亡国の王女は世界を歌う ―アメイジング・ナイト2—

碧井夢夏

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第12章 騎士はその地で

未来へ 2

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「待たせてしまってすまなかった。おそらく婚姻の儀さえ済めば、毎日ここにいられる。まあ、仕事中以外で、ということになるが」
「うそっ……」

レナは急な展開にうまく反応できなかった。
会える時間が少ないと不満を抱えて過ごすつもりでいた。

「改めて言わせてもらおう。レナ。一緒になってくれるか?」

カイはレナの前で跪いた。
レナはきゅっと口を結んでそのカイの前に手を差し伸べると、「手を取りなさい、カイ・ハウザー」と命令する。

カイはレナの手を取って下から見上げた。

「これからは、ずっと一緒ね?」

レナはカイを見下ろしながら涙を零した。
頬を伝って服に落ちた涙が、ブルーのドレスに円い模様をポツポツと作る。

カイはレナの手を握ったまま立ち上がり、静かに頷いた。

「生涯、傍にいさせて欲しい」

レナはカイに抱き付く。カイの胸で泣き声を上げた。

「もともとその約束だったのに、不安にさせたな」

カイはレナの頭を撫でながら、耳元で囁く。ここまで来るのに、時間をかけ過ぎてしまったのだろう。
レナは暫く泣き続け、落ち着いてきたのかと思えばしゃくりあげ始めていた。


「私……恋愛結婚が夢だったの」

ポツリとレナが呟いてカイを見上げた。

「そうか。それではこれは嬉し泣きか?」
「……そうね」

レナはこれが現実だろうかと何度も疑った。
あまりに望み過ぎたせいで、とうとう勝手な幻想を形にしてしまったのではないかと不安になる。

そこで口付けを落とされると、現実感が身体中を襲った。

(これが、幻想なはずがないわ)

レナは離れたカイをじっと見つめる。

「あなたが好き」

レナの言葉に、カイは目を細めた。

「1年ほど前は、恋愛も結婚も、人生にはただの枷でしかないと思っていた」
「今は?」
「愛する者ができたら、自然と望むことなのかもしれない。レナのいない人生など、ただ時間を消費するだけの無味なものだ。本当の世界を知ってしまったら、元には戻れない」

レナは頬をゆるめ、涙の乾かない青い目をカイに向ける。
とうとう、夢が叶う日がすぐそこにきていた。

 *

2人はその日、時間がくるまでソファに並んで未来を語った。

ブリステのハウザー家とルリアーナの王家、両方に継承者が必要なのはプレッシャーだなとカイが言い、レナが「なんであなたがプレッシャーなのよ」と睨む。

その日、カイはこれまでで一番よく笑っていた。
レナはそんな様子に気付くと、この先はきっと大丈夫だと確信する。

カイは、改めて父親の人生を想った。

母親を愛して共に亡くなった父は、きっと最期まで幸せだったのだろう。
病気でまともに動けなかった母親がカイ産んでこの世に遺した。
それがどれだけ奇跡だったのか、カイはこの日、ようやく分かった。
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