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第12章 騎士はその地で
アドバイスが役立つこともある
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その日、カイの元に珍しい客が訪れていた。
「うわあ……随分偉そうな身分になったね」
プラチナブロンドの髪を後ろで束ねた華やかな青年実業家は、カイの執務室で驚きながら部屋を見回す。
総督とはまた大層な位を与えられたなと思っていたのが、実際に目にすると想像以上だったのだ。
「偉そう、じゃなくて実際に偉いんだ……」
カイは自分の席から立って、ロキが座ったソファの前の席に着く。
水を大きめのグラスに2杯注ぐと、ロキと自分の前に置いた。
「ロキも、どうやら階級が与えられたらしいな」
「そう。ブリステはとうとう労働者階級の資産家を取り込むつもりらしくてね」
カイは、相変わらずのロキに口元を緩める。
「中産階級というらしいな。響きがロキに似合いだ」
「支払う税金が増えただけで、特に恩恵なんかないんだけどさ。まあ……平民でも階級が与えられるっていうのを見せて、ちょっと希望にしたかったんだよね……」
ロキはそう言って遠くを見ていたが、目の前のグラスに注がれた水をひと口含んだ。
「平民でも、実力でのし上がれるという証明をしたんだな」
「それを言うなら、自分だって相当だ。カイ・ハウザー」
カイは突然の言われに目を丸くした。普段の物言いのせいか、ロキに認められているのは騎士としての実力だけなのかと思っていた。
「結局、軍事にまつわることでしか彼女の側にはいられない」
「ふざけるなよ。側にいられるだけでもすごいっての」
ロキはそう言ってカイを睨む。レナが女王になってから、ロキは新聞紙面でしかレナを知ることが叶わなくなっていた。
「側にいられるだけでも……確かにな」
レナを自分の家に置いた日々のことを、カイはひどく懐かしむことがあった。カイの帰りを待って屋敷前に立っていたあの日のレナは、本来であれば見られるはずもなかったのだ。
「元気がないんだね。仕事のし過ぎ?」
ロキはカイが沈んでいる様子を気にしていた。
戦場から戻って来た時に同じような姿を見たことがあったが、それに近い空気を感じる。
「レナが足りない……」
「死ねよ」
思わずロキから暴言が出た。
姿を見ることすらできない友人に対して、その愚痴はなんなのだ。
「あれは、その辺の町娘じゃない。たまたま見つけた時はそうだったのかもしれないけど、あの人はもとから女王になるために生まれて育ってた。そういう人を好きになったんだよ、あんたも、俺も」
ロキはそう言うと「はー」と息を吐いて立ち上がった。
「まあ、そうやって落ち込んでくれるのは勝手だけどね」
その発言に引っかかっていたカイは、気になっていたことを口にした。
「ロキは、誰かと付き合っていたんじゃなかったのか? シンから聞いたぞ」
「自分なりに吹っ切ろうと思って何人か付き合ってみたけどさ。実際そんな動機で付き合ったって長続きしないんだよ」
ロキはそう言うと部屋を歩く。カイの机に置いてある小さなキャンバス画を覗き込んだ。
女王陛下と嬉しそうに微笑み合うハウザー総督の肖像画だ。
「あー……こんなものまで描かせたのかよ」
「いや、それは……」
カイは気まずそうに口をつぐむ。
レナが画家を呼んで短時間で描かせたものだ。同じ構図の絵が、レナの机にも置いてある。
カイはこの絵を他人に見せるのは恥ずかしかったのだが、仕事中に見ると勇気が湧いた。
「彼女に、この顔をさせるのは……カイ・ハウザーなんだな」
ロキは何度も同じことを思い知らされる。
女性ならこの世にいくらでもいるのに、どうして女王陛下を望んでしまったのか。
「まあ、頑張れよ総督。癪だけど、あんたが彼女を幸せにしてくれるんなら俺はそれが一番報われる」
「……アロイスをなんとかしろ」
「はあ? そこが問題なのか?」
ロキは王の承認が得られず婚姻に至っていない事実を初めて知った。
「あの王は、見栄で生きているタイプだ。他人からの評価に弱い。周りの人間も使ってみなよ。そういうの苦手そうだけど、今は苦手とか言ってられないだろ」
「周りの……」
カイは言われて初めて、正面から何度同じ交渉をしても仕方がないのだと気付いたのだった。
「うわあ……随分偉そうな身分になったね」
プラチナブロンドの髪を後ろで束ねた華やかな青年実業家は、カイの執務室で驚きながら部屋を見回す。
総督とはまた大層な位を与えられたなと思っていたのが、実際に目にすると想像以上だったのだ。
「偉そう、じゃなくて実際に偉いんだ……」
カイは自分の席から立って、ロキが座ったソファの前の席に着く。
水を大きめのグラスに2杯注ぐと、ロキと自分の前に置いた。
「ロキも、どうやら階級が与えられたらしいな」
「そう。ブリステはとうとう労働者階級の資産家を取り込むつもりらしくてね」
カイは、相変わらずのロキに口元を緩める。
「中産階級というらしいな。響きがロキに似合いだ」
「支払う税金が増えただけで、特に恩恵なんかないんだけどさ。まあ……平民でも階級が与えられるっていうのを見せて、ちょっと希望にしたかったんだよね……」
ロキはそう言って遠くを見ていたが、目の前のグラスに注がれた水をひと口含んだ。
「平民でも、実力でのし上がれるという証明をしたんだな」
「それを言うなら、自分だって相当だ。カイ・ハウザー」
カイは突然の言われに目を丸くした。普段の物言いのせいか、ロキに認められているのは騎士としての実力だけなのかと思っていた。
「結局、軍事にまつわることでしか彼女の側にはいられない」
「ふざけるなよ。側にいられるだけでもすごいっての」
ロキはそう言ってカイを睨む。レナが女王になってから、ロキは新聞紙面でしかレナを知ることが叶わなくなっていた。
「側にいられるだけでも……確かにな」
レナを自分の家に置いた日々のことを、カイはひどく懐かしむことがあった。カイの帰りを待って屋敷前に立っていたあの日のレナは、本来であれば見られるはずもなかったのだ。
「元気がないんだね。仕事のし過ぎ?」
ロキはカイが沈んでいる様子を気にしていた。
戦場から戻って来た時に同じような姿を見たことがあったが、それに近い空気を感じる。
「レナが足りない……」
「死ねよ」
思わずロキから暴言が出た。
姿を見ることすらできない友人に対して、その愚痴はなんなのだ。
「あれは、その辺の町娘じゃない。たまたま見つけた時はそうだったのかもしれないけど、あの人はもとから女王になるために生まれて育ってた。そういう人を好きになったんだよ、あんたも、俺も」
ロキはそう言うと「はー」と息を吐いて立ち上がった。
「まあ、そうやって落ち込んでくれるのは勝手だけどね」
その発言に引っかかっていたカイは、気になっていたことを口にした。
「ロキは、誰かと付き合っていたんじゃなかったのか? シンから聞いたぞ」
「自分なりに吹っ切ろうと思って何人か付き合ってみたけどさ。実際そんな動機で付き合ったって長続きしないんだよ」
ロキはそう言うと部屋を歩く。カイの机に置いてある小さなキャンバス画を覗き込んだ。
女王陛下と嬉しそうに微笑み合うハウザー総督の肖像画だ。
「あー……こんなものまで描かせたのかよ」
「いや、それは……」
カイは気まずそうに口をつぐむ。
レナが画家を呼んで短時間で描かせたものだ。同じ構図の絵が、レナの机にも置いてある。
カイはこの絵を他人に見せるのは恥ずかしかったのだが、仕事中に見ると勇気が湧いた。
「彼女に、この顔をさせるのは……カイ・ハウザーなんだな」
ロキは何度も同じことを思い知らされる。
女性ならこの世にいくらでもいるのに、どうして女王陛下を望んでしまったのか。
「まあ、頑張れよ総督。癪だけど、あんたが彼女を幸せにしてくれるんなら俺はそれが一番報われる」
「……アロイスをなんとかしろ」
「はあ? そこが問題なのか?」
ロキは王の承認が得られず婚姻に至っていない事実を初めて知った。
「あの王は、見栄で生きているタイプだ。他人からの評価に弱い。周りの人間も使ってみなよ。そういうの苦手そうだけど、今は苦手とか言ってられないだろ」
「周りの……」
カイは言われて初めて、正面から何度同じ交渉をしても仕方がないのだと気付いたのだった。
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