<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

42.教授との密談(1)

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「時任くん、お昼は僕のお願いを聞いてくれて、ありがとう。とても、助かりました」
「いえ……!お役に立てて、嬉しいです」

俺は今、比良坂教授のいる生徒会室の中にある、顧問専用の執務室にいる。
教授の執務室は、以前お邪魔した研究室の奥の部屋と同じで、コーヒーの香りが立ち込めていた。

「……コーヒーしかないが、いいかな?」
「あっ、はい。ありがとうございます……あ!俺が、淹れます。教授は座ってて下さい」

そうか?じゃあ、頼むよ。と言って教授は立ちあがろうとした動きを止めて座り直してくれたので、俺が立ち上がってコーヒーメーカーのところへ移動した。
コーヒーポットには既にコーヒーが落ちていたため、食器棚にあったコーヒーカップに2人分のコーヒーを注ぐ。

「しかし……まさか、時任くんが、あの時の少年だったとは。β枠の資料は顔写真が無い状態で、数値や能力で判断したから、気付けなかったよ」
「俺も、まさか、教授と一緒にお仕事出来るとは思ってなかったので、凄く嬉しいです。……俺、貴方を目標に受験したので。あの時は、ありがとうございました」

教授の顔が驚きの表情に変わった。
あれ、俺何か変な事言ったかな。

「……キミは、総司を追いかけて、ここに来たんじゃ、ないのか」
「この学院が気になったキッカケは総兄ですけど、あの日、貴方に会って。貴方の様な人間になりたい、貴方の講義を受けたいって思ったから……がむしゃらに勉強しました。……俺の目標は、貴方です」

どうぞ、とコーヒーをふたつ、デスクに置いた先の教授の顔は真っ赤で。
あ、れ……?照れてる……?

「……すまない。真正面から、こんな真っ直ぐに告白されたの、人生で2度目でね。しかも、俺目的で講義を受けたい人間が、この世に2人もいて……吃驚してる。流石にポーカーフェイスを保てなかったよ。滅多にここまで赤くなる事はないんだが……キミの真っ直ぐさは強い武器だな。やられた」

彼の真っ直ぐな感じは、きっとキミの影響だろうな。と言われ、きっと総兄の事なんだろうなって、勝手に思った。

総兄は表面上優しそうだけど、壁がめっちゃある人だ。
パーソナルスペースが物凄く、広い。
だから、教授がさっき『総司』と呼び捨てにしたのを聞いて、総兄のスペースにこの人がいる、と何となく思った。

あんまり根掘り葉掘りしたくないから、総兄本人から話が聞けたら、その時に聞こう。

「……あ!忘れてた……!……んんっ。俺、今年入学した時任 士郎、といいます。以前の開校日に、お時間いただき、ありがとうございました!生徒として貴方に再会出来て、とても嬉しいです……!よろしくお願いします。…………っていう挨拶を、会えたらしたいなって考えてました。今更だけど」

へへ。と照れながら笑った俺を見て、教授はふ、と微笑んで口を開いた。

「そういうところ、なんだろうな。黒木くんがキミに魅力を感じているのは。黒木くんを変えたのは、間違いなくキミだろう」

そう言われて、キョトンとする。
俺は、今の圭介さんしか知らないため、気になって口を開く。

「えっ……と。どういうところが、変わったんでしょうか……俺、圭介さんのこと、今の感じしか、知らなくて」
「そう、だな。キミに対する態度は、他の人間には取った事がない。……そういえば、伝わるだろう?」

入学式での、教授に対する態度を思い出した。
もしか、したら。あの態度が今までの、彼の態度だったのかもしれない。

そう考えると、俺に対する態度は甘さ100%、だろう。
……何だか、むず痒い。

「…………俺に対する態度は、やっぱり、特別、なんですね」
「そうだろうね……思い出してみてほしい。さっき、キミが俺と2人でこの部屋に入ろうとした時の事。あんな視線、初めて黒木くんから向けられたよ。……ははっ。本当に、キミはすごいよ」

そうなのだ。
さっき、生徒会室に入ってすぐ、教授が俺を待っててくれてて。
一緒に教授の執務室に、2人で入ろうとしたら、圭介さんから腕を取られた。

「……士郎……?お前は、俺の部屋の筈だ。何故、教授と2人で、教授の執務室へ行く必要がある?」
「あ……!伝え忘れていてすみません。業務開始前に、教授と打ち合わせする事になってて……」
「……教授。それは、士郎が行く必要が?俺でいいだろう。士郎の官吏監督権は俺にある筈だが」
「すまない。今回は、直接、時任くんと話す必要がある内容でね。時任くんの時間を、少し頂戴したい。」

圭介さんの手が、なかなか離れない。
納得いかない、という表情のまま、俺を見つめていた。

「圭介さん……終わり次第、圭介さんの執務室に直行するので、少し、待ってて……くれますか?」
「………………わかった。士郎が、そう、言うのなら」

彼の、俺を掴む手の力が緩んで、手が離れる。

悲しいような、怒っているような、何とも言えない表情をした彼にぺこりと頭を下げて。


教授に促されるままに、部屋へと入ったのだった。




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