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第8章 戦場に咲く一輪の花
やり直そう
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駐屯地のテントに、各々が向かって行く。カイはこんな時にレナと寝るのが周りからどう見えるのかを気にしたが、レナを他の誰に預けるのも信用が出来ず、結局自分の元に置くしかないという結論に至る。
レナが兵士を呪いから救ったのは大きかった。兵士たちの間でレナは一目置かれる存在になっている。
「地面にそのまま寝るのとあまり変わらない環境なんだ・・申し訳ないが・・」
カイはそう言って自分のテントにレナを招き入れる。
「じゃあ、あなたの上で寝ればいい?」
「・・寝やすいとは言えないぞ」
「大丈夫、慣れてるから平気よ」
慣れているとはどういうことだろうかとカイは一瞬考え込んだ。
「寝る前に身体を拭いておきたいんだが・・脱ぐから適当に向こうを向いていてくれたら良い・・」
レナはそれを聞いてカイに背を向けて座る。暫く静かにしていたが、
「じゃあ、タオルを濡らしてあげる」
と提案した。
「ああ、確かに助かる」
カイは自分がレナの視界に入らないよう気をつけて、タオルだけをレナに渡した。
レナは少量の雨をタオルの上に降らせる。
「便利なものだな」
カイはそう言って出来上がった濡れタオルで身体を拭いた。レナがいると生活の質が上がるな、とカイは小さく笑う。カイは軽装に着替え、レナに声を掛けた。
「ありがとう、もう大丈夫だ。レナは大丈夫か?」
カイは、こんな時こそレナにも水浴びくらいさせてやりたいと思ったが、例えレナが呪術で姿を消していようと、誰かに見つからないとも限らない。
「今日は我慢するわ。明日は私も身体を綺麗にするか、すぐ隣の川にでも入ってこようかしらね」
「川には行くな。誰かに見つかるとマズい」
「姿も気配も消すわよ」
「それでも嫌だ」
「それも、あなたが嫌なこと?」
レナは暗いテントの中でカイに抱きつく。
「そうだ。レナが誰かに見られるかもしれないのは、嫌だ」
「分かった。カイが嫌なら、しないわ」
2人は暫く抱き合い、離れると暗がりの中で目を合わせて微笑み合う。
「本当は、ずっとレナに会いたかった。あんな再会になってしまって後悔している」
「もう、分かったから大丈夫よ。私、あなたが大好きだもの」
「やり直したいな・・今、ここでやり直そう」
カイはそう言うと、改めてレナをじっと見つめる。
「あまりに会いたかったから、レナが目の前に現れて、てっきり幻を見たかと思ったんだ。今でも、都合のいい夢なんじゃないかと疑う」
カイはレナの頭をゆっくり撫でると、そのまま髪に手を滑らせた。
「カイに、ロキに会わないように言われていたのに・・ロキを頼ってしまってごめんなさい。あなたの気持ちも考えず、軽率だったって反省してるわ」
レナはカイをじっと見つめる。目の前で優しい顔で微笑むカイの表情を、やはりレナはよく知っていた。自分だけがこの顔を知っているのだろうと確信すると、胸の奥が音を立てる。
「あなたに会いたくて・・カイがいないと・・私、ぐっすり眠れないの」
「そうか、ぐっすり眠れるんだな・・それは・・いや、いいんだ。こっちの話だ」
カイは複雑な表情でレナを見ている。一緒にいると熟睡できるなど、カイにとっては朗報でもなんでもない。
「床が固くても眠れそうか? 久しぶりだな、一緒に眠るのは」
カイは地面に敷かれたキルトの上で横になると、レナを隣に誘う。レナはカイの腕の上に頭を載せると、すぐそばにある顔をじっと見つめて微笑んだ。
「毎日、あなたとこうして眠りたい」
無邪気な顔でレナは言う。
「そうか。そう言ってもらえるのは嬉しいが、俺は熟睡できなくなるから毎日はつらい」
カイはレナに触れたい衝動を抑えると、つい本音が外に出てしまっていた。
レナが兵士を呪いから救ったのは大きかった。兵士たちの間でレナは一目置かれる存在になっている。
「地面にそのまま寝るのとあまり変わらない環境なんだ・・申し訳ないが・・」
カイはそう言って自分のテントにレナを招き入れる。
「じゃあ、あなたの上で寝ればいい?」
「・・寝やすいとは言えないぞ」
「大丈夫、慣れてるから平気よ」
慣れているとはどういうことだろうかとカイは一瞬考え込んだ。
「寝る前に身体を拭いておきたいんだが・・脱ぐから適当に向こうを向いていてくれたら良い・・」
レナはそれを聞いてカイに背を向けて座る。暫く静かにしていたが、
「じゃあ、タオルを濡らしてあげる」
と提案した。
「ああ、確かに助かる」
カイは自分がレナの視界に入らないよう気をつけて、タオルだけをレナに渡した。
レナは少量の雨をタオルの上に降らせる。
「便利なものだな」
カイはそう言って出来上がった濡れタオルで身体を拭いた。レナがいると生活の質が上がるな、とカイは小さく笑う。カイは軽装に着替え、レナに声を掛けた。
「ありがとう、もう大丈夫だ。レナは大丈夫か?」
カイは、こんな時こそレナにも水浴びくらいさせてやりたいと思ったが、例えレナが呪術で姿を消していようと、誰かに見つからないとも限らない。
「今日は我慢するわ。明日は私も身体を綺麗にするか、すぐ隣の川にでも入ってこようかしらね」
「川には行くな。誰かに見つかるとマズい」
「姿も気配も消すわよ」
「それでも嫌だ」
「それも、あなたが嫌なこと?」
レナは暗いテントの中でカイに抱きつく。
「そうだ。レナが誰かに見られるかもしれないのは、嫌だ」
「分かった。カイが嫌なら、しないわ」
2人は暫く抱き合い、離れると暗がりの中で目を合わせて微笑み合う。
「本当は、ずっとレナに会いたかった。あんな再会になってしまって後悔している」
「もう、分かったから大丈夫よ。私、あなたが大好きだもの」
「やり直したいな・・今、ここでやり直そう」
カイはそう言うと、改めてレナをじっと見つめる。
「あまりに会いたかったから、レナが目の前に現れて、てっきり幻を見たかと思ったんだ。今でも、都合のいい夢なんじゃないかと疑う」
カイはレナの頭をゆっくり撫でると、そのまま髪に手を滑らせた。
「カイに、ロキに会わないように言われていたのに・・ロキを頼ってしまってごめんなさい。あなたの気持ちも考えず、軽率だったって反省してるわ」
レナはカイをじっと見つめる。目の前で優しい顔で微笑むカイの表情を、やはりレナはよく知っていた。自分だけがこの顔を知っているのだろうと確信すると、胸の奥が音を立てる。
「あなたに会いたくて・・カイがいないと・・私、ぐっすり眠れないの」
「そうか、ぐっすり眠れるんだな・・それは・・いや、いいんだ。こっちの話だ」
カイは複雑な表情でレナを見ている。一緒にいると熟睡できるなど、カイにとっては朗報でもなんでもない。
「床が固くても眠れそうか? 久しぶりだな、一緒に眠るのは」
カイは地面に敷かれたキルトの上で横になると、レナを隣に誘う。レナはカイの腕の上に頭を載せると、すぐそばにある顔をじっと見つめて微笑んだ。
「毎日、あなたとこうして眠りたい」
無邪気な顔でレナは言う。
「そうか。そう言ってもらえるのは嬉しいが、俺は熟睡できなくなるから毎日はつらい」
カイはレナに触れたい衝動を抑えると、つい本音が外に出てしまっていた。
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