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第8章 戦場に咲く一輪の花
対呪詛作戦会議
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その日、初めてレナはカイと共に作戦会議に参加した。
「兵士の方たちが呪いに倒れたのは、どういうことが起きた時だったの?」
レナがカイに尋ねると、カイは呪いに倒れた兵士の方を見て説明しろと目で訴えた。
「は、はい。何が起きたのかは全く覚えていません。ただ、前進していたら、突然意識がなくなったのか、途中からの記憶が曖昧になって・・」
「私も、同じようなものです。どんなことが起きたのかも全く・・」
実際に呪いを受けた兵士たちは自分の身に何が起きたのか全く分からないまま、いつの間にか呪われていたのだと口々に言った。
「側で、はっきりと異変に気付いた者もいないんだ・・。俺も近くにいたが、突然何人かから異様な声が発せられて、明らかにその人間の『気』が変わったのを見た。どう思う?」
カイはレナに意見を求めた。レナが呪いの本質を知っているとは思えなかったが、何か気付くことがあるかもしれない。
「実際に呪いが掛かったのは5名だったわね? その他の人たちは、何でも無かったの?」
「ああ・・実は・・呪いではないんだが、丁度その現象が起きたのが、酷い場所でな・・。何名かは嘔吐や気分を害して倒れた者もいる」
「酷い場所・・?」
レナが不思議そうに首を傾げると、カイは言いづらそうに詰まっていた。
「腐敗した大層な遺体がいっぱいあったのさ、お姫様」
マルセルが横から口を開いた。カイはマルセルを軽く睨む。
「恐らく、ポテンシア兵同士が争った跡だろう。無数の・・亡骸がその場に転がっていた。むせかえる臭いで気分が悪くなるのは仕方がない。確かに、その地の『気』も酷く淀んでいた」
「そう・・じゃあ、それが原因なんじゃないかしら」
レナはそう言って考え込む。
「やっぱり、その亡くなった人たちの『念』が呪詛になっている気がするのよ」
「前に言っていたやつか」
「確かめてみたいから、その、呪いの影響が起きた場所まで行ってみたい」
「いや・・あれは、レナに見せたい場所じゃない」
カイは、目にした光景を思い出し、レナには刺激が強すぎることを心配した。戦場を何度か経験した兵士ですら気分を害した光景に、農業国で平和な世界を見て来たレナが耐えられるとは思えない。
「まあ、お姫様が行きたいって言ってんだから、近くまで行ってみようか?」
マルセルは何でもない事のように言った。カイは明らかに不満そうな顔でマルセルを睨む。
「だって、このまま何の対策もしないでまた味方の兵士が呪われたら、どうするんだ?」
「そうなったら・・また・・」
「対策しないと、味方同士で争わなきゃいけなくなるんでしょ?」
レナの言葉に、カイは項垂れる。こうなった時のレナは強情で梃子でも動かないのだ。カイは、レナに余計な傷を負わせたくなかった。
「大丈夫よ、カイ。あなたが側にいるもの」
そう言って笑うレナに、カイは胸が締め付けられる。
「無理だと思ったら、言うんだぞ・・?」
「ええ、分かったわ」
レナはそう言うと、カイの方を見て軽く目を閉じ、顎を上げている。
(ん・・?)
カイは突然レナが目を閉じて目の前にいることに首を傾げたが、ああそうかと気付いてレナの額に口付けた。
(おでこ・・)
レナは目を開くと口をすぼめて頬を膨らませ、明らかに不満そうにしている。カイはそんなレナの様子に全く気付いていなかった。
「兵士の方たちが呪いに倒れたのは、どういうことが起きた時だったの?」
レナがカイに尋ねると、カイは呪いに倒れた兵士の方を見て説明しろと目で訴えた。
「は、はい。何が起きたのかは全く覚えていません。ただ、前進していたら、突然意識がなくなったのか、途中からの記憶が曖昧になって・・」
「私も、同じようなものです。どんなことが起きたのかも全く・・」
実際に呪いを受けた兵士たちは自分の身に何が起きたのか全く分からないまま、いつの間にか呪われていたのだと口々に言った。
「側で、はっきりと異変に気付いた者もいないんだ・・。俺も近くにいたが、突然何人かから異様な声が発せられて、明らかにその人間の『気』が変わったのを見た。どう思う?」
カイはレナに意見を求めた。レナが呪いの本質を知っているとは思えなかったが、何か気付くことがあるかもしれない。
「実際に呪いが掛かったのは5名だったわね? その他の人たちは、何でも無かったの?」
「ああ・・実は・・呪いではないんだが、丁度その現象が起きたのが、酷い場所でな・・。何名かは嘔吐や気分を害して倒れた者もいる」
「酷い場所・・?」
レナが不思議そうに首を傾げると、カイは言いづらそうに詰まっていた。
「腐敗した大層な遺体がいっぱいあったのさ、お姫様」
マルセルが横から口を開いた。カイはマルセルを軽く睨む。
「恐らく、ポテンシア兵同士が争った跡だろう。無数の・・亡骸がその場に転がっていた。むせかえる臭いで気分が悪くなるのは仕方がない。確かに、その地の『気』も酷く淀んでいた」
「そう・・じゃあ、それが原因なんじゃないかしら」
レナはそう言って考え込む。
「やっぱり、その亡くなった人たちの『念』が呪詛になっている気がするのよ」
「前に言っていたやつか」
「確かめてみたいから、その、呪いの影響が起きた場所まで行ってみたい」
「いや・・あれは、レナに見せたい場所じゃない」
カイは、目にした光景を思い出し、レナには刺激が強すぎることを心配した。戦場を何度か経験した兵士ですら気分を害した光景に、農業国で平和な世界を見て来たレナが耐えられるとは思えない。
「まあ、お姫様が行きたいって言ってんだから、近くまで行ってみようか?」
マルセルは何でもない事のように言った。カイは明らかに不満そうな顔でマルセルを睨む。
「だって、このまま何の対策もしないでまた味方の兵士が呪われたら、どうするんだ?」
「そうなったら・・また・・」
「対策しないと、味方同士で争わなきゃいけなくなるんでしょ?」
レナの言葉に、カイは項垂れる。こうなった時のレナは強情で梃子でも動かないのだ。カイは、レナに余計な傷を負わせたくなかった。
「大丈夫よ、カイ。あなたが側にいるもの」
そう言って笑うレナに、カイは胸が締め付けられる。
「無理だと思ったら、言うんだぞ・・?」
「ええ、分かったわ」
レナはそう言うと、カイの方を見て軽く目を閉じ、顎を上げている。
(ん・・?)
カイは突然レナが目を閉じて目の前にいることに首を傾げたが、ああそうかと気付いてレナの額に口付けた。
(おでこ・・)
レナは目を開くと口をすぼめて頬を膨らませ、明らかに不満そうにしている。カイはそんなレナの様子に全く気付いていなかった。
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