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< 本編 >
37. 2、3年生たちのランチタイム:side佐伯
「……食堂に、行きたい。」
ぼそっ、と。書類に目を通していた黒木が口を開いた。
その声に生徒会室にいた全員が黒木を見やる。
黒木の表情は、拗ねた子供の様だった。
俺は溜息を吐きながら、コツン、と黒木の頭を片手をグーにして小突く。
「こーら。黒木。職務放棄、ダメ。絶対。」
この学院に届く全ての書類や、学院内の人間より提出される申請書を捌くのは生徒会の役割だ。
その書類は、恐ろしく多いため、昼休憩の2時間の内、毎日1時間は、そのために時間を割かれる。
今日は今年度の生徒会始動初日ということもあり、俺と黒木のみで作業をしようと考えていた。
そこに、早く仕事を覚えたい、と真木くんが声をかけてくれ、1年生以外のメンバーで作業をしよう、ということになり今に至るのだ。
「しかし……黒木の気持ちは分からんではない。昼時だし、腹も減った。いくら今日の昼休憩が通常より長いとはいえ……この膨大な書類の精査、この時間で終わるのだろうか……」
昼休憩開始の11時から、この作業を始めて50分が経過していた。
通常の昼休憩は11時から13時の2時間だ。
しかし、今日は教授達のランチ会議が13:00から1時間設けられているため、いつもより休憩が1時間長い。
因みに、このランチ会議。
αの教授達が毎月開催しているモノだ。
高人さんは「βの教授は出席しないのが、通例だから気が楽だよ」と言って毎回出ていない。
真面目な真木くんらしい発言にホッコリする。
しかし、真木くんの目標とする(とか本人に言っちゃうと真木くんに怒られそうだから心の中に留めておこう)目の前の生徒会長様は、そんなつもりじゃないだろう。
黒木の頭の中は今、ドが付くほどのピンク色だ。
言うなれば、ショッキングピンク。
「違うよ、真木くん。多分、黒木は……士郎不足なだけだ。」
「士郎に逢いたい……抱きしめたい……キスしたい……恥じらいながら感じてる士郎が見たい……」
「……っ!……黒木のこの代わり様は一体なんだ……?!いつからこんな腑抜けに……!!!」
真っ赤になって怒った真木くんに、声を掛けたのはお姉さんである真木さんだった。
「……賢ちゃん、黒木くん……腑抜けにはなってない。見て。自分の書類、もう終わってる……何者なの?すご」
「な、何故あんな状態で、あの大量の書類が片付くのだ……?!」
黒木の処理能力は、迅速かつ的確。
1年の頃から見ている俺でも、毎回感心する。
俺の担当書類ももうすぐで終わるが、初めて処理をしている真木姉弟と綾瀬さんは少し手間取っているようだった。
「……まだ、終わっていないのか。何をしている。」
「黒木。初日だからね。慣れないと難しいだろう……白木さん、どう?綾瀬さんコツ、掴めてそうかな」
作業してる綾瀬さんの横で様子を見ていた白木さんのところへ向かい、小声で話しかける。
すると、驚いた顔で白木さんは俺を見た。
「……そうだね。今いい感じっぽいから多分、明日からはもっと早くできると思う。更紗、かなり集中してるから、ワタシに話しかけてくれて正解。言ってなかったよね?更紗が集中してる時、話しかけられると機嫌悪くなるの。よく気付いたね……!凄い」
「いえ、集中してそうだったから、話しかけるのも悪いなと思っただけで」
綾瀬さんは作業に没頭していて話しかけにくかった、というのもあるが、白木さんと喋りたかったのも、あった。
醜くも、嫉妬してしまって……申し訳なかった。
まさか白木さんが、高人さんの……姪っ子さんだったなんて……!
「白木さん……た、比良坂教授の姪っ子さん、なんですね」
「え?うん、そう……なん、だけど……。アレ?その事、何で知ってるの?」
「昨日、教授から……伺い、ました」
「へー!めずらし。高ちゃん、あんまり自分の事、他の人に話したがらないのに……!高ちゃん、きっと佐伯くんの事めっちゃ気に入ってるんだね」
吃驚した顔の俺に、嬉しそうに白木さんは微笑んでくれた。
嬉しさで、鼓動が早くなる。
どういう事かを聞きたくて、白木さんに続きを促した。
「んー。あの人、さ。研究めっちゃ好きでしょ?母さんから聞いたんだけど、研究好きは小さい頃かららしくて。βの癖に変わり者だって、周りの人間に腫れ物扱いされてたみたい。だから……自分の事、話すの好きじゃないの。」
沸々と、見たこともない人間に怒りが沸く。
ムカつきすぎて、吐き気がする。
俺が、小さい頃の彼の傍にいたなら、絶対に近くにいて、彼を守るのに。
そして、たくさん、抱きしめたい。
でも……と白木さんは続けた。
「今、高ちゃんが心を開ける人が、こうしていてくれて……すっごく嬉しい。ありがとう。佐伯くん」
「……俺も、あの人と出逢えて、幸せですよ」
彼の心に、少しでも俺が存在してるなら……こんなに嬉しい事はない。
今日は、呼ばれていないが、俺から彼に逢いに行こう。
きっと、困った顔して……でも絶対に受け入れてくれる。
そんな彼が、────── 堪らなく、好きだ。
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