亡国の王女は世界を歌う ―アメイジング・ナイト2—

碧井夢夏

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第11章 歴史を変える

新国王とその家族

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全てが終わった。
ルイスの果たすべきことは全て終わったのだ。

自分の人生を振り回し続けた父親は、この世にはいない。
最期に命乞いでもさせようとルイスは捕らえられた父親の元に歩いた。自分に向かって謝罪でもしようものなら、これまで感じた不満を全て吐き出してやろうと考えていた。

しかし、父親である国王は何も言わなかった。怒りも混乱もない、ただそこに存在しているだけだった。
死を前にすれば取り乱すだろうと期待したが、叶わなかった。

(虚しい)

目的を失い、生きる意味もない。
命を失ってしまった多くの人間を眺めては、自分がそちら側に行くべきだったのではないのかと葛藤した。

「私が原因だとはいえ、こんな血の多く流れた場所にいなければならないのは気が進まないな」

ルイスが側にいるブラッドに声をかける。暗に、ルリアーナ城に帰りたいという意味なのだろう。

「暫くはこちらでポテンシア国内の連絡が取りやすい状況を作って下さい。奥方様たちはこちらへ呼び寄せます」
「妻か……」

ルイスは側室の二人を思い出した。
自分を献身的に支え続けたリディアと、絶世の美女ファニア。いつの間にか二人はルイスを慕うようになっていた。

妻の前に立つと、後ろめたさが襲ってくる。
個人的な復讐に巻き込み、しきたりだけで縛り付けた。憎まれても仕方がない。
いっそのこと、妻に暗殺されるのならそれもまた人生だと割り切っていた。

リディアは、ルイスの地獄に寄り添いたいと泣いた。
ファニアは、ルイスに全てを捧げて生きたいと笑った。

ルイスは、そんな二人に愛される資格などどこにもない。未だに婚約者だったルリアーナ王女を思い出し、自分の最期を願うだけだ。

「ファニアを移動させても大丈夫なのか? 体調がまだ悪いと聞いたが」

ファニアの懐妊報告を受けたばかりのルイスは、実感のない中で事実を口にする。いつかはそういった話が出ると分かっていながら、自分が子を持つ親になるなどあってはならない気がした。

「移動はお身体に負担でしょうから、体調を見ながら慎重にお越しいただきましょう。難しそうであれば、まずはリディア様だけでも……と思いますが」

ブラッドは相変わらず淡々と仕事をこなしている。ルイスがすっかり変わり果てているというのに、ブラッドは常にルイスの味方だった。

「そうか」

(私が親になどなれるものか。母には見捨てられるように先立たれ、父はこの手で殺している)

「おめでたいですね、御子様を授かるとは……」

ブラッドはごくごく一般的な意識で発言した。それがルイスにとってどれだけ違和感のある言葉なのかまでは分かっていないのだろう。

「親殺しをしたような父親を持って、子は幸せだと思うかい? 自分の祖父を殺したのが父親なのだと、いつか知ることになる」
「親が過去何をしたかなど、極論どうでも良いものですよ」

ブラッドは当然のように言った。

「私の父だって、軍人でした。恐らく多くの人の命を奪った人です。でも、私にとっては単に父親だというだけです」
「職務を果たした軍人と、自ら反乱を起こしたのでは違う。そんなに簡単ではないだろう」
「子どもというのは、存外、親の現在をちゃんと見ているものです」
「現在、か」

ルイスは亡くなった父親の部屋にいた。そこには家族を思わせる遺品や品物などは一切なく、国を治めていた一人の国王が日頃から使っていたであろう筆記具や書類、資料ばかりが置かれている。

「私は、親というものを知らない」

ルイスはしみじみと言った。この部屋は国王のものだ。決して、ルイスの父親のものではなかった。
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