180 / 229
第11章 歴史を変える
残党兵の願い
しおりを挟む
カイはいつかの戦地跡を思い出す。そこには多くの兵士たちの亡骸があったが、以前見たの光景と何かが違う。
(なんだ、この違和感は……)
「これは、味方同士の争った跡なのです」
「そうか……」
リブニケ人兵士たちは自国民兵士たちが散った場所に、生き残った自分たちもほとんど変わりないのだと黙祷を捧げている。
「何か視えるか? 術式のようなものや、呪いのようなものが」
カイが隣のレナに尋ねると、レナはじっとその光景を見つめていた。
「そうね、呪詛が……呪いのようなものが」
レナはすうっと大きく息を吸うと、ルリアーナの鎮魂歌を歌い始める。
「その歌は……」
兵士の一人が目を見開いたので、「ルリアーナの鎮魂歌らしいが」とカイが小声で伝えた。
レナの声が荒れた戦地跡に響くと、地面から小さな白い光がぽうっと生まれて消えていく。
次々に呪いはその土地の風に消えて浄化されていった。
「もう大丈夫よ、でも……この遺体に残る思念は、火葬した方がよさそう」
レナはそう言うと大きな炎の鳥を目の前に産み、鳥は小さな炎に分かれて飛び散った。細かい炎が各地で上がり、周囲を燃やしていく。
レナは手を組んで、その地に留まる思念が願った場所に戻れるように祈った。
暫く火が上がり、様々なものが焼け焦げる匂いが漂う。
兵士たちだけでなく、カイやシン、ロキまでもが目を瞑って黙祷を捧げていた。
*
「これで平気だと思う。先に進みましょうか」
レナがなんてことのないように微笑むと、カイはほっと胸をなでおろす。レナは呪いには負けないらしい。
「あの、ヘレナ様……。先ほどの歌は、ルリアーナの歌なのですか?」
「ええ……」
レナが何を聞かれているのかと不思議そうな顔で頷くと、リブニケ人兵士たちは納得した。
「リブニケにも、同じ曲で歌詞の違う鎮魂歌があるのです。私たちには馴染みのある歌です」
「リブニケで生まれた女神ヘレナは、ルリアーナを建国したわ。だからなのかしらね」
レナが青い透き通った目で兵士たちを見つめると、先程まで力なく立っていた5人はハッとして立膝を付いた。
「ヘレナ様……。あともう一か所、ルイス王子がいる城の近くでも同じことが起きています。どうか……」
頭を下げながら必死に願いを乞う姿に、全員何も言えなかった。
敵国とはいえ残党兵の最後の願いとは仲間の平穏を願うことなのだ。カイは改めて事実を知った。
恐らく自分も同じような立場に置かれれば、きっと同じことを願ってしまうのだろう。
敵でしかなかったリブニケ王国の兵士とはいえ、こうして向き合ってみると自分たちと違うところなど何もなかった。
カイは争いの先にいる兵士の存在を身近に感じてしまう。
「同じようなことしかできないけれど、行きましょう。カイが怒らないことなら協力するわ」
レナが笑顔を見せると、リブニケ人兵士たちはその場から立ち上がってどういうことなのだろうと首を傾げる。
「女神ヘレナ様の恋人が、狭量な人なんだよ」
ロキがそう言ってカイの肩に手を置いて得意げな顔をしていた。
(なんだ、この違和感は……)
「これは、味方同士の争った跡なのです」
「そうか……」
リブニケ人兵士たちは自国民兵士たちが散った場所に、生き残った自分たちもほとんど変わりないのだと黙祷を捧げている。
「何か視えるか? 術式のようなものや、呪いのようなものが」
カイが隣のレナに尋ねると、レナはじっとその光景を見つめていた。
「そうね、呪詛が……呪いのようなものが」
レナはすうっと大きく息を吸うと、ルリアーナの鎮魂歌を歌い始める。
「その歌は……」
兵士の一人が目を見開いたので、「ルリアーナの鎮魂歌らしいが」とカイが小声で伝えた。
レナの声が荒れた戦地跡に響くと、地面から小さな白い光がぽうっと生まれて消えていく。
次々に呪いはその土地の風に消えて浄化されていった。
「もう大丈夫よ、でも……この遺体に残る思念は、火葬した方がよさそう」
レナはそう言うと大きな炎の鳥を目の前に産み、鳥は小さな炎に分かれて飛び散った。細かい炎が各地で上がり、周囲を燃やしていく。
レナは手を組んで、その地に留まる思念が願った場所に戻れるように祈った。
暫く火が上がり、様々なものが焼け焦げる匂いが漂う。
兵士たちだけでなく、カイやシン、ロキまでもが目を瞑って黙祷を捧げていた。
*
「これで平気だと思う。先に進みましょうか」
レナがなんてことのないように微笑むと、カイはほっと胸をなでおろす。レナは呪いには負けないらしい。
「あの、ヘレナ様……。先ほどの歌は、ルリアーナの歌なのですか?」
「ええ……」
レナが何を聞かれているのかと不思議そうな顔で頷くと、リブニケ人兵士たちは納得した。
「リブニケにも、同じ曲で歌詞の違う鎮魂歌があるのです。私たちには馴染みのある歌です」
「リブニケで生まれた女神ヘレナは、ルリアーナを建国したわ。だからなのかしらね」
レナが青い透き通った目で兵士たちを見つめると、先程まで力なく立っていた5人はハッとして立膝を付いた。
「ヘレナ様……。あともう一か所、ルイス王子がいる城の近くでも同じことが起きています。どうか……」
頭を下げながら必死に願いを乞う姿に、全員何も言えなかった。
敵国とはいえ残党兵の最後の願いとは仲間の平穏を願うことなのだ。カイは改めて事実を知った。
恐らく自分も同じような立場に置かれれば、きっと同じことを願ってしまうのだろう。
敵でしかなかったリブニケ王国の兵士とはいえ、こうして向き合ってみると自分たちと違うところなど何もなかった。
カイは争いの先にいる兵士の存在を身近に感じてしまう。
「同じようなことしかできないけれど、行きましょう。カイが怒らないことなら協力するわ」
レナが笑顔を見せると、リブニケ人兵士たちはその場から立ち上がってどういうことなのだろうと首を傾げる。
「女神ヘレナ様の恋人が、狭量な人なんだよ」
ロキがそう言ってカイの肩に手を置いて得意げな顔をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる