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第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く
隣国の戦況
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レヴィ騎士団本部の大きな会議室に、国内の騎士が集っている。ざっと50名程度はいるだろうか。知名度としてはマルセルとカイが頭一つ分飛びぬけているため、2人が並んで歩いていれば必然的に注目される。
「お姫様は一緒じゃなかったんだ?」
連れ立って会議室に入ると、マルセルは揶揄うようにカイに言う。
「撒いて来るのが大変だったんだ。どういうわけか戦地にまで来たいと言い張っている」
カイが困ったようにして言うのをマルセルは愉快そうに眺める。
「なんだか惚気に聞こえるけど、本当に困ってそうだね。あのお姫様はやっぱり我儘なのか」
「我儘というのか・・我が強く、気も強い」
「なるほど。やっぱり可愛いだけじゃないんだなあ」
「それは、アロイスと対峙していた彼女を見れば分かるだろ」
「まあね。で、そんなところが好きなわけか」
マルセルはカイを眺めながら、女性に振り回されることになっている様子を愉快に笑う。怖いもの知らずで戦場の申し子として有名なカイ・ハウザーといえど、恋人相手にはただの男でしかないらしい。マルセルはカイの意外な姿が痛快だった。
「さて。なかなか厄介な問題と向き合うぞ」
マルセルはそう言って会議室の中心に立った。マルセルの部下が持ち帰った情報を、これから整理して対策を練ることになる。
マルセルの報告は、ポテンシア内に入っているリブニケ王国の兵が使う「火」が厄介だという話だった。不思議な流れで大量の火を降らせることが分かっているという。カイはその話を聞いて、恐らく呪術の類だろうと確信した。
ポテンシアの多くの場所が焼かれているのだと聞いて、自国に火を放つ判断を下すルイスが生まれ故郷のポテンシアを本気で滅ぼすつもりなのだろうと理解する。
この事実をレナに聞かれていたら「私が行って火を消す」などとやる気を出されるところだった。カイはレナを連れてこなかった判断が正解だったことに安堵する。
「ルイス王子の戦い方は容赦がない。あんな心の無い人だとは知らなかったよ。だから怖いな」
マルセルはそう言ってポテンシア国内の地図を広げ、現在ルイスが進めている軍の進路を示した。
「もう国王の城まで目と鼻の先じゃないか」
カイはマルセルの示したルイスの勢いに驚く。ポテンシア国王が思った以上に押されている。
「ここまでは国王が押されているが、まあ、あのポテンシア国王がそう簡単に落とされるわけがない」
マルセルが腕を組みながら言う。国王の抱えている優秀な間諜部隊が、ルイスの軍を内側から攻撃する展開が近いうちに起こるだろうと読んでいた。
「我が国への影響は、あと数日間は無いだろう・・。だが、国王が落とされた後でルイス王子に協力しているリブニケ王国の兵がこちらに向かってくる可能性は十分にある。その時には、例の『火』が我が国を焼きに来るかもしれないと思っておくしかない」
マルセルの言葉に、その場にいた騎士たちの表情が曇った。今後、故郷が焼かれるかもしれない。他国で起きている現実が一気に身近なものになり、その場には絶望的な空気が流れていた。
「お姫様は一緒じゃなかったんだ?」
連れ立って会議室に入ると、マルセルは揶揄うようにカイに言う。
「撒いて来るのが大変だったんだ。どういうわけか戦地にまで来たいと言い張っている」
カイが困ったようにして言うのをマルセルは愉快そうに眺める。
「なんだか惚気に聞こえるけど、本当に困ってそうだね。あのお姫様はやっぱり我儘なのか」
「我儘というのか・・我が強く、気も強い」
「なるほど。やっぱり可愛いだけじゃないんだなあ」
「それは、アロイスと対峙していた彼女を見れば分かるだろ」
「まあね。で、そんなところが好きなわけか」
マルセルはカイを眺めながら、女性に振り回されることになっている様子を愉快に笑う。怖いもの知らずで戦場の申し子として有名なカイ・ハウザーといえど、恋人相手にはただの男でしかないらしい。マルセルはカイの意外な姿が痛快だった。
「さて。なかなか厄介な問題と向き合うぞ」
マルセルはそう言って会議室の中心に立った。マルセルの部下が持ち帰った情報を、これから整理して対策を練ることになる。
マルセルの報告は、ポテンシア内に入っているリブニケ王国の兵が使う「火」が厄介だという話だった。不思議な流れで大量の火を降らせることが分かっているという。カイはその話を聞いて、恐らく呪術の類だろうと確信した。
ポテンシアの多くの場所が焼かれているのだと聞いて、自国に火を放つ判断を下すルイスが生まれ故郷のポテンシアを本気で滅ぼすつもりなのだろうと理解する。
この事実をレナに聞かれていたら「私が行って火を消す」などとやる気を出されるところだった。カイはレナを連れてこなかった判断が正解だったことに安堵する。
「ルイス王子の戦い方は容赦がない。あんな心の無い人だとは知らなかったよ。だから怖いな」
マルセルはそう言ってポテンシア国内の地図を広げ、現在ルイスが進めている軍の進路を示した。
「もう国王の城まで目と鼻の先じゃないか」
カイはマルセルの示したルイスの勢いに驚く。ポテンシア国王が思った以上に押されている。
「ここまでは国王が押されているが、まあ、あのポテンシア国王がそう簡単に落とされるわけがない」
マルセルが腕を組みながら言う。国王の抱えている優秀な間諜部隊が、ルイスの軍を内側から攻撃する展開が近いうちに起こるだろうと読んでいた。
「我が国への影響は、あと数日間は無いだろう・・。だが、国王が落とされた後でルイス王子に協力しているリブニケ王国の兵がこちらに向かってくる可能性は十分にある。その時には、例の『火』が我が国を焼きに来るかもしれないと思っておくしかない」
マルセルの言葉に、その場にいた騎士たちの表情が曇った。今後、故郷が焼かれるかもしれない。他国で起きている現実が一気に身近なものになり、その場には絶望的な空気が流れていた。
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