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第11章 歴史を変える
小さな村のアウル
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国境の町からクロノスの歩きで数十分離れた村に到着した。
そこで見た光景に、あまりの活気に、レナは驚く。小さな村に多くの大人が働いている。
農業や畜産業、何かを売る出店の数々、人々の営みがそこにはあった。
「すごい……」
「きっと、ここから立ち直ろうというエネルギーが溢れているんだろう。あの町は大丈夫だ」
カイがレナの頭を横から抱えると、レナはカイの顔を見上げて嬉しそうに微笑む。
ここにアウルシスターズやイサームがいるのなら、暗い顔をして暮らしているということはなさそうだ。
レナは出店に立つ人に話しかけ、イサームやアウルシスターズのことを尋ねると、イサームらしき経営者の情報と、飲食を提供する小さな店を教えられた。
「この村でも、既にお店をやってるなんて。イサームったら商人魂がすごいわ」
「だから、異国で商売をやっても成功していたんだろう」
2人はイサームの店を探して村を歩く。1軒の可愛らしい小さな石造りの家に「アウル」の看板が下がっていた。
レナはその入口を開けて中に入る。扉に付いたベルが、チリリと音を立てた。
「いらっしゃー……エレナ?!」
黒髪ボブのマーシャが現れて声を上げると、ホールに出ていた恰幅の良いミミと細身のマリヤが驚いて駆け寄って来る。
「みんな……! 良かった……」
レナが安心して涙を流すと、マーシャもマリヤも同じように泣いてレナを抱きしめた。
ミミは抱き付きこそしなかったが、「あんたもしぶといわね」と言いながら鼻をすすっている。
「相変わらず、恋人と続いてるみたいじゃないの……」
「幸せそうね」
アウルシスターズが後ろにいるカイの姿を目に入れて冷やかす。
レナはつい惚気たくなってしまった。従業員3人が騒いでいると、厨房から「何を騒いでるんだ?」と懐かしい声が聞こえてくる。
「イサーム! エレナが!」
マーシャが厨房に向かって言うと、慌てて何か金属製の道具を落とした騒がしい音が響き、バタバタと忙しない足音がする。
「エレナ……? 無事だったのか!」
イサームの黒い髪には白髪が混じり、以前よりも皺が目立つ。
「イサーム! なんだかすっかり……お爺ちゃんになって……」
そう言いながらレナがイサームに近寄り抱き付くと、「そんな年齢じゃない。爺さん扱いはやめてくれ」とイサームは困ったような声をあげた。
4人は、レナにこれまでのことを話した。
町は攻められたが、破壊をされただけで済んだのだと嬉しそうに語っている様子を、カイは無表情のまま聞いていた。レナは破壊された店を思い出して涙を流している。
イサームやアウルシスターズが元気に過ごしているようで安心したが、住んでいた場所を追われる程度には被害は大きく、まだ復興の途中だ。
アウルの従業員たちは、この村まで歩いて逃げて来たのだという。心機一転で店を始めたが、また国境の町でアウルを再開させたいのだと語った。
「エレナは……結婚したの?」
マリヤがカイとレナを見ながら嬉しそうに尋ねた。
カイはレナをわざわざ迎えに来ていた。あの日のカイは一緒に暮らすようなことを口にしていたし、そう思われるのも無理はない。
「ううん……まだ。ちょっと事情があって」
「あら、勿体ぶるわね」
レナから2歩分ほど離れた場所に立つカイは、「勿体ぶる」という言葉にピクリと反応した。
勿体ぶりたいはずがない。他人とは勝手だなとマリヤに睨みをきかせてしまう。
「実は、もうすぐ私、遠くに行くの。その前にみんなに会いたかったから」
「遠く……?」
「私が、『アウルのエレナ』だった日に家族だったみんなには、嘘を付きたくなかった。私、本名は『ヘレナ』っていうの。それも、自分では『レナ』だと思って生きて来たんだけど……」
レナが自分の名前の変遷を思い出して苦笑した。本名が未だに偽物のように感じてしまう。
「これから『ヘレナ』に戻ってやらなきゃいけないことが待ってる。でも、アウルのみんなのことは、一生忘れないわ。大好きだから」
レナの言っていることは、半分以上理解ができない。イサームもアウルシスターズも、レナなら特に悪いことをするわけではないのだろうと話せないことを無理に聞き出そうとはしない。
「エレナがヘレナになったところで、別に何かが変わるわけじゃないでしょ?」
マーシャがそう言ってレナに笑う。マリヤとミミも「大袈裟ね」といつもの様子だった。
レナは、そんな3人の様子に頬を緩める。
たったひと時のかけがえのない時間を過ごして、村を後にした。
カイと共にクロノスに乗った後ろ姿をアウルシスターズは羨望の眼差しで眺めていたが、自分達の妹分は何かに立ち向かっているのだろうと、漠然と分かっていた。
そこで見た光景に、あまりの活気に、レナは驚く。小さな村に多くの大人が働いている。
農業や畜産業、何かを売る出店の数々、人々の営みがそこにはあった。
「すごい……」
「きっと、ここから立ち直ろうというエネルギーが溢れているんだろう。あの町は大丈夫だ」
カイがレナの頭を横から抱えると、レナはカイの顔を見上げて嬉しそうに微笑む。
ここにアウルシスターズやイサームがいるのなら、暗い顔をして暮らしているということはなさそうだ。
レナは出店に立つ人に話しかけ、イサームやアウルシスターズのことを尋ねると、イサームらしき経営者の情報と、飲食を提供する小さな店を教えられた。
「この村でも、既にお店をやってるなんて。イサームったら商人魂がすごいわ」
「だから、異国で商売をやっても成功していたんだろう」
2人はイサームの店を探して村を歩く。1軒の可愛らしい小さな石造りの家に「アウル」の看板が下がっていた。
レナはその入口を開けて中に入る。扉に付いたベルが、チリリと音を立てた。
「いらっしゃー……エレナ?!」
黒髪ボブのマーシャが現れて声を上げると、ホールに出ていた恰幅の良いミミと細身のマリヤが驚いて駆け寄って来る。
「みんな……! 良かった……」
レナが安心して涙を流すと、マーシャもマリヤも同じように泣いてレナを抱きしめた。
ミミは抱き付きこそしなかったが、「あんたもしぶといわね」と言いながら鼻をすすっている。
「相変わらず、恋人と続いてるみたいじゃないの……」
「幸せそうね」
アウルシスターズが後ろにいるカイの姿を目に入れて冷やかす。
レナはつい惚気たくなってしまった。従業員3人が騒いでいると、厨房から「何を騒いでるんだ?」と懐かしい声が聞こえてくる。
「イサーム! エレナが!」
マーシャが厨房に向かって言うと、慌てて何か金属製の道具を落とした騒がしい音が響き、バタバタと忙しない足音がする。
「エレナ……? 無事だったのか!」
イサームの黒い髪には白髪が混じり、以前よりも皺が目立つ。
「イサーム! なんだかすっかり……お爺ちゃんになって……」
そう言いながらレナがイサームに近寄り抱き付くと、「そんな年齢じゃない。爺さん扱いはやめてくれ」とイサームは困ったような声をあげた。
4人は、レナにこれまでのことを話した。
町は攻められたが、破壊をされただけで済んだのだと嬉しそうに語っている様子を、カイは無表情のまま聞いていた。レナは破壊された店を思い出して涙を流している。
イサームやアウルシスターズが元気に過ごしているようで安心したが、住んでいた場所を追われる程度には被害は大きく、まだ復興の途中だ。
アウルの従業員たちは、この村まで歩いて逃げて来たのだという。心機一転で店を始めたが、また国境の町でアウルを再開させたいのだと語った。
「エレナは……結婚したの?」
マリヤがカイとレナを見ながら嬉しそうに尋ねた。
カイはレナをわざわざ迎えに来ていた。あの日のカイは一緒に暮らすようなことを口にしていたし、そう思われるのも無理はない。
「ううん……まだ。ちょっと事情があって」
「あら、勿体ぶるわね」
レナから2歩分ほど離れた場所に立つカイは、「勿体ぶる」という言葉にピクリと反応した。
勿体ぶりたいはずがない。他人とは勝手だなとマリヤに睨みをきかせてしまう。
「実は、もうすぐ私、遠くに行くの。その前にみんなに会いたかったから」
「遠く……?」
「私が、『アウルのエレナ』だった日に家族だったみんなには、嘘を付きたくなかった。私、本名は『ヘレナ』っていうの。それも、自分では『レナ』だと思って生きて来たんだけど……」
レナが自分の名前の変遷を思い出して苦笑した。本名が未だに偽物のように感じてしまう。
「これから『ヘレナ』に戻ってやらなきゃいけないことが待ってる。でも、アウルのみんなのことは、一生忘れないわ。大好きだから」
レナの言っていることは、半分以上理解ができない。イサームもアウルシスターズも、レナなら特に悪いことをするわけではないのだろうと話せないことを無理に聞き出そうとはしない。
「エレナがヘレナになったところで、別に何かが変わるわけじゃないでしょ?」
マーシャがそう言ってレナに笑う。マリヤとミミも「大袈裟ね」といつもの様子だった。
レナは、そんな3人の様子に頬を緩める。
たったひと時のかけがえのない時間を過ごして、村を後にした。
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