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3章
エイミー合流
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以前クリスティーナの挙式で泊まった宿に着き、便箋やペンを借りてクリスティーナ宛に手紙を書く。
宛名にアイリーンという自分の名前を書いたとき、クリスティーナは今でもアイリーンのまま皇室にいるのかと当然のことに気づく。
自分がユリシーズの元でアイリーンとして受け入れられていることが特別なのだけれど、相手が人狼でなかったらいまもずっとユリシーズの前でクリスティーナを名乗りながら生活していたのだろう。
しばらくするとすっかり辺りが暗くなっていて、いまごろユリシーズはノクスになっているのかと思う。
気付いたら自分が重症を負っていて倒れているなんて、なかなか大変な状況に置いてきてしまって胸が痛むけれど。
「奥様、いらっしゃいますか?」
聞きなれた声が扉のところで聞こえる。エイミーが到着したのだ。
「どうぞ、入って」
声をかけると扉が開き、エイミーと隣には料理人の男の子が帽子をとってこちらを見ている。
「ちょっとあなた、頭から耳が出ちゃっているから帽子は被っていた方がいいわよ。人間独自の礼儀より身を守る方を優先して」
「は、はい」
そう言うとハンチング帽子に茶色の耳を仕舞って申し訳なさそうにした彼は、なぜエイミーと一緒にここにいるのだろう。
「すいません、奥様。その……わたくしひとりでこちらまで来るのは危険だからと一緒に……」
ああ、女の勘ってこういうのなのかしら。二人の距離感や独特の空気感に、これ、いわゆるできてるってやつねと納得するしかない。
エイミーたちを部屋に入れて、やっぱり男の子が幼くて心配になる。未成年なのではないかしら。
「エイミー、彼はいくつなの?」
「あっ……18歳です」
「……私と同い年なのね」
15歳くらいに見えるけれど、成人していた。エイミーより2歳下ではあるけれど、歳の差というほど離れてもいない。
「付き合ったのは最近?」
「あっ、あの、付き合っておりません」
なによそれ。お付き合いはしていないけれどお互い好きですとかそういう??
「奥様が旦那様と結婚して人狼のみなさまと上手く行っているのを見習いたいと思っておりましたら、仲良くなったというか」
「仲良くなったのは別にいいのだけれど、やけに親密じゃない??」
「そんなっ、親密だなんて。ただわたくしが仲良くしていただいているので」
なんでかしら。こんなにあからさまにカップルの距離感でそんなことを言われても納得できないわね。これで付き合っていないですって……??
「ただ付き合っていないだけとか、そういう男女ってことかしら……」
「お嬢様っ! なんてことを!」
二人が真っ赤になっている。そうなのね、そういう関係ではないのね。
「事故で唇が触れた関係とか?」
「お嬢様!!」
男の子がもじもじしてしまって、エイミーが泣きそうになっている。ただ二人の関係を聞きたいだけだったのに、完全に困らせたわね。
「あ、あのっ、わたくしの片想いですからっ」
エイミーが必死に弁解するのを、部屋の中で帽子を脱いで両手で持ちながら男の子の方はハラハラしながら見ている。ふさふさした耳がときどき動いていて可愛いわね。
「エイミー、見苦しいわよ。距離が近すぎるわ。ただの友達じゃないでしょう??」
「お、奥様……実は僕も片想いだと思っていたのですが……」
「えっ……」
まさかのお互いが鈍すぎるパターン?! ここまで二人きりで来たのに? お互い片想いを抱えながら??
「な、なんかごめんなさい……」
とりあえず、二人が思った以上にプラトニックだったことが判明した。その秘めた想いや積み上げてきた諸々は、私がぶち壊してしまったらしい。
「もうっ、酷いです。お嬢様ったら」
「エイミー、お嬢様じゃなくて奥様よ。ごめんなさい、てっきり付き合っているのかと思ったから……」
「異性と仲が良いだけで付き合っていると思うなんて」
「エイミーさん、奥様なりの観察眼があったんですよ、きっと」
茶色の髪に茶色の耳を持つ人狼の男の子は、ウェーブがかった茶髪の可愛らしい雰囲気が印象的。
エイミーはどうやら可愛い系が好きなのね。
「友人同士はそんなにくっついて歩かないわ」
「えっ」
「人狼は距離が近いから麻痺しやすいけれど、人間は何とも思っていない異性とそんなにぴったり密着しないでしょ」
「そんなに、近かったですか?」
「つい数分前は指を絡めていたのかしら、くらいの距離感だけれど」
二人は恥ずかしそうに下を向いて照れていた。なんだか初々しいというか、思った以上にピュアね。
「お互いが育ててきた気持ちをあっさりと私が暴露してしまったのは謝るわ。とりあえず、いまはエイミーが持ってきているオルブライト伯爵家の印を借りたいのだけれど」
「あ、はいっ」
エイミーは肩から斜め掛けをしていた革製のバッグから白い布に包まれたものを取り出した。
「こちらです」
受け取った布を開くと、金でできた印が出てきた。狼の家紋が彫られている。
「封蝋印を押したら、クリスティーナに手紙を出すの。彼女に会って公爵様のことを色々聞き出さなくちゃ」
「すみません、ご主人様が毒に倒れたと聞いたのですが……」
料理人の男の子が、心配そうにこちらを見ている。
「ええ、バートレットとシンシアがついているわ。ノクスの回復力があれば命に心配はないのだと聞いたけれど」
「それでも、奥様の心中を思うと泣けてきます……」
人狼の男の子は耳を折りたたんで目を潤ませていたから、つられて泣きそうになって咄嗟に視線を外した。
キラキラとした澄んだ目で泣かれると、もらい泣きをしそうになる。
「悔しいけれど、私が狙われたせいでユリシーズが切られてしまったの。だから、こうやって彼から離れて行動しているのよ」
「はい。奥様の行動がご主人様に届くよう、僕も精一杯仕えます」
ピンと耳を立てて胸を張ってくれる。
やっぱり人狼の子はみんな可愛いわね。エイミーが惹かれるのが理解できる。
……って、私と同い年だったんだ。つい見た目の幼さに引っ張られて年下だと思ってしまうわね。
「ありがとう。早くユリシーズのところに行けるように、協力してもらえたら嬉しいわ」
「はいっ! 耳と鼻の良さを生かして、公爵家関係者となるべく出くわさないように帝都をご案内します!」
「……ちょっと待って。公爵関係者かどうかを知るためにどうするつもり? あと、もしかして帝都には公爵家関係者が何人もいるの??」
「申し上げにくいのですが……公爵家の親戚の方々は帝都で要職についている方ばかりですし、公爵様自身も成人されるまで帝都のお城に住んでいた方ですし……」
「……」
お城の前で丁寧に約束の取り方を教えてもらえたのも、私が公爵家のクリスティーナを名乗ったからなのかもしれない。
公爵家関係者の多くは現在のアイリーン妃がクリスティーナであることを知っている気がする。
私がクリスティーナに会おうとすれば、そのうち公爵様に伝わってしまうと考えた方がいいのかも……。
宛名にアイリーンという自分の名前を書いたとき、クリスティーナは今でもアイリーンのまま皇室にいるのかと当然のことに気づく。
自分がユリシーズの元でアイリーンとして受け入れられていることが特別なのだけれど、相手が人狼でなかったらいまもずっとユリシーズの前でクリスティーナを名乗りながら生活していたのだろう。
しばらくするとすっかり辺りが暗くなっていて、いまごろユリシーズはノクスになっているのかと思う。
気付いたら自分が重症を負っていて倒れているなんて、なかなか大変な状況に置いてきてしまって胸が痛むけれど。
「奥様、いらっしゃいますか?」
聞きなれた声が扉のところで聞こえる。エイミーが到着したのだ。
「どうぞ、入って」
声をかけると扉が開き、エイミーと隣には料理人の男の子が帽子をとってこちらを見ている。
「ちょっとあなた、頭から耳が出ちゃっているから帽子は被っていた方がいいわよ。人間独自の礼儀より身を守る方を優先して」
「は、はい」
そう言うとハンチング帽子に茶色の耳を仕舞って申し訳なさそうにした彼は、なぜエイミーと一緒にここにいるのだろう。
「すいません、奥様。その……わたくしひとりでこちらまで来るのは危険だからと一緒に……」
ああ、女の勘ってこういうのなのかしら。二人の距離感や独特の空気感に、これ、いわゆるできてるってやつねと納得するしかない。
エイミーたちを部屋に入れて、やっぱり男の子が幼くて心配になる。未成年なのではないかしら。
「エイミー、彼はいくつなの?」
「あっ……18歳です」
「……私と同い年なのね」
15歳くらいに見えるけれど、成人していた。エイミーより2歳下ではあるけれど、歳の差というほど離れてもいない。
「付き合ったのは最近?」
「あっ、あの、付き合っておりません」
なによそれ。お付き合いはしていないけれどお互い好きですとかそういう??
「奥様が旦那様と結婚して人狼のみなさまと上手く行っているのを見習いたいと思っておりましたら、仲良くなったというか」
「仲良くなったのは別にいいのだけれど、やけに親密じゃない??」
「そんなっ、親密だなんて。ただわたくしが仲良くしていただいているので」
なんでかしら。こんなにあからさまにカップルの距離感でそんなことを言われても納得できないわね。これで付き合っていないですって……??
「ただ付き合っていないだけとか、そういう男女ってことかしら……」
「お嬢様っ! なんてことを!」
二人が真っ赤になっている。そうなのね、そういう関係ではないのね。
「事故で唇が触れた関係とか?」
「お嬢様!!」
男の子がもじもじしてしまって、エイミーが泣きそうになっている。ただ二人の関係を聞きたいだけだったのに、完全に困らせたわね。
「あ、あのっ、わたくしの片想いですからっ」
エイミーが必死に弁解するのを、部屋の中で帽子を脱いで両手で持ちながら男の子の方はハラハラしながら見ている。ふさふさした耳がときどき動いていて可愛いわね。
「エイミー、見苦しいわよ。距離が近すぎるわ。ただの友達じゃないでしょう??」
「お、奥様……実は僕も片想いだと思っていたのですが……」
「えっ……」
まさかのお互いが鈍すぎるパターン?! ここまで二人きりで来たのに? お互い片想いを抱えながら??
「な、なんかごめんなさい……」
とりあえず、二人が思った以上にプラトニックだったことが判明した。その秘めた想いや積み上げてきた諸々は、私がぶち壊してしまったらしい。
「もうっ、酷いです。お嬢様ったら」
「エイミー、お嬢様じゃなくて奥様よ。ごめんなさい、てっきり付き合っているのかと思ったから……」
「異性と仲が良いだけで付き合っていると思うなんて」
「エイミーさん、奥様なりの観察眼があったんですよ、きっと」
茶色の髪に茶色の耳を持つ人狼の男の子は、ウェーブがかった茶髪の可愛らしい雰囲気が印象的。
エイミーはどうやら可愛い系が好きなのね。
「友人同士はそんなにくっついて歩かないわ」
「えっ」
「人狼は距離が近いから麻痺しやすいけれど、人間は何とも思っていない異性とそんなにぴったり密着しないでしょ」
「そんなに、近かったですか?」
「つい数分前は指を絡めていたのかしら、くらいの距離感だけれど」
二人は恥ずかしそうに下を向いて照れていた。なんだか初々しいというか、思った以上にピュアね。
「お互いが育ててきた気持ちをあっさりと私が暴露してしまったのは謝るわ。とりあえず、いまはエイミーが持ってきているオルブライト伯爵家の印を借りたいのだけれど」
「あ、はいっ」
エイミーは肩から斜め掛けをしていた革製のバッグから白い布に包まれたものを取り出した。
「こちらです」
受け取った布を開くと、金でできた印が出てきた。狼の家紋が彫られている。
「封蝋印を押したら、クリスティーナに手紙を出すの。彼女に会って公爵様のことを色々聞き出さなくちゃ」
「すみません、ご主人様が毒に倒れたと聞いたのですが……」
料理人の男の子が、心配そうにこちらを見ている。
「ええ、バートレットとシンシアがついているわ。ノクスの回復力があれば命に心配はないのだと聞いたけれど」
「それでも、奥様の心中を思うと泣けてきます……」
人狼の男の子は耳を折りたたんで目を潤ませていたから、つられて泣きそうになって咄嗟に視線を外した。
キラキラとした澄んだ目で泣かれると、もらい泣きをしそうになる。
「悔しいけれど、私が狙われたせいでユリシーズが切られてしまったの。だから、こうやって彼から離れて行動しているのよ」
「はい。奥様の行動がご主人様に届くよう、僕も精一杯仕えます」
ピンと耳を立てて胸を張ってくれる。
やっぱり人狼の子はみんな可愛いわね。エイミーが惹かれるのが理解できる。
……って、私と同い年だったんだ。つい見た目の幼さに引っ張られて年下だと思ってしまうわね。
「ありがとう。早くユリシーズのところに行けるように、協力してもらえたら嬉しいわ」
「はいっ! 耳と鼻の良さを生かして、公爵家関係者となるべく出くわさないように帝都をご案内します!」
「……ちょっと待って。公爵関係者かどうかを知るためにどうするつもり? あと、もしかして帝都には公爵家関係者が何人もいるの??」
「申し上げにくいのですが……公爵家の親戚の方々は帝都で要職についている方ばかりですし、公爵様自身も成人されるまで帝都のお城に住んでいた方ですし……」
「……」
お城の前で丁寧に約束の取り方を教えてもらえたのも、私が公爵家のクリスティーナを名乗ったからなのかもしれない。
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