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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
ドラゴン族vs蝶の妹たち その1
しおりを挟む「あら? 思ったよりも狭い場所ね。こんなところでは存分に動けないわ」
ナジメ達に連れられて到着した広場を見渡すエンド。
腰に手を当て、眉を顰め、不満の言葉を口にする。
「いや、十二分に広いじゃろ。ギルドの訓練場の2倍以上はあるのじゃぞ?」
何を言ってるんだとばかりに、両手を広げてその広さをアピールするナジメ。
ここはスラムの最北にある、街を囲む外壁に最も近い空き地だ。
広さ的には一般人が全力で駆けても10秒近くかかるほど広い。
つい最近ではスミカが、20メートルを超える虫の魔物と戦った場所でもある。
「はぁ~、まぁいいわ。別に本来の姿に戻る訳ではないのだから」
「なぬ? 今なんと――――」
「こっちの話よ。それよりもどう満足させてくれるのかしら? 見たところ、全員でかかって来ても、大して時間を潰せないのはわかっているのだけれども」
頬に手を当て、値踏みするようにナジメ達に視線を這わせる。
「はん、戦ってもいないのにまだ大口を叩くのか。じゃがお主の言う通り満足はしないじゃろうな」
それに対し、傍にいるユーアたちを眺めて、頷くナジメ。
「あら? もう負けた時の言い訳かしら?」
「何を勘違いしておるのじゃ? 満足しないのはわしたちの方じゃぞ」
「………………は?」
言われた意味を理解できずに、思考が固まるエンド。
更にナジメは続けて、
「お主の主の災害幼女フーナならともかく、ただの従者如きがわしたちを満足させるつもりでいるのか? だったら自信過剰も甚だしいのじゃっ!」
「そうよっ! 自分を過大評価しすぎだわっ!」
「?」
ムンとふんぞり返り、仁王立ち姿で、ビッと指を突きつけるナジメ。
その後ろではラブナも同じように、腰に手を当て人差し指をエンドに向けている。
ユーアはそんな二人についていけずにキョトンとしていた。
「よくもまぁ我を相手にそんな大仰な口を聞けるわね。自信過剰はどちらかしら?」
やれやれと言った様相で、肩をすくめ、ナジメ達を見る。
ただその態度とは裏腹に、眉と口端が僅かに上がる。
「何を言っておるのじゃ。わしは真似をしただけじゃよ? お主が先に言い出した事じゃからな。わしたちを前にして、時間も潰せないとな」
「そうよっ! まだ戦ってもいないのにいい加減威張り過ぎよっ! そんなんじゃあんたの主のフーナって子もたかが知れるわねっ! きっとスミ姉に会ったらボコボコにされるはずよっ!」
「こ、のぉっ!――――」
追い打ちとばかりに、ラブナにも言いたい放題言われ、初めて怒りを顕わにする。
目を見開き、肩を震わせ、上げた拳を胸の前で強く握る。
「我だけではなく、フーナの事までっ!」
どうやら主を乏しめられて、一瞬で怒りが沸点に達したようだ。
この変わりようを見ると、心底フーナに心酔してるのだとわかる。
それはスミカを罵倒された、シスターズと同じ反応だった。
そしてその怒りを向ける矛先はもちろん、目の前の相手だ。
知りもしないで主を愚弄した、人族の3人だ。
「…………き、貴様らっ! もう許さないわっ!」
ナジメ、ラブナ、ユーアの3人に、震えた声で叫ぶ。
「今じゃラブナっ! 『泥土路』」
「わかったわっ! 『泥沼』」
エンドが激昂したのを確認し、ナジメとラブナは魔法を発動する。
足場を沼地に変える土魔法を、二人同時に唱える。
ズボボッ
「く、いきなり仕掛けてくるなんて卑怯なのよっ! しかも決着のルールを決める前にっ! こんなもの飛行魔法で――――」
一気に腰まで地面に沈んだエンドだったが、脱出を図ろうとしたところ、
「チェーンWリングだよっ!」×10
「鎖の魔法っ!?」
今度はユーアが放った拘束の鎖で捉えられ、一瞬だけ動きが止まる。
更にそこへ、
「それっ! 仕上げは『土団子(特大)』じゃっ!」
ナジメが唱えた次なる魔法が、拘束されたエンドの頭上に出現する。
「なっ! これ程の魔法を一瞬でっ!?」
「これでも喰らって、少しは態度を改めるのじゃっ!」
ブンッ!
10メートルを超える土の塊が、驚愕するエンドに向けて撃ち降ろされる。
「こんな鎖引きちぎって終わりよっ!」
バキンッ!
意も返さずに10本の鎖の拘束から逃れるエンド。
蜘蛛の巣を払うように難なく破壊し、脱出を顧みる。
「まだだよっ! スタンボウガン一斉発射っ!」
そこへ更に、両手にボウガンを装着したユーアが追撃する。
10本の光の矢が、エンドを逃がさまいと周囲から襲い掛かる。
「こんな魔法の矢如き、我には通じない、くあっ!?」
ユーアの放った矢の性質を見抜けずに、全てを受けるエンド。
10本の矢のスタンの効果で、再び動きが止められる。
「く、威力は大したことない、けど一瞬動きが止められた」
それは慢心が生んだ結果だった。
自身の体なら、人間の武器など受けきれると自惚れていた。
生物界の頂点に君臨する、ドラゴン族としての誇りもあった。
『な、なのに、なぜ我はこんなに翻弄されてるのっ! 矮小で弱小な人族に、我が遅れを取る要素なんか皆無なのよっ!』
ナジメの土団子が目前に迫る中、自問自答する。
軽くあしらう筈だった相手に、僅かに脅威を覚える。
その理由は、エンド自身の油断が大半を占めていた。
ユーアの武器が異世界産だと気付かない事にも原因があった。
エンド本人も異世界人のフーナを相手に敗北を喫した。
生物の頂点云々なんて、まるで無意味なものだった。
ドゴ――――――ンッ!
そこへ間髪入れずに、ナジメの特大土団子がエンドに接触する。
「くっ! こっちも大した威力はないわっ! 痺れが解けたからこのまま破壊してやるっ!」
バキッ――――
両手で受け止めた大岩に人外の力が加わり、瞬く間に亀裂が走る。
こんなもの容易く破壊して、人族と竜族の差を見せつける為にと力を籠める。
バキッ バキッ
だけどエンドは知らないし、知らされていない。
この世界に竜族を凌駕する存在が、フーナ以外にもいる事を。
だからこの展開はある程度予想出来た事。
自分を負かしたフーナと、相手のリーダーが同じ存在なのだから。
そんなシスターズはスミカとも戦っているし、数々の戦いを目の当たりにしている。
スミカの戦い方を、見取り稽古のように吸収し、各々が覚えている。
バキ、バキ、
ドゴ――――ンッ!
「さぁ、土の塊を破壊したわっ! 今度はお前たちを――――」
大岩を腕力だけで破壊し、瓦礫が舞う中エンドが叫ぶ。
しかしシスターズは知っていた。
蝶の英雄の戦い方を何度も見てきたから。
「ラブナ、今じゃっ!」
相手の油断や慢心を誘い、そこを突く戦術も。
相手を激昂させて、冷静さを失わせる戦略も。
「わかってるわよっ! 『火山岩弾』『水刃竜巻』っ!」
ナジメの指示で、ラブナの次なる魔法が発動する。
それは小型の燃える隕石と、切れ味の鋭いナイフのような、水の竜巻を発生させ、エンドに向かって放たれる。
「いっけ――――っ!」
『M・スチームエクスプロージョン』(魔法式水蒸気爆発)
その魔法はラブナのオリジナル魔法。
高温で燃え盛る物体に、水分をぶつけて大爆発させる、混合合成魔法。
「はぁ? 今度は火の岩と水の竜巻? こんなもの息吹だけで充分だわっ!」
降り注ぐ岩の破片から顔を出したエンド。
頭上に現れた、小さな魔法は脅威ではないと、またもや高を括る。
それほどまでに粗末な魔法だと、そう見えた故のまさかの油断だった。
跳ね返そうとした瞬間に、お互いに反発しあう混合魔法。
青白く発光した溶岩と、高速で大量の水分がぶつかり合い、強大なエネルギーが発生する。
そして――――
ジュッ
「なにっ!?」
ドッガ――――――――ンッッ!!!!
「きゃあ――――っ!」
そして頭上で大爆発を起こし、堪らず可愛らしい悲鳴を上げるエンド。
その余波を頭に受け、沼地から完全に姿が見えなくなる。
「おお~っ! 見事に引っ掛かったのじゃっ!」
「そうねっ! あそこに大穴が開いてるなんて知らないわよねっ!」
「ナジメちゃんもラブナちゃんも凄いっ!」
それを見届けて大はしゃぎする3人。
思わず互いに手を取って、大喜びでグルグルと回りだす。
エンドが吸い込まれるように消えて行った地面。
そこはこのスラムに現れた、巨大な虫が開けた大穴の跡地だった。
元々はナジメが蓋をしてあったが、ラブナとの二人がかりの魔法で沼地に変え、次の土団子の一撃で更に衝撃を与え、最後に爆発の魔法で、エンドごと地下に通じる洞窟に落とす作戦だったようだ。
こうしてエンドとの戦いは、ユーアたちの優勢で幕を開ける事となった。
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