怪夢

カンザシ屋小噺支店

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『鬼ごっこ』

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ショッピングモール、店内放送「本日は御来店頂きまして誠に有難うございます。」
爆音、機械の稼働音。

店内放送「当店は間も無く閉店のお時間でございます。」
またしても爆音、"鬼"が吹き抜けを貫く。
(俺は怯む、それに抵抗する術を持たない)
空のギターケースを背負った男は物陰へ、黒い衣服や頭髪は薄闇に溶け込む、ギターケースには武器は勿論夢も希望も愛も無い、今の所は渋々空虚を詰め、威勢を張っている。

"鬼"の容姿は見えるだろうか?剥き出しの心臓に、不気味な笑みを浮かべる顔、肉体は無く血管や消化器官に類似したチューブがずりずりと垂れている。
(気味が悪い、早く探索を)
男は"鬼"から逃げるように探索をする。
(知っているだろう、ギターケースの中身さ)
ショッピングモールの中は朝陽に満ちていた、この日と恐怖、非常に目覚めに近い。
(久しいな、此処まで鬼気迫るものは)
男は夢と共に現れ、夜明けに攫われ消えて行く、ギターケースの中身を探し歩く者だ。
男はショッピングモール内の案内版に駆け寄る、指と目で道をなぞる。
(……無い、ここには無い)
瞬間、上空、男を定める目。
舞うチューブ、鮮血。

バスは停車している、白髪の運転手がこちらを見やり「何処まで?」と。
男は濡羽色の虹彩を運転手に向ける、言葉は向けずに。
「…近くの街へ送りましょう、今後、此処へは近付かぬよう。」
バスは走り出す、窓の外、転がる景観は荒れ果てていた。
(この街は目覚めに近い、なんとも浅い街だ)
男の溜息だけが街を歩いていた。
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