35 / 107
< 本編 >
35.近くて、遠い。手に入れたい、全てを:side黒木
しおりを挟む士郎も、俺と同じ気持ちと知って、舞い上がったのも束の間。
一気に、奈落の底へ落とされた気分だった。
運命の番の話を切り出した彼の表情は、今までに見た事がないほど辛そうで。
見ているこっちまで、悲しくなるほどだった。
「……朝まで一緒に、いたい。何もしないと約束する。士郎を抱きしめて眠りたいんだが……ダメだろうか」
「……俺は、圭介さんに良い返事が出来ません。これ以上、期待させる様な事は出来ない……。キス、強請ったくせに断るとか……何考えてんだって感じ、ですよね……。本当に申し訳ないと、思ってます。貴方と……したかった事が叶うって思ったら、止められなくて……」
「……んんっ。士郎、その辺でストップだ。そんな事を言われたら、また、欲しく、なる。」
すみません……!と顔を真っ赤にして謝る彼は、とてつもなく可愛すぎる。愛しい。触りたい。
また、その口唇に触れたくなる ──────
「け!圭介!さん!」
「む」
士郎の両手は、俺の口を押さえていた。
無意識に彼の口唇に吸い寄せられていた様だ。
「今日は……!これ以上しちゃうと、俺も気持ちがブレるというか……!」
「ブレたらいい。ブレたら、お前は、俺のモノになるだろう?」
「な、なりませんよ!!!貴方には……番がいるんだから……!」
第二性なんて、クソ喰らえだ。
俺は士郎だけいれば、それでいいのに。
「……俺のモノにならないなら、キス、しても……構わない……よな?」
「……それ、揚げ足取りって……言うんですよ」
知ってる、と言って士郎の両手を横にズラした。
現れたピンク色の口唇に、ごくり、と唾を呑む。
さっきまで、あんなに重ねていたのに。
まだ、足りない。
もっと触れ合っていたい。
欲望が、湧き出て止まらなくなる。
彼の表情から彼も、俺を求めているのが分かった。
誘われるままに、目の前のかわいい口唇に、俺の口唇を落とした。
ちゅ、と優しく触れるだけの口付けを交わす。
さっきまでの激しいキスも刺激的だったが、穏やかな、こういうキスも堪らなく唆られる。
結局は士郎とする事、全てに興奮するのだろう。
この部屋に来る前、何十回と果てておいてよかった。
多分、それをしていなければ俺は……最低で、最悪の結末を迎えていた様に思う。
欲望のまま、腕を組み敷いて、無理やり俺をぶち込んで、この子を泣かせていたかもしれない。
あんなに果てたのに、士郎と口唇を触れ合わせた瞬間に、俺のソコは反り立っていた。
今までの不能を取り戻すかの様に、本能が止まらない。
士郎が眠りについてから……もう一度、自分を慰めないと、眠れないだろう。
口唇を離した先の士郎の表情は艶やかで。
物足りない、という顔をしていた。
「……もう一回、する?」
「 っ!も、もう!しません!寝ます!」
「ははっ。そうか……でも、いつでも、俺は士郎と触れ合いたい。────── したくなったら……いつでも、言って?」
そう、士郎の耳元で呟くと、声を響かせた方の耳を手で隠し、真っ赤な士郎が、そこにいた。かわいい。
「圭介さんは!本当に……っ、スケベだと思います……っ!」
「そうだな……。自分でも、驚いている。今まで、性欲なんて、これっぽっちも感じた事はなかった。……士郎だけだ。俺が唆られるのは」
「~~~~~ッ!!!!」
プンプンと、真っ赤になって怒っている士郎は、俺を置いて自分の部屋に行こうとする。
怒っている士郎も、かわいい。
何でも許せそうだ。
ニコニコと彼をの後ろ姿見ていると、ピタッ止まり、彼がくるっと俺の方を振り返った。
「……一緒に、寝るん、ですよね……?行きますよ……!」
「ああ。朝まで、横に居させてほしい。 ……ありがとう、士郎」
優しくて、かわいい……君が、好きだ。
存在の見えないモノが不安に思うなら、その不安さえも払拭出来るくらい、俺が君を愛そう。
例え、君のいう『運命の番』が、俺の前に現れたとしても、俺は運命に抗うと誓おう。
俺が一生を共に過ごしたいのは、君しかいない。
「……眠った、か。今日は最高で……最悪な夜、だったな」
眠っている彼の髪を撫ぜる。
溢れるばかりに愛しさが込み上げてくるのに、気持ちのやり場がなくて、もどかしかった。
意識のない彼に角度を変えて、何度も、口唇を落とした。
堪らなく、愛しい。
何としてでも、手に入れる。
俺の運命の番は ────── 士郎。君、だけだ。
51
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。
*執着脳筋ヤンデレイケメン×儚げ美人受け
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、クリスがひたすら生きる物語】
大陸の全土を治めるアルバディア王国の第五皇子クリスは謂れのない罪を背負わされ、処刑されてしまう。
けれど次に目を覚ましたとき、彼は子供の姿になっていた。
これ幸いにと、クリスは過去の自分と同じ過ちを繰り返さないようにと自ら行動を起こす。巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞っていく。
かわいい末っ子が兄たちに可愛がられ、溺愛されていくほのぼの物語。やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで、新たな人生を謳歌するマイペースで、コミカル&シリアスなクリスの物語です。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞に応募しましたので、見て頂けると嬉しいです!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる