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第11章 歴史を変える
ポテンシア国王のもとへ 1
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向かう場所が分かっていたカイは、レナと共に先頭を歩く。レナのペースで全体を歩かせることで、なるべくレナの負担を軽くした。
ふと空を見上げると、嫌味なくらいにどこまでも青い。気持ちは全く晴れないまま、また荒れた地に到着した。
「どうも……普通じゃないな」
カイが先程と似た光景――つまり、戦場だった場所――を前にレナに話しかけると、レナは隣のカイを見上げながら「分かる?」と尋ねる。
「何か変なの。もしかすると……生存者がいるのかも」
「……この中から探すのか……」
多くの傷付いた兵士たちの姿は、もう息絶えているように見える。が、カイが「気」を探れば生存者の存在に気づくこともできるはずだ。
「その前に、呪いを解かなきゃね」
レナはまた、ルリアーナの鎮魂歌を歌った。
後ろにいるリブニケ人兵士たちもメロディを口ずさみながら手を組んで祈っているのが分かる。
歌が進むと、細かな光が色とりどりの結晶のように浮かんでは溶けるように消えていった。
「あと、何かの術が施されているから……それも消しておくわ」
レナはそう言って頭の中に術式を組み立てて、その場にいる「誰か」に掛かっている術を解除する。
カイを見上げると、「任せておけ」とカイは小さく返事をしてレナの頭をクシャッと撫でて歩き出した。
(どこかにいる……なぜ立ち上がったり声を上げたりしないのか分からないが……)
カイはうっすらと感じる生きた人間の「気」に神経を集中させながら、無数の亡骸の間を歩いた。
むせかえる臭い。大量の血が散ったらしい鉄のような臭いと腐敗が混じった空気がカイの顔をなんども歪ませる。
(どこだ……)
ここまではっきりと感じられないと、もう助からない命なのかもしれないという予感が強くなる。
カイがリブニケ人兵士を探す義理などないが、この地まで足を運んだ5人の残党兵にとってはそういう訳にもいかないのだろう。
「あっちか……」
なんとなく「気」を感じる場所がある。
カイはそちらに歩いて行くと、ようやく生存者を発見した。
「おい! 手を貸せ!」
カイが大声を上げる。全員がその場に駆け付けた。
「本当に、ありがとうございます……」
死体の下敷きになったまま動けなくなっていた兵士は全員で7名。
無事に救出されると、まともに歩けない兵士は仲間によって両脇を抱えられた。
精神を操られたまま身動きが取れなくなっていたらしく、発見が遅れていたら力尽きていたかもしれない。
1名ほど、どこかで負傷したらしい左足は引きずられていて、うまく歩けていないようだった。
「仲間がいて良かったな。その足で暫く歩くことになるが、行けるか?」
カイがリブニケ人兵士たちに尋ねると、全員無言で頷いている。
息がある者を置いていくのも後味が悪かったので、カイはほっと胸を撫でおろした。
12人になったリブニケ人兵士たちは、それぞれ武器を持っている。ここで暴れられたらレナだけが危ないが、カイは警戒する必要は無さそうだと悟った。
その者たちにとって、レナがどれだけ救いの女神になっているかが、はっきりと分かったからだ。
炎の鳥を操るレナが遺体を火葬している間も、リブニケ人兵士たちはレナへの祈りも忘れなかった。
「ヘレナ様のお陰です」と口にしながら時折涙を流す敵兵に、カイの戦意はとっくに削がれている。
(それなりに憎い国だと思っていたが……)
こうして敵国の12人を目の前にすると、もはやその気持ちは沸かなかった。そこに立っているのは、ただの傷付いた兵士でしかない。
国に戻られたら戦場で戦うことになるかもしれないのに、そんなことはもうどうでも良かった。
「近いところまで来ている。いよいよだな」
カイはレナの肩を抱いて大地の先を見据える。
運命は、レナをすでに巻き込んで大きく動いているのだろう。
この先なにがあろうとも、失うわけにはいかない。
ふと空を見上げると、嫌味なくらいにどこまでも青い。気持ちは全く晴れないまま、また荒れた地に到着した。
「どうも……普通じゃないな」
カイが先程と似た光景――つまり、戦場だった場所――を前にレナに話しかけると、レナは隣のカイを見上げながら「分かる?」と尋ねる。
「何か変なの。もしかすると……生存者がいるのかも」
「……この中から探すのか……」
多くの傷付いた兵士たちの姿は、もう息絶えているように見える。が、カイが「気」を探れば生存者の存在に気づくこともできるはずだ。
「その前に、呪いを解かなきゃね」
レナはまた、ルリアーナの鎮魂歌を歌った。
後ろにいるリブニケ人兵士たちもメロディを口ずさみながら手を組んで祈っているのが分かる。
歌が進むと、細かな光が色とりどりの結晶のように浮かんでは溶けるように消えていった。
「あと、何かの術が施されているから……それも消しておくわ」
レナはそう言って頭の中に術式を組み立てて、その場にいる「誰か」に掛かっている術を解除する。
カイを見上げると、「任せておけ」とカイは小さく返事をしてレナの頭をクシャッと撫でて歩き出した。
(どこかにいる……なぜ立ち上がったり声を上げたりしないのか分からないが……)
カイはうっすらと感じる生きた人間の「気」に神経を集中させながら、無数の亡骸の間を歩いた。
むせかえる臭い。大量の血が散ったらしい鉄のような臭いと腐敗が混じった空気がカイの顔をなんども歪ませる。
(どこだ……)
ここまではっきりと感じられないと、もう助からない命なのかもしれないという予感が強くなる。
カイがリブニケ人兵士を探す義理などないが、この地まで足を運んだ5人の残党兵にとってはそういう訳にもいかないのだろう。
「あっちか……」
なんとなく「気」を感じる場所がある。
カイはそちらに歩いて行くと、ようやく生存者を発見した。
「おい! 手を貸せ!」
カイが大声を上げる。全員がその場に駆け付けた。
「本当に、ありがとうございます……」
死体の下敷きになったまま動けなくなっていた兵士は全員で7名。
無事に救出されると、まともに歩けない兵士は仲間によって両脇を抱えられた。
精神を操られたまま身動きが取れなくなっていたらしく、発見が遅れていたら力尽きていたかもしれない。
1名ほど、どこかで負傷したらしい左足は引きずられていて、うまく歩けていないようだった。
「仲間がいて良かったな。その足で暫く歩くことになるが、行けるか?」
カイがリブニケ人兵士たちに尋ねると、全員無言で頷いている。
息がある者を置いていくのも後味が悪かったので、カイはほっと胸を撫でおろした。
12人になったリブニケ人兵士たちは、それぞれ武器を持っている。ここで暴れられたらレナだけが危ないが、カイは警戒する必要は無さそうだと悟った。
その者たちにとって、レナがどれだけ救いの女神になっているかが、はっきりと分かったからだ。
炎の鳥を操るレナが遺体を火葬している間も、リブニケ人兵士たちはレナへの祈りも忘れなかった。
「ヘレナ様のお陰です」と口にしながら時折涙を流す敵兵に、カイの戦意はとっくに削がれている。
(それなりに憎い国だと思っていたが……)
こうして敵国の12人を目の前にすると、もはやその気持ちは沸かなかった。そこに立っているのは、ただの傷付いた兵士でしかない。
国に戻られたら戦場で戦うことになるかもしれないのに、そんなことはもうどうでも良かった。
「近いところまで来ている。いよいよだな」
カイはレナの肩を抱いて大地の先を見据える。
運命は、レナをすでに巻き込んで大きく動いているのだろう。
この先なにがあろうとも、失うわけにはいかない。
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