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第11章 歴史を変える

守ること、守られること

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「改めて色々聞いてもいいかしら? あなたたちはどこの国から?」
「……リブニケです」
「ルイス様の兵として?」
「はい」

レナとひとりの兵士が話している間、お互いがお互いを探るような視線が飛び交っている。

ロキは得体のしれない兵士の登場に敵意を剥き出しにしていたが、カイとシンはとりあえず様子を見る姿勢で観察に徹していた。
レオナルドは後方で全体を眺めるように距離をとっている。

「どうしてあそこにいたの?」
「ルイス様の命で……」
「何かをする予定だった?」

そこで相手が詰まった。言葉がなくなったことで、事情が分かる。

(所詮、他国兵など侵略者にすぎない)

カイは自分もさして変わらないのだと気にも留めなかった。
戦争とは得てしてそういうものだと、レナ以外の全員が理解はしている。

「あなたたちの仲間に、呪術師はいないの?」
「……いましたが」
「今は、いない?」

無言で頷く兵士たちに、恐らく何かがあっただろうと推し量ってみる。重い口を開かないことから、受け止めきれない何かが起きたのだろう。

「油断はするなよ」

カイは歩くごとに徐々に近づいている異様な「気」に警戒を強めた。
レナは無言でカイの手を握るとそのまま歩く。

「……これは?」
「油断をするなって言うから」
「これがか?」

カイが呆れたように笑った次の瞬間、レナの手から血が沸騰しそうな感覚が全身に走る。

「なん……だ」
「お守りみたいなものよ」

何かの術をかけられたらしい。激しい感覚が収まると、カイはレナの手をきゅっと強く握った。

「守られてばかりだな、ここのところ」
「本調子じゃないのだから、無理をしないで」

にこりと微笑んだレナに、カイは目を見張った。
いつどんなところにいても、強く、その魂は揺るがない。
人を救うなど誰にでもできることではないのに、いとも簡単にやってのけるのがレナなのだろう。

「変な心配をしてくれるな。本調子でなくても、その辺の雑兵に負けたりはしない」
「分かっているつもりよ」

レナはそう言ってカイの手を握り返す。

「あなたを心配するのは、私の役目だから」

左隣に立つカイを見上げた。視線が絡むと、カイは穏やかな目をしている。

「そうやって心配されるのは、悪くないな」
「悪くない? 良くはないの?」
「また裸で説得でもされたら困るからな」
「もうしないわよ……あんなこと」

レナが口を尖らせたので、カイはその唇に軽く口付けを落とす。

「ありがとう」

カイが囁くので、レナは驚いて歩みを止めてしまった。

「おい、なにいちゃついて止まってんの」

ロキが後ろから声を掛けると、前を歩いていたリブニケ人兵士たちが何事かと振り返る。

「なにか不都合でもおありですか? ヘレナ様」

動揺の色を浮かべたレナを兵士たちは心配したが、当のレナは笑って誤魔化そうと必死だった。

「不都合っていうか、その……」
「虫がとまってただけだから!」

ロキが大声を張り上げたので、「ああなるほど」とリブニケ人兵士たちは気を取り直して歩き出す。

「誰が虫だ……」
「いや、やけにデカい虫がいたよ」

カイとロキが睨み合っていると、「いい加減にしてくださいよ、大人げない」と、ずっと後方を歩いていたレオナルドがカイたちの横を追い抜いていった。
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