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第10章 新しい力
夜を感じて 1
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一日が終わろうとしていた。
その日、ブリステ兵はポテンシアへの出兵を中止した。
動けないカイの代わりにロキとシンが作戦会議に参加し、現状を鑑みて一旦作戦を練り直そうと主張し、それが受け入れられた結果だ。
「今日、俺とシンで聞き込みをしたけど・・裏切った兵士を疑っていた人間は皆無だったね。話を聞く感じでは、恐らく10年単位で潜伏してた間諜だと思う」
「そうなの・・。10年単位と聞くと、ルイス様が仕向けた線は薄そうね。やっぱり、ポテンシア国王の仕業かしら・・」
カイが横たわるテントの中で、その日にあったことを話している。カイは動けないことがいよいよ辛くなっているようで、明らかに目の動きだけでもイライラしているのが見て取れた。
「まあ、死にかけたんだから、しょうがないよ。横になって目だけで会話してなよ」
ロキがニヤニヤしながらカイに声を掛けると、シンは「煽るなって」と止めに入る。レナはそんなやり取りを見ながら、どこかほっとしていた。
「じゃあ、おやすみなさい・・。夜の護衛をしてくれてありがとう」
レナはシンとロキを見送ってテントの中でカイと二人きりになった。外では、シンかロキか、ロキのつれて来た護衛が交代で見張ってくれている。
レナは昨日殆ど眠れていなかったため、既に眠かった。
カイから離れて着替えると、アンダードレス姿でカイの隣で横になる。
下着姿で男性の隣で寝るのは嫁入り前の女性がする行為ではないが、相手は現在指一本すら動かせない。
カイの方は、なるべく見ないようにと視線を逸らしてレナが寝付くのをじっと待っている。そのうち、カイも眠りの中に落ちていった。
*
(ああ、身体が動かせなくて目が覚めたのか・・)
カイがテントの中で目を凝らす。夜も更けて深夜に差し掛かるころなのだろうと耳を澄ませた。周囲に特に何かの気配はしない。
ふと、横にいるレナに視線を落とした。疲れ切って寝ているが、カイの腕に抱き付いている寝顔が、どこか不安そうに見えた。
掛けている毛布から肩が出てしまっているのを、カイは掛け直さなければ、と思って初めて気付く。自分の首が動いている。
(声は・・出せるだろうか・・)
「レ・・ナ・・」
かろうじて、といった擦れ声が振り絞るように出せた。
自分の中の『気』を感じる。全身を集中させ、少ない『気』を手に集中させると徐々に指が動かせるようになり、腕も動き始めた。
ぎこちない動きでレナの毛布を直す。
小さな肩が無事に毛布に包まれると、ほっとしてその手を一生懸命自分の方に戻そうとした。が、途中で制御を失って腕がレナの身体の上にボトリと落下する。それなりに大きな衝撃をレナに与えた。
(しまった・・)
「ん・・?」
レナの目が半開きになる。カイは慌てていたが、身体は動いていなかった。
「今・・」
レナは目を開けて身体を起こした。
近くにあるランタンに手をかざし、呪術を使って火を灯す。明るくなったテント内で、カイの腕がだらりと自分の寝ていた側に垂れているのが見えた。同時に、カイが自分の方を見ているのも分かる。カイの首が動いていた。
その日、ブリステ兵はポテンシアへの出兵を中止した。
動けないカイの代わりにロキとシンが作戦会議に参加し、現状を鑑みて一旦作戦を練り直そうと主張し、それが受け入れられた結果だ。
「今日、俺とシンで聞き込みをしたけど・・裏切った兵士を疑っていた人間は皆無だったね。話を聞く感じでは、恐らく10年単位で潜伏してた間諜だと思う」
「そうなの・・。10年単位と聞くと、ルイス様が仕向けた線は薄そうね。やっぱり、ポテンシア国王の仕業かしら・・」
カイが横たわるテントの中で、その日にあったことを話している。カイは動けないことがいよいよ辛くなっているようで、明らかに目の動きだけでもイライラしているのが見て取れた。
「まあ、死にかけたんだから、しょうがないよ。横になって目だけで会話してなよ」
ロキがニヤニヤしながらカイに声を掛けると、シンは「煽るなって」と止めに入る。レナはそんなやり取りを見ながら、どこかほっとしていた。
「じゃあ、おやすみなさい・・。夜の護衛をしてくれてありがとう」
レナはシンとロキを見送ってテントの中でカイと二人きりになった。外では、シンかロキか、ロキのつれて来た護衛が交代で見張ってくれている。
レナは昨日殆ど眠れていなかったため、既に眠かった。
カイから離れて着替えると、アンダードレス姿でカイの隣で横になる。
下着姿で男性の隣で寝るのは嫁入り前の女性がする行為ではないが、相手は現在指一本すら動かせない。
カイの方は、なるべく見ないようにと視線を逸らしてレナが寝付くのをじっと待っている。そのうち、カイも眠りの中に落ちていった。
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(ああ、身体が動かせなくて目が覚めたのか・・)
カイがテントの中で目を凝らす。夜も更けて深夜に差し掛かるころなのだろうと耳を澄ませた。周囲に特に何かの気配はしない。
ふと、横にいるレナに視線を落とした。疲れ切って寝ているが、カイの腕に抱き付いている寝顔が、どこか不安そうに見えた。
掛けている毛布から肩が出てしまっているのを、カイは掛け直さなければ、と思って初めて気付く。自分の首が動いている。
(声は・・出せるだろうか・・)
「レ・・ナ・・」
かろうじて、といった擦れ声が振り絞るように出せた。
自分の中の『気』を感じる。全身を集中させ、少ない『気』を手に集中させると徐々に指が動かせるようになり、腕も動き始めた。
ぎこちない動きでレナの毛布を直す。
小さな肩が無事に毛布に包まれると、ほっとしてその手を一生懸命自分の方に戻そうとした。が、途中で制御を失って腕がレナの身体の上にボトリと落下する。それなりに大きな衝撃をレナに与えた。
(しまった・・)
「ん・・?」
レナの目が半開きになる。カイは慌てていたが、身体は動いていなかった。
「今・・」
レナは目を開けて身体を起こした。
近くにあるランタンに手をかざし、呪術を使って火を灯す。明るくなったテント内で、カイの腕がだらりと自分の寝ていた側に垂れているのが見えた。同時に、カイが自分の方を見ているのも分かる。カイの首が動いていた。
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