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第11章 歴史を変える
間諜の動き 2
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「リブニケ王国では、ルリアーナ建国の英雄『ヘレナ』を神格化した伝記があるんですよ」
「……えっ?」
「だから、リブニケ人には『ヘレナ』は神のひとりなんです」
レナはそれを聞いて驚いていた。
「ああ、そんな神様、いた気がしてきた……。赤い鳥を連れた女性の神様……。あれかな」
「そういえばリブニケ出身者がここにいたな」
「まあ、ちょっと特殊だからあんまり参考にはならないよ。神様とか信じてなかったし」
ロキはもともとリブニケ王国の伯爵家で、妾の子として生をうけている。実の親に売られそうになり逃げて育ったことから、リブニケ王国のことや出生絡みのことを他人に語ることは少なかった。
「ヘレナか。ここにいるのもヘレナだな」
「そうね、戸籍上の本名はヘレナだし、赤い鳥って恐らく炎の呪術で鳥の形を作ったものだわ」
カイとレナが納得していると、それを聞いたロキとレオナルドは驚いている。
「……それ、使えるんじゃないですか?」
「ルリアーナの王族信仰問題が解決したかと思ったら、そっちでも信仰対象なのか」
何かを企んだレオナルドをカイは睨み、ロキはまた宗教問題か、と嫌な顔をした。シンはただただ事実としてその場で話を聞いている様子だ。
「宗教絡みはもうたくさんだ。結局根底には何かしらの思惑がある。それで救われる者もいるのかもしれないが、崇拝の対象にレナを出させるのは反対だ」
「うん、団長と同じ。人を利用するのはやめて欲しい」
カイとロキが同じ意見でレオナルドに反対すると、レオナルドはなるほど、と小さく笑う。
「例えば、どういうことに使えると思ったの?」
そこにレナが尋ねたので、カイとロキは「ろくなことじゃないに決まっている」とレナに忠告をした。
「この先、リブニケ兵と出くわすこともあると思うんですけど、ポテンシア兵と違って僕が何か言っても通じないハズなんですよ。そこで、王女殿下には例の『ヘレナ』様になっていただこうかなと」
「……神様になれってこと?」
「べつに、神様になれとは言いませんよ。向こうの戦意を失わせるだけで良いです」
レオナルドの話の内容を聞いて、カイは溜息をついた。こういう話にレナは弱い。
「そう、そういうことなら受けた方が良いわね?」
「あっさりしてますね」
頭の痛そうなカイとロキを横目に、シンはレナの様子を見て頼もしいなと笑う。
「赤い鳥を出すことはできるけど、他に何かある?」
「……ヘレナは傷だらけで国を建国した女王らしいので、そういう演出があった方が良いかもしれませんが」
「止めろ! それ以上余計なことを言うな。レナが傷だらけの演出なんか、俺は見たくない……」
カイが本気で怒っているのが分かると、レナはその腕にしがみついた。
「矢に討たれた時の、血だらけのドレスがあるわ。それを……身に付ければ良いんじゃない?」
「時間が経って色も変わっているだろう。正直……あの時を思い出させるような格好をされるのはつらい」
「あなたが救ってくれたのに?」
「もう二度とあんな光景は見たくない……」
二人が完全に周りを無視して会話を始めたので、レオナルドとロキは呆れている。シンは相変わらずだなと笑うしかない。
「あの」
レオナルドが堪らず声を掛けた。
「二人で盛り上がるのは結構なんですけど、話を進めて良いですか? その服、使えると思います」
「だから、反対だと言ってるだろう」
「演出なんだからいいじゃないですか。本当に怪我しろと言っているわけじゃないんですよ」
「私は構わないわ」
カイは面白くなさそうに眉間に皺を寄せたが、レナが抱き付きながら「大丈夫よ」と宥めている。
「人前でも堂々とくっつくじゃないですか」
シンがその様子を見ながら言うと、「あれはでっかい子どもをあやしてるんだよ」とロキがシンに説明を加えた。
「……えっ?」
「だから、リブニケ人には『ヘレナ』は神のひとりなんです」
レナはそれを聞いて驚いていた。
「ああ、そんな神様、いた気がしてきた……。赤い鳥を連れた女性の神様……。あれかな」
「そういえばリブニケ出身者がここにいたな」
「まあ、ちょっと特殊だからあんまり参考にはならないよ。神様とか信じてなかったし」
ロキはもともとリブニケ王国の伯爵家で、妾の子として生をうけている。実の親に売られそうになり逃げて育ったことから、リブニケ王国のことや出生絡みのことを他人に語ることは少なかった。
「ヘレナか。ここにいるのもヘレナだな」
「そうね、戸籍上の本名はヘレナだし、赤い鳥って恐らく炎の呪術で鳥の形を作ったものだわ」
カイとレナが納得していると、それを聞いたロキとレオナルドは驚いている。
「……それ、使えるんじゃないですか?」
「ルリアーナの王族信仰問題が解決したかと思ったら、そっちでも信仰対象なのか」
何かを企んだレオナルドをカイは睨み、ロキはまた宗教問題か、と嫌な顔をした。シンはただただ事実としてその場で話を聞いている様子だ。
「宗教絡みはもうたくさんだ。結局根底には何かしらの思惑がある。それで救われる者もいるのかもしれないが、崇拝の対象にレナを出させるのは反対だ」
「うん、団長と同じ。人を利用するのはやめて欲しい」
カイとロキが同じ意見でレオナルドに反対すると、レオナルドはなるほど、と小さく笑う。
「例えば、どういうことに使えると思ったの?」
そこにレナが尋ねたので、カイとロキは「ろくなことじゃないに決まっている」とレナに忠告をした。
「この先、リブニケ兵と出くわすこともあると思うんですけど、ポテンシア兵と違って僕が何か言っても通じないハズなんですよ。そこで、王女殿下には例の『ヘレナ』様になっていただこうかなと」
「……神様になれってこと?」
「べつに、神様になれとは言いませんよ。向こうの戦意を失わせるだけで良いです」
レオナルドの話の内容を聞いて、カイは溜息をついた。こういう話にレナは弱い。
「そう、そういうことなら受けた方が良いわね?」
「あっさりしてますね」
頭の痛そうなカイとロキを横目に、シンはレナの様子を見て頼もしいなと笑う。
「赤い鳥を出すことはできるけど、他に何かある?」
「……ヘレナは傷だらけで国を建国した女王らしいので、そういう演出があった方が良いかもしれませんが」
「止めろ! それ以上余計なことを言うな。レナが傷だらけの演出なんか、俺は見たくない……」
カイが本気で怒っているのが分かると、レナはその腕にしがみついた。
「矢に討たれた時の、血だらけのドレスがあるわ。それを……身に付ければ良いんじゃない?」
「時間が経って色も変わっているだろう。正直……あの時を思い出させるような格好をされるのはつらい」
「あなたが救ってくれたのに?」
「もう二度とあんな光景は見たくない……」
二人が完全に周りを無視して会話を始めたので、レオナルドとロキは呆れている。シンは相変わらずだなと笑うしかない。
「あの」
レオナルドが堪らず声を掛けた。
「二人で盛り上がるのは結構なんですけど、話を進めて良いですか? その服、使えると思います」
「だから、反対だと言ってるだろう」
「演出なんだからいいじゃないですか。本当に怪我しろと言っているわけじゃないんですよ」
「私は構わないわ」
カイは面白くなさそうに眉間に皺を寄せたが、レナが抱き付きながら「大丈夫よ」と宥めている。
「人前でも堂々とくっつくじゃないですか」
シンがその様子を見ながら言うと、「あれはでっかい子どもをあやしてるんだよ」とロキがシンに説明を加えた。
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