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< 本編 >
11.にがくて、あまい。少しでもあなたと:side佐伯(2)
しおりを挟む保健室に行く筈だった足取りは、保健室よりも更に奥。
東棟の中でも殆ど誰も立ち寄ったことのない、と噂の生物工学科の研究室の前で止まった。
「ここ、は」
「僕の研究室です。僕の講義は人気がないんですよ。普段から閑散としていますし、夏休み真っ只中だから安心してください。」
そう言って、中に入る。
ホルマリン漬けの生物が入ったビーカーなどが置いてある独特な香りの空間の先にある扉を開いた。
ふわっ、とさっき口唇を重ねた時に感じた香りが立ち込める。
高人さんは俺を奥にあるベッドに下ろした。
「怪訝そうな顔ですね。ふふ。キミは面白い。僕はね、面白いモノや人が好きなんですよ。研究対象としてね。」
「研究、対象、ですか」
「そう。僕は研究が大好きなんです。」
そう言って、俺に持っていた資料を手渡した。
そこには『Ωの少なすぎる発現―βからスイッチしている可能性について―』と書いてあった。
パラ、パラ、と頁を捲り、内容を確認する。
現状、仮説、までは仕上がっているが、証拠から結論までが空白だった。
その仮説は、βがαと肉体的に交わることでΩにスイッチする、という内容だった。
資料を持っている手が期待で震える。
目の前にいる愛しい人はβで、俺がαだからだ。
「僕の仮説はほぼ合っている、と根拠のない自信があります。ただ、やはり論文を提唱するとなると証拠が必要になる」
そこで、だ。と、俺の横に腰を落とした高人さんは俺の口唇に自身の口唇を触れ合わせた。
「……っ!」
「ははっ。自分からあんなに情熱的に迫っておいて、こちらから迫ると照れるんだな。やはり、キミは面白い。」
いつの間にか砕けた口調になった彼は、再度口唇を落とした。
一度だけではなく角度を変えて、何度も、何度も。
「……っふ、んぁ」
「ん、……っん、」
口唇が腫れるんじゃないかと思うくらい、彼からだけではなく俺からも、お互いに口唇を啄み合った。
キスなんて、何度もした事があるのに。
今まで挨拶みたいなモノで、気持ちいいと感じた事がなかったその行為に夢中になる。
キスがこんなに気持ちがいいものだなんて、知らなかった。
ふいに、彼の舌が俺の口内に入り込み、俺の舌と彼の舌が滑らかに絡み合う。
くちゅ、くちゅ、と淫らな水音だけが部屋に響く。
こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
────── もっと、彼の全てに触れたくて。
キスしながら、俺は口を開いた。
「ん…高人、さん…、俺……、っ。は、もっと、あなたに触れ、たい」
「……っ、は、キミには俺の実験に付き合ってもらいたい……」
彼の手が先走りのせいで既に湿っていた俺のズボンに伸びてくる。
今からの事を期待して俺の喉がごくり、と大きく鳴った。
「βの俺が、Ωになれるかの実験だ。」
我慢できず現れた俺を見て彼は、ごくり、と唾を飲んでいた。
その様に更に俺の硬度が増す。
今までも何度か女性と交わってきたが、こんな状態、俺自身初めて見た。
「すごいな……!ここまでとは。俺は男に興味はないが、キミだけは別だ。たまらなく興奮する……、こんな事は初めてだよ……」
「貴方の……中に入っても、いい……?」
「……っ、本来は、仮説通りに最初は徐々に進めたかったが……今日は……」
そう言って、彼は自分のズボンを自ら下ろした。
顕になった彼自身に、熱い息が漏れる。
今から始まる事を想像して、心臓が潰れそうだった。
「男相手にこんなに反応するなんて……はは、面白い……!」
俺のココを触ってみてくれ、と言われ、俺の手で彼を包み、軽く扱く。
ドクドクと脈打つ先に今にも溢れるものが扱いている俺の手をつたって、ポタポタとベッドに垂れた。堪らなく興奮する。
「っ。あ……っ、ふぁ、」
感じている声がかわいすぎる。
もっと、俺がこの人を善がらせたい。
この人を俺でいっぱいにしたい。
軽く、だけのつもりが、興奮で手が止まらなくなっていた。
「……っ。あ、こんなことは初めてで吃驚している。ん!は、きもちいい……ん、実は、信じられないかもしれないが、男を受け入れるのが初めてでね。……っ、上手くいかなかったら申し訳ないが、それでも。」
彼は、俺の耳元に静かに声を落とした。
「キミのソレで、俺の中と奥を、ぐちゃぐちゃに突いて掻き乱して欲しい。………………おいで、総司。」
そう言われて、ブツッと何かが切れた音がした。
────── 初めて、理性が、飛んだ。
次の日の明け方。意識がない彼を見つめながら、さっき迄の事を反芻して堪らない気持ちになった。
彼のシーツは俺と彼の体液で乾いているところが見当たらない。
他人と交わる事は初めてじゃなかったが、普段は一度達すれば満足するのに、今回は……
「俺、こんなに物足りなかったの、初めてだ……」
何度も、何度も。
彼がイく度に、興奮して。
もっと感じているのを見たくて、自分でも止められなかった。
今、彼の体は全身、俺のキスマークで埋め尽くされている。
俺のモノだって知らしめたくて、彼の頸を行為中に何度も噛みたい衝動にかられた。
しかし、
「……っ、ぁ、総司……!ん、Ωに、変貌、出来た時、ん、噛んで、ほしい、っ」
そう、言われてしまっては、思いとどまる他なかった。
彼がΩにスイッチ出来た時、他のαに見つかる前に、軟禁する計画を今から立てなければ。
こんな感情は初めてだった。
ここまで孕ませたいと思える人に初めて出逢い、その人と体を重ねられる事はこんなに幸せな事なのかと、初めての感覚にふわふわしていた。
実験でもなんでも、この人と交われるのならなんでもいい。
逆に研究という名目があって良かった、と安堵さえしている。
何故なら、彼は研究好きな事が講義を受けていない生徒にまで知られている程、そういう面で有名な教授だったから。
今、研究対象が自分自身と俺だから、それ以外の人間を研究対象に浮上させないだろう。
そして、その間は他の人間と交わる事は絶対にない、と断言できる。
「まずは、身体から、かな」
意識のない彼の口唇に、そっと口唇を落とした。
取り敢えず、俺なしじゃ生きられない身体にする。
心はその後でもいい。
彼の仮説が立証され、Ωにスイッチ出来たら万々歳だ。
その時は、頸を噛んで、番にする。
────── この人は、他の人間には、絶対渡さない。
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