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第8章 戦場に咲く一輪の花
引き留める方法
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ポテンシア王国との国境近くにある、ブリステ公国内の山の中。そこは、あまり人が立ち入らない深い森と、美しい川が流れる自然地域だった。
その上流に水浴びに出かけたカイとレナは、何故か予期せぬ事態に陥っている。
「今なら他に人もいないし・・」
その言葉を発したレナは、一糸まとわぬ姿でカイの腹部にしがみついている。それまで呪術を使って姿を消していたのに、急に姿を現して放ったのがそんな台詞だ。
カイは混乱しながらもレナの方を見ないように視線をずらし、なるべく感触を感じないように意識を分散させた。
「質の悪いことをするな」
「そう思うなら、無理矢理引きがはしてくれてもいいわ」
「無理矢理・・」
カイはレナの体制を確認した。引きはがそうとすると、はっきりと目に入れてしまいかねない。
(意外に、打つ手がないぞ・・)
よく分からないが、追い込まれているらしいとカイは状況を把握した。
まさかこんな状況に陥るとは思ってもみなかった。
愛馬のクロノスは主人の甲斐性のなさに呆れたのか飽きたのか、既に離れた場所で泳ぎ回っている。
「それに、私、覚悟なら、できているし・・」
「嫌じゃないのか? こんな場所で」
カイが困りながら尋ねる。できるだけ状況を脱したかった。
「嫌だったら、こんなことしないわ」
それも一理ある、とカイは妙に納得して次に何を言おうか考え始める。なるべくレナが自然に離れてくれるようにするしかない。
「戦場に行くなと言いたいのか? そのために、わざわざこんなことを?」
「・・そんなところよ」
カイはなるほどなと理解しながら、そのために身体まで張ろうとしているレナに驚いた。
「いいか、ここで俺が前線を離れて・・味方がどれだけ困ると思う? 確かに戦場に赴くことは、危険に身を晒すことだ。レナに心配をかけることも分かっている。でも、自国軍を守る使命を放棄するのは、違う」
カイは、なるべくレナから視線をずらしつつ語る。レナは、そのカイをまっすぐ見つめた。
「理屈は分かっているけど・・あなたを失うと言われて、みすみす見送るなんてできないのよ」
「その結果がこれか?」
「どうしたら良いのか分からなかっただけ・・」
「恥ずかしくないのか? この間より明るいぞ」
カイは、夜の温泉で大騒ぎして泣いていたレナと同一人物だろうかと慌てる。
「恥ずかしいに決まっているでしょ・・。でも、あなたを失うかもしれないと思ったら、恥ずかしさになんか負けられないもの」
「なるほど? それなりに無理をしてはいるんだな?」
カイは、思い切ってレナを見てやろうと決めた。すぐに音を上げて後悔するに違いない。カイはしっかりとレナの顔を見つめると、しがみつかれている身体を引きはがした。
(いや、無理だ――)
カイはレナを視界に入れたが、慌てて抱き寄せた。思った以上に動悸がして、身体中が苦しくなっている。目の毒なのか、身体の毒なのか、カイは絶望に似た感情に支配されていた。
「ダメだ。こんなのは間違っている」
「何が?」
「戦地には行く。そこだけは変えられない」
「どうしても・・?」
「すまない・・」
レナは、唇を噛みながら俯いた。この先カイを失うことになるかもしれない。それが分かっていても、レナにはもうどうすることもできないのだろう。
「この先のことを考えると、つらくて堪らないわ・・」
それだけ言うと、涙が一筋頬を伝った。
その上流に水浴びに出かけたカイとレナは、何故か予期せぬ事態に陥っている。
「今なら他に人もいないし・・」
その言葉を発したレナは、一糸まとわぬ姿でカイの腹部にしがみついている。それまで呪術を使って姿を消していたのに、急に姿を現して放ったのがそんな台詞だ。
カイは混乱しながらもレナの方を見ないように視線をずらし、なるべく感触を感じないように意識を分散させた。
「質の悪いことをするな」
「そう思うなら、無理矢理引きがはしてくれてもいいわ」
「無理矢理・・」
カイはレナの体制を確認した。引きはがそうとすると、はっきりと目に入れてしまいかねない。
(意外に、打つ手がないぞ・・)
よく分からないが、追い込まれているらしいとカイは状況を把握した。
まさかこんな状況に陥るとは思ってもみなかった。
愛馬のクロノスは主人の甲斐性のなさに呆れたのか飽きたのか、既に離れた場所で泳ぎ回っている。
「それに、私、覚悟なら、できているし・・」
「嫌じゃないのか? こんな場所で」
カイが困りながら尋ねる。できるだけ状況を脱したかった。
「嫌だったら、こんなことしないわ」
それも一理ある、とカイは妙に納得して次に何を言おうか考え始める。なるべくレナが自然に離れてくれるようにするしかない。
「戦場に行くなと言いたいのか? そのために、わざわざこんなことを?」
「・・そんなところよ」
カイはなるほどなと理解しながら、そのために身体まで張ろうとしているレナに驚いた。
「いいか、ここで俺が前線を離れて・・味方がどれだけ困ると思う? 確かに戦場に赴くことは、危険に身を晒すことだ。レナに心配をかけることも分かっている。でも、自国軍を守る使命を放棄するのは、違う」
カイは、なるべくレナから視線をずらしつつ語る。レナは、そのカイをまっすぐ見つめた。
「理屈は分かっているけど・・あなたを失うと言われて、みすみす見送るなんてできないのよ」
「その結果がこれか?」
「どうしたら良いのか分からなかっただけ・・」
「恥ずかしくないのか? この間より明るいぞ」
カイは、夜の温泉で大騒ぎして泣いていたレナと同一人物だろうかと慌てる。
「恥ずかしいに決まっているでしょ・・。でも、あなたを失うかもしれないと思ったら、恥ずかしさになんか負けられないもの」
「なるほど? それなりに無理をしてはいるんだな?」
カイは、思い切ってレナを見てやろうと決めた。すぐに音を上げて後悔するに違いない。カイはしっかりとレナの顔を見つめると、しがみつかれている身体を引きはがした。
(いや、無理だ――)
カイはレナを視界に入れたが、慌てて抱き寄せた。思った以上に動悸がして、身体中が苦しくなっている。目の毒なのか、身体の毒なのか、カイは絶望に似た感情に支配されていた。
「ダメだ。こんなのは間違っている」
「何が?」
「戦地には行く。そこだけは変えられない」
「どうしても・・?」
「すまない・・」
レナは、唇を噛みながら俯いた。この先カイを失うことになるかもしれない。それが分かっていても、レナにはもうどうすることもできないのだろう。
「この先のことを考えると、つらくて堪らないわ・・」
それだけ言うと、涙が一筋頬を伝った。
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