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第10章 新しい力
休むのも仕事
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その日、そろそろ休もうと3人部屋と1人部屋に分かれると、レナは1人で時間を持て余した。
とても眠れそうにないと思い立って部屋の扉を開ける。すぐそこで、宿の従業員が立ち尽くしていた。
「いかがされましたか?」
「い、いえ……隣の部屋を訪ねようと思って……」
レナがそう言いながら隣の部屋に向かおうとすると、立っていたその従業員がさっと歩いて部屋の扉をノックした。
「どうしたー?」
中からロキの声がすると、
「社長、レナ様です」
と従業員が扉のところで声を上げる。
部屋の中から急いで人が駆け付けるバタバタとした慌ただしい足音がした。
「どうしたの?」「いや、レナが呼んでいるのはお前じゃない」
扉の向こうに2人の男性が立っているのを目に入れて、レナは「えっと……」と気まずそうに戸惑っていた。
レナの部屋に入ったカイは、座る場所が椅子一脚のみだけなのを確認してベッドの上に腰かけた。部屋で立ったままのレナを見つめる。
「ひとりでは眠れないのか?」
これまでずっと同じテントで一緒に過ごしていたことで、レナが孤独な環境で眠れなくなっているのだろうとカイには察しがつく。
「そうね、独りは寂しいわ」
レナはそう言ってベッドに腰かけるカイの隣に座ると、カイを暫く見つめた。
「隣に2人がいるからな……」
そう言ってカイが軽めのキスをすると、レナはカイが何を気にしているのか理解できずにきょとんとする。
「一緒に寝てやりたいが、そんなことをしたら2人の心障がよくないだろ。ロキはレナを好いているし、シンは家族と離れてここに来ている」
「そうね、あなたばかり……って思われるのは良くないわね」
「すまないな、俺も、一緒にいたいが……」
レナはカイの腕にしがみつくと、そのまま手を滑らせて指を絡めた。
「……こんなことになって、みんなを巻き込んでしまったけど、あなたと一緒になる未来のためにルイス様に会わなきゃって思ったの」
レナがポツリと呟いた内容に、カイは不可解な顔をした。
「わざわざ婚約解消でも伝えに行くのか?」
「ルイス様にルリアーナを託してしまったのは私だから……。カイがブリステのために戦場に出なければならなくなったのも、全部が繋がっているの。私の責任よ。人の血が流れてしまった」
「そんな責任はない。第一、レナを殺そうとした国王が発端だろう」
カイはレナと目を合わせず、まっすぐ前を向いたままどこか冷たい口調で言い切った。レナが責任を感じるなど、到底納得できるものではない。
そもそも暗殺されかけて国まで追われた身で、充分すぎるくらいにレナは失った。
無事に生きていられたから良かったものの、何かの犯罪に巻き込まれていてもおかしくはなかったのだ。
「ルリアーナをルイス王子に託していなかったとして、国王に侵略されていたらルリアーナはもっと酷い統治に遭っていたに違いない。レナは犠牲を減らしている」
「でも……」
繋いだ手から、レナの身体が緊張したのが分かった。
カイは合わせていなかった視線をレナに移し、思いつめたような顔を見つめる。
「それ以上自分を責めるようなことを言うなら、もう話はやめだ」
カイはそう言うと手を解き、真剣な目でレナに語りかける。
「そんな話を聞く気はない。もう部屋に戻る」
「待って、そんな……」
解かれた手を慌てて伸ばしてレナはカイを引き留めようと服にしがみついた。
「もう言わない、から……行かないで」
カイは必死なレナの頭をぐしゃぐしゃと撫で、ボサボサになった髪に思わず吹き出す。
「後悔はしないんじゃなかったのか? この先もそんなだと、不安だな」
カイはレナの髪を手で梳いた。青い目が少し潤みながらカイを見つめていたが、その目がそっと閉じられる。
「休む時は、ゆっくり休むのも仕事だ」
カイはレナに口付けて、その小さな身体をさするようにしながら抱きしめて言った。
とても眠れそうにないと思い立って部屋の扉を開ける。すぐそこで、宿の従業員が立ち尽くしていた。
「いかがされましたか?」
「い、いえ……隣の部屋を訪ねようと思って……」
レナがそう言いながら隣の部屋に向かおうとすると、立っていたその従業員がさっと歩いて部屋の扉をノックした。
「どうしたー?」
中からロキの声がすると、
「社長、レナ様です」
と従業員が扉のところで声を上げる。
部屋の中から急いで人が駆け付けるバタバタとした慌ただしい足音がした。
「どうしたの?」「いや、レナが呼んでいるのはお前じゃない」
扉の向こうに2人の男性が立っているのを目に入れて、レナは「えっと……」と気まずそうに戸惑っていた。
レナの部屋に入ったカイは、座る場所が椅子一脚のみだけなのを確認してベッドの上に腰かけた。部屋で立ったままのレナを見つめる。
「ひとりでは眠れないのか?」
これまでずっと同じテントで一緒に過ごしていたことで、レナが孤独な環境で眠れなくなっているのだろうとカイには察しがつく。
「そうね、独りは寂しいわ」
レナはそう言ってベッドに腰かけるカイの隣に座ると、カイを暫く見つめた。
「隣に2人がいるからな……」
そう言ってカイが軽めのキスをすると、レナはカイが何を気にしているのか理解できずにきょとんとする。
「一緒に寝てやりたいが、そんなことをしたら2人の心障がよくないだろ。ロキはレナを好いているし、シンは家族と離れてここに来ている」
「そうね、あなたばかり……って思われるのは良くないわね」
「すまないな、俺も、一緒にいたいが……」
レナはカイの腕にしがみつくと、そのまま手を滑らせて指を絡めた。
「……こんなことになって、みんなを巻き込んでしまったけど、あなたと一緒になる未来のためにルイス様に会わなきゃって思ったの」
レナがポツリと呟いた内容に、カイは不可解な顔をした。
「わざわざ婚約解消でも伝えに行くのか?」
「ルイス様にルリアーナを託してしまったのは私だから……。カイがブリステのために戦場に出なければならなくなったのも、全部が繋がっているの。私の責任よ。人の血が流れてしまった」
「そんな責任はない。第一、レナを殺そうとした国王が発端だろう」
カイはレナと目を合わせず、まっすぐ前を向いたままどこか冷たい口調で言い切った。レナが責任を感じるなど、到底納得できるものではない。
そもそも暗殺されかけて国まで追われた身で、充分すぎるくらいにレナは失った。
無事に生きていられたから良かったものの、何かの犯罪に巻き込まれていてもおかしくはなかったのだ。
「ルリアーナをルイス王子に託していなかったとして、国王に侵略されていたらルリアーナはもっと酷い統治に遭っていたに違いない。レナは犠牲を減らしている」
「でも……」
繋いだ手から、レナの身体が緊張したのが分かった。
カイは合わせていなかった視線をレナに移し、思いつめたような顔を見つめる。
「それ以上自分を責めるようなことを言うなら、もう話はやめだ」
カイはそう言うと手を解き、真剣な目でレナに語りかける。
「そんな話を聞く気はない。もう部屋に戻る」
「待って、そんな……」
解かれた手を慌てて伸ばしてレナはカイを引き留めようと服にしがみついた。
「もう言わない、から……行かないで」
カイは必死なレナの頭をぐしゃぐしゃと撫で、ボサボサになった髪に思わず吹き出す。
「後悔はしないんじゃなかったのか? この先もそんなだと、不安だな」
カイはレナの髪を手で梳いた。青い目が少し潤みながらカイを見つめていたが、その目がそっと閉じられる。
「休む時は、ゆっくり休むのも仕事だ」
カイはレナに口付けて、その小さな身体をさするようにしながら抱きしめて言った。
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