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< 本編 >
44.執務室でキミと(1)
しおりを挟む涙は、教授が差し出してくれたハンカチに吸われた。
ハンカチを貸してもらったのは2度目だ。
俺はほんと、この人の前だと泣いてしまう。
キミはよく泣く、なんて言って教授は笑った。
俺の目は泣く予定が無かったのに、突然の涙腺ぶっ壊れ事件が発生して大量の水が出た事により、赤くなっていた。
「……これを見たら……俺、黒木くんに処刑されるんじゃないか……?時任くん、その時は助けてくれよ」
「大丈夫ですよ。教授のせいじゃない事、伝えたら、分かってくれますって」
だって、俺が勝手に悩んで勝手に泣いただけなのだ。
本当に教授は悪くない。
俺が泣いただけで、さすがの圭介さんも怒りは沸かないだろう。
「予算割答弁前に打合せしたいです。咲耶や他のβの人達も交えて」
「そうだな。一度β枠メンバーで集まろう。予定を組んでおくよ」
それじゃ、失礼します。と言って、俺は教授の執務室を後にした。
向かうは、生徒会長の執務室だ。
終わったら直行する、の約束を守るべく早歩きで部屋へ向かった。
顧問の執務室のドアを出て廊下を歩き、突き当たりを左に曲がるとみんなが集まる生徒会室へ。
右に曲がると各役員の執務室へ繋がる廊下なのだ。
そこから会長の執務室までは1番距離が遠い。
なるべく急がないと……!と廊下の突き当たりを右に曲がったところで体が宙に浮いた。
「………………へ?」
「士郎、遅すぎる。俺の執務室は、こっちだ」
「け、けいすけさ……?!な、なんで」
「……部屋に入ってから、たくさん聞きたい事がある。急ぐから、口を閉じていてくれ。舌を噛んでほしくない」
俺はいつの間にかお姫様抱っこをされていて。
慌てて彼の首元に手を回す。
お昼ぶりの、彼の香りに……うっとりした。
嬉しくなって彼の首元に顔を近付ける。
好き、だ。もっと、この匂いを、嗅ぎたい。
俺の深い息が、彼の皮膚に当たる。
「……っ。し、ろう……、……っくそ、……!」
余裕のない彼の表情を横から見て、堪らない気分になった。
こんな顔をさせてるのは、俺だけなんだと思うと嬉しさでどうにかなってしまいそうだった。
彼の、口唇が、─────── ほしい。
執務室に到着して、お姫様抱っこのまま、執務室の鍵がガチャ、と閉められる。
ここは完全防音だ。中の音は外には絶対聞こえない。
鍵の閉まる音に、先の事を妄想して、心臓が早まる。
執務室のソファにゆっくり降ろされ、座らされた。
ソファの背もたれに、俺を囲う様に、彼の両手がつく。
彼で囲われて、逃げ場は、ない。
興奮して、余裕のない彼の表情に、ゾクゾクした。
「圭介さん……ん、」
彼の、口唇が……ゆっくりと、俺に、落ちる。
柔らかい感触が、いやらしい水音と共にやってくる。
気持ちよさと喜びが交錯して、胸が苦しい。
ちゅ、ちゅ、と何度も俺の口唇を味わった彼がどんな表情をしてるか見たくて、目を開けると、俺を見つめながら切羽詰まった顔をしていて堪らなくなった。
もしかして……お昼、給湯室でした時より、興奮してる……?
嬉しい……もっと、感じてほしい……
「……っ、ぁ……昨日、気持ちよかった、から……もう一回……舌、舐めて、ほしぃ……」
「……!……どこで、そんなこと、覚えたんだ……?後で、色々確認したい事が、山程あるが……今はそのかわいいお願いを、俺も聞きたい。……舌、出して……?」
俺の舌先を、彼の舌先が絡めとる。
空中でお互いの舌先がピチャピチャ、音を立てて絡んだ。
視線の先の彼は、興奮した顔で必死に俺を見つめている。
その表情に俺のお腹の奥ががキュゥ、っとした。
するり、と俺の舌を絡め取って口唇に、蓋をされる。
気持ちいい。
「……ふ、ぁ、っ、……」
「……ん、……っ。」
何度も、舌を絡めて、お互いの息を感じる。
幸せすぎる。ずっと、こうしていたい。
俺の膝の上に彼が足を広げて座る。
ソファの背もたれについていた手は、いつのまにか、俺の背中と後頭部に回っていた。
俺も応えるように、彼の首に腕を回すと、お互いの距離がなくなってゾクゾクした。
まるで、ひとつになっているようで……。
密着した体は、彼の脈打つ中心部がハッキリと分かった。
これが、俺の中に来たら、どれほど満たされるだろうか。
番の不安さえ、なくなってしまうほどだろうか。
でも、今はまだ、彼とキスをしているのが、気持ちよくて、嬉しくて、ずっとこのままでいたかった。
ただ、口唇を、お互いに何十分も貪り合った。
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