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第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く
戦火の中へ
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その知らせは、騎士団本部にいるカイの元に突然伝えられた。
ポテンシアとの国境がついに破られたのかと予想したのを裏切るように、リブニケ王国とブリステ公国の国境からリブニケ兵が攻めて来る流れが起きた。どういうことなのかとカイは愕然とする。
(リブニケ王国はポテンシアの内乱に参加し、ポテンシア国王を攻めている最中ではなかったのか?)
リブニケ王国の狙いに、得体の知れない不気味さを感じる。決して楽観視のできない状況が生まれていることは間違いない。
(ルイス殿下とは、全く別の思惑で動いたのだろうか)
もともと、リブニケ王国が侵略志向で周辺国にとって扱いづらい国であったことは間違いない。隣国ポテンシアとの情勢が不安な中、別の隣国からの侵略の脅威が降りかかり、ブリステ公国国内は揺れた。
シンと共にカイは頭を抱えた。ルイスと国王が戦っているポテンシアの状況が引っかかる。もし、今回の侵攻が囮だとしたら兵力の分散が仇となるからだ。
「相変わらず、なかなか厄介な問題を連れて来てくれるな・・」
カイは、すぐにでもレヴィ騎士団のマルセルと公王のアロイスに相談をすべきだと出発を決めた。初動を誤って被害を大きくしたくない。現在はリブニケ国境付近の領主たちが中心に防衛にあたっている。こういった事態が起きると、カイはすぐに前線に入り敵側の戦意を挫く役目を担うことが多い。
「こんな時こそ、ポテンシア側に気を配るべきなのかもしれない」
カイは部下を数名連れ、ポテンシアの国境付近に設置した駐屯地を仕切っているマルセルの元に出発した。
不意に、レナの姿を思い出す。次に会えるまで時間が空いてしまうかもしれない。怒るだろうか、悲しむだろうか、カイは朝に離れた姿に心の中で謝った。
「リブニケの動きをどう読む?」
「やっぱり、ポテンシア側から我が国に攻め入るために、挟み撃ちさながら国境を越えて来たんじゃないか?」
「マルセルも、その意見か・・」
カイはレヴィ騎士団でマルセルと意見交換をした。幸いなのか、カイとマルセルは概ね同じ意見だった。今こそ、ポテンシア側の国境に気を付けるべきだろうと見解が一致する。
「ポテンシア国王を討つ前に、ブリステに攻め込んでくるつもりかな」
マルセルが可能性の話をするが、それが事実ならルイスはリブニケに協力し、ブリステ公国を追い詰める判断をしたことになる。
(あのルイス王子がその判断を下しているなら・・もう手遅れかもしれない)
レナは、ルイスに何かを訴えようと考えていたようだが、例えレナでもルイスに声が届くかは分からない。ルイスは、すっかり人が変わってしまったのかもしれない。こうなると、ルイスの前にレナが現れようとしても、生きていると信じるかすら疑わしかった。
それに、カイは本心ではレナをルイスに会わせたくなかった。以前レナがルイスと交わした婚約は、未だに有効かもしれない。
「どうした? 心ここにあらずだな。例によって、また、お姫様関連か?」
マルセルのグリーンの瞳がカイをじっと見ていた。カイは気まずそうに頷く。
「何も言わずに出てきてしまった。これから暫く帰れないだろうから」
「手紙を書けよ。女性というのは愛の込もった言葉を記されたものが、とにかく好きだよ」
「・・誤魔化してばかりいるようで気が咎める」
カイがそう言って気の進まなそうな顔をすると、「真面目だよねえ」とマルセルが揶揄う。同席していたカイの部下たちは「お姫様」というのはカイの恋人をそう呼んでいるだけなのかと勘違いしていた。
「お姫様は、ルイス王子と婚約していたんだっけ?」
マルセルが顎に手を置いて尋ねると、カイは頷く。部下たちは急に出て来た情報に混乱していた。
「色々と、穏やかじゃないわけか」
「そうだ。ルイス王子にくれてやる気は、全くない」
カイがハッキリと断言したのをマルセルは嬉しそうに眺め、部下たちが面食らっている。まさか上司の恋人が、隣国で内乱を起こしている王子の婚約者とは信じがたい。
「そういうの、好きだな」
マルセルは楽しそうに笑う。長い前髪が、サラリと前に掛かった。赤毛の隙間から愉快そうな口元が見えると、他人事というのはこういうことかとカイはマルセルを睨む。
「君くらい規格外に強い人間が選ぶ女性って、どんな人なのか気になっていたんだよ。これ位、話題がある方がしっくりくる。相手がルイス王子だろうがなんだろうが、負けるなよ。ブリステ公国の騎士の底力で、全部を覆そうじゃないか。麗しの王女様は、カイ・ハウザーのものだ。私も応援する」
マルセルはそう言いながら懐から短剣を出すと、10メートルほど離れた壁に貼られた地図に向かってそれを投げる。短剣はポテンシアの内陸部にあたる場所に刺さっていた。
「ポテンシア王国がなんだ。所詮王族以外は虐げられ貧しく生きる国民だ。そんな国に、私は負ける気はしない。何しろ、ブリステにはレヴィとハウザーが居るからな」
「・・そうだな」
カイはマルセルの意見に頷くと、組んだ腕を解き、掌を開いて壁に向ける。壁に刺さった短剣を「気」の力で引き寄せ、手に収めた。
「やってやるか。全てを諦めないつもりで」
カイはそう言って口角を上げると、短剣をマルセルの掌に置く。
「やってやろう、相棒。こうなったらルリアーナ王女を、名実ともに君のものにしろ」
「言われずとも、最初からそのつもりだ」
2人はアロイス公王へ向けた書簡にポテンシアへの出兵を記し、駐屯地に向かう。ポテンシアも国境へ兵を進める準備を始めた。
ポテンシアとの国境がついに破られたのかと予想したのを裏切るように、リブニケ王国とブリステ公国の国境からリブニケ兵が攻めて来る流れが起きた。どういうことなのかとカイは愕然とする。
(リブニケ王国はポテンシアの内乱に参加し、ポテンシア国王を攻めている最中ではなかったのか?)
リブニケ王国の狙いに、得体の知れない不気味さを感じる。決して楽観視のできない状況が生まれていることは間違いない。
(ルイス殿下とは、全く別の思惑で動いたのだろうか)
もともと、リブニケ王国が侵略志向で周辺国にとって扱いづらい国であったことは間違いない。隣国ポテンシアとの情勢が不安な中、別の隣国からの侵略の脅威が降りかかり、ブリステ公国国内は揺れた。
シンと共にカイは頭を抱えた。ルイスと国王が戦っているポテンシアの状況が引っかかる。もし、今回の侵攻が囮だとしたら兵力の分散が仇となるからだ。
「相変わらず、なかなか厄介な問題を連れて来てくれるな・・」
カイは、すぐにでもレヴィ騎士団のマルセルと公王のアロイスに相談をすべきだと出発を決めた。初動を誤って被害を大きくしたくない。現在はリブニケ国境付近の領主たちが中心に防衛にあたっている。こういった事態が起きると、カイはすぐに前線に入り敵側の戦意を挫く役目を担うことが多い。
「こんな時こそ、ポテンシア側に気を配るべきなのかもしれない」
カイは部下を数名連れ、ポテンシアの国境付近に設置した駐屯地を仕切っているマルセルの元に出発した。
不意に、レナの姿を思い出す。次に会えるまで時間が空いてしまうかもしれない。怒るだろうか、悲しむだろうか、カイは朝に離れた姿に心の中で謝った。
「リブニケの動きをどう読む?」
「やっぱり、ポテンシア側から我が国に攻め入るために、挟み撃ちさながら国境を越えて来たんじゃないか?」
「マルセルも、その意見か・・」
カイはレヴィ騎士団でマルセルと意見交換をした。幸いなのか、カイとマルセルは概ね同じ意見だった。今こそ、ポテンシア側の国境に気を付けるべきだろうと見解が一致する。
「ポテンシア国王を討つ前に、ブリステに攻め込んでくるつもりかな」
マルセルが可能性の話をするが、それが事実ならルイスはリブニケに協力し、ブリステ公国を追い詰める判断をしたことになる。
(あのルイス王子がその判断を下しているなら・・もう手遅れかもしれない)
レナは、ルイスに何かを訴えようと考えていたようだが、例えレナでもルイスに声が届くかは分からない。ルイスは、すっかり人が変わってしまったのかもしれない。こうなると、ルイスの前にレナが現れようとしても、生きていると信じるかすら疑わしかった。
それに、カイは本心ではレナをルイスに会わせたくなかった。以前レナがルイスと交わした婚約は、未だに有効かもしれない。
「どうした? 心ここにあらずだな。例によって、また、お姫様関連か?」
マルセルのグリーンの瞳がカイをじっと見ていた。カイは気まずそうに頷く。
「何も言わずに出てきてしまった。これから暫く帰れないだろうから」
「手紙を書けよ。女性というのは愛の込もった言葉を記されたものが、とにかく好きだよ」
「・・誤魔化してばかりいるようで気が咎める」
カイがそう言って気の進まなそうな顔をすると、「真面目だよねえ」とマルセルが揶揄う。同席していたカイの部下たちは「お姫様」というのはカイの恋人をそう呼んでいるだけなのかと勘違いしていた。
「お姫様は、ルイス王子と婚約していたんだっけ?」
マルセルが顎に手を置いて尋ねると、カイは頷く。部下たちは急に出て来た情報に混乱していた。
「色々と、穏やかじゃないわけか」
「そうだ。ルイス王子にくれてやる気は、全くない」
カイがハッキリと断言したのをマルセルは嬉しそうに眺め、部下たちが面食らっている。まさか上司の恋人が、隣国で内乱を起こしている王子の婚約者とは信じがたい。
「そういうの、好きだな」
マルセルは楽しそうに笑う。長い前髪が、サラリと前に掛かった。赤毛の隙間から愉快そうな口元が見えると、他人事というのはこういうことかとカイはマルセルを睨む。
「君くらい規格外に強い人間が選ぶ女性って、どんな人なのか気になっていたんだよ。これ位、話題がある方がしっくりくる。相手がルイス王子だろうがなんだろうが、負けるなよ。ブリステ公国の騎士の底力で、全部を覆そうじゃないか。麗しの王女様は、カイ・ハウザーのものだ。私も応援する」
マルセルはそう言いながら懐から短剣を出すと、10メートルほど離れた壁に貼られた地図に向かってそれを投げる。短剣はポテンシアの内陸部にあたる場所に刺さっていた。
「ポテンシア王国がなんだ。所詮王族以外は虐げられ貧しく生きる国民だ。そんな国に、私は負ける気はしない。何しろ、ブリステにはレヴィとハウザーが居るからな」
「・・そうだな」
カイはマルセルの意見に頷くと、組んだ腕を解き、掌を開いて壁に向ける。壁に刺さった短剣を「気」の力で引き寄せ、手に収めた。
「やってやるか。全てを諦めないつもりで」
カイはそう言って口角を上げると、短剣をマルセルの掌に置く。
「やってやろう、相棒。こうなったらルリアーナ王女を、名実ともに君のものにしろ」
「言われずとも、最初からそのつもりだ」
2人はアロイス公王へ向けた書簡にポテンシアへの出兵を記し、駐屯地に向かう。ポテンシアも国境へ兵を進める準備を始めた。
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