114 / 134
4章
味方でいて
しおりを挟む
「それで? ヒューとはどんな話をしたの?」
次の日、クリスティーナの部屋に着くと開口一番で例の話を聞かれた。
予想はしていたけれど、一瞬だけ動揺したのを悟られないようにクリスティーナの方に向かって歩く。
「はい。皇子殿下は夫婦というものがよく分かっていらっしゃらないようでした」
嘘は言ってない。嘘は言っていないわ。
「夫婦が分からない、ねえ。それはそうでしょうけれど」
クリスティーナは丸いテーブル席に私を着かせて、向かいに座った。
「立場が立場ですから、私のような者がオルブライト伯爵領でユリシーズと楽しく暮らしていたのを興味深く聞いてくださいました」
「ヒューは夫婦を知る気があるのかしら? とてもじゃないけれど、興味があるとは思えない。それってつまり、わたくしの前でだけ無関心ということ?」
うわ、鋭い。夫婦を知る気なんか無さそうでしたね、とは返せないし……。
「あ、恐らくユリシーズのような人が夫婦円満だから興味が湧いたのかと」
「オルブライト伯爵に興味があるだけではないの?」
「そんなことはないと思います、けれど」
クリスティーナは内心ヒヤヒヤの私を見透かすような質問をする。
「じゃあ、昨日はヒューと二人きりでオルブライト伯爵との生活について話したの?」
「はい。最初は私がユリシーズを籠絡しただなんておっしゃるものですから、そんなわけがないと否定しました」
「そこはヒューの言う通りだと思うけれど、アイリーンは認めていないのね」
夫婦で同じ認識ですか、クリスティーナとヒュー皇子。
やっぱり気が合うのではないかしら……育った境遇も似ていそうだし。
「私たちは、夫婦になってから出会ってお互いに惹かれたというだけかと……」
この話、皇子殿下のところでもしなかったかしら。
「アイリーンがオルブライト伯爵に誘惑されるとは思えないから、オルブライト伯爵があなたに惹かれたのは間違いなさそうかなって思うのよ」
「なるほど」
クリスティーナの意見に賛同して良いのか疑問だけれど、この辺の話は本筋とはあまり関係がない。
「そういう話が出たのなら、ヒューはアイリーンを気に入っただけだと思うの。わたくしのことを家族だとは思ってくれていないみたいだから」
「そんなことはっ……」
ない、と言おうと思ったのにクリスティーナが「もういいわ」とその後を遮った。
「アイリーンが気を遣ってくれるのは嬉しいけれど、わたくしがどこかで間違えたのよ。ヒューは公爵令嬢なんかとは結婚したくなかったし、わたくしのことも幼馴染だとしか思っていないの。わたくしが、どうしてもヒューと一緒になりたいと言ったからこうなってしまったの」
クリスティーナが自分の顔を両手で覆った。
「でも……皇室に嫁ぐための教育しか受けてこなかったから、ヒューの感情を犠牲にしてでもここに来たかった。皇室に入れなかったらわたくしが存在している意味がないから……わたくしの傲慢が彼を頑なにしたの」
「クリスティーナ……」
私が憧れたお姫様は、意志が強くて優しくて、帝国のために働きたいと言って皇室に入った方だ。
クリスティーナがここにいるのは間違っていないと思う。
だけど、皇子殿下の気持ちも分かってしまうわけで……。
「お互いの立場が、少しだけ難しいのだと思います」
苦し紛れに言うと、クリスティーナは小さくうなずいた。
「ねえ、アイリーン。お願いがあるの」
「はい。なんでもおっしゃってください」
クリスティーナは涙の溜まった目をまっすぐに向けて来る。
「この先、ヒューがどんなことを言ってきても……わたくしの味方でいて頂戴」
「はい、勿論です」
クリスティーナの問題が解決するわけではないけれど、私は友人としてそばにいて差し上げたい。
例えヒュー皇子の境遇に自分と同じものがあったとしても、夫婦になったクリスティーナをこんな風に追い詰めるのは、やっぱり違うと思うから。
***
「おはようございます。妃殿下、オルブライト伯爵夫人」
クリスティーナの部屋に、昨日も一緒だったディアリング伯爵夫人と、オルウィン侯爵夫人が到着した。
オルウィン侯爵夫人はドレスに大きなリボンこそついていなかったけれど、全身ピンク色でゴテゴテしたレースが付いたドレスを着ていた。茶色の巻髪と合わせると大型の肉食獣並みの迫力がある。
ディアリング伯爵夫人は昨日の黄色いドレスではなく、ブラウンの落ち着いた色のドレスを身に着けている。本日は蜂っぽくないけれど、ツリ目も目立っていて森で追われた狐の化身かしらと思う風貌だ。
「おはようございます。オルウィン侯爵夫人、ディアリング伯爵夫人」
「おはようございます」
クリスティーナは席を立ち、ソファ席に私を誘導して四人で腰を下ろした。
オルウィン侯爵夫人は扇子を広げて口元に当てると、「聞きましたわよ」と私の方をじろりと見て来る。
「オルブライト伯爵夫人は、皇子殿下と二人きりで話したそうじゃありませんか」
楽しそうに話しかけられても、反応ができない。
「あのヒュー皇子も、美人には弱いのかしら」
ディアリング伯爵夫人は細い目をもっと細めて言う。オルウィン侯爵夫人が楽しそうにソファから身を乗り出した。
「ヒュー皇子には一度も浮いたお話がなかったから、とても珍しいわね」
「本当よ。一度も浮いたお話が無かったわ」
オルウィン侯爵夫人とディアリング伯爵夫人が楽しそうに笑っている。
私は言葉を失って、この人たちは何を言っているのかしらと唖然としてしまった。
あなたたちは妃殿下を支えるために雇われているのではないの?
「お二人の考えているようなことは一切ございません。皇子殿下には、わたくしの夫について話をしただけです」
「オルブライト伯爵を魅了した方を身近で見てみたいと思うのは自然ですわ。皇子殿下も男性なのですから」
皇子殿下が私に気があるかのような言い方はやめて欲しい。クリスティーナが聞いているのに。
「そのような意図は一切ございませんでしたので、もうやめてください」
「あらあ、オルブライト伯爵夫人にその意図がなくても皇子殿下は違うのよ」
私が弁解すればするほど二人のゴシップ魂が盛り上がってしまい、クリスティーナの表情が翳る。
「妃殿下、お気になさることなんかありませんわ。美女と二人きりで話をしたいと思うのは、男性にとってごく自然なことなのですよ」
「いい加減にしてください! 妃殿下の前でなんてことを!」
私が声を荒げると、「あら、わたくし、妃殿下はオルブライト伯爵夫人から皇子殿下に興味を持たれる秘訣をうかがった方がよろしいのでは? と思っただけです」とオルウィン侯爵夫人はニヤニヤしながら言った。
「失礼です! 妃殿下に無礼なことを言わないでくださいませ!」
「いいのよ、オルブライト伯爵夫人」
クリスティーナはオルウィン侯爵夫人とディアリング伯爵夫人を止めない。
「実はわたくしも、オルブライト伯爵夫人から男性を魅了する秘訣をうかがいたいと思っていたところだから」
クリスティーナは穏やかにそう言うと、オルウィン侯爵夫人に笑みを返す。
「妃殿下もわたくしたちと同じですのね。オルブライト伯爵夫人なら男性の心を捉えるコツをご存じのようですもの」
相変わらずオルウィン侯爵夫人はクリスティーナに対して失礼だ。私を引き合いに出してクリスティーナが皇子殿下と上手くいっていないと言いたいらしい。
「そんなものはございません。ただ夫は……」
「謙遜なさらないで。妃殿下だってオルブライト伯爵夫人から学びたいとおっしゃったのよ。だってあのヒュー皇子ったら酷いのですから」
どうしよう。昨日と話す内容は特に変わらないというのに、クリスティーナに対する悪意がこもっていて全然笑えない。
どうしてクリスティーナはこんな失礼な人を解雇しないで黙っているの??
そう思ってクリスティーナの顔をうかがう。
いつもどおり穏やかな表情を浮かべていたけれど、ふと視線を下げると膝に置いた手が小さく震えていた。
クリスティーナは、ここで言い返したら自分がこの人たちと一緒になってしまうから堪えているのだわ。
一番言われたくないことを言われて、傷つきながら……。
「妃殿下をこれ以上侮辱するつもりなら、わたくしから執事長に報告します」
まあ、私が報告してもあの人は対応してくれるか怪しいけれど。
「あら、いやですわオルブライト伯爵夫人。そんなつもりはなくてよ?」
「皇子殿下がオルブライト伯爵夫人と二人きりの時にどのようなことをおっしゃったのか、聞きたくなるのは当然ではないかしら? だってわたくしたち、お友達でしょう?」
ニマニマと笑う二人のご夫人は、昨日とは違って妃殿下を見下しているのが分かった。
クリスティーナが妃としての務めを果たしていないからだとでも言いたげで、反吐が出そう。
「お友達だと思いたいけれど、わたくし、妃殿下を尊敬している者同士でなければ仲良くなれません」
きっぱりと言い切ると、「いやですわオルブライト伯爵夫人、わたくし、妃殿下のことを尊敬していましてよ?」だとか「妃殿下に仕える侍女として、そこは当たり前の礼節ですけれど?」などと取り繕ってくる。
「それでは、妃殿下からの許可がいただけましたら昨日の話をいたします。妃殿下、このお二人にも皇子殿下と話した内容をお伝えするべきでしょうか?」
私が頷きながらクリスティーナに同意を求めると、「オルブライト伯爵夫人、ご配慮ありがとう」といつもの調子でにこりと笑顔を向けて来る。
「わたくし、夫の話を他人にするのは苦手なの。オルブライト伯爵夫人とわたくしだけの秘密にさせて頂戴な。ね、オルブライト伯爵夫人、いいでしょう?」
「かしこまりました。妃殿下がそうおっしゃるのであれば、わたくしの口からは決して口外いたしません」
クリスティーナは私の方を見たあとで全員に向かって微笑む。
そうして、二人のご夫人は口をぽかんと開いたまま固まってしまった。
次の日、クリスティーナの部屋に着くと開口一番で例の話を聞かれた。
予想はしていたけれど、一瞬だけ動揺したのを悟られないようにクリスティーナの方に向かって歩く。
「はい。皇子殿下は夫婦というものがよく分かっていらっしゃらないようでした」
嘘は言ってない。嘘は言っていないわ。
「夫婦が分からない、ねえ。それはそうでしょうけれど」
クリスティーナは丸いテーブル席に私を着かせて、向かいに座った。
「立場が立場ですから、私のような者がオルブライト伯爵領でユリシーズと楽しく暮らしていたのを興味深く聞いてくださいました」
「ヒューは夫婦を知る気があるのかしら? とてもじゃないけれど、興味があるとは思えない。それってつまり、わたくしの前でだけ無関心ということ?」
うわ、鋭い。夫婦を知る気なんか無さそうでしたね、とは返せないし……。
「あ、恐らくユリシーズのような人が夫婦円満だから興味が湧いたのかと」
「オルブライト伯爵に興味があるだけではないの?」
「そんなことはないと思います、けれど」
クリスティーナは内心ヒヤヒヤの私を見透かすような質問をする。
「じゃあ、昨日はヒューと二人きりでオルブライト伯爵との生活について話したの?」
「はい。最初は私がユリシーズを籠絡しただなんておっしゃるものですから、そんなわけがないと否定しました」
「そこはヒューの言う通りだと思うけれど、アイリーンは認めていないのね」
夫婦で同じ認識ですか、クリスティーナとヒュー皇子。
やっぱり気が合うのではないかしら……育った境遇も似ていそうだし。
「私たちは、夫婦になってから出会ってお互いに惹かれたというだけかと……」
この話、皇子殿下のところでもしなかったかしら。
「アイリーンがオルブライト伯爵に誘惑されるとは思えないから、オルブライト伯爵があなたに惹かれたのは間違いなさそうかなって思うのよ」
「なるほど」
クリスティーナの意見に賛同して良いのか疑問だけれど、この辺の話は本筋とはあまり関係がない。
「そういう話が出たのなら、ヒューはアイリーンを気に入っただけだと思うの。わたくしのことを家族だとは思ってくれていないみたいだから」
「そんなことはっ……」
ない、と言おうと思ったのにクリスティーナが「もういいわ」とその後を遮った。
「アイリーンが気を遣ってくれるのは嬉しいけれど、わたくしがどこかで間違えたのよ。ヒューは公爵令嬢なんかとは結婚したくなかったし、わたくしのことも幼馴染だとしか思っていないの。わたくしが、どうしてもヒューと一緒になりたいと言ったからこうなってしまったの」
クリスティーナが自分の顔を両手で覆った。
「でも……皇室に嫁ぐための教育しか受けてこなかったから、ヒューの感情を犠牲にしてでもここに来たかった。皇室に入れなかったらわたくしが存在している意味がないから……わたくしの傲慢が彼を頑なにしたの」
「クリスティーナ……」
私が憧れたお姫様は、意志が強くて優しくて、帝国のために働きたいと言って皇室に入った方だ。
クリスティーナがここにいるのは間違っていないと思う。
だけど、皇子殿下の気持ちも分かってしまうわけで……。
「お互いの立場が、少しだけ難しいのだと思います」
苦し紛れに言うと、クリスティーナは小さくうなずいた。
「ねえ、アイリーン。お願いがあるの」
「はい。なんでもおっしゃってください」
クリスティーナは涙の溜まった目をまっすぐに向けて来る。
「この先、ヒューがどんなことを言ってきても……わたくしの味方でいて頂戴」
「はい、勿論です」
クリスティーナの問題が解決するわけではないけれど、私は友人としてそばにいて差し上げたい。
例えヒュー皇子の境遇に自分と同じものがあったとしても、夫婦になったクリスティーナをこんな風に追い詰めるのは、やっぱり違うと思うから。
***
「おはようございます。妃殿下、オルブライト伯爵夫人」
クリスティーナの部屋に、昨日も一緒だったディアリング伯爵夫人と、オルウィン侯爵夫人が到着した。
オルウィン侯爵夫人はドレスに大きなリボンこそついていなかったけれど、全身ピンク色でゴテゴテしたレースが付いたドレスを着ていた。茶色の巻髪と合わせると大型の肉食獣並みの迫力がある。
ディアリング伯爵夫人は昨日の黄色いドレスではなく、ブラウンの落ち着いた色のドレスを身に着けている。本日は蜂っぽくないけれど、ツリ目も目立っていて森で追われた狐の化身かしらと思う風貌だ。
「おはようございます。オルウィン侯爵夫人、ディアリング伯爵夫人」
「おはようございます」
クリスティーナは席を立ち、ソファ席に私を誘導して四人で腰を下ろした。
オルウィン侯爵夫人は扇子を広げて口元に当てると、「聞きましたわよ」と私の方をじろりと見て来る。
「オルブライト伯爵夫人は、皇子殿下と二人きりで話したそうじゃありませんか」
楽しそうに話しかけられても、反応ができない。
「あのヒュー皇子も、美人には弱いのかしら」
ディアリング伯爵夫人は細い目をもっと細めて言う。オルウィン侯爵夫人が楽しそうにソファから身を乗り出した。
「ヒュー皇子には一度も浮いたお話がなかったから、とても珍しいわね」
「本当よ。一度も浮いたお話が無かったわ」
オルウィン侯爵夫人とディアリング伯爵夫人が楽しそうに笑っている。
私は言葉を失って、この人たちは何を言っているのかしらと唖然としてしまった。
あなたたちは妃殿下を支えるために雇われているのではないの?
「お二人の考えているようなことは一切ございません。皇子殿下には、わたくしの夫について話をしただけです」
「オルブライト伯爵を魅了した方を身近で見てみたいと思うのは自然ですわ。皇子殿下も男性なのですから」
皇子殿下が私に気があるかのような言い方はやめて欲しい。クリスティーナが聞いているのに。
「そのような意図は一切ございませんでしたので、もうやめてください」
「あらあ、オルブライト伯爵夫人にその意図がなくても皇子殿下は違うのよ」
私が弁解すればするほど二人のゴシップ魂が盛り上がってしまい、クリスティーナの表情が翳る。
「妃殿下、お気になさることなんかありませんわ。美女と二人きりで話をしたいと思うのは、男性にとってごく自然なことなのですよ」
「いい加減にしてください! 妃殿下の前でなんてことを!」
私が声を荒げると、「あら、わたくし、妃殿下はオルブライト伯爵夫人から皇子殿下に興味を持たれる秘訣をうかがった方がよろしいのでは? と思っただけです」とオルウィン侯爵夫人はニヤニヤしながら言った。
「失礼です! 妃殿下に無礼なことを言わないでくださいませ!」
「いいのよ、オルブライト伯爵夫人」
クリスティーナはオルウィン侯爵夫人とディアリング伯爵夫人を止めない。
「実はわたくしも、オルブライト伯爵夫人から男性を魅了する秘訣をうかがいたいと思っていたところだから」
クリスティーナは穏やかにそう言うと、オルウィン侯爵夫人に笑みを返す。
「妃殿下もわたくしたちと同じですのね。オルブライト伯爵夫人なら男性の心を捉えるコツをご存じのようですもの」
相変わらずオルウィン侯爵夫人はクリスティーナに対して失礼だ。私を引き合いに出してクリスティーナが皇子殿下と上手くいっていないと言いたいらしい。
「そんなものはございません。ただ夫は……」
「謙遜なさらないで。妃殿下だってオルブライト伯爵夫人から学びたいとおっしゃったのよ。だってあのヒュー皇子ったら酷いのですから」
どうしよう。昨日と話す内容は特に変わらないというのに、クリスティーナに対する悪意がこもっていて全然笑えない。
どうしてクリスティーナはこんな失礼な人を解雇しないで黙っているの??
そう思ってクリスティーナの顔をうかがう。
いつもどおり穏やかな表情を浮かべていたけれど、ふと視線を下げると膝に置いた手が小さく震えていた。
クリスティーナは、ここで言い返したら自分がこの人たちと一緒になってしまうから堪えているのだわ。
一番言われたくないことを言われて、傷つきながら……。
「妃殿下をこれ以上侮辱するつもりなら、わたくしから執事長に報告します」
まあ、私が報告してもあの人は対応してくれるか怪しいけれど。
「あら、いやですわオルブライト伯爵夫人。そんなつもりはなくてよ?」
「皇子殿下がオルブライト伯爵夫人と二人きりの時にどのようなことをおっしゃったのか、聞きたくなるのは当然ではないかしら? だってわたくしたち、お友達でしょう?」
ニマニマと笑う二人のご夫人は、昨日とは違って妃殿下を見下しているのが分かった。
クリスティーナが妃としての務めを果たしていないからだとでも言いたげで、反吐が出そう。
「お友達だと思いたいけれど、わたくし、妃殿下を尊敬している者同士でなければ仲良くなれません」
きっぱりと言い切ると、「いやですわオルブライト伯爵夫人、わたくし、妃殿下のことを尊敬していましてよ?」だとか「妃殿下に仕える侍女として、そこは当たり前の礼節ですけれど?」などと取り繕ってくる。
「それでは、妃殿下からの許可がいただけましたら昨日の話をいたします。妃殿下、このお二人にも皇子殿下と話した内容をお伝えするべきでしょうか?」
私が頷きながらクリスティーナに同意を求めると、「オルブライト伯爵夫人、ご配慮ありがとう」といつもの調子でにこりと笑顔を向けて来る。
「わたくし、夫の話を他人にするのは苦手なの。オルブライト伯爵夫人とわたくしだけの秘密にさせて頂戴な。ね、オルブライト伯爵夫人、いいでしょう?」
「かしこまりました。妃殿下がそうおっしゃるのであれば、わたくしの口からは決して口外いたしません」
クリスティーナは私の方を見たあとで全員に向かって微笑む。
そうして、二人のご夫人は口をぽかんと開いたまま固まってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました 【完結】
日下奈緒
恋愛
後宮に入り、妃となって二年。
それなのに一度も皇帝に抱かれぬまま、沈翠蘭は“お飾りの妃”としてひっそりと日々を過ごしていた。
ある日、文部大臣の周景文が現れ、こう告げる。
「このままでは、あなたは後宮から追い出される」
実家に帰れば、出世を望む幼い弟たちに顔向けできない――。
迷いの中で手を差し伸べた彼にすがるように身を預けた翠蘭。
けれど、彼には誰も知らない秘密があった。
冷たい後宮から始まる、甘くて熱い溺愛の物語。
ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~
水無月礼人
恋愛
私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!
素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。
しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!
……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?
私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!!
※【エブリスタ】でも公開しています。
【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。
平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
美並ナナ
恋愛
類稀なる美貌を誇る子爵令嬢シェイラは、
社交界デビューとなる15歳のデビュタントで
公爵令息のギルバートに見初められ、
彼の婚約者となる。
下級貴族である子爵家の令嬢と
上級貴族の中でも位の高い公爵家との婚約は、
異例の玉の輿を将来約束された意味を持つ。
そんな多くの女性が羨む婚約から2年が経ったある日、
シェイラはギルバートが他の令嬢と
熱い抱擁と口づけを交わしている場面を目撃。
その場で婚約破棄を告げられる。
その美貌を翳らせて、悲しみに暮れるシェイラ。
だが、その心の内は歓喜に沸いていた。
身の丈に合った平穏な暮らしを望むシェイラは
この婚約を破棄したいとずっと願っていたのだ。
ようやくこの時が来たと内心喜ぶシェイラだったが、
その時予想外の人物が現れる。
なぜか王太子フェリクスが颯爽と姿を現し、
後で揉めないように王族である自分が
この婚約破棄の証人になると笑顔で宣言したのだ。
しかもその日以降、
フェリクスはなにかとシェイラに構ってくるように。
公爵子息以上に高貴な身分である王太子とは
絶対に関わり合いになりたくないシェイラは
策を打つことにして――?
※設定がゆるい部分もあると思いますので、気楽にお読み頂ければ幸いです。
※本作品は、エブリスタ様・小説家になろう様でも掲載しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる