉の上には、何かをスライスしたものが乗っている。

「ああ、匂いの原因はこれかぁ~」

 漂う臭いは濃厚ではあるが、お肉のような油の臭いはしない。
 どちらかと言うとスパイスに近く、更にちょっと上品な感じ。

 その臭いに自然と食欲を掻き立てられ、無性にかぶりつきたくなる。

『ん? あれ? これって――――』

「あっ! それはボクとハラミがウトヤの森で採った食材で作った料理なんだっ! ナゴタさんにも手伝ってもらったけど」
『わうっ!』

 どことなく、覚えのある匂いに記憶をたどっていると、ユーアが手を挙げる。


「あっ! これがユーアたちのなんだっ!」

「うんっ! あ、あとね、こっちのお肉のお刺身と、そっちのお肉のスープと、あっちのお肉の蒸し焼きはボクが作ったんだっ!」

「そ、そうなんだ。どれも美味しそうだねっ! いい匂いもするし」

 笑顔で教えてくれたユーアの頭を撫でる。
 
 お肉の料理ばかりなのは敢えて、突っ込まない。
 添えてあるサラダが少ないのを見て、何となく察してたから。


「それで、このいい匂いのするものって?」

 教えてくれた料理、全てに入っているものを指差す。

「うんっ! ハラミが探してくれたんですっ! 凄くいい匂いで、お料理を美味しくしてくれるって。そのままでも食べられるけど、え~とねぇ…… これがそうなんだっ!」

 嬉々として腰のポーチから、黒く丸い塊を出してくれる。
 大きさは野球ボールぐらいで、表面がゴツゴツしている。

「ん? ユーアなんじゃ、まるで獣のフn――――」
「ああっ! これってトリュフじゃないっ!?」

 ナジメが変な事を言い出したので、慌てて寸断する。

「え? とりゅふ?」
「え? 違うの」

 コテンと首を傾げて目を丸くするユーア。

「ユ、ユーアちゃんっ! そ、そ、それどこで採れたのですかっ!?」

 私たちの話にナゴタが身を乗り出し入ってくる。
 珍しく慌てている様子だ。


「これはですね、ウトヤの森のずっと奥の、土の中にあったんですよ?」

 ポンと、更にもう一つ出して教えてくれる。

「ほ、本当ですかっ! ウトヤの森って、確かコムケからそんなに離れてないですよね? それとつい先日、アマジさんたちと戦った場所ですよねっ!?」

 ユーアの話を聞いて、更に声高になるナゴタ。

「う、うん、そうですよ? ハラミが匂いで探してくれたんです」
「匂い?」

 今度は私がユーアに聞いてみる。
 何やらナゴタが興奮しているようだから。

「はい、ハラミが匂いで探してくれて、ボクとハラミで地面を掘ったんです」
「って、事は結構深かったんだ。ハラミも掘ったって事は」
「はい、大体あそこの木と同じぐらいだったよ?」

 そう言って指を差したのは、ここから一番近い5メートル程の高さの木だった。

「………………は?」

 そんなに掘ったの?

「「「………………」」」

 私とみんなはそれを見て固まる。


「だから時間が一杯かかっちゃって、あまり採れなかったんです…………」

 ボト

 更にもう一つ、テーブルの上に同じものを出すユーア。
 その顔はちょっとだけ不満げだ。

「で、ナゴタ。結局これってなんの食材なの? 採ってきたユーアも、他のみんなも知らないみたいなんだけど」

 2個に増えた、トリュフもどきを見たまま動かないナゴタに聞いてみる。

「はっ!? は、はいっ! これはキノコの一種で、名前は『千年茸』と言いまして、非常に高級な食材なんですっ!」

「千年茸?」

 名前からもの凄く、そのキノコの希少性が伝わってくる。
 ただどうやらトリュフとは違うみたい。色々と似通ってはいるけど。

 でも地中にあるとか、犬や豚の鼻を使って探すことから、この世界でのトリュフみたいなものだろう。その芳醇な匂いにしても、見た目的にも。

 まぁ、実際はそんな深くに生えてはいないし、ハラミは犬じゃないけど。


「そうですっ! そのキノコは千年茸と呼ばれてまして、その名前からわかるように滅多に手に入らない食材なんですっ! 数年に一度、他国からの賓客を招いた王宮での晩餐会にしか近年では出されてませんっ!」

「へ、へぇ~、そうなんだ」

 早口で捲し立てるナゴタの剣幕に押されて、それだけしか言えなかった。
 ただ、その希少性の高さだけは伝わった。

 王宮での晩餐会でしかお目にかかれない、その食材の存在の大きさに。
 

「ナジメは食べた事ないの? 冒険者だった頃に」

 ナゴタの話を聞いて、みんなと同じように驚いているナジメに振ってみる。
 因みに、採ってきたユーア本人も固まってる。

「う、うむ。その名前は聞いたことはあったのじゃが、食した事はさすがにないのぉ…… わしも王宮には招待されたことはあったが」

「えっ! マジでっ!?」 

 その答えを聞いてナジメの顔をマジマジと見てしまう。

「う、うむ。食べた事ないのじゃ。 と、言うか、そんなに驚く事かのぉ? 寧ろナゴタの話を聞いてたら、食べた事が無いのが普通じゃろう?」

 私の視線にビクビクとして答える。

「う、うん、そうだよね? 普通は」

 まぁ、本当はナジメがお城に行ったこと自体に驚いてるんだけどね。
 だって、その変わった格好だし。普通は門前払いだよ。
 いつから着てるか知らないけど。




「だってさ、ユーアとハラミ。こんな高級食材をご馳走してくれてありがとうねっ! そして美味しかったよっ! 採取も大変だったのにこんなに振舞ってくれて本当にありがとうねっ!」

 一口ずつ味わった後で、隣のユーアとハラミにお礼を言う。

「う、う、うん、どういたしまして、です、はいっ!」
『わう?』
 
 お礼を言われたユーアは、何故かオドオドとしていた。
 それを隣で不思議そうに眺める従魔のハラミ。

 きっと、自分たちが採ってきた食材の価値を知ってショックを受けているんだろう。

 いつもならモグモグと、幸せそうな顔で食べるユーアが手を付けず、ずっと真顔だったし、時たま下を向いてブツブツと何かを呟いていたから。

 そしてそれに釣られるように、他のみんなも価値を知って委縮してしまっていた。
 ユーアが作ってくれた料理の殆どは手付かずとなったままだった。


「あ、あのね、スミカお姉ちゃんっ! ボ、ボクねっ! 知らなくてねっ!」

 手付かずのままの料理を見渡した後で、顔を上げるユーア。

「だって、それは仕方ないでしょ? そんな高級なのものがあるなんて誰もわからないんだから。きっと街の人たちも知らないと思うよ?」

 まさか、コムケの街の近くに、王宮でも珍しいとされる食材があるだなんて。
 確かにウトヤの森は、そのジメジメした環境から菌糸類が多いとは聞いていたけど。

 なんて、ユーアをとハラミを見ながら、そんな事を考えていると、


「ユーアっ! これ美味しいわよっ! 味付けも上手くなったじゃないっ!」
 
 ラブナが口いっぱいに頬張りながら、その味に絶賛する。
 更に続けて、

「ふわぁ、これは確かに美味しいですねっ! 素材の良さを引き出す味付けと言い、千年茸の芳醇な匂いも合わさって食べ過ぎてしまいそうですっ!」

「うんっ! これはうまいなっ! お替りだっ!」

「うむ、美味いのじゃっ! どの肉も千年茸に合っているのじゃっ! こんな良い物をご馳走してくれたユーアには感謝なのじゃっ! 帰ったら自慢するのじゃっ!」

 みんながみんな、ユーアの作った料理と、苦労して手に入れた素材を声高に絶賛している。 

「え? ラブナちゃんも、みんなも?」

 それは高級食材を口にする事に、遠慮していた訳ではなく、

「ふふふ」

 どちらかというと、ただ単に、

「もう、スミ姉が食べるのをみんな待ってたんだからねっ!」
「そうですね、お姉さまの一番の妹のユーアちゃんが作ったものですから」
「最初にワタシたちが食べちゃうのは遠慮しちゃうよなっ!」
「そうじゃっ! ねぇねが食べないと、わしたちが食べられないのじゃっ!」

 誰が最初に食べるかで、遠慮しているだけだった。
 高級食材だからといって、ユーアが作った物を食べないという選択肢はなかった。


「ふふ、良かったね、ユーア。みんな喜んでるよ」

 笑顔を浮かべ、夢中に食べているみんなを見てユーアの頭を撫でる。

「うんっ!」
『わうっ!』

 その光景を見て、ユーアも満面な笑みに変わる。

「あ、でも早く食べないと、ユーアの分も無くなっちゃうよ?」
「あああっ! 本当だっ! それじゃボクもいただきますっ!」
「うん、それじゃ私もユーアの愛情がこもった料理をもっと食べちゃおうかな」
「うん、まだまだあるからいっぱい食べてね、スミカお姉ちゃんっ!」


 そうして、ナゴタたちの料理に続き、ユーアの料理も賑やかな食卓を作ってくれた。


 さあ、次の料理も楽しみだねっ!

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...