40 / 43
第四章 終わらない歌
7.地球に歌があるかぎり
しおりを挟む――どこまでも白い、不思議な空間。
自分が立っているのか、浮いているのかもわからないくらいに真っ白だ。
「……ここは……?」
『僕の中だよ』
わたしの呟きに答えるように、どこからかシマさんの声が聞こえてきた。
わたしは周囲を見回しながら聞き返す。
「し、シマさん! どこにいるんですか?!」
けど、ただ真っ白な世界が広がっているだけで、誰の姿も見当たらない。
シマさんの声は、さらに続けて言う。
『へぇ。君、僕のことを知っているの? そっか、だからあの歌を歌えたんだね。ここは僕の意識の中……心の世界、って言えばわかりやすいかな? だから、僕はここにいるよ』
「え……?」
シマさんの返答に、わたしは戸惑う。
すると、シマさんのいたずらな笑い声が響く。
『あはは。なかなか信じられないよね。それじゃあ、とりあえず「像」を作ろうか。その方が、君は話しやすいだろう』
直後、目の前に紫色の物体が現れた。
それは……
「……わ、ワットン!!」
わたしの大好きなキャラクター、犬のワットンだった。
「やっぱりシマさんなんですね! よかったぁ。あ、わたし『にじいろ♪ ささくれよん』の関係者です! 岩國さんたちも本当に心配しているんですよ? 早く地球へ帰りましょう!」
口早に事情を説明しながら、わたしはワットンの手を引く。
しかし、
『ううん。僕は行かないよ。宇宙が、僕の本当の居場所だから』
そんなことを口にするので……わたしは耳を疑う。
「し、シマさん……なにを……?」
聞き返すわたしに、シマさんは少しだけ沈黙して、
『……僕は、嶋永雄二ではない。彼はもう、この世にいないよ』
信じられない言葉を紡ぎながら、着ぐるみの頭部を外し――
空っぽな中身を、わたしに見せつけた。
『……僕は、宇宙を漂う精神生命体。肉体を持たない、心だけの存在だ。嶋永雄二は、十五年前に死んだ。以来、彼の代わりに僕が、ワットンを演じていたんだよ』
そう、シマさんの声で淡々と言われ……
わたしは、放心しながら首を横に振る。
「うそ……そんなの、信じられるわけ……」
『本当さ。嶋永は……ユウジは、僕の最高の友達だった』
……そして。
ゆっくりと、大切な思い出を紐解くように、語り始めた。
『――僕が地球に来たのは三十年前。体を持たない僕は、たまたま目についた犬のぬいぐるみに乗り移った。そのぬいぐるみの持ち主が、ユウジ。まだ五歳の男の子だった』
言いながら、ワットンの頭をカポッとはめ直す。
黒いビー玉みたいな目が、わたしを見つめる。
『ぬいぐるみの体で動いたりしゃべったりする僕を、ユウジはすぐに気に入って、友達になってくれた。大人たちにバレないように守ってくれたし、汚れたりほつれたりしたらすぐに直してくれた。どこへ行くにも一緒で、たくさん冒険もしたし、数えきれないほどの歌も歌った。ユウジが大人になっても、僕たちはずっと友達だった。けど……』
……と、『彼』は少し俯いて、
『……夢だった子供番組の着ぐるみ役に選ばれた直後、ユウジは病気になった。命にかかわる重い病で、もう助からないと医者に言われた。ユウジはひどく落ち込んだ。毎日泣いて、泣いて……でも、急に思いついたように、こう言ったんだ』
そこで、『彼』は再び顔を上げ、
『「俺が死んだら、俺の体に入って、君が代わりにワットンを演じてくれ」、って……僕に、頼んできたんだ』
それを聞き、わたしはハッと息を飲む。
「それじゃあ……わたしが知っているワットンは、本物のシマさんじゃなくて、あなたが演じていたんですか……?」
『そういうこと。ユウジは僕に、着ぐるみを演じる上で大切なことを教えてくれた。ワットンというキャラクターを心から愛すること。ワットンならどうするか、なんて言うかを常に考えること。ワットンになるのを楽しむこと。それ以上に、視ている子供たちを楽しませること。それらを言い残して、ユウジは……家族にも内緒で、ひっそりと息を引き取った』
わたしは、絶句する。
シマさんは、自分が死んだことを隠したんだ。
ワットンというキャラクターを……自分自身の『夢』を、この世に残すために。
『……それから僕は、ユウジに教わったとおりにワットンを演じた。たくさん歌って、たくさん踊って……たくさんの子供たちに出会った。ユウジが見るはずだった楽しい景色を、いくつも目にした。そうしている内に、僕は……僕の心は、完全にワットンになってしまったんだ』
そして、『彼』はくすりと笑う。
『最初はね、ユウジのためにやっていたんだ。けど、いつからか、僕自身が望んでワットンをやるようになっていた。だから、がんばった。一人でも多くの子供が笑顔になれるように……僕の歌で、楽しい気持ちになれるように。何百年も生きて、さまざまなものに乗り移ってきた僕だけれど、こんなに楽しい経験は初めてだった。でも……』
そこまで言うと、『彼』はうな垂れて、
『……番組は、終わってしまった。ワットンも、もうおしまい。その後、ユウジの古い友人――イワクニから連絡がきて、「ささくれ」っていうキャラクターをやらないかと誘われた。返事に迷っていたら、あれよあれよと言う間に話が進んで、いつの間にか出演が決まっちゃってた。だけど……気づいたんだ。僕がやりたかったのはワットンであって、着ぐるみならなんでもいいわけじゃない。僕にとって大事なのは、ユウジとの約束だったんだ。だから僕は……思い出の場所にお墓を作って、ユウジの体に別れを告げた』
……そっか。
だから、さっき見た『ささくれ』の中身も、目の前にいるワットンの中身も、空っぽなんだ。
本当のシマさんはもういなくて、精神生命体である『彼』だけがそこにいるから。
まだ、信じられない。
けれど、この話が真実なら、シマさんの家の食べ物や雑誌がすべて十年以上前のものだったことにも納得がいく。
本当のシマさんは十五年前に亡くなっていて、それ以来、精神生命体である『彼』がシマさんを演じていた。
だから、時が止まったような部屋になっていたんだ。
精神だけで存在する『彼』には、食事も、人間らしい娯楽も、必要なかったから。
「でも……それならどうして、『ささくれ』の着ぐるみを持ち出したんですか?」
と、まだ解決していない疑問をわたしは投げかける。
シマさんを演じることをやめ、他の着ぐるみをやるつもりがないのなら、『ささくれ』の着ぐるみを宇宙に持ち出す必要もないはずだ。
わたしの質問に、『彼』は申し訳なさそうに頭を掻く。
『それは……あの子たちのケンカを止めるためだよ』
「あの子たち……?」
『あの小さな女王様と、うさぎの王子様のこと』
それって……キズミちゃんとハミルク?!
驚くわたしに、『彼』は困ったように肩をすくめる。
『ユウジの体を離れた後、僕は地球を去り、宇宙を漂った。そしたら、あの子たちがケンカしているのをたまたま見かけてさ。地球を侵略するとか、どっちが領土を多く奪うだとか言い合って、今にも戦争になりそうだった。すぐに止めたかったけれど、僕には体がない。だから、一度地球に戻って、「ささくれ」の体を借りたんだ』
「それじゃあ……あの『赤い扉』のゲートを開いたのも、もしかして……」
『そう。僕があのスタジオにゲートを繋げたんだ。「ささくれ」に乗り移って、急いで宇宙に戻ったけれど、あの子たちは別の場所に移動してしまっていた。それから宇宙を漂って、なんとか探し出して……この『マルデック』にたどり着いた、というわけ。でも、肝心な女王様と王子様は、僕が繋げたゲートのせいで地球に行ってしまったんだね。ゲートをきちんと閉じておくべきだったよ。本当にごめんね』
謝る彼を見上げ、わたしは、深く息を吐く。
繋がった……
あの『赤い扉』の謎も、『ささくれ』の着ぐるみごとシマさんが失踪した理由も、すべて。
シマさんはもう、この世にはいない。
わたしが憧れていたワットンは……
シマさんが遺した思いと、その約束を守った『彼』によって作られた存在だったんだ。
「…………っ」
わたしは、胸の前でこぶしを握る。
悲しみ。戸惑い。切なさ。
それらがぐちゃぐちゃに混ざり合い、言いようのない気持ちになって、わたしの心を締めつけていた。
そして、
「あなたは……これから、どうするんですか?」
掠れた声で、わたしが尋ねる。
それに、『彼』は頷きながら答える。
『また宇宙を彷徨う旅に出るよ。あの女王様と王子様は、もう仲直りできたようだからね。僕がここに留まる理由はなくなった』
「そんな……本当に行っちゃうんですか?」
『うん? なんで君がそんなに悲しそうな顔をするんだい?』
「だって……」
わたしは、ワットンの目をまっすぐに見つめて……言う。
「わたし……ワットンのことが、大好きだったんです。あなたにもらった歌と、笑顔と、楽しい思い出が、今のわたしを作っている……」
ぽろっ……と、こらえていた涙がこぼれ落ちる。
「わたし、一度夢から逃げたんです。でも、ワットンの番組が終わって、気づいた……時間は永遠じゃない。どんなに楽しいことも、いつかは終わりを迎える。だから、"今"できることを精一杯やらなきゃいけないんだって……あなたのおかげで、気づくことができた」
わたしは、ワットンの腕に縋りつく。
両手に伝わるその感触は、ふわふわと柔らかく、あたたかくて。
いつかのコンサートで撫でられた、あの手の感触と、まったく同じで。
「ずっと、お礼が言いたかった……やっと会えたのに、もう会えなくなっちゃうなんて。わたし、夢を叶えて『歌のおねえさん』になったんです! どうか一緒に……番組をやっていただけませんか?」
涙を流しながら、祈るように、問いかける。
『彼』は、しばらくわたしを見つめ返すと……
わたしの両肩に、そっと手を置いて、
『ごめんね。そのお願いは叶えてあげられない。やっぱり、ワットン以外を演じる気持ちにはなれないんだ。それに、君自身もさっき言っていただろう? 「どんなに楽しいことも、いつかは終わりを迎える」、って』
そのまま、『彼』の手が、わたしの涙を拭う。
『ワットンの番組は終わった。これからは、君たちが次の「楽しい」を作る番だ。そうやって、大人から子供へ繋いでいく――歌のようにね。今の君なら、その意味がわかるだろう?』
その言葉に、わたしはハッとなる。
ワットンからもらった、楽しい気持ち……
それがわたしの歌になり、キズミちゃんやハミルク、レイハルトさんに伝わって、ルミナさんやパディさんたちにも伝わった。
思いは、歌になって繋がる。
わたしの歌を聴いた子供たちが、いつか大人になって、その次の世代へと繋いでいく。
地球に歌があるかぎり、楽しい気持ちも、大好きの気持ちも、ずっと残り続けていく。
だから、ワットンの思いは消えない。
わたしがちゃんと、次の世代に伝えるから。
歌ってこんなに楽しいんだよ、って――
わたしは、自分で涙を拭う。
そして、顔を上げ、彼を見つめて、
「……はい。今度はわたしが、あなたからのバトンを繋ぎます。だから……時々、わたしの歌を聴きに、地球へ遊びに来てください」
精一杯の笑顔を向けて、そう伝えた。
『彼』は一つ頷くと、わたしから静かに離れ、
『もちろん。こっそり聴きに行かせてもらうよ。僕は地球が大好きだった。歌は、地球にしかないからね』
その言葉の直後、ワットンの姿がグニャリと歪んだ。
そのままぐるぐると渦を巻くように、小さく小さく形を変え始める。
「……! ワットン!」
わたしが呼びかけるけれど、『彼』はどんどん小さくなる。
『最後に君に会えてよかった。僕の歌は――ユウジの思いは、ちゃんと子供たちに伝わっていた。そのことがわかったから、僕も心置きなく次の旅路に向かえるよ。ワットンを好きになってくれて、本当にありがとう』
そして、
『……じゃあね、「歌のおねえさん」。君の歌が、宇宙の果てにまで届く日を、楽しみにしているよ』
その言葉を最後に……
ワットンを形作っていた『彼』は、雲のように消えた。
その夢のあとに、わたしは手を伸ばし、
「…………ありがとう、ワットン」
ずっと伝えたかった言葉を、そっと口にした。
1
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる