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第12章 騎士はその地で

未来へ 1

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レナはいつもと同じように自室で公務をこなしていた。
側にはカイの部下がついており、護衛と会話をしない生活がすっかり日常になっている。

城内ではレナとカイが恋仲である事実が周知されており、カイが任務の合間を縫ってレナに会いに来る時は周りが気を遣って2人きりになれる時間があった。
――1日に、2~30分ほどだが。

(2人きりになれる時間があるとはいえ、短いわ)

レナは毎日カイが部屋を出て行った後に落ち込んでいた。
サーヤは「婚姻までの辛抱ですよ」とニコニコとしているが、いつまで経ってもアロイスの承認は得られずにいる。

アロイス・ブリステ公王の元に駆け付け、なんとかこの状況を変えたい。
が、ブリステ公国までの道のりを考えるとレナが5泊以上城を空ける手はずを整えるのは至難の業だった。

ふと、隣国ポテンシア国王のルイスから届いた書簡を持ち上げる。
商業関係の貿易について書かれている内容に返事を書きながら、ルイスの子がもうすぐ誕生するのだなと不思議な気持ちになる。

国を追われる前のままだったら、レナはルイスと婚姻して夫婦になっていた。
もし、あのままだったら――。

(ルイス様の子を産んでいたかもしれない?)

あまりに想像ができずにレナは頭を抱えた。あの時はルイスとの婚姻が最善策だと思っていたが、つらい結婚生活になっていた気がする。

そこで、扉がノックされた。

「はい」
「俺だ。今日は今から交代が来るまで護衛を担当する」

カイの声がして、レナは思わず扉の前に駆け付けた。そのレナの後ろに、カイの部下が護衛についている。

「いつもより時間が早いのね? そして、長いの?」

レナがそう言ってカイに飛びつく。部下は頭を下げて退室した。

「実は……」

カイが言いづらそうにレナを見ている。何事だろうとレナは言葉を待つ。

「承認が下りた」
「えっ?」
「ルリアーナの王室に入るには、これからどうしたらいい?」

カイの言葉に、レナは無言になる。

「どうした? 驚きすぎて言葉もないのか?」
「…………ほんとに?」

レナは消え入りそうな声でやっと尋ねることができた。

「こんなことを冗談で言ったら、一生恨まれるだろうな。これが証拠だ」

カイにブリステ公王の書簡を渡されて、レナはその文章を読み上げた。

「『カイ・ハイザー伯爵 貴殿から申請されたヘレナ・ルリアーナ女王との婚姻を承認する。 ブリステ公王 アロイス・ブリステ』って……。急に、どうしたの??」

「青年実業家に借りを作ったな。周りを固めたんだ。マルセルやレヴィ家、その他にも日頃仕事で付き合いのある連中に、現在の状況に困っていると便りを出した。今回はアロイスが一方的に悪かったこともあって、あの王が苦言を呈され、数々の説得に遭ったらしい」

カイはレナの頬に手を添えた。
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