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第9章 知ってしまったから

ライバルで親友

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レナがテントから出ると、心配そうな顔をしたロキがそこに座っていた。

「ロキ・・そこにいてくれて、ありがとう。カイが、目を覚ましたのよ」
「えっ?」

ロキは驚いてテントの中に入る。レナもロキの後ろについていた。

「まだ、目しか動かせないみたい」
「へえ・・じゃあ、目の前でイチャついて見せつけてみようよ」

ロキとレナはカイの隣に座っている。ロキの冗談に対し、カイが目だけで怒りを表現していた。それを見たロキは声を上げて笑う。

「普段の団長とは、えらい違いだな。殺気が出てないよ。全く怖くないね」
「そんな言い方したら、気の毒だわ・・」

レナが哀れんだのを見て、ロキはレナの肩を抱いて得意げな表情でカイを見下ろした。

「まあ、団長には感謝はされても怒られる筋合いはない。だって彼女を一晩中外で守ってたのは俺で・・団長は役立たずにそこで倒れてたんだからね!」

カイの目が見開いている。レナはそれをみてハラハラしていた。
一体どんな心境でカイがそんな目をしているのか、言葉を発せないので分からない。

「ねえ、カイ・・。こんな言い方をしているけれど、ロキはすぐに駆け付けてくれて、テントの外にいてずっと守っていてくれてたのよ・・。それに、あなたが倒れたことで落ち込んでいたから、ロキがいてくれて本当に良かったの」

レナがロキを庇うように言うと、カイは眉をほんの少しだけ下げて困ったような目をしていた。

「まあ、団長にだって分かると思うけどさ・・。昨日は味方同士で殺し合いが起きたんだよ。この場での安全や安心は大きく揺らいでる。兵士たちも気が立っているし、こんな時に彼女が一人でいてごらんよ・・。すぐに餌食になっていたに違いないんだ」

ロキの言葉に、カイはじっと耳を傾けて何か思うところがあるようだった。

「今日は、ずっとここにいるつもりだよ。応援も呼んでいるし・・団長が復活したら、話し合おう。このままマルセルを筆頭にしたこの軍隊で動くのは危険すぎる。昨日分かったんじゃないか? 敵の方が、恐らく上手うわてだ。今のところはね」

ロキがそう言うと、カイは一度目を閉じて開く。真剣なまなざしをロキに向けた。

「いいか、ここから先は、国外だよ。ただ強い者が勝つ世界じゃない」

ロキはそう言ってカイを真剣に見つめる。レナはそのロキを見ながら、どういうことだろうかと小首を傾げた。

「俺の元に情報が届くようなルートは、ポテンシアにも勿論ある。そして、この間ルリアーナのルートを開拓した。そして、人手も、金も用意できる。いいか、情報で負けるのは愚かな人間の戦だ」

ロキはそう言うと、そろそろかな、と何故か思った。

「カイ・ハウザー様、レナ様、ハウザー騎士団の副団長様がお見えです!」

その時、テントの外で声がする。

「ビンゴだね。相変わらず、タイミングが最高だな、シンは」

ロキがそう言ったのをレナは驚いた表情で嬉しそうに反応し、カイは信じられないといった目をしてロキを見つめていた。
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