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< 本編 >
36.1年生たちのランチタイム
「士郎くん!今日こそは!野暮で悪趣味だけど、色々聞かせてもらうからね!!!」
圧の強い祥くんが、そう宣言したのは、お昼休憩の時だった。
精神的に疲れ切ってた俺は、お弁当が朝から作れなかった。
と、いうか、圭介さんが雁字搦めに俺を抱きしめて、ギリギリまで離さなかったから、それどころではなかったのだ。
「……おはよ、士郎。寝起きの士郎も、かわいい。俺と一生添い遂げて欲しい。俺のモノになって?」
「……なっ!なり、ません!」
この押し問答を繰り返して、キスする、しないの攻防もありつつで、お弁当が作れなかった。
結局は騙し討ちで、ベットから出る時に、ちゅっ、とされたのだが。
…………嬉しかったのは、内緒だ。
今度から、部屋に招かないでおこう。
……お願いされたら、許してしまいそうだけど……
俺のダメなところは、意志の弱いところだ。
総兄は、朝帰ってきた。
研究は相当困難を極めたのかもしれない。
おつかれさまです。
でも、総兄はやけにツヤツヤしていた。
全然疲れてないじゃん。すごい。
そして、圭介さんが部屋に居るのを見て、吃驚してた。
「え?!鍵、掛けて行った筈……!え、なんで……?!士郎、何もされてない?大丈夫?!」
えっ。鍵開いてたけど……どういう事だろう。
流石に昨日の事は言えない。
何もなかった、と嘘をついた。
お兄ちゃんにはこんな事、バレたくない。
複雑な弟心なのだ。
「……佐伯、俺は昨夜、士郎に告白したぞ。士郎の了承も得て、キスもした」
「へっ?!」
「ちょ、ちょ、圭介さん、ストップ……!!!」
「お前と士郎に、そんな気がないのは分かってはいるが、念のための忠告だ。士郎は、絶対に渡さない」
「け、圭介さん?!」
「何の心配もいらないのは、黒木。お前が1番分かっているだろう。俺の心が誰に向いてるのか、勘づいている筈だ。邪魔するつもりはないよ。頑張れ。応援してる」
でも、士郎の親御さんに任されてるから、大事にして!と圭介さんに総兄は釘を刺していた。
いや、付き合ってないから……!という俺の訂正も聞いてもらえず、圭介さんは「大事にする。勿論だ。」と頷いている。
話聞いて……!
授業の前に生徒会の朝会がある、と聞いて、3人で生徒会室に向かった。
「時任、士郎です。よろしくお願いします……!」
「今年度、会長を拝命した2年、黒木 圭介だ。よろしく頼む。それと……、皆に一点、注意して欲しい事があるので、申し送りだ。今、必死で俺はこの子の事を口説いている。士郎には、絶対に、ちょっかいを出さないでくれ。」
「 ────── ちょっ!」
「真っ赤な士郎も……かわいい。……好きだよ」
そう言いながら、俺の頬に口唇を落とす。
生徒会室にいた全員から声にならない声が出る。
やばい。圭介さんが暴走している。
爆弾を、投下されまくっている。
そして、冒頭の祥くんの台詞だ。
今、俺と祥くんと咲耶は食堂に来ている。
俺の今日のメニューは、うどんセットだ。
トレイにうどんと、昆布と鮭のおにぎり、お新香が乗った胃に優しいメニュー。
それを口に運ぼうとした時だ。
祥くんの台詞が、飛んできたのは。
確かに……あんなの見たら……どんな関係かって聞きたく、なっちゃうよなあ。俺も祥くんだったら気になる。
「何から、話そうか」
「黒木先輩の事は……どうする、の?」
ドキドキしてるのが伝わる表情の祥くんの期待に、応える事が出来なくて、申し訳ない気持ちになった。
「……俺は、あの人の事、恋愛対象として、好きだけど。気持ちに応えるつもりは、ないんだ」
「……え……どうして……?」
「俺は、βで、あの人はαだ。いつか現れる、運命の番に敵うわけがない。……ただの、臆病者なんだよ」
俺の台詞を受けて、俺の席の前に座ってハンバーグランチを頬張っていた咲耶が口を開いた。
「士郎……それは、」
「咲耶、分かってるんだ。あの人にも、自分の気持ちにも失礼な事してるって。でも、怖いんだ……運命の番が。あの人なしじゃ生きていけなくなってしまった時、あの人が俺から離れたら、もう、立ち上がれないんじゃないか、って」
だから、この話は、ここまでにしてね、って謝って、うどんを啜った。
このまま、この気持ちに蓋をすれば、全て上手くいく。
このまま、見て見ないふりをすれば ──────
「すまない。席が空いてなくてね。相席、いいですか?」
いつかと、同じ台詞が聞こえて、声のした方を見る。
比良坂教授が、俺の横の空いてる席にいた。
いつかのメニューと、同じ内容のトレイを置いて。
「教授……!こんにちは。どうぞ……!」
「ふふ。時任くん。生徒のキミと、こうしてまた、ここで会えて嬉しいよ」
失礼するよ、と言って教授は俺の横に腰掛けた。
「時任くん、体調はどうですか?」
「あ、昨日は、すみませんでした。もう、すっかりいいです。ありがとうございます。」
「それなら、よかった。……実は、時任くんに会長補佐の業務内容について、伝達事項があってね。今日の課後業務の時、僕の執務室に来てくれますか?」
「わかり、ました。伺います。」
じゃ、お昼を食べよう。と教授はサンドイッチを口に運んだ。
一体……、何の話、だろう。
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