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第8章 戦場に咲く一輪の花
負傷者たち
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すっかり落ち込んだレナが夕食の支度を手伝っていると、駐屯地に兵が戻って来た。カイは申し訳なさそうに迎え入れ、兵の状況を把握している。重症者や負傷者が多いようで、救護班が忙しなく働いていた。
「殿を担えず、被害を大きくしたな・・」
カイはマルセルにそう言って謝った。マルセルはカイを睨むように見た後で、急にふっと表情を緩める。
「まあ、失望したよ」
そう言って笑うと、手をひらひらと振ってカイの元を去る。無理もない、とカイはマルセルの言葉や態度を受け止めるしかなかった。迷惑をかけた自覚なら充分にある。
「あのお姫様は呪いには強いのか分からないけど、とんだ番狂わせだな」
離れたところから、マルセルの大きめの声がカイに届いた。
夕食の時間は、重い空気が流れていた。呪いから兵士を救ったレナの存在がカイにとって足枷でしかないと誰もが気付き、批判の的になっていた。
レナはその雰囲気を感じ取りながらも、カイを諦めきれない自分のせいだと甘んじて受け入れている。
対するカイは兵の中にいる自分の部下たちの立場を悪くする行動を取ってしまったことに申し訳が立たず、居心地の悪い時間を過ごした。
カイとレナは隣り合って座っている。
「大して働いてもいないハウザー団長が女連れか。軍の士気に関わるね」
マルセルが嫌味のように言うと、周囲から嘲笑が湧く。自分たちにこそ女性があてがわれるべきだと誰かが笑い、侮蔑の視線がカイに送られた。
「そんなことを言って人を嘲って、楽しいの?」
その時に上がった声は、本来一番肩身が狭いであろうレナが発したものだった。女性からそんな声が上がるとは想像も付いていなかった兵士たちは声を失っている。
「カイを私の我儘で前線から離脱させてしまって被害を大きくしたのは謝ります。部外者の私が勝手な判断を下しました。もしも・・カイが前線に残って死にかけていたら、結局同じことだったのではないの?」
「やめろ、レナ。みなの士気を下げて被害を拡大させたのは間違いない」
「でも・・」
「これは軍の問題だ。レナが口を出すことではない」
「で? 明日からはちゃんとするんだろうな?」
マルセルが冷たい目でカイを睨む。
「当たり前だ。今日の分まで働く」
カイはそう言ってマルセルを睨み返した。久しぶりに発せられるカイの殺気に、周囲一帯に緊張が走る。
「どうやって失った信頼を取り戻してくれるのか、見ものだな」
マルセルはカイの覇気に動じずに抑揚のない口調で返した。
カイはマルセルを睨んだまま、これからの働きで誠意を見せるほかないと決意を新たにする。
レナはそのカイを横目で見ながら、今にも涙が溢れそうになるのをなんとか堪えていた。
その日の夜、レナはカイと共にテントで明日のことを話した。
「結局、カイの言った通りね」
「まあ、こうなることは分かっていた。自分で言うのもなんだが、俺がいなければ兵の被害はそれなりにでかくなるからな」
「いないことを責められるなんて・・あなたもつらいわね」
横になってカイの腕に頭を載せていたレナが、カイの頬にそっと手を添えた。レナの胸の奥がチクチクと痛み、失う恐怖に身体が震える。
「最高責任者の一人で指揮官だ。いないことを責められるのは当然なんだ。スウとレナに免じて今日は妥協したが・・明日からはまた、普段通りだな」
「カイ・・また、私の前からいなくなったら嫌よ・・?」
「何を言ってる・・先に皆の前からいなくなったのは、レナの方だろう?」
レナは、カイが死の淵に立つというスウの予言に、心が押しつぶされそうになっていた。
対してカイは、自分に何かあった時にレナを守れる者が近くにいないことに気付く。
予言通りに自分が死の淵に立つようなことが起きれば、レナの身に危険が迫る気がして、カイは酷く心配になった。
「殿を担えず、被害を大きくしたな・・」
カイはマルセルにそう言って謝った。マルセルはカイを睨むように見た後で、急にふっと表情を緩める。
「まあ、失望したよ」
そう言って笑うと、手をひらひらと振ってカイの元を去る。無理もない、とカイはマルセルの言葉や態度を受け止めるしかなかった。迷惑をかけた自覚なら充分にある。
「あのお姫様は呪いには強いのか分からないけど、とんだ番狂わせだな」
離れたところから、マルセルの大きめの声がカイに届いた。
夕食の時間は、重い空気が流れていた。呪いから兵士を救ったレナの存在がカイにとって足枷でしかないと誰もが気付き、批判の的になっていた。
レナはその雰囲気を感じ取りながらも、カイを諦めきれない自分のせいだと甘んじて受け入れている。
対するカイは兵の中にいる自分の部下たちの立場を悪くする行動を取ってしまったことに申し訳が立たず、居心地の悪い時間を過ごした。
カイとレナは隣り合って座っている。
「大して働いてもいないハウザー団長が女連れか。軍の士気に関わるね」
マルセルが嫌味のように言うと、周囲から嘲笑が湧く。自分たちにこそ女性があてがわれるべきだと誰かが笑い、侮蔑の視線がカイに送られた。
「そんなことを言って人を嘲って、楽しいの?」
その時に上がった声は、本来一番肩身が狭いであろうレナが発したものだった。女性からそんな声が上がるとは想像も付いていなかった兵士たちは声を失っている。
「カイを私の我儘で前線から離脱させてしまって被害を大きくしたのは謝ります。部外者の私が勝手な判断を下しました。もしも・・カイが前線に残って死にかけていたら、結局同じことだったのではないの?」
「やめろ、レナ。みなの士気を下げて被害を拡大させたのは間違いない」
「でも・・」
「これは軍の問題だ。レナが口を出すことではない」
「で? 明日からはちゃんとするんだろうな?」
マルセルが冷たい目でカイを睨む。
「当たり前だ。今日の分まで働く」
カイはそう言ってマルセルを睨み返した。久しぶりに発せられるカイの殺気に、周囲一帯に緊張が走る。
「どうやって失った信頼を取り戻してくれるのか、見ものだな」
マルセルはカイの覇気に動じずに抑揚のない口調で返した。
カイはマルセルを睨んだまま、これからの働きで誠意を見せるほかないと決意を新たにする。
レナはそのカイを横目で見ながら、今にも涙が溢れそうになるのをなんとか堪えていた。
その日の夜、レナはカイと共にテントで明日のことを話した。
「結局、カイの言った通りね」
「まあ、こうなることは分かっていた。自分で言うのもなんだが、俺がいなければ兵の被害はそれなりにでかくなるからな」
「いないことを責められるなんて・・あなたもつらいわね」
横になってカイの腕に頭を載せていたレナが、カイの頬にそっと手を添えた。レナの胸の奥がチクチクと痛み、失う恐怖に身体が震える。
「最高責任者の一人で指揮官だ。いないことを責められるのは当然なんだ。スウとレナに免じて今日は妥協したが・・明日からはまた、普段通りだな」
「カイ・・また、私の前からいなくなったら嫌よ・・?」
「何を言ってる・・先に皆の前からいなくなったのは、レナの方だろう?」
レナは、カイが死の淵に立つというスウの予言に、心が押しつぶされそうになっていた。
対してカイは、自分に何かあった時にレナを守れる者が近くにいないことに気付く。
予言通りに自分が死の淵に立つようなことが起きれば、レナの身に危険が迫る気がして、カイは酷く心配になった。
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