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第10章 新しい力

三人揃えば何でもできる

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「あー・・あのテントに大人4人は窮屈だったな・・」
「その割に、長居してたのは・・団長にまたヤキモチでも焼いてたのか?」

カイのテントから出て来たシンとロキは、自国軍兵士の様子を探りに周囲を歩いていた。

「ヤキモチなんか・・。こんな健気にあの人のことを想ってるのに心外だよ」
「いや、まあ・・。まさか仕事放り投げていち早くここに到着してたとか驚いたよ。団長とレナ様がくっついたっていうのに、よくもそこまで頑張れるな」
「頑張ってるわけじゃない・・。自分が後悔したくないだけだよ。もう・・」

ロキはそう言って、レナの逝去に苦しんだ数か月間を思い出した。カイとレナが付き合い始めたことは素直に喜べないが、レナがこの世にいないのだと沈んでいた頃に比べれば今は大して辛くない。

シンにとっても、それは同じだった。レナを失ったと思った数か月間、リリスと過ごしながら心のどこかに小さな棘を抱えているような後悔をしていた。

2人はもう、あんな思いだけは御免だ、と、これから試練に向かうレナを想う。

「さて、何か発見があるかな・・?」

ロキは自国兵が過ごす駐屯地を観察しながら、周りに目を光らせ始めた。


レナは二人きりになったテントの中で、横たわるカイの隣に座って膝を抱えた。
カイが声を発せない以上、話しかけても一方通行になってしまう。何となくそれは寂しい気がして、自分も目だけでカイに何か伝わるだろうかと動きを止めていた。

カイはそんなレナを見ながら、何か話してくれないだろうかと読めない表情に参っていた。目だけしか動かせないカイは、あまり自由に視界にレナを入れられない。

そして、ただでさえ他人の感情に疎いカイは、レナの目だけで何かを感じる程の器用さは持ち得ていないのだ。

レナは暫く黙っていたが、やがてカイの目が何か助けを求めているような気がして口を開いた。

「お水、要る?」

カイは一度瞬きをした。何となく要らないのだろう、とレナは理解する。

「ロキとシンが来てくれて、心強いわね」

カイは穏やかに目を細めた。同意してくれているのだろう、とレナも同じように目を細める。

「もう二度と・・あの術を使うのはやめてね・・」

レナがそう言うと、カイはどこか困ったような顔をした気がした。眉が下がったりはしていないが、真っ直ぐにレナを見つめているだけで何かを言おうとしているのは分かる。

「一方的に私がカイを責めるのは、この状況だとフェアじゃないと思うの。でもね、あなたが私の立場だったらどう? 残酷だわ。流石に私だって、あの時は後悔を覚えたもの・・」

レナが控え目にカイを責める。カイは心の中で必死に答えを唱えた。

(そうだな。もう、あの術を使うのは止めにしたい。あの時は咄嗟にレナを救いたいと必死だったが・・今なら分かる。残される方がずっと辛い。これからは、共に居られるように考えて行動したい。約束する)

声にならない答えを心で唱えたカイを覗き込むと、レナは身体を屈めてそっとカイの唇に自身の唇を重ねた。

「何となくあなたの気持ちが伝わってきた気がする。身体の自由が利かないカイに勝手なことをしたから、後で怒られるかしら?」

レナは悪戯っぽく笑った。カイはその顔に久しぶりのレナを感じる。

(いや、怒ったりしない。まあ、色々と残念だが・・)

カイはそう思いながら、身体が全く動かないことを悔やむ。

「怒られる覚えもないわね。カイは自分の力で水すら飲めないんだもの。本来なら、感謝して欲しいわ」

レナはそう言って、なじるようにカイの頬を人差し指でつついた。
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