<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

41.そのままの、君でいて

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今日は入学式の翌日の金曜、という事で特に講義がある訳でもなく。

午前中は学院内の自由行動だった。

俺は、祥くんと咲耶と3人で、咲耶に教えてもらいながら、色々なところを周った。
ほんとにこの学院は広すぎる。俺、多分ここにある施設、全部覚えきれない気がする……
咲耶は、この学院の施設の配置を全部覚えてるみたいで(すごすぎん?)、行きたくても場所が分からないとこあったらいつでも言ってくれ、と快活な様は、とても頼もしかった。

お昼休憩は……まあ、色々あり……(給湯室は壁が薄い。ほんとに、気をつけたいと、思いました)(小並感)

午後からは、1年生が多目的ルームに集まって、クラスもぐちゃぐちゃにグループワークをした。
何人かのβにも会えて、嬉しかったなあ。

グループワーク後は自由時間だったため、接点のない生徒と話をしたり、ケーキや、アフタヌーンティーを楽しんだりしたりする生徒もいた。
俺は、他のβの生徒には、β枠に選出された事もあり、自己紹介をしなくても、名前を覚えられていて、話しかけてくれたβの子たちと楽しく会話をした。

あと、祥くんがαの生徒に恐ろしい程、言い寄られていたけど、物怖じせず、軽く遇らってて……!
俺が圭介さんにするべき態度は、祥くんなのかも……?!

祥くんの好みのタイプ、とか聞いたことないけど……祥くんなら、すぐ良い人が出来そうだ。

咲耶もモテまくってた。
祥くんに言い寄ってない、他のαやβは咲耶を取り囲んでいる。
咲耶、かっこいいもんなあ。咲耶の魅力は、圭介さんとは真逆な気がする。
この2人が同じクラスだったなら、そこにいる生徒は気が気じゃ無かっただろう。

この学年は、祥くんと咲耶で人気が二分しそうだ。


「……くそ。話しかけたいのに……誰の匂いか知らないけど……マーキング、きっつ……」
「俺も……!めっちゃ色気エグいから、声だけでも掛けたかったのに……!あれは、相当ヤバい相手がいるな。近寄んない方が、身のためだわ」

……?誰の、話だろ?こっち、俺しかいない、けど。
色気、なんて俺には微塵もない事が明らかだから、俺の事じゃない事は確かだけど……、α?であろうあの2人には俺に見えない誰かが見えてるんだろうか……こ、こわい。
俺、変な匂いしないよな?くんくん。うーん。特に臭くないような……
はっ!俺が気付いてないだけで、この匂いが、めちゃめちゃ臭い……?!
そうだったなら、ごめんなさい……!と去っていった彼らに心の中で両手を合わせて謝っておく。

ふわ、っと。
ここにいないのに、圭介さんのフランボワーズが香った気がした。
幻臭……?!俺、どれだけあの匂い好きなの……ヤバすぎる。

そこに、くつくつ笑いを殺しながら、咲耶がやってきた。

「はー、おもろすぎる。ほんと……無理だよなあ、普通のαじゃ。士郎、お前……クソほどヤバいやつに、目、つけられてんのな」
「へ?!俺、命か、何か狙われてるの?!全然気付いてなかった……!」
「あー違う違う。ははっ!お前、天然だなあ」

咲耶は、よく笑う。
太陽みたいな人だ。出会った時から、とても眩しい。キラキラしている。

圭介さんは、月みたいな人。
暗闇に、美しく存在してるイメージ。
無表情……かと思ってたけど、最近じゃ怒ったり、微笑んでくれたり、……溶ける様に、見つめてくれたり。
……興奮して、余裕がない表情、だったり……

毎日形が変わる月の様に色んな表情を、俺、だけに見せてくれてる、気がする。

じわじわ、嬉しさが込み上げて、胸がギュゥ、っとなった。

彼に、逢いたい。


咲耶が、俺の横に来て、トン、と壁に凭れた。
俺の意識が、咲耶に向いた。

「……何か、さ。上手く、表現出来ないんだけど。俺、お前には幸せになってほしいんだよなあ」

腕を組みながら俺を見ている咲耶の表情は、答えが分からない回答を考えながら出してる感じで。
俺は、よく分からない内容に、とりあえず続きを待ってみる。
うーん。と言いながら咲耶は続けた。

「アイツのことはどーでもいいけど。……お前には、悲しい思い、絶対……して、ほしくない」

アイツ???誰の事だ???
ていうか、今、俺の話、してる???

「……咲耶の言ってることが、よく分かんない。分かるように、説明してほしい……」
「いーのいーの。まだ分かんなくて。ま、士郎はさ。そのままでいてよ。」
「……俺は、ずっと、俺のままかも。……ん?どういうこと?やっぱり、分かんないや」
「……ははっ!そうだよなあ。お前は、お前だ」

そういいながら、咲耶は大きい手で俺の頭をわしゃわしゃした。
あああ。髪の毛がぐしゃぐしゃになってる……!
でも、咲耶の大きい手は、すっごく暖かかった。

「士郎は、士郎のままでいて。もし、無理して疲れるようならさ、それは……士郎じゃないから。自然体の士郎でも、それでも、疲れる時があったら……そん時は俺ンとこにおいで。いくらでも、話聞くし。いくらでも、泣いていいから。」
「……何の話かは、よく、分かんないけど……でも、ありがと。その時がきたら、もしかしたら……頼るかも」
「おお。任せとけ!いつでも、待ってるからな」

月曜から、弁当お願い出来るか?って聞かれたから、うん、って答えたら、ニカッて笑って、やった!という咲耶に、周りからキャーッと黄色い声が飛んだ。

やっぱり、モテる男は一味違う。
咲耶の言動……ひとつひとつに周りが一喜一憂しているようだった。

咲耶の話は殆ど意味がわからなかったけど、俺がしんどくなった時、咲耶を頼っていい、って事だったんだろう。

俺も、咲耶には幸せになってほしいし、悲しい思いはしてほしくない。
咲耶がもし、しんどくて俺に、話聞いてほしいっていう時がきたら、その時は俺も力になりたい。


咲耶の優しさに触れた気がして、心があったかくなった。







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