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第12章 騎士はその地で

多少の無理くらい 1

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4日間の滞在を終えて、カイはルリアーナに戻る。
屋敷を出る時にオーディスにまた不在にすることを謝ると、「次はレナ様もご一緒に」と念を押された。

「分かっている。言っておくが置いてきたかったわけでもないし、レナだってこちらに来たがっている。女王陛下が来るとなると、それなりに大変だぞ」

カイは意地悪くオーディスに告げたつもりが、「望むところでございます」とオーディスはきっぱりと言い切った。

本当にレナの到着を待っているらしい。奥に立つメイド長の姿を捉えると、彼女もまた大きく頷いていた。

「分かった。次は、女王陛下と帰省する。覚悟しておけ」

カイが使用人たちに声をかけると、そこにいた全員は一斉に頭を下げた。
その姿を見ながら、いつかレナが「私も」と使用人の中に入ろうとしたのを思い出す。

「留守を任せてすまないが、頼りにしている」

カイはそう言うとすぐに出発した。
オーディスはカイの後ろ姿を眺めながら、「今まで忘れておりましたが、あのホーリー様の息子ですから仕方がないのかもしれませんね」と使用人達に呟く。

「ホーリー様より異性の趣味は宜しいかと思います」

メイド長が堪らず口を挟むと、「それは私たちには分かりませんよ」とオーディスは小さくなっていくカイを見つめた。

 *

カイはクロノスに跨って帰路を急いでいる。
途中で2~3泊は必要な距離だが、その時間が惜しい。

クロノスの調子を気にしながら、なるべくペースを落とさずに進んでいく。
国境を越えてポテンシアに入ると、レナのいた町を抜けて距離を稼いだ。レナが歌っていたバール、『アウル』も、無事に営業を再開していたようだ。

途中、休憩に寄った町で噂話が聞こえてくる。
バールのカウンターで水を飲んでいると、後ろの席から話し声がした。

「ルリアーナは王政を廃止するらしいな」
「小国が自分たちで政治をするとは、なかなか不思議な流れだ」

(なぜそんな話がここでされているのだろうか……。ブリステにいたら耳に入らない話も、隣国となると事情が違うな)

カイはルリアーナがいよいよ変わるのだと、腕を組んで目を瞑る。
やはり、一刻も早く現地の状況を知りたい。クロノスの負担を気にしながら、また先を急ぐことにした。

行きでは気づかなかったが、ポテンシアの町をいくつか抜けているうちに以前よりも治安が良くなっているように感じる。

一旦リブニケ兵に攻められたことで復興が最優先になっており、犯罪が減っているのだろうか。

ルイスの評判は悪くないようで、正室になったリディアの政治力も国内で発揮されていると聞く。
ポテンシアが前を向いて進んでいるようで、ルリアーナはこれからどうなって行くのだろうかとレナを案じた。

(権力を王族から剝がしたとして、今後ルリアーナ王室は大丈夫なのだろうか)

市民から無駄なものとして弾圧でもされようものなら、レナもカイも立場が危うい。
特に、ブリステ公国から来て軍事を任される自分のような存在は、市民からの印象が良いとは思えなかった。
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