<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

43.教授との密談(2)

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「それで、だ。業務開始前に、来てもらったのは他でもない。……キミが補佐をする、その、黒木くんの事だ」

本来なら、昨日顔合わせの際に伝えたかったんだが、今になってしまってすまない、と言いながら教授は、俺に資料と思われる紙の束を手渡した。
そこにはβ枠が新設された経緯、β枠の必要性が事細かに記載されている。

「その資料は、β枠新設のために上層部に掛け合った際に作成した資料だ。統括の鷲宮くん以外には、生徒会メンバーの誰にも見せたことが無い。しっかり、内容を確認してほしい」
「……そんな大事な資料を、どうして俺に……」
「会長補佐である、キミが知る必要がある内容だ。キミが知る黒木圭介と、学院での黒木圭介に相違があるからね。この現状を知って、今後の対応を考えてほしい。キミがβ枠のキーパーソンになる、と俺は考えている」

そこには、俺の知ってる彼はいなくて。
彼の功績、能力、……感覚の欠落具合が記載されていた。

「……圭介さんは、生徒から反感を買ってる状態、って、ことですか……?そういえば、入学式で会長が圭介さん、って分かった時、一部生徒が不満を言っているのを耳にしました」
「その通りだ。彼の行動は正しい。正論には、反論できないだろう?反論できない分、不満が溜まる。そして、不満は反感に繋がるんだ。しかし、彼の行動は学院側としては大正解でね。こちらとしては、黒木くんが主軸として必要なんだよ。……だから、キミたちβ枠の生徒の力を借りたい」

俺に、出来る事って、なんだろう。
そもそも俺がβ枠として……しかも、会長である圭介さんの補佐に選ばれた理由が、きっとある筈。

うんうん唸っていると、教授が席を立って書棚へ向かう。

「何か、キミの役に立てる第二性に関する資料があればいいが……今の所、キミに丸投げで、すまない」

そう言って、第二性に関する書籍をいくつか持ってきてくれた教授にお礼を言いつつ、数冊とった。
パラパラ、と頁を捲っていると、同じように視線を本に落としてしていた教授が口を開く。

「しかし、今日キミと話をして、キミのその真っ直ぐな、純粋な性格が……全てを解決してくれる様な気がしている。きっとこの役は、キミにしか、出来ない」

その時、咲耶に言われた台詞が頭を巡る。
俺は、俺の、ままが、いいのかも……?
自然体の俺が、1番いいのかも、知れない。

「……解決策が何かないか……考えて、みます。とりあえず……今のところ、来週にある、予算割答弁、が不安なところでしょうか」

目を通した資料には、春にある予算割答弁と秋にある文化祭ミーティングに赤丸が付いていて、そこにβ枠、と教授の筆跡で記載されていた。

「その通りだ。昨年は黒木くんの力技での捩じ伏せが凄かったのと、黒木くんの例年にない、予想外の動きに圧倒されて反論出来なかった生徒が、今回どう動いてくるか、予測がつかないんだ。対策をしてくる生徒がいる可能性が高い。独裁政治は、必ず反発を起こす。なるべく穏便に、且つ迅速に終了させたい」

争いをしたところで、悲しみや憎しみしか生まれないからね、と言いながら教授はコーヒーを口につけた。

俺が、出来ることってなんだろう。
圭介さんの力を活かしつつ、当日出席する生徒の不満を出さない……そんな事ができるんだろうか。

咲耶の意見も必要な気がする。
今日、聞きに行こう。

「……キミが見ている黒木くんも、この学院の黒木くんも全て彼だ。αは、α特有の性質で、気に入った人間を特別優しくする傾向がある。二重人格のようだが……こればっかりはどうしようもない」
「……教授は、第二性の研究を……?」
「そうだな。そう、……佐伯くんの力も借りている。キミは……佐伯くんからこの事をどこまで、聞いている?」
「えと、研究を、手伝っている……としか」

そうか、と言い、教授は口に手を当てて考え事をし始めた。
教授って……変に色気が、ある。
出会った時から、綺麗な顔をしてるな、とは思っていたけど。
その頃に比べると、何ていうか……雰囲気が大人、というか。いや、大人なんだから当たり前なんだけど……醸し出す空気が表現できないけど何だか、ヤバい。

そんな教授をじ、と見つめていたら俺の視線に気付いた教授の目線が俺に向かった。

うわ。俺には、刺激が強すぎる視線だ。
大人すぎる。

「……時任くんに、いつか話さないといけない事があるんだが……まだ俺の心が定まっていなくてね。いつか、キミの時間を、また頂戴しなければならない時が来る。その時は……今日みたいに黒木くんにお願いしてもらってもいいかな?彼はキミの言うことしか、聞かない様だから」
「わかり、ました。その時に、彼がまだ、俺の事を好きなら……必要だと思うので、教えてください」
「……?黒木くんの気持ちが、変わる前提の言い回しだが……そんな事が何故、分かるんだ?あの様子だと、永遠にキミしか頭にないだろう」

そうだったら……どんなにいいか。
でも、どんな状況でも、彼と番はいつか出逢ってしまう運命だ。その時、俺に対する気持ちは、どうなっているか分からない。

「……教授は、運命の番の事、ご存知ですよね。俺は、きっと、番には敵わない。磁石みたいに惹きつけ合って、必ず出逢ってしまう。俺の……身内の元婚約者も、番に出逢って、身内を置いて駆け落ちしています。彼が番に夢中になって、俺が必要なくなる、かもしれない……俺は、それが、怖い。」
「まさか、キミは、本当は黒木くんの事を」

重い口が、開く。目の前が、ぼやける。

「……ほんとは、凄く好きです。叶うなら、ずっと、彼の横にいたい。でも……いつか現れる番が、怖いんです。今、こんなに愛してくれてる彼も、番を目の前にしたら、俺なんかいらなくなる。……っ。俺は、ただのβだから……ふたり、のこと、邪魔しちゃ、ダメ、だ、し……っ。」

ポタポタと、涙が溢れて止まらない。
まだ現れてもいない相手に、ずっと恐怖を感じている。

教授は、俺の背中を何も言わずに、たださすってくれてた。

本当は、圭介さんと、ずっと、一緒に……いたい。

俺は…………彼の、モノに、なりたい。






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