<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

2.電話越しにキミと(1)

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♫♩♬~

桜も咲き始めた頃、俺のスマホに通知が鳴った。
メールだ。今日、送付されることは分かってた。
件名には、『試験結果のお知らせ』の文字。
恐る恐る、画面をタップする。

『合格おめでとうございます』

届いたメールには、期待していた一文が載っていた。

「……!……やった…………!!!」


国立慧明すいめい学院大附属慧明学院中高等学校

第二性検査でαの診断を受けた全国のα達が中等科から通う中高一貫校。
第二性が現れ始めて、問題になったのは学力の格差だ。
αは突出して頭がいいため、よりよい環境で高度な勉強を進めたいαやαの家族の要望で、国が設立した学校だ。

ほとんどの生徒がαだけど、学力の高いβも、ここ近年在籍している。
ちなみに、俺は頭がいいわけじゃない。
成績は中の……どちらかというと下の方。
でも、この学校に入学するためにめちゃくちゃ勉強した。

国立で尚且つハードルが高い学校だからか、入学できたβには国からの支援金も多額に出る仕組みだ。
そんな事もあり、家族の全面的なサポートに本当に助けられた。
でも1番助かったのは、αで幼馴染の総兄……佐伯 総司さえき そうじの存在かもしれない。

総兄が持ってきてくれた対策問題を解きまくって、何とか頭に叩き込んだ。
その甲斐あってか、最初E判定だった模試も、最後の模試にはA判定まで持っていくことが出来た。
自信を持って試験に臨めたのが本当にデカい。

俺が同じ学校に行くために必死に勉強してるのを知った総兄が突然のお宅訪問。
「これ、対策問題だから、頑張ってみな」って大量の資料を持ってきてくれた。
あの時は嬉しすぎて泣きながら抱きついちゃったな。
あ……あの時、俺、総兄が着てる服に鼻水つけてなかったかな。
総兄の服、ハイブランドだから……今更になって心配になってきた……。
鼻水付いてたら、ごめん。総兄。


この学院の存在は有名だったから昔から知っていた。
だけど俺には関係のない学校だ、とずっと思ってた。

でも総兄がここに進学するって知って。
一緒にオープンスクールとかも行かせてもらったのがキッカケで、ここが俺の志望校になった。
あの時は母さん、めっちゃ嬉しそうだったなあ。
 
総兄はほんとは中等科から慧明に行くはずだったらしい。
でも、どうしてもこっちの中等科に通いたくて、高等科は慧明に必ず行くって約束を親としたからだったって母さんから聞いて、総兄ってマジでαなんだ……!ってビックリしたっけ。

ちなみに、何でウチの母さんが総兄の情報通かというと、総兄のお母さんとは超がつくほどの仲良しだから、情報は筒抜けらしい。
俺のことも総兄ん家で話題になってるのかなあ。
母さん、変なこと言ってないといいけど…。

とにかく、入学したい、と思い立って1年と少し。
必死に勉強してきた結果が実を結んだ。
親に報告、じいちゃんにも報告して……や、まてよ。
1番に報告するのは、やっぱり、総兄だな。

5回ほど呼び出しのコールが鳴り、掛け直そうかな、と切ろうとした瞬間に中性的な声が右耳に飛び込んできた。

『士郎!どうした?』
「総兄……!長々鳴らしてごめん。報告したくて電話したんだ。…………試験、合格したよ!」
『マジかー!おめでとう!………………あ、士郎ちょっと。いきなりで悪いんだけど、電話替わるわ。』
「へ???え、誰に…」


『 ────── もしもし。』


うわ。すごい。低い声。


「………もし、もし?」
『キミは…… ────── いや。なんでもない。佐伯、やはり大丈夫だ。β枠は必要ない。』

β枠????なんじゃそりゃ????

『ってちょ、黒木、どこに……!あ、ごめん士郎…!と、とにかく、入学おめでとう。学院で待ってるからな。急に変な電話になってごめん!入学してから、キチンと説明するから。またな。』
「う、うん。……また、ね。」

総兄から急に変わった声は総兄よりも低くて。
電話越しでも、よく響く声だった。

「ていうか、何だったの、今の…………ま、いっか。」

よく分からない内容に疑問符は残ったけど、この時は合格出来た喜びで、突然電話を替わった理由も、内容も、特に気にならなかった。

今になって思うと、これが、圭介先輩……
生徒会長である、黒木 圭介くろき けいすけさんと俺の初めての会話だった。



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